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79 お城で領主教育の相談

 部屋を出て誰かいないかと最初に左を確認した時、右から体当たりされた。



「ゆりあ!」



 この声はデイジーかな。

 急に来るからびっくりした。



「こんばんはデイジー」

「こんばんは! かたいパンおいしかった、ありがとう!」



 お礼を言いながら私の胸元に顔をぐりぐりするデイジー。

 本当に懐かれてるね、餌付けって凄い。



「喜んでもらえたらな良かったよ、それでデイジーは何をしてるの?」

「ゆーしょくまでひまだからおさんぽしてたの」

「そうなんだ、今王様って手が空いてるかってわかる?」

「わからないけど、おしごとのおへやにいるとおもう」

「執務室か。 行くだけ行ってみようか」

「う、うん」



 これから王様に会うと思って緊張しているようだ。

 サクラなら王様を怒らせるようなこともないと思うし、そんな緊張しなくてもいいのに。

 って思ってもこの世界の人には無理なんだろうね。



「だれ?」



 私が執務室に行こうとしたところでデイジーがサクラの方を見る。

 そういえばまだ紹介してなかったね、忘れてた。



「この子は私の友達のサクラだよ」

「さくら?」

「はい、サクラです」



 デイジーに笑顔で答えるサクラ。



「わたしはでいじー」

「デイジーちゃんですね、よろしくお願いします」

「よろしくー」



 ちゃん付けで呼んでるけどお姫様だって知らないみたいだ。

 教えないとまずいよね、王子に見つかったらうるさそうだ。



「サクラ、この子は王様の娘で、王女だよ」

「え・・・・・・え?」



 サクラが固まってしまった。

 お姫様をちゃん付けで呼んでしまったことを考えているんだろうか。

 実際一般人がお姫様をちゃん付で呼んだらどうなるんだろう?

 注意で済まないよね、たぶん。


 と言うかお城にいるんだから普通の子供じゃないことくらいわかると思うんだけど。



「申し訳ございません王女殿下、大変失礼なことを・・・・・・」



 サクラが謝罪しながら勢いよく頭を下げたことにデイジーが驚いてしまっている。

 何だこの状況。



「・・・・・・なに?」

「お姫様と知らずにちゃん付けで呼んだことを謝ってるみたいだよ」



 訳が分からなくて私の方に聞いてきたデイジーに説明してあげる。



「ゆりあのおともだちならいいよ? おこってないよ?」

「あ、ありがとうございます」



 デイジーは驚いてそのまま混乱し、おろおろしている。

 サクラの方もちゃん付けで呼んだ相手が王女だったとわかってあたふたしている。

 とりあえず2人を引き離して落ち着かせよう。


「デイジー、私たちはこの後王様に会いに行くからまた今度ね」

「・・・・・・」



 あれ、デイジーが反応しない。

 私の方は見てるけど口も半開きのままボーっとしてる。

 もしかして混乱してて理解できてない?



「デイジー?」

「っ!? わたしもいくー」



 再起動したデイジーはついてくると言い出した。

 それはサクラの方が落ち着かないと思うから、できればついてこないでほしい。

 でも来るなとも言えないし・・・・・・どうしようか。

 サクラの方を見ると案の定困惑の表情で固まっている。



「もうすぐ夕食じゃないの? 遅れちゃうよ?」

「まだだいじょーぶ」

「うーん・・・・・・サクラ、大丈夫?」

「は、はい。 だ、大丈夫です・・・・・・」



 表情が全然大丈夫じゃない。

 せめて私が間に入ってサクラと少しでも離してあげるか。



「じゃあ行こうかデイジー」



 私は左にサクラがいるので、デイジーに右手を差し出す。

 手をつないでいれば勝手にうろうろしないでしょう。


 私の少しでもサクラから離そう作戦に全く気が付かず、笑顔で手をつなぐデイジー。

 少し心がイタイ。


 結局3人で執務室へ向かうことになってしまったので、心の中でサクラに謝っておく。


 左手のサクラは緊張しているのか動きが硬いし、握る手に力が入っている。

 継続して表情も硬い。

 右手のデイジーは何が楽しいのか腕にしがみついて顔をぐりぐりしている。

 この服の肌触りが気に入ったのかな?

