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73 王子と決闘

 王様が倉庫と呼ばれた部屋の鍵を開けると、みんなで中に入って行く。


 倉庫の中には絵画や高価そうな調度品が棚に所狭しと並べられていた。

 あれだ、ホームセンターみたいな感じ。


 その棚の間の通路を奥まで進むと、別の部屋への扉がある。

 まだ他に部屋があるのか、凄く広いね。


 扉の先には木箱に詰め込まれた金貨の山が府複数あった。

 金庫みたいな場所なのかな?


 部屋を見渡していると、端には金貨より一回りくらい大きい銀色の硬貨?のような物が入った少し小さい木箱も置かれている。

 更に何かの毛皮のような物が畳んだ状態で置かれていた。


 王様は宰相さんに指示を出して金貨と銀色の硬貨を集めていく。

 あれもお金なの?

 銀貨とは大きさが違うから、銀貨ではないと思うけど。


 集め終わった宰相さんが、金貨部屋の入り口近くにある机に数えながらお金を積んでいく。

 なるほど、数えやすいように同じ高さで並べてるのか。

 もくもくと積んでいたお金が全部乗せ終わると、王様に一礼して下がっていく。



「さあ、これが残りの金額だ」

「あの銀色のもお金なんですか? 見たことないですね」

「あれは金貨100枚分の魔銀貨だ。 主に大商人や国同士で金銭のやり取りをする時に使うものだからな、一般の買い物で出回る事なんてないだろう」



 金貨のさらに上のお金があったんだ。

 金貨100枚分とか私に使う事があるだろうか?



「じゃあ収納しちゃいますね」



 試しに魔銀貨を収納して詳細を確認すると、材質はミスリルのようだ。

 魔銀ってミスリルの事だったんだね。

 ちゃんと金貨100枚の価値があるとも書いてあったので、偽物ではないみたい。


 まあ王様が金庫のような場所に偽物のお金を保管することないよね。

 他の人が来ないわけだし、ここに保管する意味がない。


 でもこれ、どこかで崩さないとお店で買い物できないよね?



「ちなみにミスリル自体はどれくらいの価値があるんですか? ミスリルの武器が欲しいなって思ってたんですよね」



 今回貰った分だけだと剣とかは無理そうだけど、小さい物なら作れないかな?



「鋳つぶす気か? 武器を作るほどのミスリルとなると、硬貨の方がはるかに高いから鋳つぶすと大損だぞ」

「残念です。 ミスリルで武器を作ってみたかったんですけど」



 今はお金には困ってないので、使ってしまうのは別にいい。

 でも今度孤児院にお金を使う事を考えると、あまり無駄にしない方がいいか。



「希少な鉱石だからなかなか産出されんしな。 今は王都にもあるかどうか」

「まあ武器が無ければ素手で戦うので別にいいんですけどね。 中途半端に壊れる武器使うなら素手の方がいいですし」



 そうだよね、フェンリルだって倒せたんだし、壊れるような武器で戦うより素手で戦えばいい。



「そこは魔法で戦うと言ったらどうだ。 魔法使いだよな?」

「魔法って加減が難しいんですよね。 魔物の素材もダメになりやすいですし」



 今の所、魔物には氷系で、人には雷系が使い勝手がいい。

 氷魔法なら素材がだめになりにくいし、電撃で痺れさせれば無力化もしやすい。



「感覚が一般人と違うようだな・・・・・・普通は倒せるかどうかの心配をすると思うんだがな」

「確かにフェンリルと戦った時は魔法が効かなくてちょっと焦りましたね。 物理は普通に効いたので問題ありませんでしたけど」

「・・・・・・そうか」



 王様は呆れた表情で私を見ている。

 なぜそんな顔で見るのか。

 あの時は魔法が効かなくて倒せないんじゃないかと本気で思ったくらいだ。

 物理が効いてくれて本当によかった。



「父上」



 そんな中、急に王子が口を開いた。

 なんだろう?



「どうした?」

「僕とこの冒険者の決闘を許可して頂きたい。 本当に強いのか今でも信じられません」

「いや、しかしな・・・・・・」



 王様は困った表情でこっちを見る。

 私に決めろって事?

 ボコっていいならやってもいいけど、王子をケガさせたらまずいよね?

 そうなると攻撃できないんだけど?



