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62 ビワの試食会

「じゃあみんなでビワ食べようか」

「やったー」

「ビワってあのかすかに甘くて渋い果物よね?」

「初の収穫だからどんな味かまだわからなかな。 ディア、ビワのところまで案内してくれる?」

「わかったの」



 ディアがリンゴの木の方に飛んでいくので4人でその後を追う。

 前回リンゴの箱が置いてあった場所に今度はビワが入った箱が置いてあった。

 その箱からビワをいくつか取り出し、お皿に乗せる。

 収納からテーブルと椅子と屋根を取り出し、テーブルにお皿を置く。



「さあどうぞ」



 私の合図でみんな席に着きビワに手を伸ばす。



「これがビワか、優しい甘さだな。 渋みがまったくない」

「ユリアの栽培する食べ物は全部美味しすぎるのよね。 こんなの食べ続けてたら普通の食材じゃ満足できなくなっちゃうわ」

「あまーい!」



 好評のようでよかった。

 私? 食べたけど普通のビワだったよ。

 マリーの言ってた通り渋いだけなら王都で買ってきた時に食べなくてよかった。

 ディア含む精霊たちも満足しているようだし。



「ユリアよ、あのゲートを使ってここの食材を売ってもらうことはできないか? それなりの値段で買取るが」

「今作ってるのは実験用の畑なので量産はまだ先ですね。 実はそのためにカーミトの街を使おうと思ってたんですよ。 カーミトの街で大きな畑を作って、美味しい食材を栽培できる農業の街にしようかと思ってるんです」

「なるほどな。 だがそのためにはかなりの時間がかかるんじゃないか?」

「かかるでしょうね。 私が領主をするつもりもないので、別の人にやってもらうつもりですし」

「美味しい食材のためならできるかぎり協力をしよう。 ユリアの食材があれば娘たちも喜ぶしな」

「まだその相手には話してないんですけど、了承を得られたとしても領主としての勉強をしないといけないと思うんですよね。 なので王様の方で領主の教育できる人などの人材を用意ってできたりします? もちろん信頼ができる人がいいです」



 魔物は倒したので復興は可能になった。

 あとはサクラが領主になって復興をやりたいと言うかどうかだ。

 まあやらないと言ったら別の人に頼めばいいし、何なら私と精霊の街にしてもいい。



「ふむ・・・・・・わかった、候補の一覧だけは作っておこう。 もし必要になったら言ってくれ」

「ありがとうございます。 もしかしたら断られるかもしれないので、その時は街全体を畑にして私が農場にするかもしれません」

「街全体って・・・・・・国中の食材を賄う気か?」

「それもいいですけど、そうすると農家の人たちの生活に支障が出ちゃいますよね。 主に自分と精霊用にするつもりです」



 了承されても断られても精霊をいっぱい雇って大きな畑を作り、数多の食材を栽培していつでも好きな物を食べられるようにしたい。



「たしかに作物で生計を立てている村は収入がなくなり、行商などから物を買えなくなるが・・・・・・商人でもないのにそこまで考えているのか」

「どうなるかわかりませんけどね。 壊れた建物などもどうにかしないといけませんし」

「人手が必要なら手配するか?」

「うーん、建物をどうにかするだけなら魔法を使えば1人でもできるので大丈夫ですね」



 土や風魔法で砕いて埋めちゃえばいい。

 埋めちゃダメなものだけディアに選別してもらおう。



「・・・・・・そうか。ユリアができると言うならできるんだろう。 うん」



 呆れたような表情をする王様。

 この世界の魔法使いはできないのだろうか。

 そんなんで魔物と戦えるの?



「さて、そろそろ戻るとしよう。 あまり城を留守にすると宰相に怒られてしまうからな」



 ちょっと見せるだけのつもりが、ビワの試食会になってしまった。

 王族を連れまわしたと怒られても嫌なので、そろそろお開きにしようか。



「もうちょっと・・・・・・あと1個・・・・・・あと1個・・・・・・」

「・・・・・・」



 王様と話している間、姫2人は黙々と食べていたようだ。

 気づいたら最初に持ってきたお皿が種置き用になっていて、新たにビワを乗せたお皿が置いてあった。

 ディアに追加を頼んだようだ。

 せっかく育てた物を他の人たちに食べさせるとディアが嫌がるかと思っていたけど、嫌がるどころか腰に手を当ててふんぞり返っている。

 その食べてる量を見て王様がびっくりしている。



「お、おいお前たち、食べすぎじゃないか? さすがに迷惑だろう」

「育てたディアが怒ってないので大丈夫ですよ。 でもこのまま食べすぎてお腹痛くなっても困るのでそろそろ止めましょうか。 2人には、この箱をあげよう」

「え、箱?」

「?」



 渡した空箱を見て首を傾げる2人。

 興味がこっちに向いてくれたみたいだ。



「この箱に入る分のお土産をあげる。 畑にある好きな野菜を持って帰っていいから、2人で相談してね。 取り方はディアに聞いて」

「「いいの!?」」

「いいよ、ビワやリンゴが欲しかったら私に言ってね。 それ以外は畑からとっていいから」

「わかったわ! 行くわよデイジー!」

「うん!」



 箱を持って畑の方へ行く2人とディアを王様と二人で見送る。



「いいのか?」

「売って回るほどはまだないですが、自分たちで食べるには多いので、あの箱1つくらいならまったく問題ないですよ。 育てたディアも嫌がってませんし」



 私は椅子やテーブルを片付けて王様と一緒に畑から道の方へ移動する。

 しばらく待っていると2人が戻ってきた。

 箱いっぱいの野菜を持って。

 果物はいいのかな?



