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81 ジャスミンの今後

「ママ、これは止めた方がいいの。 これは多分吸血鬼に夢魔が混ざった変異種なの。 夢魔の特性が強く出てそうだから血は吸わないかもしれないけど、代わりに魔力を吸い取るかもしれないの。 どっちだとしても近くに置いておくとのは危険な生き物に変わりはないの」



 ディアの言葉でうつむいてしまったジャスミン。

 多分本当の事なのだろう。


 吸血鬼と夢魔って血や夢を食べる系の悪魔だったっけ。

 あれ、生命力を吸うんだっけ?

 いや、夢魔の方は夢を操ったりするんだっけ?


 で、その変異種になると魔力を吸うようになるのか。

 もし不老不死の私が生命力を吸われたらどうなるんだろう?

 吸い取れない?

 それとも逆に無限に吸い取れる? 


 いや、今生命力は関係ない。

 でも魔力なら吸われても大丈夫なんじゃないかな?

 精霊たちを雇っても回復追いついてるみたいだし。

 血とか言われたらちょっと嫌だけど、魔力なら試してみてもいいかも。



「魔力を吸うのは食事って事なのかな? それとも攻撃的な意味?」



 食事的な意味ならディアの時みたいな感じだからいいけど、攻撃的な意味だった場合、敵対してたらずっと魔力を吸われる恐れがある。 



「私の普段の食事は魔力なの。 だけど魔力を摂取できるならあなたから吸い取る必要はないわ。 その辺で魔物を狩ったっていいし、魔石から吸収するだけでもいいし」



 魔石からも吸収できるんだ。

 つまり、魔物を狩れば私はお肉を食べられて、ジャスミンは魔石から魔力を吸収できるって事だね。

 でも、魔石からジャスミンがどれくらい吸収できるのかわからないけど、圧倒的にお肉が余りそう。



「魔力に味とか美味しいとかあるかわからないけど、魔力量には自信があるし、私の魔力吸ってみる?」



 私が耐えられるならジャスミンの食糧事情は何の問題もなくなる。

 魔物を狩ってきてもいいけど、今後何十年何百年と続けていくと収納の大半がお肉になってしまう。



「これだけ精霊様と契約してるのにまだ魔力に余裕があるの? 余裕がないからスライムに戦わせてたんじゃないの?」

「あの時は移動するのにコウスラに乗ってたのと、降りる前に魔物の増援が来たからそのままコウスラに戦ってもらっただけで、魔力には余裕あるよ。 だから試してみない? 私から魔力が吸えれば、ジャスミンは食事の心配しなくてよくなるし」



 ジャスミンは「正気か?」って表情をしながら近づいてくる。



「そういえば吸い取るってディアの時と同じでいいのかな?」

「私はそれを知らないけど、肌が触れていれば問題ないわ」



 そういってジャスミンは私の手を握る。

 これで食事になるんだろうか?


 そのまましばらく握ったまま待っていると、急にジャスミンの頭がふらついた思ったら、そのまま座り込んだ。



「どうしたの? 大丈夫?」



 口元を抑えて座っているジャスミンの背中をさすりながら聞く。

 なに、そんなに不味かった?



「たぶんママの魔力で魔力酔いになってるの。 自分より魔力の濃い相手から魔力を大量に吸って、自分の魔力が制御できなくなって気分が悪くなってるの」



 食べ過ぎて気持ち悪くなっちゃった感じかな?

 それなら少しおとなしくしてれば治まるだろうか。


 あまり動かすのもかわいそうなのでベッドを出そうと周囲を見る。

 しかし、精霊が増えてからテーブルを大きくしたので、ちょっと大きめに作ってあるベッドを置くと狭くなってしまう。

 なので木の長椅子を作って毛布を数枚重ねて簡易ソファを作ってそこに寝かす。

 今度ちゃんとしたソファを買いに行こうかな。



「これは食事として私は適さないって事なのかな? 吸う量を加減すれば大丈夫だったりする?」



 簡易ソファに寝かせたジャスミンの様子を見ながらディアに聞いてみる。

 食事として適さなかった場合、ジャスミンのために魔力を集めないといけない。

 空腹で人間を襲う様になったらまずいし。



「ママの魔力量が問題ないなら、この変異種の魔力がママの魔力に慣れるまで量を加減しながら少しずつ与えれば問題ないと思うの。 たぶん今回はいつも魔物から吸ってる感覚で勢いよく吸ったせいでこうなってるの」



 ディアがそう言うなら大丈夫なのかな?

 それにしても詳しいね。


 寝込んでいるジャスミンをそのまま休ませ、夕食やお風呂を済ませた後、リーアに今日の報告をする。


 報告後、寝ようとした頃にジャスミンが起き上がった。



「もう大丈夫?」

「・・・・・・まだ少し気持ち悪いわ」

「何か飲む? 水かリンゴの果汁ならあるけど」

「リンゴの果汁なんて贅沢なもの持ってるわね。 私がもらってもいいの?」

「うちでリンゴを育ててるから、作るのはそんなに難しくないかな。 普通のでいいかな? シュワシュワするのとお酒・・・・・・は100歳越えてると言ってもやめておいた方がいいかな」



