77 ジャスミンと一緒に王様に報告
私は門番と別れて門から庭を通ってお城に入る。
しかし、部屋のから執務室までは地図でわかるけど、入口からの道のりがわからない・・・・・・
そっちの方に向かって歩けばいいか。
地図は今いる階層が表示される。
行ったことがある部屋には、私が呼んでる部屋名が表示されることもある。
ただ、地図は通った場所だけでなくその周りも表示されるので、どの道を通ったかが地図からだとわかりにくい。
とりあえず、迷路のようなお城の階段と廊下を何回もうろうろして、何とか執務室へたどり着いた。
デイジーやマリーはよく迷わないなこの迷路・・・・・・長く住んでたらなれるものなのかな?
扉をノックして中に人がいるかを確認する。
「だれだ?」
あ、いた。
「ユリアです。 報告に戻ってきました」
「ユリア? 入ってくれ」
中から王様の焦ったような声が聞こえてくる。
大量の魔物が出てきたんだから仕方ないか。
言われた通りジャスミンの手を引いたまま中に入る。
「さあ、座ってくれ。 ん?その子は・・・・・・魔物憑きか?」
席を立ち、ソファの方に移動しようとした王様が立ち止まる。
宰相さんはいないみたいだ。
「魔物憑き? 今回の魔物騒動を起こした子なので連れてきました」
「森へ行っていたのか。 それよりも騒動を起こしたというのはどういうことだ?」
「私も詳しくは知らないので本人に聞くしかないですね」
視線をジャスミンの方に向けると、私とつないだ手に少し力を込めながら話し始める。
「王都を襲わせるために50年間従魔を作り続けてたのを今日解放したの」
「なぜそんなことを?」
「なぜ?」
ジャスミンがもう片方の手で私の腕を掴むとすごい力を込めた。
王様の疑問に対する怒りを抑えているようだ。
「お前たちが今までどれだけの同族を殺してきたと思ってるんだ! 私の両親も殺された、他の同族は散り散りになってどこにいるかわからない! このままだと私もいつ殺されるかわからない! だから最後に一矢報いてやろうと従魔をけしかけようとした! それもユリアのスライムに妨害されて失敗したけど・・・・・・」
種族差別で迫害されてたとは思ってたけど、まさか殺されていたとは・・・・・・
それが続いてるようなら私としても王様に改善してほしいと思う。
もしかしたらこの子の種族が見過ごせないほど危険な可能性も無くはないけど。
「・・・・・・俺からは謝罪することしかできない。 元々は、この国ができてから二代目の王が『魔物憑きは強い力と長い寿命を持ち、人間に害する存在だ』と言って隔離を始めたんだ。 それ以降徐々に拍車がかかり、魔物のように扱われ討伐対象になってしまった。 それから爺様の代、二代前の王だな。 になってから『一方的に討伐される魔物憑きは本当に危険な存在なのか?』という話が出て、結果的に魔物憑きへの隔離や討伐は禁止されたんだ。 しかし時は遅く、魔物憑きと呼ばれていた人々はいなくなってしまった。 本当にすまない」
王様がジャスミンに頭を下げた。
今の王様としては迫害する気はないようだ。
でも実際王都を襲おうとして魔物、従魔?を大量に用意してけしかけてしまい、この事実は変わらない。
危険な存在だと認識されても文句は言えない状況だ。
「経緯なんて知ったことじゃないし、謝られたってお父さんもお母さんも帰ってこない。 私が殺されたらお前の一族を末代まで呪ってやる」
謝る王様を睨みつけるジャスミン。
和解する気はないようだ。
両親を殺されているし、当たり前と言えば当たり前な気もするけど。
私としては何とか穏便に終わってほしいんだけど・・・・・・難しいのかなやっぱり。
「それで、王様は今回の事をどうするんですか? 被害なく解決はしましたけど、王都を襲おうとしたのは事実ですし」
「俺としては今回の事を水に流す代わりに人間と仲良く、というのは難しいかもしれんが、人間と争わないで欲しい」
「今回の事許してくれるって言ってるけどジャスミンはどうしたい?」
「私はユリアに負けたから、ユリアの指示に従う。 仲良くしろと言うなら・・・・・・努力はする」
私の質問に答えていたジャスミンは、途中から視線を外してしまう。
どうしたいかと聞かれても、人間のことをよく知らないわけだからわからないと思う。
だから、今確認しないといけないのは、人間と仲良くしてもいいと思えるかどうかだ。
「ジャスミンの意見を聞きたいな。 命令されて嫌な相手と無理に仲良くしようとしても、心が持たないと思うし」
ジャスミンがこちらを見た後少し考え、再び口を開く。
「・・・・・・人間と仲良くできるかは正直わからない。 そんなこと考えたこともないし。 でも、ユリアみたいな優しそうな人間が多ければ、仲良くできなくはない、と思う」
「ユリアみたいな規格外の人間がそこら中にいたら、世界が終わりそうだな・・・・・・」
なにそれ、私がそんなことすると思われてるの?
