6 宿で魔法を試す
「今日はありがとね、いっぱい買い物しちゃったよ」
「いっぱい買ってたね、びっくりしちゃった。 もしかして貴族だったり? 服装も立派なものだし」
「違うよ、これは私の国では普通の服だっただけ」
「とても裕福な国だったんだね」
サクラが感動しながら私の服を見ている。
まあ確かに制服は高いらしいね。
詳しい値段は知らないけど。
そもそもこの服は神様が作った服みたいだから、高いなんてレベルじゃないのかもしれないけどね。
「それで、私はだいたい行きたいところは回れたけど。 サクラはこの後どうする?」
私は帰って本を読みたいなと思って冒険者通りから戻って来た。
しかし、私に教えるために来たと言っても、サクラの行きたい場所があるかもしれない。
「ユリアちゃんの用事が終わったならわたしは帰る、かな。 街の案内をするために来ただけだし」
本当にそれだけのために来てくれたんだ。
「わざわざありがとうね」
「ううん、昨日すでにお金を貰っちゃったし、お礼にこれくらいしないと落ち着かなくて来ちゃっただけだから」
仲良くなったとはいえいきなりお金貰ったら落ち着かないか、ちょっと考え無しだったかな。
お金と言えば。
「そういえば、サクラって毎日依頼を受けてるの?」
「毎日じゃないよ、数日に1回くらい。 長時間居ないことが多いと心配させちゃうから」
「なるほど。 じゃあ今度依頼に行くとき私もついていっていいかな、護衛くらいはするよ」
「えっと、護衛を雇うほどお金はなくて・・・・・・」
護衛っていたのがまずかったのか、どうしようかと悩ませてしまった。
「ちがうちがう。 街の外を案内してほしいの。 その案内中はちゃんと守ってあげるよって事。 昨日は迷ってて周りを見てる余裕もなかったし、どこに何が有ってどこが危ないのか、とかね」
「わたしは嬉しいけど、いいの?」
「お願いしてるのは私だよ」
「・・・・・・うん、ありがとう、よろしくね」
少し悩んだ後、サクラは了承してくれた。
「あ、でも身分証無いとまたお金取られるんだよね」
私は身分証が無いと、街に入る時毎回お金を払わないといけないことを思い出す。
そこまで高いわけではないけど、1回で宿泊2日分近くと考えるとバカにならない。
街を出るたび毎回払っていたらいずれ結構な金額になってしまう。
サクラも門の人と顔見知りだったけど、カードを見せていた。
つまり、知ってるから顔パスなんて事もできないよね。
「それなら新しく作っちゃうとか?」
「簡単に作れるの?」
「あ、そっか、ユリアちゃんは他の所から来たんだもんね。 もしかしたら違うかもしれないから簡単に説明するね。 えっと、この国での身分証は大きく分けて住民証とギルドカードがあるの。 住民証はその街に住む人が作る物だけど、それはまだ働いてない未成年者か、貴族の人用の物なの。 働く場合はそれぞれのギルドに登録しないといけないから、平民の大人は基本的にギルドカードを持ってるし。 ユリアちゃんがこの街に長く住むなら今は住民証でもいいけど、いずれ旅をするならギルドカードを作っちゃったほうがいいと思うよ」
「ということは、ギルドカードって働くために登録するんだよね?」
「そうだね。 ユリアちゃんならウルフを簡単に倒せたし、旅をするなら冒険者登録がいいと思う」
「冒険者も仕事しないといけないんじゃないの?」
冒険者が何をするのか知らないけど、強いからと言って秘境探索とか前人未踏の地へ行かされたりするかもしれない。
洞窟を探索し、金貨のつまった宝箱を見つけるようなのが私のイメージする冒険者だ。
いや、それは探検家かな?
「冒険者ギルドは他に比べて条件が緩くて、一か月に一度依頼を達成すれば、問題を起こすなどで剥奪されない限りずっと使えるの」
「へー、登録して適当な依頼を達成してれば身分証としてずっと使えるのね。 それは便利かも」
ギルドの依頼が何なのかまだわからないけど、サクラは薬草の採集をしていた。
サクラのやってた薬草採集も「依頼」と言ってたし、私もそれをすれば身分証としてずっと使えるという事だ。
「ユリアちゃんの住んでたところにはギルドが無かったの?」
「あー、そうだね。 私が持ってたのもそこに所属する子供の証というか、そんな感じの物だったし。 どちらかと言うと住民証に近いのかな」
子供は勉強が仕事ともいうし、ギルドカードでも間違ってないのかな?
