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63 サクラに飼育依頼

 翌日の朝、鶏小屋の見える範囲でサクラを待っている。


 ディアを眺めながら畑で待っているとサクラがやってきた。

 早く来ると思って早めに待っててよかった。



「あれ、ユリアちゃん?」

「最初は小屋の説明をしようかと思ってね。 サクラの意見を聞いて改善するかもしれないし」



 それに登録しないと小屋に入れないし。



「それならもう少し早く来ればよかったね」

「十分早い時間だから大丈夫だよ。 説明するのにサクラより先にいようと、早めに外に出て畑を見てただけだから。 さっそく案内するね、この小屋が物置小屋兼鳥小屋に入る通り道ね」



 扉にサクラを登録し、何もない物置小屋を抜けてそのまま鶏小屋に入る。 



「まあ見ての通りかな。 奥は雨風しのげるように屋根と壁で囲って正面は日の光が入るようにしてあるよ。 日中はこっちの広い方に出してあげて、夜は奥に入れる感じにしてあるんだけど、どうかな?」

「すごく効率的に作られた鳥小屋だと思う。 入り口を物置小屋とつなげることで脱走しないようになってるし、広い方の小屋は日当たりも風通しも良く作ってある。 心配があるとしたら、地面を掘って他の動物が入ってくることがあるのと、セーフコカトリスは地面の下に巣を作るから、床がないと卵の回収が大変かも」



 おお、本当に詳しいんだね。

 作った時気にした事をすべて当てられてしまった。



「パッと見るだけでそこまでわかっちゃうなんて、できるって言ってたのは伊達じゃないね。 でも心配ないよ、この地面の下も壁と同じ格子状の床が敷き詰めてあるからね。 地面は掘れないよ。 この土はその上に盛ってあるの」

「はー、理想の鳥小屋だね。 ユリアちゃんもすごく詳しいんだね」

「小さい頃に小屋を見たことがあったのと、柵が破られたり地面から鳥が襲われるのを聞いたことがあっただけだよ。 だからその対策を込みで作ってみたけど、これでいいのか心配だったんだよね」

「その情報だけでここまで作っちゃうなんて・・・・・・これは魔法?」

「そうだね、物置小屋も含めて全部土魔法で作ったよ」

「土魔法ってこんなこともできるんだね。 私も土魔法は使えるけどこんなことはできないかな」

「サクラも魔法使えるんだ」



 でも戦えないって事は弱いのかな?



「実は私、5属性全部適性があるの。 でも威力が弱すぎて戦いどころか日常でもほとんど役に立たなくて・・・・・・」



 5属性って凄いんじゃない?

 威力ってどうにかしてあげられないのかな?



「練習はしてないの?」

「もちろんしたよ。 でも私は魔力の回路が細すぎて放出できる魔力が極端に少ないみたい。 大きくなればもしかしたらって言われたけど、未だに弱いままで・・・・・・」

「回路か・・・・・・私にはちょっとわからないかな」



 状態異常とかでないなら魔法で治すのは無理だろうし、治せるなら猛毒直した時に治ってたはずだ。

 だれか魔法に詳しい人がいたら聞いてみるか。



「あ、大丈夫だよ。 孤児院で生活していて魔法はなくても問題ないから」



 そうかもしれないけど、魔法が使えれば冒険者活動がもっと安全になっていたはずだ。

 その場合サクラに会うことはなかったかもしれないけど。



「大きくなって使えるようになるといいね。 私も解決法がないか魔法が得意な人がいたら聞いてみるから」

「うん、ありがとう。 じゃあ私は鳥のお世話をしちゃうね」



 サクラは私に笑顔でそう言うと、鶏を奥の小屋から出して卵を回収してくる。

 回収してきた卵は13個だった。

 ん?10羽から13個って2個以上生んだ鳥がいるって事?

 いや詳しくないけど鶏ってそんなに卵産むの?



「10羽で13個ならちょっと少なめかな。 まだ来て日が浅いからか、緊張してるのかもしれないね」



 これで少ないようだ。

 この量だと鶏増やさなくても私が使う分は問題なさそうだね。


 その後、鶏小屋の掃除と餌の補充と水の入れ替えをして一旦サクラは帰って行った。

 夕方前にまた来るそうだ。



 私はサクラを見送ると、ふと思う。

 魔法についてならディアが何か知らないかな?

 土の魔法得意だし。


 鶏小屋から畑に向かい、ディアを呼ぶ。



「ねえ、魔法についてなんだけどさ。 魔力の回路がすごく細くて魔法が弱い人を治すことってできるかな?」

「手段を択ばないなら治せるの」

「え、治るの!?」



 聞いてよかった、ディアが治し方を知ってるみたいだ。 

 ただ、手段を択ばなけらばというのがちょっと怖いけど。



「それで方法は?」

「誰かが魔力を流して回路をこじ開けるの」

「それって難しいの?」



 話を聞いてる感じ簡単そうに聞こえるけど。



「簡単なの。 ただその治療をした後は激痛で苦しむの」

「え、痛いの?」



 サクラに痛い思いはさせたくないな・・・・・・でもサクラがそれでもというなら?