というか今言う事?
空気読まなすぎじゃない?
「私が世界を滅ぼすと思われてるんですか?」
「するとは思ってないが、ユリアなら国を相手にしても勝てるだろうしな。 騎士や冒険者が倒せなかったフェンリルを単独討伐するし、精霊もいるし」
王様がとんでもないこと言いだした。
コウスラとディアが味方につくならできそうではあるけど。
もちろんそんなことはしないよ?
「フェンリル・・・・・・フェンリル? フェンリル!? 思い出した! そのスライムの変身した姿、聖獣フェンリルだ!」
ジャスミンはフェンリルの事を知ってたんだ。
「なんのことだ?」
「ユリアのスライムがフェンリルに変身して私の従魔をほとんど倒したのよ!」
「あー、私がフェンリルを倒した後、コウスラがフェンリルに変身できるようになったんですよ。 なぜかは私もわかりませんけど」
「安全、なんだよな?」
「たまに勝手に動きますけど悪いことはしませんよ。 うちの精霊に言われて人間を襲わないように食べ物は果物をあげてますし」
「でもフェンリルって確か火の聖獣よね? なんで土の魔法使ってたの? しかもあんなに強力な魔法を。 その子の元の力?」
「それは私にもわからないかな。 フェンリルが火の聖獣だって事も知らなかったし。 この子が何の魔法が得意かもわからないし」
「自分のペットならちゃんと把握しておきなさいよ・・・・・・」
「いや、ペットだとは思ってないけど。 そもそもまだ生まれたばかりだし。 あ、もしかして属性石のせいかも」
「属性石? ああ、あれね。 え、そのスライムに使ったの!? 魔物に!?」
え、ダメだった?
私もディアにも使えなかったからあげちゃったんだけど・・・・・・
「確かに適性がない者は使えないけど、すごく価値のあるものでしょ? 人間の間で高値で売れるんじゃないの?」
「お金には困ってないから売るくらいなら家族のために使ってあげたいじゃない? だから2個ともあげちゃったよ」
「世界に1つずつしかないと言われる物を2つも・・・・・・そのスライムは幸せ者ね、そんなに大切にされて。 同じ魔物と言われて虐げられていた私とは大違いだわ」
驚いて大声を出していたジャスミンが、悲しそうな表情でうつむいてしまった。
「じゃあジャスミンもうちに住む? ジャスミンが人間と争う気が無いなら私が守ってあげるよ? 一緒に住んでるのは精霊とスライムだし、部屋も空いてるし」
「そんなに簡単に決めていいの? 私は人間じゃないのに」
「私以外精霊とスライムしかいないんだから種族なんて気にしないよ」
「でも私は犯罪者だしユリアに迷惑がかかるわ」
「ジャスミンがこれ以上人間に危害を加えないなら水に流すって言ってくれたし、犯罪者にはならないんじゃない? このこと知ってるのは私たちだけだし。 ですよね?」
ジャスミンと話をした後、王様に確認する。
「そうだな、ユリアの所にいるなら森に住んでるより俺としても安心だ。 ユリアの目の届くところ住む、今後人や街を襲わない、この2つを守ってくれるなら今回の事は口外せず墓まで持っていこう」
「・・・・・・わかったわ。 1人で森にいるよりも楽しそうだし、ユリアの所に行くわ」
王様の出す条件に納得して私の所に来るという。
ただ、私からも条件を出さないといけない。
「私からも1つ良いですか?」
「なんだ?」
「人を襲わないという条件を少し変えてもらえませんか? そのままだとジャスミンが一方的に襲われてしまいます。 なので反撃は許可してほしいんです。 もちろん殺すようなことは禁止ですが」
王都を襲おうとしたから「人と争うな」というのはわかる。
でもそれだと悪意ある人に絡まれたときに自分を守れない。
「うーん、それもそうか。 わかった、それくらいならいいだろう。 だがあまり大怪我をさせないでくれよ?」
