78 サクラとお城へ
「ここが私の家だよ、普通の家だからあまり期待しないでね」
お城から移動してくると、どうしても小さく感じる。
これでも一般的な家としては大きいけど、お城と比べちゃうとさすがにね。
ゲート置き場の屋根裏に移動した後、周りをキョロキョロしていたジャスミンは壁を触り始めた。
「どうしたの?」
「これ、ただの木じゃないわよね。 強い魔力を感じるわ」
「この家は私が土魔法で作ったんだよ。 土の魔法っていろいろ作れて便利だよね。 ちょっとした道具なら買わずに作っちゃったほうが楽だし」
私がそう言うと、ジャスミンは変な物を見るような視線をこちらに向ける。
「そんなことしたらすぐ魔力無くなるわよ普通。 しかも木で作るなんて信じられないわ」
「え、土や木や石なら土魔法で作れるんじゃないの?」
確かに土や石は木と違って材料を必要としない。
材料を用意してから作れば魔時間経過でも消えないけど、無くても普通に作れる。
しかし、材料が必要なのを除けば魔力で作るのに違いを感じない。
「土の魔法は名前の通り土を魔力で固めて使うのが基本よ。 石を使えるようになれば上級者と言われるわ。 人間は知らないけど私たちではそうなのよ。 でも木だけは別。 土や石と違って植物はそれぞれが魔力を持ってるから、切った後だろうと魔力を流そうとすれば強い抵抗があるのよ。 だから木を加工するには土や石を加工するのとは文字通り桁違いの魔力が必要なはずよ。 家を魔力で加工した木で作るとしたら、魔族でも何人の魔法使いが必要になるかわからないわ」
普通にできたから土や石と同じだと思っていた。
これもあまり見せない方が良い物なのか、基準がわからない。
とりあえず違う話題に変えよう。
「えっと、私はこの後サクラに会いに行くけど、ジャスミンはどうする? 人間に会うのが嫌なら家にいてもいいけど」
「私も挨拶したほうがいい相手ならついていくわ。 必要ない相手なら家にいたいわね」
「なら挨拶しに行こうか。 これから会うこともあるかもしれないし」
外に出ようと屋根裏から1階に降りてもだれもいなかった。
みんな畑やカーミトの街に居るのかな?
今はサクラに話しをするのが最優先なので、そのまま家を出て孤児院に向かう。
孤児院に着いた私たちはサクラを探す。
まだ夕食の時間には早いはずだ。
裏に回ろうとした時、畑にサクラがいるのが見えたので畑に向かう。
「サクラ、ただいま」
「お帰りなさい? ユリアちゃんどこかに行ってたの?」
「王都に行って話をしてきたよ」
「え、朝はいたよね? あれ、お話ししたの今日だったよね?」
私が王都に行ってきたと言ったら、朝に会ったのが今日だったのかわからなくなって混乱してしまっている。
サクラには悪いけど、あとでゲートの話をするからその時に説明するとして、先に領主教育の話をしないと。
「それについては後で説明するね。 先に話したいことがあるからその話をしていいかな?」
「あ、うん、大丈夫」
サクラは一旦考えるのをやめて、話を聞く体勢をとってくれる。
切り替えが早い。
「まず気になってたと思うから紹介するね。 この子はジャスミン。 私の家で一緒に住むことになった子だよ」
「ジャスミンよ、よろしく」
「サクラです、ユリアちゃんにはいつもお世話になってます」
「今後会うこともあるだろうから仲良くしてあげてね。 ちなみに見た目は小さいけど年齢は私たちより年上みたいだよ」
「えっと、その、人間ではないみたいなので、その可能性はあるかなとは思ってました」
サクラが魔物憑きという言葉を濁していた。
もしかして差別用語だったのかな?
「そうね、私は魔族だから人間とは成長速度が違うわ。 一応115歳よ」
そういえば自分では魔族っていてったね。
それが本来の呼び方で魔物憑きが差別用語?
「大先輩ですね、わたしはまだ10歳です。 これからもよろしくお願いしますね」
「・・・・・・善処するわ」
大丈夫そうかな?