 会話してる感じ完全に少女だ。

 言葉がしっかりしてるから少女に見えるだけで黙っていれば幼女と言っても違和感がないほど小さい。

 たとえ年齢的にOKでもお酒を飲ませるのは抵抗がある。



「人間は飲酒に年齢制限があるの?」

「子供はアルコールを分解できないとか、成長しにくくなるとか言われてたかな。 聞いただけで詳しくは知らないけど」

「私は特に問題ないと思うけど、人間の国で暮らすなら合わせたほうがいいわよね。 それでシュワシュワってなに?」

「うーん、そのままの意味かな。 口に含むとシュワシュワする飲み物だよ」

「リンゴの果汁も飲みたいけどシュワシュワも気になるわね。 美味しいなら飲みたいわ」

「シュワシュワの炭酸を楽しむものだけど、味はリンゴの果汁に近いから美味しいと思うよ」



 収納から大きい容器を取り出してコップによそって渡す。



「本当にシュワシュワしてるわね、それに冷たいわ」



 ちゃんと冷やしてあるからね、ぬるい炭酸は美味しくない。

 恐る恐る口に含むと、ギュッと目を閉じる。

 炭酸にびっくりしたようだ。

 最初はちびちび口に含んでいたけど最後の方は普通に飲んでいた。



「はぁ・・・・・・最初はびっくりしたけどすごくおいしいわね、これ」

「でしょ? 慣れると暑い時に欲しくなるんだよね。 もっと飲む?」

「飲んでいいなら欲しいわ。 これはあなたが作ったの?」



 コップを渡しながら聞いてくる。



「私の指示で作ったけど、材料のリンゴを育ててるのも加工したのもディアたちかな。 材料があって1週間前後あれば精霊の力なくても作れるみたいだけど」



 詳細の説明を呼んだだけでまだ自力では作っていない。

 だからちゃんとできるかは何とも言えない。



「リンゴを育ててるのよね? これはもしかして商品として売ってるの?」

「自分用に作っただけだから売ってないよ。 うちは精霊の力で作ってるから値段付けが難しいし、商売とかメンドクサイ」

「ふーん、そういうものなのね」



 再度渡した炭酸ジュースを見ながらジャスミンが呟く。


 正直お金には困っていない。

 食材は畑で採れたものだし、お肉は精霊たちが食べないので私一人しか消費しない。

 だから今までギルドでもらったお肉もかなり残っている。

 食材で買っているのはパンや塩くらいだ。


 それに土魔法で作れる物なら、家だろうと小物だろうと必要な物は自作できる。

 買うとしたら自分で作れない縫製品くらいだ。

 だからお金は使わないのに、魔物に遭遇した時の報酬で大金が入ってくる。

 この生活なら数百年数千年引きこもれそうなほどの貯えがすでにある。

 というより、お金を使うような娯楽や嗜好品が無さすぎる。


 最初の選択で億万長者ははずれだったみたいだ。

 世界最強だけあれば今の生活ができたのだから。


 ジャスミンが飲み終わったところで今後の話をする。



「ジャスミンは今後どうしたい?」

「どう、とは?」

「何かしたいことはないのかなって」



 私も精霊たちも、日中はしばらくカーミトの街に行ってしまう。

 ただ整地してるだけだしジャスミンは退屈だと思う。

 


「それを決めるのは私じゃないでしょ。 契約してないとはいえ実質犯罪奴隷のようなものだし、私に意見を言う資格はないわ」



 犯罪奴隷ってどうなるんだろう?

 文字通り犯罪者が奴隷になるって事かな?

 そもそも奴隷がどうなるかを詳しく知らない。

 枷を付けられて木材や石材を運んでるイメージしかないし。



「犯罪奴隷がよくわからないけど、むやみに人間を襲うようなことをしないなら行動を縛るつもりはないよ。 魔物を狩りに行ってもいいし、家でゴロゴロしててもいいし。 何か仕事をしたいなら手伝うし」

「私を監視しなくていいの? 私が問題を起こせばあなたの監督責任になるでしょ」

「問題を起こす気なの?」



 この子は王都を襲おうとしたけど、人間のしてきたことを考えれば仕方ないと思う。

 もちろん悪い事ではあるけど、両親が殺されて自分も殺される前に一矢報いようとしただけだ。

 命を狙われたりしなければもうしないと思う。

 根っからの悪人でもなさそうだし。



「そんなつもりはないけど・・・・・・不安じゃないの? あなたの知らないところで私が何かするかもしれないって。 私は王都を壊滅させようとしたのよ?」

「王都の件は元々人間側が悪いでしょ。 ジャスミンが悪くないとは言わないけど、狙われたりしなければもうしないでしょ?」

「しない、と言うかそんな簡単にできない」



 そういえば50年かけて用意したって言ってたっけ。



「なら問題はないかな。 人間だからと一般人を攻撃して回らないなら街を歩き回ってもいいし。 あ、でも最初の内は一緒に行くよ。 よく行くお店やギルドにも紹介しておいた方が問題も起きにくいだろうし」

「・・・・・・いいの?」



 今にも泣きそうな潤んだ瞳で聞いてくる。


 両親を失いずっと1人で生きてきたんだろう。

 ジャスミンがどれくらい強い存在なのかわからないけど、住んでた森には魔物も住んでただろうし、離れてるとはいえ森の外には人間もいる。

 気の休まる時間が無かったのかもしれない。



「今まで辛い思いをしてきたんだから、これからは楽しく生きてもいいと思うよ」



 ジャスミンの頭を撫でてあげるとジャスミンは泣き出してしまった。

 私は泣き止むまでジャスミンを抱き締めて撫でてあげた。



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