「めんどくさいですね、いろいろと」

「なんだ、逃げるのか!」



 なんでだろう、この王子は本当に腹が立つ。

 ここまで我慢してきたけど、ずっと睨んで来るしいちいち喧嘩腰だし。



「はぁ・・・・・・挑んできたのがその辺のごろつきならボコって終わりだけど、王子だとそうもいかないでしょ。 そっちは何も考えずに全力で挑んで来るだろうけど、こっちは王様の手前全力で相手なんかできない。 その状況で何の力を見せろと? もし戦いの許可が出たとして、私はろくに戦えない王子相手にどれだけ手加減してあげればいいの? そっちが疲れるまで攻撃受けてあげればいいの?」

「僕だって戦闘訓練はしてるんだ、バカにするな!」



 王子が私の言葉に怒り出して殴りかかってきたので、私は身体強化も使わずそのまま受ける。

 拳が私の左頬に当たるが当然痛くもなんともない、逆に王子の方が少し顔を歪めていた。



「どうしたの、これでも冒険者なんだから手加減はいらないよ? この程度なら身体強化するまでもない」

「なめるな!」



 怒りに任せて両手で殴ってくるが、初撃よりも雑になっていて見るに堪えない駄々っ子パンチになっていく。



「なめるな? 君こそ冒険者をなめてるの? そんな貧弱な攻撃で魔物が倒せると思ってるの?」

「うるさい! だまれ!」



 君のがうるさいよ。

 君が黙っててくれればこんなにイライラする事も無かったのに。


 このまま疲れるまで殴られ続けるのも嫌だし軽く反撃するか。

 殴りかかってきた左腕をかわして左手で胸ぐらをつかみ持ち上げる。



「うぐっ、はな、せ」

「いい加減鬱陶しいよ。 フェンリルを仕留めた攻撃、自分で受けてみる? 身体強化」

「お、おい、ユリア!?」



 私は持ち上げた王子を壁に押し付けると右腕を構える。



「君の望み通り私の力を見せてあげるよ」

「ヒィッ!」



 そのまま右腕を振りぬくと身体強化したのもあって爆発するような音と共に盛大に壁が壊れる。

 王子? 当ててないよ。

 こんなのでもデイジーやマリーの家族だもん。

 私は王子をその場に降ろして話しかける。



「私の力、少しはわかってくれた?」

「・・・・・・」



 壁と私を交互に見て尻餅ついたまま震えながら後ずさっていく。



「あ、壁直しちゃいますね」



 放心状態の3人を横目に壁を直し始める。

 思ったより広い範囲で壊れちゃった・・・・・・



「まずはヒビの入ってる端の方から直していって・・・・・・崩れてる壁は奥から埋めていって・・・・・・よし、見た目の割には早く修理できたかな」



 少し触って大丈夫か確認した後、王様の方を見る。



「修理終わりました。 ・・・・・・大丈夫ですか?」



 王様の方を見ると座り込んでいた。



「あ、ああ、ちょっと腰が抜けてな。 本当にアルフが殺されてしまうかと思った」

「デイジーやマリーの家族ですからそこまでしませんよ。 私のことを信じられずに疑うのはいいですけど、いちいち突っかかってくるのが鬱陶しかったので少し脅かしただけです」

「これで少しなのか? ずいぶん派手に壊していたが・・・・・・」

「壊すつもりはなかったんですけどね。 私の力が見たいというので壁を叩いたら壊れちゃいました」



 多少ひびが入ったり、割れるかとは思ってたけど、ここまで壊れるとは思ってなかった。



「・・・・・・陛下。 城の一部破壊、殿下への暴行。 何の処罰もなく済ますおつもりですか?」



 王様は何とも思ってないみたいだけど、宰相さんが私を睨んでいる。

 今度はこの人が敵に回るの?



「壁はすぐに直したから問題なかろう。 アルフは冒険者を見下しておったからな、ちょうどいい薬だ。 冒険者がいなくなると国としても困るというのを理解していない」

「しかし、このようないつ爆発するかわからない娘を城に出入りさせるのは危険ではありませんか?」

「今回はアルフが仕掛けた決闘だろう。 ユリアはそれに付き合っただけだ」

「ですが・・・・・・殿下に何か有ってからでは遅いのですよ?」

「確かに少し過剰だったとは思うが、これでアルフの考えが変わってくれればとも思う。 壁も直っているし怪我人もおらん、今日の所はそれで良しとしよう」

「・・・・・・畏まりました」



 宰相さんは王様の言葉で引き下がる。

 実際決闘の許可が出る前にもめた気がするけど、特に御咎めは無しって事かな?

 でも、怪我させるつもりはなかったとはいえ、王子相手にやりすぎてしまったかもしれない。



「最後にあの毛皮を回収しておいてくれ。 フェンリルの毛皮だ」



 そう言って王様は畳んで積んであった毛皮を指さす。

 あれフェンリルのだったんだ。

 言われた通り毛皮に近づいて手に取ってみる。

 手に取ってみると、切り分けていないようですごく大きいままだった。

 このままだと家に飾れないな・・・・・・と思いつつもそなまま収納する。



 「よし、ここでの用も済んだし部屋を出るぞ」



 私が収納したのを確認した王様が扉に向かう。

 王様の言葉でみんな金庫部屋から出た後、通って来た通路を無言で歩き、部屋を出ていく。



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