72 デイジーに再度飴を作ってあげる
「この絵は何ですか? 今までなかったと思うんですけど。 どこかで見たような気もするんですよね・・・・・・」
ギルドカードの絵を眺めながら王様に聞いてみる。
「それはこの国の紋章だ、城の中や旗で見たんだろう。 城に入るのに通行証になるし、城から出たあと戻ってくるのに必要だと思ってな」
「父上!?」
今まで黙ってずっと睨んでいた王子が王様の話に驚愕していた。
なに、どうしたの。
「ギルドカードで入れるならそのままでもよかった気はしますけど?」
「まあ俺の気持ちだ、あって困るものでもないしいいだろう」
まあ通行証ならあってもいいか。
私を知らない人が相手でも入りやすくなるなら、説明しなくていいから楽だし。
「よし、これで話し合いは終わりだな。 ユリア、倉庫に行くぞ」
「倉庫、ですか?」
「残りの金を渡さなければいけないからな。 あーそれと魔石なんだがな、あの魔物には魔石が無かったんだ。 代わりに属性石が出てきた」
王様がそういうと、宰相さんは再度机に行き、登録の水晶板を元の場所に戻して代わりに赤い手のひらサイズの石を持ってくる。
前に見た茶色のが土属性だったからあれは火属性って事かな?
「一応貴重品として値付けはせず持ってきたがどうする? 必要なければこれも売りに出すが」
「いえ、それは欲しいですね」
またコウスラに使ってあげればいいかな。
「わかった、持っていってくれ」
「ありがとうございます」
あげる前に一応確認しておく。
〇五常石(仁)
選ばれし者のみ使用することができ、強い火の力を得られる。
うん、予想通りだね。 コウスラにあげちゃおう。
「はい、これもコウスラにあげるね」
私は頭上にいるコウスラに赤い石を近づけると、ゆっくり伸びてきて石を取り込むと元に戻る。
本当におとなしいねこの子。
王子がすごく驚いていたけど、そういえば王子は初めて見るんだよね。
もしかして帽子だと思ってたのかな?
どう見たら帽子に見えるんだろうか、いっそ本当に帽子に変身してもらう?
できるかわからないけど。
「お、おい。 それは貴重の物なんだぞ? 魔物に使うのか?」
「私もディアも使えないのでこの子にあげてるんです。 売るよりは家族に使ってあげたいですし」
「そ、そうか。 ユリアがいいのなら問題はないが・・・・・・では倉庫へ行くか」
「わかりました」
私たちが立ち上がって移動しようとした時、扉が勢いよく開いた。
あ、なんか既視感が。
「ゆりあー!」
扉を勢い良く開けて満面の笑みで私の所へ走ってきたのはデイジーだった。
初めてデイジーに会った時も謁見の間の扉を勢いよく開けてたね。
「デイジー、今日も元気そうだね」
「げんきー」
元気と言いながら両手を広げて抱き着いて来る。
なんか前回より懐かれてない?
「元気かー、それは良かった。 それでデイジーはどうしてここに?」
デイジーの頭を撫でながら聞いてみる。
「このまえのアメがまたほしーの」
この前の飴ってべっこう飴か。
あれ、すぐにはお城に来ないだろうと思ってかなり多めに作ってあげたはずだけど・・・・・・全部食べちゃったの?
