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75 王都西の森騒動

「それじゃあ用事も終わったので私は帰りますね」

「あ、ちょっと待ってくれ。 ここに来て思い出したが、肉を渡すのを忘れていた」



 王様はメイドさんを呼びに行って戻って来た宰相さんに、手で持ってこいと合図すると、冷蔵倉庫らしき場所に入って行き、少しすると戻って来た。

 戻って来た宰相さんはお肉は持っておらず、いくつか腕輪を持ってきた。



「これは収納の魔法が付与された魔石がついている腕輪だ。 この腕輪の中に肉が入っている。 一部と言っていたが元が大きかったからな、多めに保管しようと腕輪に入れてある」



 前に道具屋で見た板の腕輪版って感じかな?



「その腕輪が何で冷蔵倉庫に?」

「なぜってそのままその辺に置いていたら肉が腐ってしまうだろう。 だから冷やしておいたんだ」



 腕輪を冷やすと中身も冷えるのか。

 確かに入れたものがぬるくなったりするなら冷えるのも当たり前か。



「ありがとうございます。 自分の収納に入れますのでどこかに出してもらえますか?」



 私の言葉を聞いて宰相さんが王様を見る。

 王様がそれに頷くと調理台にお肉をどんどん出していく。

 私をそれを片っ端から収納していく。



「ありがとうございます。 いつまでもここにいると邪魔になりますし、もう出ましょうか」

「そうだな、俺もそろそろ仕事に戻らないといけないし」



 私は料理長さんに挨拶して厨房を出ていく。


 さて、私はサクラの所に行かないといけないね。

 明日以降の予定を決めないといけないし。



「じゃあ私は帰りますね。 サクラに話しをしないとなので」

「わかった。 何かあったらまた来てくれ、よほど緊急の仕事中でなければ対応しよう」



 私と王様が話していると、遠くから騎士が走ってくるのに気が付いた。

 4人でその騎士を見ていると、王様の前で止まり跪く。



「陛下! 西の森の魔物が動き出しました! 今冒険者たちが緊急依頼で向かっているところです」

「ついに来たか、思っていたよりも早いな・・・・・・」



 私がそのやり取りを見ていると、王様が私の視線に気づいて説明してくれる。



「王都の西に少し行った所に森があるんだが、少し前からその森で魔物の増え方が異常に多いと報告を受けていてな。 討伐報酬を上げたり騎士も向かわせたりしてなるべく間引きをしているんだが、一向に減らないんだ。 それどころかどんどん増えて行って、いつか森からあふれるのではないかと思っていたのだが・・・・・・」



 その魔物が溢れたのが今日って事か。

 冒険者だけで大丈夫なのかな?

 今までの間引きが間に合ってなかったのなら倒しきれないんじゃない?



「冒険者だけで大丈夫なんですか?」

「いや、騎士も最低限残して討伐に向かわせる。 おい、第一騎士たちを城と街の警備に回して第二以降を戦闘準備させて王都の外に集合させろ」

「ハッ!」



 王様の指示を受け、騎士が廊下を走って戻る。


 私はどうしようかな。

 ギルドで情報聞いてみるかこのまま帰るか・・・・・・急いで帰る必要もないしギルドに行こうかな。



「じゃあ私は行きますね」

「あ、ああ」



 何か言いたそうな王様だけど、見捨てて帰ると思われてるのかな?

 まあギルドの情報次第では帰るつもりだけど。

 王都の人たちで何とかできそうなら私がわざわざ行かなくてもいいし。



 私は走ってお城を出て門へ行くと、門番に止められる。



「君はいつ入ったんだ? 今日通った者にはいなかったと思うが」

「来たのは朝ですよ。 ずっと王様と一緒にいたので、王様に聞いてもらえれば証明してくれると思います」

「陛下と一緒に? 身分証を見せてもらってもいいか?」



 私はギルドカードを見せる。

 なんかこの人緊張感ないね。

 もしかしてまだ情報来てないの?

 いや、さっきの騎士も門を通って来たんだろうから知らないわけないよね?



「・・・・・・これは! 失礼いたしました、どうぞお通りください」



 急に態度を変えてカードを返してきた。

 ランクBだから?

 でも今までこんな反応されたことなかったと思うけど?


 まあいいや、通してくれるならギルドに行こう。


 あれ、王都のギルドってどこだっけ?