「これ、もらっていいのよね?」

「いいよ。 野菜でいっぱいだけどリンゴやビワはいらない?」

「「あ・・・・・・」」



 笑顔で箱を持ってきた2人の笑顔が一瞬で絶望の表情になる。

 ちょっと楽しい。



「じゃあ箱はマリーに持ってもらってリンゴはデイジーに持ってもらおうか」



 私はデイジーに小さな籠に入るだけリンゴとビワを持たせてあげた。



「ユリアありがとう」

「ありがとー」



 2人の表情がまた笑顔になる。

 さすがに泣きそうなデイジーをそのまま帰すわけにもいかないよね。



「じゃあお城に戻るからついてきて」



 3人を連れて家に入り屋根裏のゲートに行き、ゲートを開けてお城に戻った。



「本当に不思議だな・・・・・・」

「わたし、頑張ってユリアの街まで行ったのに・・・・・・」

「おとーさま、このりんごをはやくもっていこー」



 改めてゲートを通って不思議そうにあたりを見回す2人をよそに、デイジーはリンゴの事しか考えていないようだ。

 食欲旺盛で可愛いこと。



「じゃあ私はこのまま帰りますね」

「ん? ああ、魔物の報酬は数日中にはまとめておこう」

「特に急いでないのでのんびり待ちますよ。 じゃあね2人とも」



 私は3人に手を振って家に戻りゲートを閉じる。



「まだ時間はありそうだね。 鶏の小屋を作ってあげないと。 このままじゃかわいそうだし」



 外に出ると、家を挟んで畑の反対側、孤児院のある方に作ることにする。

 まずは地面を少し掘り、目の細かい網状の床を敷き詰め、周りには1mほどの高さで壁を作っていく。

 他の動物に地面掘って襲われないようにするのと、鶏が挟まったりしないように低いところは壁だけ。

 それにこの世界の鶏は自分でも地面掘ってたし、その対策も兼ねてだ。


 網状の床の上に土を盛って外と高さを合わせ、次に壁の上に格子状の壁と天井を作って行く。 

 鶏小屋の奥の方は雨風をしのげるように格子状じゃなくて普通の屋根と壁に。

 この小屋は南東方向を向いてるので、これで日が入りやすいでしょ。


 壁ができたら、なるべく日を遮らないように隣接した物置小屋を作り、鶏小屋と外を通れるようにする。

 何か必要な物を置けるようにと、扉を開けたとき鶏が外に出ないようにするためだ。

 物置小屋の内装は追々として、鶏を小屋の奥に入れてあげよう。

 鶏を奥の屋根付きの方に放してあげ、餌としてトウモロコシと水を用意して小屋を出る。



「これでいいかな。 あとは朝になったら屋根のない方に出してあげよう。 問題は私のいない間の世話をどうするかだけど・・・・・・精霊ってできたりするかな?」



 私は畑の方に行ってディアに聞いてみる。



「ねえ、ディアって動物の飼育ができたりする?」

「精霊として、という事なら精霊にそういう力はないの。 わたし個人としてと言うことなら、覚えればできないことはないと思うの」

「私がいない時は精霊たちにお願いしようかと思ったけど、畑みたいに適性があるわけじゃないなら他に頼もうかな」

「ごめんなさいなの・・・・・・」



 この子は私の役に立てないとすぐ謝るんだから・・・・・・



「悪いのは後先考えずに仕事増やした私なんだから、ディアが謝ることないんだよ」



 ディアを抱っこして背中を撫でる。 

 しばらくそのまま撫でていたらいいことを思いついた。



「サクラにお願いしてみようかな。 サクラの街で飼育してたならサクラもできるかもしれないし。 そうと決まれば暗くなる前に孤児院に行かないと。 ごめんねディア」



 ディアをその場に降ろして孤児院に走っていく。

 孤児院に着いた私は扉をノックせず、裏手のアスレチックの方に向かう。

 もしかしたら遊んでるかもしれないし。

 裏に行くと案の定子供たちが遊んでいて、サクラもその中に混ざって遊んでいた。 

 私は遊んでいたサクラを呼ぶと、こちらに駆けてくる。



「ユリアちゃん、どうしたの?」

「ちょっとサクラにお願いがあってね」

「お願い? 何?」

「サクラって鶏のお世話ってできる?」

「2羽の鳥? 覚えればできると思うけど。 ユリアちゃん鳥を飼い始めたの?」

「あ、ごめんね。 鶏っていうのは私の国での呼び方で、こっちの国だとセーフコカトリスっていう鳥なんだけど」

「ニワトリって名前だったんだね。 大丈夫、私のいた街で飼育してたからある程度はわたしもわかるよ。 明日からすればいい?」

「できるならお願い。 最初は普段自分で飼育できない時だけお願いしようかと思ってたんだけど、どうせなら仕事として依頼しちゃおうかなって」



 サクラが仕事をすれば依頼に行くこともなくなると思うし。



「依頼?」

「そうそう。 卵の回収とニワトr、コカトリスのお世話をお願い。 もちろん1日中ついてなくていいからね」

「わかった。 明日の朝さっそく飼育場所を見に行くね」

「うん、よろしくね。 院長先生には私からも言っておくから」



 話が終わると、サクラは再度遊具で遊び始めた。

 こうしてみてると本当に子供だなって思う。

 私は院長先生を探し、サクラに仕事の依頼をしたことを説明したあと家に帰る。



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