「でーいーじー? ちょっとこっち向いてくれるかな?」
私の胸に顔を埋めているデイジーをこちらに向かせる。
こっちに向いたデイジーの頬を両手の人差し指で少し押してタコさん口にする。
「うー♪」
デイジーは楽しそうだけどこれからお説教だよ。
「デイジー、あの飴はいっぱい作ってあげたよね? 一日でいっぱい食べないようにとも言ったよね? 何でもうないのかな?」
今まで私のほっぺうにうに攻撃でキャッキャしてたデイジーの表情が「あっ」という表情になる。
私はしゃがんでデイジーの肩に両手を置き、視線を合わせる。
「あの飴は砂糖で作ったって言ったの覚えてるかな?」
「うん・・・・・・」
「砂糖はね、美味しいけどいっぱい食べると病気になりやすくなっちゃうの」
「うん・・・・・・」
「だから食べた後にまた食べたいと思ってもちゃんと我慢しようね」
「うん・・・・・・」
「次はちゃんと守れるかな?」
「まもる」
「よし、いい子だ。 次はちゃんと少しずつ食べるんだよ? もしお姉ちゃんがいっぱい食べようとしたら注意してあげてね。 ダメッ!て」
「うん」
「王様、ちょっと時間ください。 あ、ここで作っても大丈夫ですか? ダメそうなら移動しますけど」
「かまわんぞ」
火を使うのにあっさり許可が下りた。
まあいいと言うならこのまま作っちゃおう。
「ありがとうございます。 デイジー、ちょっと待ってね」
「うん、まつ」
少し落ち込んでるデイジーの頭を撫でて立ち上がり、調理台と材料と道具を出してササっと作る。
王様は何度も見てるし、ルドルフと呼ばれてたおじさんも私が初めてお城に来た謁見の時に収納スキルを見てるので、特に驚いていなかった。
しかしいろいろ取り出したのを見て王子はまたすごく驚いていた。
型に入れて冷やした飴を前と同じ箱を作り、べっこう飴をいれて渡してあげる。
「はい、お待たせ」
「アメだー! ゆりあ、ありがとー」
飴を渡したらまた満面の笑顔で抱き着いてきた。
やっぱり笑顔のデイジーは可愛いね。
抱き着いて胸元に顔をぐりぐりしてくるデイジーの頭をしばらく撫でる。
「デイジー、これからユリアと行く所があるからそろそろいいか?」
いつまでも離れないデイジーに王様が離れるように言う。
「うん、わかった。 ゆりあ、またね!」
王様に言われて一度離れたデイジーが、去り際に再度全力で抱き着いてきてすぐ離れ、部屋から出ていく。
「はぁ。 本当にユリアになついているな・・・・・・」
「会うたびに懐き度が上がってる気がしますね」
「あんなに食べ物で笑顔になるデイジーは初めて見た・・・・・・」
私と王様が話をしていると、驚いた表情のままデイジーを見送っていた王子が小さい声で呟いていた。
そういえば前までは食べ物を美味しいって言わない子だったんだっけ。
私は逆にそのデイジーを見たらビックリするかもしれない。
デイジーが出て行ったので、出してた物を収納して王様の案内で倉庫に向かう。
倉庫に向かっている時、王子が睨みながら話しかけてきた。
「さっきの食べ物は危険な物なのか? 病気になるとか言っていたが」
「砂糖の事ですか? 砂糖は食べすぎると太ります。 太るといろいろな病気を併発する可能性があるので危険なんですよ」
「そんなものをデイジーに食べさせていたのか!」
急に怒り出した、沸点低すぎない?