 そういえば私、この王都の街って食材屋くらいしか行ったことないじゃん・・・・・・騎士の人に聞くか。



「すみません、冒険者ギルドってどこにあります?」

「え、冒険者ですよね?」

「王都へは王様に用があってきてるだけなので、ギルドには行ったことないんですよ。 王都に来たのも最近ですし」

「なるほど、そうでしたか。 ギルドはここから商店通りをまっすぐ進み、大きな十字路を左に曲がったところにあります」



 そう言って門を出た先の方を指さして押してくれた。



「ありがとうございます」



 お礼を言って私は商店通りを軽く走っていく。

 魔物の話は来てないのか、いつも通りな雰囲気だ。

 王都のいつもを知らないけど、前に来たとき同様慌てた様子もないし多分知らないんだろう。


 しばらく走り、大きな十字路を左に曲がってさらに走ると、大きな建物があった。

 モウイの街にあるギルドを大きくした感じの建物だったのですぐわかった。


 ギルドの中に入ると、受付嬢しかいなかった。

 みんな討伐に行ったみたいだ。

 私は書類を見ている受付嬢に話しかけてみる。



「こんにちは」

「こんにちは・・・・・・ご依頼でしょうか?」



 受付嬢は挨拶の後、私を見ると依頼に来た人だと思ったらしい。

 冒険者に見えないのは自分でもわかっている。

 さんざん言われてきたし。

 とりあえず魔物の情報を聞いてみよう。



「魔物の情報を聞きに来たんですけど」

「魔物の情報ですか? 魔物の情報でしたらあちらの棚にある本に載っていますよ」



 「一般魔物の情報じゃないよ、西の森のだよ!」と思ったけど、一般人らしき女の子が魔物の情報を聞きたいと言っても、西の森の事だとは思わないよね。



「今来てるっていう西の森の魔物ですよ。 何か情報があれば聞きたいんですけど」

「まだその情報は一般に公開してないはずですが・・・・・・どこでそれを?」

「お城で騎士の人に聞きました。 私も冒険者なので状況を確認しようと思って来ました」



 ギルドカードを出しながら説明する。

 これを見せないとどうせ冒険者に見えないというやり取りが始まる。

 それはもういいよ。



「ランクB!? ・・・・・・ハーフエルフの方ですか?」

「人間だし見た目通り13歳ですよ」

「13歳・・・・・・ですか」



 小さくて悪かったね、どうせ10歳のサクラと大差ないですよ。



「そんなことはどうでもいいので、魔物の情報をもらえますか?」

「あ、はい。 見張りの騎士様の話では、西の森から約300ほどのウルフの群れが溢れて、王都の方に向かっているとのことです。 続報は今のところありません」

「森にいるのはウルフだけだったんですか?」



 ウルフだけなら冒険者みんなで何とかなるんじゃない?

 私の出番はなさそうだ。



「いえ、ゴブリンやオークもいます」

「今まで魔物はウルフだけが増えてたんですか?」

「冒険者の調査報告では全体的に増えているとのことです」



 それってまずくない?

 今は足の速いウルフが先陣切って出てきただけって事だよね?



「うーん・・・・・・」

「どうかしましたか?」

「まずい状況かなって」

「え?」

「全体的に増えてたのにウルフだけ出てくるとは思えません。 足の速いウルフが先に出てきて、それを見張りが見て報告したんだと思います。 つまりこれから二足歩行で足の遅い魔物も溢れてくる可能性があるってことですよね?」



 私の考えを聞いたギルド嬢が青ざめる。

 魔物たちが軍隊のように部隊ごとに進軍して来るかはわからないけど、勢いに乗って他のも出てるく可能性はあるよね?


 これは早めに様子を見に行った方がいいかな。



「じゃあ私は失礼しますね」

「ちょっと待ってください! 王都を見捨てていくんですか!?」



 これから行こうとしてるのになんでそうなる。



「ランクBの冒険者がいれば何とかなるかもしれません! どうか手伝ってください!」

「だから今行こうとしてたんじゃないですか」

「え、私はてっきり依頼を受けずに王都を見捨てるのかと」

「何とかなりそうなら帰るつもりでしたけど、不安材料もあるので確認してきます。 取り越し苦労なら王都の冒険者に任せて帰りますけど」

「よろしくお願いします!」



 騒がしい受付嬢と別れてギルドを出ると、王都の門まで走っていく。

 門番に話を聞いてみたけど、新しい情報は来てないみたいだ。

 外に出ようとすると、魔物が近くに来たら門を閉めるから気を付けろと言われた。


 いざとなったら、簡易ゲートを作れば家にもお城にも戻れるし大丈夫だ。


 王都の外に出て西の方を見てみるけど森なんて見えない。

 少し西に行った所って言ってなかったっけ?

 結構距離がある?


 ここでコウスラを変身させると門番に見られて騒ぎになりそうなので、見えない辺りまで走っていく。

 騒がれて説明するの面倒だし。

 西に走った先にある丘にのぼった時、遠くに森の上部らしき物が見えた。



「近くないじゃん、めっちゃ遠いよ! コウスラ、移動お願いしてもいい?」



 私がそう言うと、頭上で少し動いたあとフェンリル状態のコウスラが飛び降りた。

 そのまま少し大きくなり、しゃがんで乗りやすくしてくれる。



「ありがとう。 向こうの森に魔物がいるみたいだから、そっちに向かって」



 乗った後コウスラに方向を指示すると頷いて走り始める。

 やっぱり速いねこの子。


 2つ目の丘を越えたところで、冒険者が戦っているのが見えた。

 コウスラに止まるように指示を出し、少し様子を見ることにした。



「冒険者の数も結構いるみたいだけど、ウルフの数が尋常じゃないね。 300どころじゃなくない? しかも私の知ってるウルフと色も違う。 遠くだから分かり難いけど大きさも違うっぽい? ちょっと小さい気がする。 遠いけど詳細って見れるかな?」



 スキルを使って調べてみると名前はコモンウルフと言うらしい。

 やっぱり知ってたのと違う。



「まだウルフ以外の魔物がいないけどどうだろう。 冒険者だけで行けるかな? 囲まれてはいるけどまだ冒険者の方に被害は出てないみたいだし」



 ウルフの死体がないのでまだ倒せてないのかと思っていたら、冒険者の倒したウルフが消えた。



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