7 冒険者登録
翌朝、私はギルドに来ている。
サクラから場所を聞いてなかったので、宿の人に聞いた。
そして聞いた場所まで行ってみると、一昨日納品するときに来た大きな建物だった。
よくよく考えればサクラと最初街に来た時「ギルドに行く」って言ってたね・・・・・・
今日は前回とは違う入口の方に入って行く。
こっちはドアが無いんだね。
前回は街並みやお店を見てたからか、こっちの入り口に気付かなかった。
他の建物もそうだけど、この世界?この街?では木造が基本のようだ。
内装も同じく全体的に木造でできている。
中に入ると人がすごく多い。
特にいくつかの掲示板の前は満員電車のようだ。
それ以外には椅子に座って話してる人や、少し高くなってる場所は飲食スペースになってるみたいで、持ち込んだものを食べながら話し合っている人たちがいる。
私は周りを眺めながら受付のカウンターに行く。
掲示板は人が多いけどここはなぜか空いていた。
「あの、冒険者登録したいんですけど」
下を向いて何かをしていた受付嬢に話しかけると、顔をあげてこちらを見る。
「はい、登録ですね。 他の身分証はお持ちですか?」
「いえ、ないです」
「では個人登録からになりますね、こちらの水晶板に触れてください」
そういって若い受付嬢は、カウンター下の台から水晶板を取り出す。
一昨日サクラが報告した時に見た奴だ。
私はそれに触れるが、特に何も変化はない。
私が手を置いたのを確認すると「そのままお待ちください」と言って受付嬢は板と同じような材質のカードを板に置く。
サクラが見せてくれたカードと同じ物だ。
そのまましばらく待つと、登録が終わったのか手を放していいと言われたので手を放す。
「はい、登録完了です。 ユリアさん、13歳で間違いないですか?」
「はい」
本当は17歳だけどこの世界では本当に13歳の扱いみたいだ。
「では最後に、戦闘職は何になさいますか?」
「戦闘職?」
昨日見せてもらったサクラのカードには書いてなかったやつだ。
「戦闘職は自分の得意な戦闘方法を書く場所で、使う武器から「剣士」だったり「槍使い」などと書く人が多いです。 仲間募集や指名依頼などでもこの項目を見て依頼されることが多いので、できるだけ書いておくことをお勧めします」
うーん、私は何が得意なんだろう?
剣が使えるわけじゃないし、魔法も覚えたばかりなんだよね。
わかってるのは、攻防ともに物理が強いことくらい。
昨日武器は買ったけどまだ使ってもいないし。
「これって今すぐ決めないとだめですか?」
「一度決めるとランク更新の時まで変更できませんので、未記入の場合大怪我などの特別な理由がなければランク更新までそのままです。 戦闘経験はありませんか? 最初ですし、こんな武器を使ったことがある、などでもいいですし、魔法が使えるとかでも大丈夫ですよ?」
「武器が無かったので素手で戦ったことはありますね。 魔法はそれなりに使えます」
「素手、ですか・・・・・・魔法が使えるのなら魔法使いや上級魔法使いなど魔法使い系がいいですね。 魔法使いは数も多くないので仲間に欲しがる人も多く、人気があるんですよ」
素手と聞いて「え?」って顔をしていたけど、すぐに表情を戻して説明を続けた。
これだけ聞くと格闘戦をしたように聞こえるけど、狼にチョップしただけだ。
「魔法使いと上級魔法使いって何が違うんですか?」
「使える種類と強さの違いですね。 1つか2つの属性の魔法が使える人が魔法使いで、3つ以上使えるか、1つ2つでもそれなりに威力のある人が上級魔法使いです。 強力な魔法が使えたり5種類全部使えると賢者なんて呼ばれたりもしますね」
7種類使える私は何なんだろう・・・・・・
さて、どうしようかな。
最初だし魔法使いでいいかな? 賢者とかにしたら騒がれそうだし。
「じゃあ魔法使いでお願いします」
「わかりました、魔法使いですね・・・・・・はい、登録完了です」
受付嬢はカードを渡してくれる。
・名前:ユリア
・年齢:13
・戦闘職:魔法使い
・ランク:F
あれ、サクラはGじゃなかった?
「それではギルドの説明をしますね」
「あ、はい。 お願いします」
カードを眺めていた私に説明をしてくれる。
「ランクは上からA、B、C、D、E、F、Gと7段階あります。 Gはちょっと特殊で、13歳未満の冒険者用のランクとなります。 簡単な依頼しかなく、一番難しくても安全な場所での薬草採集くらいです。 ユリアさんは13歳ですので、最初からFになりますね。 Fは初心者用ですので、Gとほとんど変わりません。 Gと違うところは、常設依頼を達成することができるようになります。 常設依頼は『需要のある魔物の素材等を常時買い取る』というもので、依頼を受けずに討伐した物を持ってくるだけでも達成扱いになります。 Gでも買い取りはしますが、無理に討伐しようとする子を減らすために依頼達成扱いにはなりません。 そして、Fである程度慣れた人がEに上がれ、そこで複数回討伐依頼をこなせば一人前のDになれます。 Fの時に討伐を複数回経験していれば、いきなりDに上がることもありますね。 C以降は討伐以外にも護衛や強い魔物の素材集めなどがあり、上級冒険者となります」
「Cで上級なら、Aは少ないって事ですか?」
「そうですね、かなり少ないです。 今は数人いる程度で、その数人もほとんどが高齢でほぼ引退状態なので、活動してるAランクは実質1人しかしませんね」
つまり世界最強はその人基準で設定されてるのかな?