 うーん・・・・・・



「痛いなんてものじゃないの。 全身を引き裂いてるのと同じだから、誇張なしで激痛なの。 全身が大きく腫れて何日も激痛と戦う生活を送らないといけないの。 しかも治療魔法を使うと回路も閉じちゃうから自然に治るまで待つ必要があるし、回路が閉じないように毎日最低でも朝と夜の2回は広げた回路を維持しないといけないの。 それでもというならわたしは止めないし、ママの頼みなら協力するの」



 聞いただけで全身がむずむずする。

 これは無理だ、他を当たろう。



「せっかく情報もらえたけど、さすがにサクラにそんな痛いことはできないかな・・・・・・」

「時間がかかってもいいなら他にも方法があるの」

「どれくらい?」

「それは実際やってみないとわからないの。 人によっては頑張ってもダメな人もいれば数か月で治る人もいるの」



 可能性があるなら何もしないよりはいいだろう。



「どうすればいいの?」

「毎日枯渇するほど全力で魔力を使い続けるの。 そうすれば少しずつ回路が広がっていくの」

「それは痛かったり苦しかったりしない?」

「回路を広げるために魔力を使い続ければ、さっきのこじ開けるほどじゃないけど当然痛くなるの。 それに魔力が枯渇してくれば疲労感が強くなるし、無くなれば気を失うの」

「そっちの方がましな気もするけど、いつ治るかわからないのは精神的にきついかも・・・・・・」

「それくらい治すのは難しいの。 治すくらいなら魔法を諦める方を選ぶ人がほとんどなの」



 どっちもきついな・・・・・・サクラに話だけはしておくべきなのだろうか?

 最終的に決めるのはサクラ自身だし。



「ありがとう、サクラに話してみるよ」



 その後はどうしようかな。 

 今やらないといけないのはカーミトの街の整地・・・・・・くらい?

 あ、そういえばナノハちゃんの所にコロッケ持って行ってないや。

 服の追加発注もしたいし、今日は商店通りいこうかな。 

 どうせ商店通りに行くならディアも連れてギルドも行こうか。



「この後さ、一緒に商店通り行かない?」

「お買い物なの?」

「買い物とスズランさんにディアを紹介しようかなって。 前に話したら会いたいって言ってたから」

「わかったの、一緒にお出かけなの」



 ギルドに連れてくって言ったらなんて反応するかと思ってたけど、一緒にお出かけを喜んでくれてよかった。



「じゃあ私はサクラにさっきの話をしてくるから、戻ってきたら行こうか」



 私は孤児院の遊具の所に行き、サクラを呼ぶ。



「どうしたの?」

「さっき別れたばかりなのにごめんね」

「ううん、ユリアちゃんに会えるのはうれしいよ」



 可愛い事言ってくれる。

 男の子がこんなこと言われたら簡単に好きになっちゃいそうだ。


 いや、そんなことはどうでもいいんだった、魔力の話をしないと。



「実はさっき魔力回路の話をしたじゃない? その話をディアにしたら、解決法を2つ教えてもらったの。 だからサクラに教えてあげようと思って」

「解決法があるの!?」



 治ると思ってサクラが期待のまなざしを向ける。

 この後さっきの話をしないといけないのか・・・・・・



「一応ね・・・・・・ただどっちもかなりきついと思う。 だからあまり期待しないで聞いて」



 私の前置きで真剣な表情になるサクラ。



「まず1つ目。 毎日魔力を限界まで使って回路を少しずつ広げていく。 これは魔力を使い続けると魔力を流してる部分が痛くなってくるのと、魔力枯渇で疲労感が強くて気絶することもあるみたい。 しかもどれくらいの期間で治るかもわからない」

「毎日コツコツ頑張るって事だね。 寝る前とかならできるかも・・・・・・」

「そして2つ目。 これは・・・・・・ディアの力を借りて無理やり回路を広げる方法。 ただこっちは全身が腫れて何日も激痛と戦うことになるって言ってた」

「激痛・・・・・・」

「ディアが言うには誇張なしで体を引き裂くような激痛だって」

「・・・・・・毎日コツコツ頑張る」



 私の言葉を聞いて少し考えるけど、想像したのか一瞬体を震わせながらコツコツやる方を選んだ。



「うん、私もそっちの方がいいと思う。 でも魔法が使えなくてもいいんだから無理はしないでね」

「うん・・・・・・」 



 少し落ち込むサクラと別れて家に戻る。

 言わない方が良かっただろうか・・・・・・でも最終的に決めるのはサクラだ。

 それでも魔法が使いたいというなら私もできるだけ協力しよう。


 家に着いた私はディアを抱っこして商店通りに向かう。



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