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64 ディアと商店通りへ

 最初に向かうのは服屋。

 子供たちの服はあれで問題なかったので、同じものを追加発注する。


 そして、服屋を出た後はパン屋に寄っていく。



「こんにちは」

「あ、ユリアさんこんにちは。 今日はパンを買いに? それとも小麦粉を買いに?」

「今日はコロッケの試作を持ってきたから、試食してもらおうかと思って」

「わー! やっと謎の食べ物の正体が明らかになるんですね」



 謎って・・・・・・まあ知らないから間違いではないけど、変な食べ物持って来たみたいな言い方だ。


 私はお皿とフォークと一緒にコロッケを出してあげる。

 出されたコロッケを真剣な表情で観察した後一口齧って味を確かめている。

 行動が7歳じゃない。

 完全にプロの目なんだけど。



「・・・・・・すっごくおいしいですねこれ。 表面のカリカリの食感と中のホクホクした食感がとてもいいです。 これは絶対売れます!」



 まあ売れるだろうね、元の世界でも人気な食べ物だし。

 それは心配してないんだけど、問題は材料の方だ。



「材料の油がいきわたらないと販売は無理かな。 個人で食べるならいいけど、売るとなると材料がそれなりに必要でしょ?」

「そうですね。 完成したとしても高ければ売れませんし、材料費より安くするとお店が・・・・・・うーん、こんなに美味しいのに」



 残念そうにコロッケを齧っている。

 こればかりはどうしようもない。

 多少なら提供できるけど、販売するとなると増やさないといけないし、お金のことも考えないといけなくなる。


 そしてそれが難しいんだよね。

 うちは人件費がかかってないし、材料もお店で売ってない物を自家栽培してるので、値段の決めようがない。

 他に売っている物ならそこから値段を決められるけど、売って無い物だとうちが基準になってしまう。

 しかし、そうなると他で油が出回り始めた時に人件費や輸送費や手間賃など込みの値段で売ると、うちよりはるかに高くなる。

 それだと売れないし、安くすると生活に支障が出てしまう。

 なので油はまだ販売できないのだ。 



「すぐにとはいかないけど、王様には油の生産方法を教えてあるから、いつかは出回ると思うよ」

「ユリアさん国王様とお話したことあるんですか!?」

「何回かね」

「すごいです! 国王様と直接お話しするなんてわたしには考えられません! 絶対に頭真っ白になります!」



 ナノハちゃんのテンションが一気に上がった。

 昨日来てたことを知ったらどんな反応をするだろうか。



「聞かれたから答えただけで、わざわざ意見をしに行ったわけじゃないよ」



 チーズやジャガイモのことを聞かれたから教えただけだ。



「それでもすごいですよ!」



 いまいちよくわからないけど、王様と話をするのはすごい事らしい。

 そういえばスズランさんもそんなこと言ってたような?


 いや、王様の話とかどうでもいいから話題を変えよう。



「そういえば小麦粉って薄力粉は売ってる?」

「はくりきこって何ですか?」

「この前買った小麦粉が強力粉だったから、別の種類あるかなと思って」

「私にはちょっとわからないので、お母さんに聞いてきますね。 ちょっと待っててください」



 ナノハちゃんはお店の奥に入っていく。

 卵が入手できたのでお菓子を作りたい。

 お菓子系を作るなら薄力粉が欲しいんだよね。

 まあ少し硬くなるだけだから強力粉でもいいんだけど。


 何を作れるか考えていると、ナノハちゃんが戻って来た。



「お待たせしました。 すみません、お母さんに聞いてみましたけど、小麦粉の種類はわからないそうです」



 他の国から持ってこれないと気候的に同じ種類しか栽培できないかな?



「大丈夫だよ、わざわざありがとう。 私はこの後ギルドに行くからもう行くね。 コロッケいくつか置いてくから、お母さんにも試食してもらって」



 お店にある入れ物を持ってきてもらい何個かおいていく。

 家族が何人いるかわからないのでちょっと多めに。

 笑顔でお礼を言うナノハちゃんに手を振り、お店を出てギルドに向かう。


 ギルドに入ると、スズランさんを探す。

 私がギルドに入ると冒険者たちはチラチラ見て来たり、コソコソ話し始めたりしている。

 子供連れてくるのはやっぱり場違いだったかな?

 スズランさんはいつもの受付カウンターにいたので、スズランさんの所まで行く。


 近くに行くとスズランさんもこちらに気づく。



「こんにちはユリアさん、依頼ですk・・・・・・」



 私を見ていつもどおりの対応をしていたスズランさんの目が、ディアに向いて言葉が詰まる。



「ユ、ユリアさん。 この子はもしかして・・・・・・」

「前に話したうちの子で、名前はデアソリットです。 商店通りに来る用事があったので、ついでに紹介しようと思って連れてきました」



 ディアが見えるように少し持ち上げるけど、私にしがみついたままスズランさんの方をちゃんと向かず、目を細めて顔半分だけでスズランさんの方を見ている。


 何で警戒してるんだろう?



