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68 カーミトの街の整地開始

 私と精霊の9人で家の中に入り、貴重品などを収納していく。

 その間、ディアは建物が無い場所を均してくれている。


 そして収納し終わったら8人の精霊が壊して燃やして、最後に土の精霊がさらに細かくして土に埋めていく。

 既に崩れ落ちている家は少しずつ粉々にしていき、自分でも回収できそうなものを探しつつ、他の精霊たちに運んできてもらった物も収納する。

 収納した物は大きな倉庫を作ってその中に保管していった。



 毎日何件もの家を壊していく。

 壊しながら周りを含めて地面を均していくから結構時間がかかる。

 何もない場所はディアが均してくれているけど、建物がある場所は回収&破壊後にこちらで均してるからね。


 夜になったらみんなで家に帰り、私とディアはベッドで寝て、精霊たちは朝までパーティーだ。

 うるさくはないけど、人数が増えて見た目が賑やかだ。



 それから数日後の早朝。

 整地も順調に進んでいて、日課の水やりをしようと外に出たらリーアの家の兵士が来ていた。


 話を聞くと、話があってリーアが昨日来ていたみたいだ。

 でも私たちがいなかったから、今日の朝一で兵士が来て待機していたらしい。


 兵士は手紙を渡すと軽く頭を下げて帰って行った。


 手紙を読んでみると、話があるのはリーアではなくリーアのお父さんの方らしい。

 時間のある時に屋敷に来てほしいと書かれていた。



「リーアの家に来てほしいみたいだけど、整地はまだまだかかるよね? いつ行こうかな・・・・・・」



 ここ数日、朝から夕方まで整地していてもまだ1割も終わっていない。 

 残りどれだけ建物があるかわからないけど、同じ密集具合だった場合整地だけで一月くらいかかってしまう。

 なので、終わってからだとだいぶ先になっちゃうんだよね。



「ママがいない時は畑を作ってればいいと思うの」

「でもまだどこを畑にするか決めてないし」



 個人的には森のある北の方の土地に住んで、周りを畑にしたいと思っている。

 門はないから自分で扉を付けることになるけど、そうすれば森にもいきやすくなる。

 でもサクラの意見や他の要因で北側の土地はダメな可能性もある。

 無理を通してまで北側に住まなくてもいいので、どこになるかわからない。



「整地にはまだまだ時間がかかるの。 その間土地をそのまま放置はもったいないの。 だから適当な範囲に畑を作っちゃったほうが有効的なの。 後で別の場所に移すならその時畑を元に戻せばいいの」

「なるほど、それもそうだね」



 今まで整地した場所は他の場所を整地してる間放置だもんね。

 それなら今は畑として使って、後で私の畑の場所が確定してからそっちに移せばいいか。



「わかった。 じゃあ今日は畑をお願いしていいかな? 育てる物や範囲はディアに任せるから好きに作っちゃって」

「わかったの。 向こうの畑は任せるの。 あ、あと水田の方が成長したから水を張って欲しいの」

「お、やっと水を張れるようになったんだね」



 毎日成長は見てるけど、どこまで行ったら水を張るのか私はわからない。

 やっと私の知ってる水田っぽくなるんだね。



「了解。 畑の水が終わったら稲の方も撒いておくね」



 畑に水を撒き、水田に水を張った私は、ディアに向こうの事をお願いしてリーアの家に向かう。

 ディアもゲートを開けられるので私が開ける必要はない。


 あまり早く行っても迷惑だと思うので、散歩がてら走らず早歩き程度で向かうことにした。



 そういえば何の話で呼ばれたんだろう?

 前に話してた砂糖とかの食料品の話かな?

 整地を始めてからすっかり忘れていた。


 私は屋敷に着くまでの間、収穫量を考えてどれくらいなら提供できるかを考えていた。

 お店で出すんじゃなくて家族数人が食べる分なら特に問題はないと思う。

 使用人や兵士の分もとなると毎日分は厳しいかな・・・・・・結構な人数いるだろうし。



 屋敷に着いた私は門番に領主に呼ばれて来たことを伝えると、門の中に入れてくれた。

 手紙をもらってすぐ来たのにちゃんと話は通してあるみたいだ。


 屋敷に入るとメイドさんが待機していて、応接室に案内してくれた。



 あのメイドさん、私が来たのを知らせてないのに何で待ってたんだろう?

 まさかずっと待ってるなんて効率悪いことはしないだろうし、門番が何か合図でも出したのかな?