「生きていれば私が治療できますので、この子が誰かを怪我させた場合はちゃんと治しますよ」
「ユリアに迷惑かけないようにちゃんと手加減するわ」
「冒険者とか盗賊だったら遠慮なくボコっていいよ」
「おい、冒険者はダメだろ!」
私の言葉に王様が驚きの声をあげる。
「この子を魔物として討伐するのは禁止されてるんですよね? なら普通に小さな女の子を襲う様ならその冒険者が悪いと思います。 私はこの子の自衛の権利を固守しますよ」
「・・・・・・はぁ。 わかった、咎めはしないが本当にやりすぎないでくれよ?」
「それは相手次第ですね。 じゃあ報告も終わりましたし私たちは帰ります。 早くサクラに話してあげないと」
「ああ、そうだな。 報酬は次来た時でもいいか? この後冒険者ギルドからの報告を待たないといけないからな」
「急いでないので大丈夫ですよ。 それよりも他の冒険者の人たちの方を先に考えてあげてほしいですね。 参加した冒険者も報酬無しは可哀そうですし」
「結構な数がいたんだろう? それなりに稼げたんじゃないか?」
「この子が作った従魔は死体が残らないみたいなんですよ。 なので素材がないんです」
「そうなのか?」
「魔法で形だけまねして作った物だから、普通の魔物とは違うわ。 倒されても体を形成していた魔力が霧散するだけよ」
50年かけて用意したって言ってたけど、魔力で作ってたのか。
「そういう事なので冒険者もギルドも収入がないんです」
「今までに報告のあった消える魔物とはそういう事だったのか。 しかしそれはまた厄介な状況だな・・・・・・王都を守ったという事で報酬を出せばいいか? ユリアのおかげで騎士を出撃させずに済んだしな」
「私からも慰謝料的なものを出したほうがいいですか?」
私が引き取ったと言う事は、私が保護者と言う事になる。
つまりこの子が何かした場合は私が責任を取らないといけない。
「いや、大丈夫だ。 ユリアはその子を引き取ってくれたからな。 それだけでも俺としては十分だ。 その子をこのまま解放して冒険者ともめたりしたら困るからな」
「私の所にいても冒険者と揉める可能性はありますけどね。 冒険者相手なら私は止めませんし。 まあ外に行くときはしばらく私が一緒に行動するつもりなので、大丈夫だとは思いますけど」
「あ、ああ・・・・・・」
微妙な表情の王様を残して私たちは執務室を出る。
「じゃあ帰ろうか」
私はジャスミンの手を引いて部屋に向かう。
「ユリアの家はどこにあるの?」
「モウイの街だよ」
「何処よそれ。 王都じゃないの?」
「お城の部屋を1つ借りてるけど住んではいないかな」
「人間のことには詳しくないけど、お城の部屋って借りれるものなの?」
「王都に住むための場所を探してたら部屋を使っていいって言われたよ?」
「あなた何者よ・・・・・・」
ジャスミンは疑いの目で私の事を見てくる。
そんな目で見られても私はただの冒険者で、貸してくれるというから借りただけだ。
それ以降部屋まで会話もなく、疑いの目で見られたまま到着した。
そのまま扉を開けて中に入る。
「ここがユリアの部屋? 何もないのね、何を取りに来たの?」
「ここはゲートを置くために借りただけだからね。 家具なんかは撤去してもらったの」
「ゲート? え、あれって・・・・・・まさか地脈の門?」
「知ってるの?」
「土の精霊様の中でも強い精霊様しか使えない超希少スキルじゃない、何でそんな物がここに・・・・・・」
「私がここに置いたからね、これを通って帰るんだよ」
「・・・・・・は?」
この反応を見るに土の精霊と契約すればだれでも使えるようになるわけじゃないみたいだね。
他の人に教えたのはまずかった?
でも教えないと使いにくいし・・・・・・必要最低限だけ教えていけばいいかな?
ゲートを開けて家に繋ぎ、そのまま家のゲート置き場に移動する。