ちゃんと勉強してたかというとあれだけど・・・・・・
「そうなんだ。 私は孤児だから住民証をもってないけど、冒険者のギルドカードは持ってるから、これが身分証になってるの」
サクラは自分のギルドカードを見せてくれる。
そこには「名前:サクラ」「年齢:10」「戦闘職:」「ランク:G」と書かれていた。
戦闘職は未記入だ。
「それなら私も作っておこうかな」
「うん、ぜひ」
「明日は依頼を受けないんだよね?」
数日に1回って言ってたし、多分行かないよね。
「そのつもり。 昨日行ったばかりだから、数日は孤児院にいようと思ってるよ」
「じゃあ私は明日登録しておくから、サクラの行ける時に一緒に行こうか」
「早速登録しに行くんだね、楽しみ!」
予想外の笑顔になる、そんなにうれしい事なのかな?
「うん。 最初の依頼はよろしくね、先輩」
「せ、先輩、私が先輩」
冗談でサクラに先輩と言ったら、恥ずかしさと嬉しさで、サクラは両頬に手を当てて真っ赤になる。
行動がすごくかわいい。
次回の約束をしていたら宿屋の前についたので、そこでサクラと別れて宿に入る。
受付のお姉さんに挨拶をしてそのまま部屋に行き、ベッドで横になりながら今日買ってきた魔法の本(のような粗悪な紙の束)を見る。
「魔法の種類は火、水、土、風とちょっと特殊な光の5種類。 魔法には固定の名称はなく、想像によって形態が変わり、込める魔力によって威力や効果時間が変わる。 光魔法は特殊で、光を使う照明以外にも強化、回復や治療、洗浄や収納など、4属性に属さない物が該当する、か。 光というよりは補助魔法って感じかな?」
つまり、ゲームみたいに「ファイアボール」「ファイアジャベリン」「フレア」みたいに分かれてなくて、魔力を込めて火の魔法を撃てばどんな形をしていようが全部「火属性魔法」と呼ばれるってことか。
光魔法の項目の強化系は基本の「攻撃強化」「防御強化」「速度強化」と、3種類の効果がある上位の「身体強化」があり、魔力消費が増えるけど、身体強化と攻撃強化などは両方使ってもちゃんと効果があるみたいだ。
私の攻撃がどこまで有効なのかがわからないけど、防御無視でほとんど一撃なら攻撃強化はいらない。
防御強化もいらないだろうから速度強化だけあればいいのかな?
それも必要かわからないけど。
「ちょっと魔法使ってみても大丈夫かな? できれば全部試してみたいし」
威力は極力抑えるようにして燃える火をイメージをする。
「えっと、ライターの火をイメージして・・・・・・ファイア。 うわっ!? びっくりした・・・・・・」
加減したつもりだったけど、すごい勢いで炎が出てきてもう少しで天井まで届くところだった。
料理をする時に火の点きが悪くて、コンロのスイッチを何回かカチカチしてたら「ボワッ!」っと火が出たのを思い出す。
部屋では危ないので、魔法の練習はお風呂場ですることにした。
湯船につかりながら再度火を使ってみて、その後水、土、風と、光の照明などを使ってみる。
強化系も一通り試してみたけど、速度以外いまいち実感が無いというか試しようがなくて、どう変わったのかがわからない。
速度強化はいつもの動きが速くなるというよりは、より速く動けるようになるって感じだった。
なので強化しても速く動こうとしなければいつも通りに行動できる。
それから洗浄魔法。
これがすごく便利で、自分だけでなく周りにも使えるので掃除もできる。
試しにお風呂を奇麗にしてみたけど、かなり頑固そうな汚れも落ちるし、手の届かないような場所でも奇麗にできる。
あと収納魔法も試してみたけど、これも普通に使えた。
スキルとは違う場所に保管される様で、一覧が別に表示された。
ただ、スキルがあるので今の所使い道は無いと思う。
光魔法を使っていてふと思ったことがある。
ゲームなら他にも爆発、凍結、森林、稲妻、神聖など上位魔法があったりする。
これって使えたりするかな?
それぞれの魔法をイメージして試してみる。
結果としては氷と雷は使えたけど、爆発や溶岩や木の蔦みたいな魔法は使えなかった。
いや、厳密には似たような魔法は出たけど、属性としては存在しないようだ。
たぶん既存の4属性だったんだと思う。
神聖魔法はそもそもイメージができいないというか、何をしたらいいのかがわからないから試せていない。
アンデットみたいなのがいれば試せるかもしれないけど、そんなの会いたくないね。
後々考えると、お風呂で爆発や溶岩魔法が普通に発動したら一大事だ。
ちょっと配慮が足りなかったね。
でもこの「思いついたら即行動」なところはなかなか治らないんだよね・・・・・・
一通り魔法を使ってみてからステータスを確認すると、魔法のところが増えていた
・魔法
火属性 水属性 土属性 風属性 光属性 氷属性 雷属性
おお、凄い、魔法欄が一気に潤った。
魔法の使い方はだいたい分かったし、あとは実戦で威力を試すだけかな。
私はお風呂から出ると、夕食の後部屋のベッドで地図と魔物一覧を少し見た後寝る。