 私が案内してくれたメイドさんについて考えていると、勢いよく部屋のドアが開いた。

 そこには頬を膨らませたリーアが腰に手を当てた状態で立っている。

 来るのがリーアのお父さん、この街の領主だと思っていたから、勢いよくドアが開くなんて思ってなくて驚いてしまった。



「どうしたの?」

「どうしたのじゃありません! 昨日ユリアさんの家に3回も行ったんですよ!? どこに行ってたんですか!」



 いや、約束もしてないのにそんなこと言われても困るんだけど・・・・・・



「昨日、というか最近は日帰りで街の外に行ってるんだよ」

「そうなんですか?」



 頬を膨らませたご機嫌斜めな表情からいつもの表情に戻る。

 本当に怒ってたわけではないみたいだ。



「ちょっと忙しくてね。 家には夜寝るために帰ってきてるだけだったかな。 朝も畑に水あげたらすぐ出かけてたし」

「日帰りという事は近場で何かしてるんですか?」



 カーミトの街に行ってるんだけどリーアには話しちゃってもいいかな?

 だいぶ準備も進んできてるし。


 そんなことを考えていたらドアがノックされて誰かが入ってくる。



「あ、お父様」



 そうだろうなとは思っていたけど、やっぱりリーアのお父さんみたいだ。



「初めましてだな。 知っているとは思うが俺はこの街で領主をしているロイドだ」



 いえ、初めて知りました。

 姿どころか名前も。



「初めまして、冒険者のユリアです。 土地の件はありがとうございました。 それで用事は何ですか?」



 今まで会う機会がなかったのでこの場で土地のお礼を言っておく。

 リーアのお父さんは30代前半くらいだろうか、細身でカッコイイ感じだ。

 身長も高いし。

 私からしたら大体の人が高いけど。



「実は聞きたいことがあってな」



 食材の状況を聞かれるのかな?

 えっと、まずは誰の分を納品するかを聞かないとかな。



「国王陛下からこれが贈られてきた」



 来る途中に纏めていた事を思い出し、質問に答えられるように準備をしていたが、全然違う話をされてしまった。

 ロイドさんは懐から手紙を取り出し、私に差し出す。

 予想していたことと全然違ったので私は一瞬固まってしまったが、手紙を受け取る。


 手紙の内容は。

 モウイの街の冒険者が活躍したことにより、国に大きく貢献したから、冒険者の住む街にも褒美を与えるというものだった。


 あ、これはこの前のフェンリルの話か。

 約束通りこの街にも利益を分けてくれたんだね。


 という事は買取りとかの目処が立ったのかな?

 それなら王都にもいかないとか・・・・・・いや、別に急がなくてもいいや。

 今は忙しいしお金に困ってるわけでもないし。


 私が読み終わってロイドさんの方を見ると、ロイドさんが口を開く。



「それで、この街に拠点を構えている冒険者で陛下が活躍の褒美を渡すほどの冒険者という事で、君だと思ったんだが心当たりはあるか?」

「ありますね。 私が王様にお願いしたので」

「陛下にお願いだと!? この前もアマリリス王女がお忍びで来ていた、と事後報告があったが、君は一体何者なんだ? どこかの国の王女だったりするのか?」



 あ、やっぱり事後報告でマリーの事を知ったのか。

 ちょっと安心。



「一般人ですよ。 マリーは妹のデイジーの話を聞いて私の料理を食べるためだけに来たみたいです。 私が初めてお城に行ったときに振舞ったパンをデイジーが気に入って、その話を聞いて自分も食べたくなったって言ってましたし」