王様の時みたいに睨んでないし。
「それじゃあ本題に入ってもいいかな?」
「あ、うん」
「サクラの教育の話なんだけど、どこで受けたいかの希望はある?」
「それはこの街に教育してくれる人を呼ぶか、わたしが王都へ行くか、という事?」
さすが理解が早い。
「そうだね。 王都に行く場合は、お姫様の教育係にサクラの教育をしてもらうって言ってたよ。 この街に呼ぶ場合その人はこっちに呼べないから、劣る、って言ったら失礼だけど、他の人になるって」
「わ、わたしがお姫様と同じ教育を・・・・・・そんな待遇を受けていいのかな」
お姫様の教育係と聞いて驚愕するサクラ。
いや、担当者が同じだけで、お姫様と同じ教育をするのかまではわからないけど。
「王様としては人員の移動が無い方が良いから、お城に来てくれる方が良いって言ってたよ。 後はサクラの気持ち次第かな。 お城なんて行きたくないっていうならこっちに来てもらうように頼むし」
「国王様が来るように言っていたのなら、わたしが意見を言うことはできないよ・・・・・・」
「サクラの意見に合わせるって言ってたから、好きな方で大丈夫だよ。 サクラがお城で教育を受けない可能性もあったから、その場合に送ってもらう教育係の人も選んでもらってるし。 その場合、孤児院で受けるのはさすがに厳しいから、リーアの家の部屋を借りれないか相談しないといけないけど」
「うぅ・・・・・・何で選択肢がお城に行くかリーアのお屋敷に行くかの2択しかないの・・・・・・」
「どうしても嫌ならお勉強用の家を新しく建てる? この辺りなら許可をもらってるから好きな場所に建てられるし」
権利書云々の話はしないで、孤児院を改築をした時同様許可をもらってると言う事にしておく。
でも教育係を呼ぶ場合は、その人の住む場所なんかのことも考えないといけないよね。
無理強いはできないけど、私としてもお城で教育出来た方が何かとスムーズではある。
「本当にわたしがお城に行っても大丈夫なのかな? 元貴族の娘と言うだけで今は孤児だし・・・・・・」
「王様はサクラの事を知ってたし、サクラなら問題ないって言ってたよ。 教育自体は厳しいのかどうかわからないけど、サクラがいることに文句を言う人はいないと思うよ。 たぶん」
文句を言う人はいないと言った時にあの王子の顔が頭に浮かんだ。
まあもしサクラに何かしたら今度は本当に殴ってやる。
もちろん手加減はするよ。
「・・・・・・わかった、お城に行くよ。 ユリアちゃんがここまでしてくれたのに、私がいつまでもうじうじしているわけにもいかないよね。 追い出されないように頑張る」
「よかった。 教育係の人には話をしてあるみたいだから、明日以降ならいつでも教育を受けられるって言ってたよ」
「あ、明日!? ずいぶんと急なお話なんだね。 院長先生や皆に説明もしないといけないし・・・・・・あ、それよりコカトリスのお世話はどうしよう」
「それはあとで決めるから、まずは私の家に来てもらえる? そんなに時間はかからないと思うから」
「今から? うん、わかった。 院長先生に夕食に遅れるって言ってくるね」
サクラは一度孤児院に戻り、少ししたら戻って来た。
戻ってきたサクラと一緒に私の家に行き、家の中に入る。
「また向こうに行ってくるけどジャスミンも一緒に行く? 案内するだけだから家で休んでてもいいよ」
「なら残らせてもらうわ、いろいろあって疲れたし」
「じゃあ私たちは2人で行ってくるね。 すぐ戻ってくると思うから適当にのんびりしてて」
ジャスミンを居間に残してサクラと2人で屋根裏のゲートに行く。
「屋根裏に扉があるね」
屋根裏に上がったサクラが中央にある2つの扉を見てぽつりとつぶやく。
扉だけ置いてあるのは不思議な光景だよね。
サクラが開いている扉の方に近づいて中を覗くと、慌てて反対側を確認する。
違うところに繋がっているから裏から見ても閉まって見える。
開いているのはリーアの家の方だね。
「な、なにこの扉。 こっちは開いてるのに裏側は開いてない。 扉の先も変な場所に繋がってない?」
「これは地脈の門(ってジャスミンが呼んでた)と言って、離れた場所にある地脈の門と繋げることでその場所へ移動できるものだよ。 この開いてる方はリーアの家に繋がってる扉だね」
「そんな便利なものがあるんだ・・・・・・もしかしてこの扉を使ってお城に行ってたの?」
「そうだよ、お城の部屋を1つ借りて扉を置かせてもらってるの。 だから朝サクラと話をしてから王都に行って、王様と話をしてさっき戻って来たの」
「ユリアちゃんはこんなこともできるんだね、凄すぎるよ」
「これは私の力じゃなくてディアの土の精霊の力だよ」
「土の精霊ってすごいんだね」
畑も思いのままだし私も凄いと思っている。
でも本人はもっと役に立とうとしてるんだよね。
十二分に役に立ってくれてるのに。
「そういうわけでこの扉を使えば毎日でも孤児院からお城に通うことができるよ。 もちろんお城に住み込みも頼めばできると思うけど」
「この扉をわたしが使ってもいいの?」
「もし孤児院から通うならサクラのために専用の扉を作ってあげるよ。 この閉じてる扉は他の所に行ったり帰ってくるのに使ってるからね」
「いいの? こんな高価そうな物をわたしなんかのために・・・・・・」
「私の魔力で作ってるだけだから費用は掛かってないよ、それにサクラのためだから作ってあげるんだよ。 信頼してない人のためには作らないからね」
「ありがとう」
胸の前で手を重ねてすごく嬉しそうな表情をしている。
サクラやリーアのためだったらこれくらいいいでしょ。
「じゃあサクッとお城に行っちゃおうか」
「え、今から!? しかもこの格好で!?」
今まで着ていた孤児院の服は寝間着として使われていて、運動着の方が普段の服装になっている。
だから今は運動着難だけど、お城に来るならドレスとかじゃないとダメだったりするのかな?
でも王様には今孤児だって話はしてあるし、大丈夫だよね?
何か言われたら改善すればいいか、とゲートを王都に繋げて開く。
困惑しているサクラの手を引いてお城の部屋に行く。
「こ、ここがお城? 大きいけど家具が何もないお部屋だね」
「そうだよ。 家具はあっても使わないから撤去してもらったの。 使わないのに置いてあっても意味ないし。 王様が暇そうだったらこのまま軽く挨拶したいんだけど、夕食の時間だったりするかな?」
「どうだろう、孤児院は夕食が早めだからまだだと思うけど」
「ちょっと探してみようか」
「勝手にお城の中を歩いてもいいの?」
「ダメって言われてないからいいんじゃないかな? 勝手に部屋に入ったりしなければ大丈夫でしょ」
「そう、なのかな・・・・・・」
不安そうなサクラと一緒に部屋を出る。