でも最強なのが私って事は、その人より強いんだよね?
あくまでも戦闘力のみの話だけど。
「という事は、Bがほぼ一番上みたいなものなんですね」
「そうなりますね。 そもそもAは国の後ろ盾が必要になり、国有冒険者としてお金も名誉も名声も得られます。 しかし、完全にではありませんが自由を失います。 なので人によっては嫌がってAにしない人もいますね」
「私も国の所有物になるくらいなB以下でいいですね」
不老不死なのだから、国の所有物になったら何十年どころか、国が続く限りこき使われてしまうことになる。
そんなのは絶対に嫌だ。
「簡単に言いますけど、BどころかCまで行くのも大変ですよ?」
「確かに、人が少ないって事はそういう事ですよね。 まあ、そもそも私はランク上げを頑張る気はないので、万年Fでもいいんですけど」
「いやいや、そこは頑張ってくださいよ。 貴重な魔法使いなんですから」
「でも身分証が欲しかっただけなので、ランクは別にどうでもいいですし」
「そこをなんとか~」
私達が冗談を交えて笑っていると、受付嬢の奥から咳払いが聞こえる。
「すみません、説明の途中でしたね。 と言ってもランクについてはお話ししましたから、ランクの上げ方ですね。 今のランクの依頼を受けると功績がたまり、それがある程度たまるとランクを上げることができます。 他にも強いと認められた冒険者は上がる事がありますね。 そしてB以上はギルドマスターの、Aはさっきお話しした国の承認が必要になりますので、勝手にあげることはできません」
「上げることができるってことは、上げなくてもいいんですか?」
「できますけど、ランクが低いと受けられる依頼的にも収入が少なくなりますし、上位ランクの冒険者は冒険者達のあこがれですので、Bまでは上げない人がいませんね。 依頼も受けられるのは今のランクの1つ上までという決まりがあるので、FでD以上の任務を受けることはできませんし。 もちろん1つ上を受ける場合はギルドから見て大丈夫かの判断をしますので、ランクFでいきなりDランクの依頼を受けられるわけではないですけど」
「なるほど。 どちらにしても依頼を達成して功績や信頼を集めながらランクを上げていかないと、上位の依頼が受けられないんですね」
つまりほぼ最上位のランクBの依頼を受けるなら、ランクCあればいいって事か。
「そういう事です。 最後は納品方法についてですね。 依頼で薬草などの採集や魔物の素材を入手してきた場合は納品所に持って行って下さい。 この街だと同じ建物のもう1つの扉の方ですね。 魔物の解体や買取もそこで受け付けています。 討伐依頼の場合は、討伐の証として魔石を持ってきてください。 もちろん運べる大きさであれば魔物をそのまま持ってきていただいてもかまいません。 大まかな説明はこの辺りですね。 細かいことで気になることがあればその時聞いてください」
「わかりました、ありがとうございます」
私がお礼を言ったところで後ろから何かがぶつかって来た。
2mくらいありそうな男が話しながら歩いてたみたいで、私にぶつかって尻餅をついている。
小さい私にぶつかって尻餅つかないでよ、私が重いみたいじゃない。
「いてぇな、どこ見てんだこら!」
男は怒りながら立ち上がる。
いや、ぶつかってきたのはそっちでしょ。
「その言葉、そのまま返すよ。 話しながらぶつかってきたのはあなたでしょ」
「なんだと!? ガキは黙って大人の言うこと聞いてりゃいいんだよ。 わかったらさっさと謝ってどっか行け」
「大人? 私には目の前で体の大きな子供が我儘言ってるようにしか見えないんだけど?」
「なんだと? どうやら痛い目に合わないとわからないらしいな」
「あれ? もしかして言葉が通じてない? 子供には我儘って言葉は難しかったのかな?」
「ぶっころしてやる!」
「まってください!」
受付嬢がカウンターから叫ぶが男は止まらない、振り上げたこぶしを私めがけて振り下ろしてくる。
建物内で武器を振り回すのも問題になりそうなので、身体強化を使って頭突きで返す。
「ぎゃああああああ!?」
男の手首が変な方向に曲がっているが知ったこっちゃない、仕掛けてきたのは向こうだ。
うずくまりながら右手を見て、目を白黒させている男の顔面を入口の方へ蹴る。
「ぐふっ」
外に蹴り出そうと思ってたけど、殺してしまわないようにと手加減しすぎたからか、入口の所で止まってしまった。
「あ、生ごみはちゃんと外に捨ててきますので、心配しないでくださいね」
私は驚いてる受付嬢へ笑顔で伝えると、入り口で気絶している男を掴んで外へ行き、人の少ない場所へ捨てる。
一緒にいた男たちは何が起こったのか理解できてないのか固まっていた。
この世界ではどうだか知らないけど、女の子に手をあげたんだ、慈悲はない。
ゴミ捨てをした後、私は屋台をめぐり、食べ物を買いあさりながら宿に戻って今日はもうまったりすることにした。