 話を聞いて理解できないのか、困ったような表情のまま開いた口が塞がらないロイドさん。



「つまり初めて城に行った時に王族に食事を振舞ったという事か?」

「そうですね。 呼ばれたのがそもそも食べ物の話だったので、その流れでパンを提供しました。 リーアは食べたよね? チーズやジャムのパン」

「え? あ、はい、私も食べました。 とてもおいしかったです」



 急に話を振られてびっくりしながらも答えてくれた。

 びっくりさせちゃってごめんねと心の中で謝っておく。



「つまりその手紙はパンで国に大きな貢献をした褒美、という事か? いまいち理解のできない話だが・・・・・・」



 話を聞いてロイドさんが自分の中で結論を出す。

 いや、ロイドさんの質問に答えただけで手紙の件とは違うんだけど。



「その手紙は別件ですね。 パンの時、というかその時はチーズとジャガイモの話だったんですけど、その報酬ば別に貰ってますので」



 手紙の件はフェンリルの利益をこっちにも欲しいって言った時の話だし。



「すまん、だんだん訳が分からなくなってきた」



 ソファにもたれかかり額に手を当てて天井を見上げている。

 私はわかりやすく一から説明していった。

 チーズの村での出来事。

 お城に呼ばれて説明をしたこと。

 その時ジャガイモの説明もしたこと。

 その時の報酬でカーミトの街をもらった事。


 しかし、カーミトの街の話をしたところで2人が反応する。



「ユリアさんカーミトの街を貰ってしまったんですか!?」

「街を貰ったという事は貴族になった、という事か?」

「街と言うか権利書的には領地の所有権ですね。 あと貰っただけで貴族にはなってませんよ」



 王様からもらった権利書を見せると、ロイドさんはそれを読んで本物だと納得してくれた。

 しかしリーアの方は複雑そうな表情をしている。

 たぶんサクラの事を考えているのだろう。

 サクラは街を復興したがっていたから。



「で、この前リーアに聞いた鶏、あ、セーフコカトリスですね。 そのセーフコカトリスを捕まえに行ったあと、その街に行ったんですよ」

「ユリアさん!? 危ないから近づかないように言ったのに街に行ったんですか!」



 リーアが泣きそうな表情でしがみついてくる。

 心配してくれるリーアには悪いけどすごく可愛い。



「リーアにはそう言われてたけど、私は最初から街に行こうと思ってたんだよね。 魔物をどうにかしようと思ってたから。 で、街に行ったらその魔物が襲ってきたからそのまま倒したの」

「へ?」



 変な声をあげて信じられないという表情で私の顔を見るリーアと、理解がまったく追い付いてない表情のロイドさん。

 しかし少しすると目を丸くしていたリーアの目が羨望のまなざしに変わる。

 話が進まないのでこのまま話を続ける。



「その魔物はモウイの街で買取ってもらおうと思ってたんですけど『街で捌き切るのは厳しいだろう』と王様に言われたんです。 で、その話の流れで王様が買取ってくれるっていうからお城で買取ってもらったんですよ。 でもそうすると利益は全部お城に行っちゃうので、私のいる街にも利益を分けてほしいってお願いした結果がこの手紙ですね」



 テーブルの手紙を指さしながら説明するが、しばらく時が止まったように動かなくなる2人。

 もう話すことは話したので2人が再起するまで待つことにする。



 少ししてロイドさんが動きだし、つられるようにリーアも動き出す。

 最初に口を開いたのはリーアだった。



「それでユリアさんはカーミトの街をどうするんですか? その、やっぱりカーミト街の領主になるんでしょうか・・・・・・」

「え、ならないよ? さっきも言ったけど貴族にもなってないしなる気もないからね。 実はもうちょっと作業が進んでからリーアには話そうと思ってたんだけど、カーミトの街の領主をサクラにお願いしようと思ってるんだよね」

「サクラに、ですか?」



 予想外の言葉にリーアが再び目を丸くしている。



「前にサクラにカーミトの街の事を聞いたんだよ。 復興したいけど魔物がいるし、壊れた街を復興するのにもお金がかかるけど、いつか復興したいって。 だからカーミトの街を貰って、魔物を討伐して今整地中なの」

「サクラのためにそこまでしたんですか? 国王様に直接領地を貰い、とても危険な魔物を討伐し、今は整地までして・・・・・・」

「私はこの国に来たときサクラにお世話になったからね。 私にできる範囲でのお返しをしようと思って」



 広い範囲の自分の農地が欲しかったのもあるけど、まあそれは言わないでおこう。



「そこまで想ってもらえるサクラがうらやましいです」



 意外とリーアは寂しそうであまり喜んでいないようだ。

 サクラのために今まで頑張って来たって言ってたし、自分の力で復興の手伝いをしたかったのかもしれない。


 それともサクラにばかり協力して拗ねてる?



「まだスタートラインに立ててもいないんだから、大変なのはこれからだよ。 だからリーアにはこれからもサクラを支えてほしいし、リーアが困っていたら私も全力で助けるよ」



 私にサクラを取られてると思っている場合と、拗ねてる場合両方に対応したことを言えたと思う。

 これでリーアの機嫌は直るだろうか?



「・・・・・・ありがとうございます」



 嬉しそうに腕にしがみついてくるリーア。

 よし、私の選択は間違ってなかったようだ。



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