  不思議な肌触りだしその気持ちはわかるけど。


 特に会話の無いまま執務室についた。

 私がノックしようとデイジーとつないでる手を放すと、デイジーはそのまま扉を開けて部屋に入ってしまった。

 相変わらず自由だ。



「ん? デイジーか。 1人で来るなんて珍しいな、どうした?」



 中で王様の声がした。

 居たみたいでよかった。



「ゆりあつれてきた」

「ユリアが来ているのか?」

「サクラといっしょに」

「そうかそうか。 部屋の前にいるのか? 入っていいぞ」



 デイジーと話していた王様が、廊下まで聞こえるように少し大きな声で入室許可をくれる。



「サクラ、このまま入っても大丈夫? 少し落ち着いてからにする?」

「いえ、お待たせするわけにはいきませんので、行きます」



 サクラの顔色が青くなってきている。

 全然大丈夫じゃないね。

 つないだ手も震えていてすごく力が入っている。

 なら逆にさっさと終わらせて早く帰ったほうがサクラにとっていいかな。

 サクラの手を引いて執務室に入って行く。



「王様、さっきぶりです。 サクラと話をして連れてきました」

「遠路はるばる・・・・・・と言うほどでもないか。 よく来たな、座ってくれ」



 王様に言われ、みんなで座る。

 モウイの街自体は遠いから遠路ではあるけど、ゲートで移動してるから連れてくるのに1時間もかかってないと思う。


 私の左にサクラ、正面に王様が座っている。

 デイジーは王様の隣に座るのかと思っていたけど。私の右に座って、また腕にしがみついている。

 どれだけ気に入ったのよ。



「それで、教育はどこでやるんだ? 城でやるのか?」

「お城で受ける方向で話は進んでますが、教育の時間やその他の時間をどうするかの話を聞きたいなと思ってます。 同じ教育者と言ってもお姫様と覚えることも違うでしょうから、一緒にって事はないですよね?」

「そうだな。 基本的には朝食後から昼食までを交代で勉強の時間にしているから、昼食後だとこちらとしては調整しなくていいから助かるな」

「お昼からですか。 サクラ、孤児院で決まった時間にすることとかある?」

「い、いえ、食事の時間以外は朝に畑の水やりをするくらいです。 わたしはユリアちゃんの鳥のお世話がありますけど、それくらいでしょうか」



 挙動不審だったけどちゃんと話せていた。

 意外と大丈夫そう?



「ユリアは鳥を飼っているのか。 そう言えばこの前箱に入ってたのがいたな。 しかし何でその世話をサクラがしているんだ?」

「前にも少し話しましたっけ? 鶏、って言っても通じないんでしたね。 卵が欲しかったのでセーフコカトリスっていう鳥を少し飼ってるんですよ。 サクラにお世話をさせてるいるのは、サクラなら飼育方法を知ってるいかな?っていうのと、カーミトの街を復興した時に、孤児たちの仕事としてやってもらえないかなと思って実験も兼ねてです」

「なるほどな。 という事はカーミトの街でまたあのコカトリスの飼育をするのか?」

「サクラにはまだ話してませんし、私が勝手に考えてるだけですが、畑や鳥の世話などで収入を得ようと思っています。 ずっと私が維持し続けてもいいですが、どうにか私無しでもやって行けるように色々と考えてはいます」



 となりでサクラが「え? え?」とわたわたしてるけど構わず話を続ける。



「まあ、どんな街にするかはサクラがある程度教育を受けてから話し合えばいいだろう。 今言ってもわからんだろうしな」

「そう思ってまだ何も話してないんです。 まずは勉強を頑張って貰おうと思ってますし」

「サクラはモウイの街から通うって事でいいのか? 教育が終わるまで城で預かってもいいが」

「元貴族と言ってもお城に住むのはさすがに落ち着かないでしょうし、ゲートで通ってもらおうと思ってます」



 いや、現役貴族でもお城に住むのは落ち着かないのかな?

 その辺りの基準というか線引きがわからない。



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