「どうしたの?」



 聞いてみてもディアは答えず私の方に顔を向けてしまった。 

 せっかく紹介しに来たのにこれではあまり意味がない。

 せめてスズランさんの方をちゃんと向いてくれないものか・・・・・・


 しばらく話しかけたり背中をさすったりして説得すると、やっとスズランさんの方を向いてくれた。



「そのお母さん以外になつかない子供らしい行動・・・・・・可愛すぎです!」



 ディアの行動に両手で口を押え、目を潤ませながら感想を言っていた。

 なんとなくリーアを想起させるなこの反応・・・・・・



「あの、ユリアさん。 ディアちゃんを抱っこさせてもらえないでしょうか? 今度ディアちゃんの好きな物なんでもプレゼントしますから! お願いします!」



 私にお願いされても困るんだけど・・・・・・いや親の了承を得るのは普通か。

 とはいえ、私はディアが構わないなら特に反対する気はない。

 欲しいと言われたら全力で反対するけど。


 ただ、ディアの欲しい物は多分美味しい食べ物だ。

 そして、ディアは自分でこの街にある食材よりも美味しい食材を作っているので、この街でディアが欲しい物はたぶんないと思う。


 とりあえずディアの方を向き、どうするか聞いていると、ディアがスズランさんの方を指さした。

 何だろうと思ってスズランさんの方を見てみると、スズランさんの後ろにはいつの間にかギルマスさんがいた。

 あ・・・・・・



 ディアが指をさし、私が微妙な表情をしたので、スズランさんが何だろうと後ろを振り返る。

 そしてそこには笑顔のギルマスさんがいた。



「ギ、ギルマス・・・・・・」

「受付もやらずに暇そうだなスズラン。 そんなに暇なら事務の仕事をいくらでも回すぞ?」

「す、すみませんでした・・・・・・」

「すみませんスズランさん、仕事中に」

「いえ、私が仕事も忘れてデアソリットちゃんを見ていたのが悪いので、ユリアさんのせいではないです」

「はっはっは、冗談だよ。 ユリアはこの街のために危険な魔物を討伐してくれたんだ。 多少の特別待遇は構わん。 話し中悪いがお前さんにお客さんだ」

「私に?」



 ギルマスさんが受付横の階段の方を指さすと、20代後半くらいの男性がいた。

 その男性はこちらに向かってくるが、知らない人だ。

 見た目的に冒険者・・・・・・かな?

 兵士には見えない。


 男性の見た目は一部金属装備だけど、兵士や騎士のような規律とは無縁な感じの空気をかもしている。

 姿勢? 動き? 身だしなみ? 



「君がユリアか、噂は聞いてる。 ずいぶん活躍してるようじゃないか」



 そんなに噂されるほど何かしたかな・・・・・・

 そもそも今まで倒した魔物ってどれくらい知れ渡ってるんだろうか?

 ネットも無い口コミだけだと信憑性ないよね?



「はぁ・・・・・・それで何か用ですか?」

「用件の前にまずは自己紹介を。 俺はダーテ、君と同じBランクの冒険者だ。 最近組んでたパーティーを抜けてな、相方を探しているんだ。 そこで君の話を聞いて組もうと思い、声をかけたわけだ」

「私はそこまで活動的ではないので他を当たってください」



 というかこんなおじさんと組むのは嫌だ。

 依頼に行かないといけないなら1人で行く。



「構わん、伴侶としてそばに居るだけでもいい」



 伴侶という言葉で寒気がする。

 え、伴侶って結婚するって事だよね?

 全力でお断りだけど?

 というか冒険の相方探してるんじゃなくて人生の相方探してるの?



「伴侶を探してるならそれこそ他を当たってください。 伴侶なら冒険者でなくてもいいでしょうし、ランクも関係ないでしょう」

「なんだ、先輩冒険者の誘いを断るのか? 女は黙って男についてくればいいんだよ」



 うわ、典型的な男尊女卑野郎だ。

 結婚に先輩も後輩も関係ないし、そもそも私より弱いでしょうに。

 話してるだけで比喩ではなく本当に吐きそうになるほど気持ち悪い。


 どうしようかな、ボコって帰ろうかな・・・・・・と思っているとディアが動いた。



「うるさいの。 クラック」



 ディアが手をかざしてつぶやくと、男の足元の地面だけ割れ、男が裂け目に落ちる。

 地面が割れたけど、これも土魔法? 



「な、なんだこれは!?」



 裂け目に落ちて上半身だけ出ている男が騒いでいる。

 やばい、今まで怒ってたのにこの光景に吹き出しそうになってしまった。


 それにしてもディアが怒って魔法使うなんて初めて見た。



「ママに謝ってどこか行くなら許してあげるの」

「うるせえ! さっさと放しやがれ!」



 謝るそぶりの無い男にかざしていた手を少しずつ閉じていく。

 すと裂け目もそれに合わせて狭くなっていく。



「このガキ、何する気だ! 早く放しやがれ!」

「この程度の魔法も抵抗できないなんてランクBって弱すぎるの」

「なんだと!」

「ママ、このうるさい人間はどうするの? このまま潰しちゃうの? それとも裂け目を広げて埋めちゃうの?」



 ディアがこの男の処分方法を聞いてくるが、どれも大惨事になる。

 どうしようこれ・・・・・・



「子供にも勝てないような冒険者をどうこうする必要もないでしょ。 ギルドを汚すのも悪いし外にでも転がしておいて」

「わかったの」



 ディアの返事と共に裂け目が広がって男が落ちるが、下から柱のような物が飛び出し男を天井まで突き飛ばす。

 そのまま落ちてきた男をその柱が野球のように外に打ち出した。

 おお、奇麗に入り口出てすぐの所に止まった。


 これなら通行人の邪魔にならないね、ギルドから出る人の邪魔になりそうだけど。



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