食べ過ぎたらなんだから少量なら大丈夫だよ。
「食べすぎれば危険なものはいくらでもありますよ。 みんな食べてるお肉だって塩だって食べ過ぎれば体に悪いです。 砂糖の糖分は体に必要な栄養ですのでまったく食べないのも体に悪いんですよ。 ただ砂糖は食べすぎと言われる量がお肉などよりかなり少ないのと、塩などと違ってふんだんに使っても食べられてしまうので、すぐに食べすぎの領域になってしまうだけです」
お肉と同量の砂糖の塊とか考えただけで背筋が凍る。
でも1回くらい激甘お菓子作ってみたいかも。
「話を聞くと心配になってくるな。 さっきもアメを追加で渡していたが、デイジーは大丈夫なのか?」
私の話を聞いて王様が心配し始める。
まあ娘が病気になったら嫌だもんね。
「あのくらいなら大丈夫ですよ。 というか、デイジーくらいの年なら、食事の時間にちゃんと食べてるのであれば、お菓子を多少食べすぎても問題ないですよ。 危ないのは甘いものが癖になってしまう事です」
「癖?」
「甘いものをいっぱい食べるのが習慣になってしまうと、どんどん甘いものが欲しくなって甘い物ばかり食べるようになり、普段の食事量が減ってしまいます。 砂糖の食べすぎだけでも体調を崩しやすくなるのに、食事量が減ったらさらに体調を崩しやすくなる悪循環に陥ります。 そのまま甘やかして大きくなっても食べさせ続けると、今度は病気になる確率がどんどん上がっていきます。 なので今の内から食べすぎないようにある程度我慢させないといけないんです。 そしてちゃんと普通の食事はちゃんと食べさせることですね」
「何か病気が事前にわかったりはしないか?」
「わかるような状況だともう危険だと思いますけど・・・・・・食事を残すことが多くなる、遊んだり運動したりしててすぐに疲れてしまう、すぐにイライラしだす、などが危険信号でしょうか。 体が痛むようになるとかなりまずい状況ですね」
「わかった、間食をなるべくさせないようにして、3回の食事をちゃんと食べさせるようにしよう」
「あ、間食はさせたほうがいいですよ。 子供は3回の食事でちゃんと栄養を吸収できなくて栄養不足になりやすいんです。 なので栄養補給としておやつと水分補給を決まった時間に出してあげるといいです。 もちろん3食ちゃんと食べさせるのが前提ですけど」
前の世界にいた時、友達のお母さんが友達の妹におやつのクッキーを作っていた時に教えてくれたことだ。
「うーん、難しいな・・・・・・」
「パンケーキを1枚ずつ焼いてあげるとか、クッキー焼いて数枚ずつあげるとか、この前のリンゴを半分切って2人に出してあげるだけでもいいと思いますよ」
「リンゴはわかるが、ぱんけーき?と、くっきー?とはなんだ?」
「小麦粉で作るお菓子ですよ。 ただこの国の小麦粉は強力粉みたいなので少し硬くなってしまうと思います。 私は硬めのクッキーも好きですけどね。 後は卵と乳製品の流通があるのかどうか・・・・・・」
「卵も牛乳も無理だな。 輸送中にダメになってしまうし、そもそも卵を生産している所がない。 それに小麦粉の種類?も違うみたいだし尚更厳しいか」
生産していたカーミトの街がなくなっちゃったからね。
街ができたら卵を再度生産したいところ。
できれば生クリームも何とかしたいけど、酪農もやると大変そうだよね・・・・・・これは買うしかないかな。
「他の果物やジャムパンでもいいんじゃないですか?」
「それがな、ユリアの家でもらった果物を食べて以来王都で売っている果物を嫌がるんだ。 美味しくないと言ってな。 マリーはそれを食べるくらいなら果物はいらないというし、デイジーは基本的に出した物は残したりしないが、悲しそうな表情で食べるんだ。 見てられん。 ジャムもまだできないらしい」
え? あのジャムができないって何?
前回来た時もできないって言ってたけど、細かく切って煮詰めていくだけなんだから何でできないのかがわからない。
「果物に関しては、渡したのは失敗だったかもしれませんね。 そんなに変わってしまうとは思ってませんでした」
「うーん、たまにいつも以上に質の良い食材が手に入った時も食べさせたりしたが、それ以降普通の物も食べていたんだがな。 確かにユリアの果物と比べると王都の果物はとても美味しいとは言えんが、あそこまで嫌がるほどではないと思うんだが」
「子供の方が味覚が敏感ですからね。 前にビワは渋いって言ってたからビワは食べなくなっても不思議ではないかもです。 リンゴやイチゴも食べませんか?」
「その件以来出してないからわからんな」
「せめてジャムができれば・・・・・・前に食べさせたジャムは市販のリンゴで作った物ですし。 というかジャムが作れないって意味が分からないんですけど。 どこに失敗する要素があるのか。 後で厨房に行って確認してみます?」
「いいのか?」
「デイジーとマリーのためですよ。 私がいないとおやつ無しっていうのもかわいそうですからね」
この後厨房にも行くと言う事で少し早足で倉庫に向かうけど、倉庫が結構遠かった・・・・・・




