61 お城の一室を借りる
「さて、では戻るとしよう。 ユリアはどうする?」
「私は家を建てようと思ってるので、土地を買いに行こうと思ってます」
材料の木はフォレストタイガー討伐の時に増えたので大量にある。
なので土地を買って家を建てようと思う。
さすがにその辺や宿屋にゲートを作るわけにはいかないしね。
「王都に住むのか? 住まないなら家を買うのは金の無駄だと思うが。 たまに王都に来る程度なら城の部屋を1つユリアの部屋にしてもいいぞ?」
「え、貴族でもない部外者なのにそんなことしていいんですか?」
そもそも、今日マリーに案内されてお城の奥まで行ったけど、一般人の私が入っていい場所なの?
それに、お城の部屋をもらうということは、ゲートの事も話さないといけない。
いきなり来たり帰ったりしたら絶対怪しまれるし。
うーん、話していいならお城でもどこでもいいんだけど、はたして話してももいいんだろうか・・・・・・
あ、でもゲートは精霊の力だから精霊使いなら他の人も使えるのかも?
それなら隠す必要もないか、秘密にすると使いにくくなるし。
「食べ物については本当に感謝している。 チーズの村の事を含めてだ。 それに娘たちも懐いているみたいだしな。 それにユリアは貴族ではないが、ランクBともなれば下級貴族くらいの地位はあるからそこまで問題ない。 街を襲った魔物も倒しているしな。 国への貢献としてはそこいらの貴族よりもしているだろう」
それだけの理由で部外者に部屋を与えるかな・・・・・・部屋を与えるから国の指示に従えとか言わないよね?
まあ言われたら出ていくだけだけど。
うーん、なんだろう、そんなに簡単に貰っても大丈夫?
裏があったりしない?
「何か面倒なこととかあったりします? 国から依頼が来るとか」
「特にそんなつもりはないぞ。 感謝の気持ちで提供するんだ、こちらから何か要求するつもりはない」
無条件で貸してもらえるなら借りてもいい、かな?
「それならお願いします」
「わかった、部屋決めもあるからこのまま城に戻るか」
私と王様は馬車に乗り、お城に向かう。
一緒に乗っていた護衛の騎士は王様に指示されて解体場所に残るそうだ。
護衛誰もいなくていいの?
一応御者にはいるけど。
「部屋に関しての要望はあるか? 欲しい家具や部屋の場所などできるかぎり希望にこたえるつもりだぞ」
「家具の希望はない、というかそもそも部屋じゃなくてもいいというか、えっと・・・・・・」
別に部屋でなくてもいいんだよね。
お城の外壁の内側とかに設置したって良い、どうせ通るだけだし。
「なんだ、城の庭に家でも建てたいのか?」
「そういうわけではなくてですね。 その、ゲートを作る場所が欲しいだけなんですよ」
「ゲート、とはなんだ?」
「うちに精霊がいるって言いましたよね? その精霊と契約したらゲートを作れるようになるんですよ。 色々制限はありますが、ゲートを2つ以上作ればゲート同士を行き来できるんです。 なので王都にも作って移動を楽にしようかと思ったんです」
「・・・・・・離れた場所をつなぐゲートを作れると? 過去にも精霊使いがいると聞いたことはあるが、そんなことができるとは聞いたことがないな。 まあ精霊使い自体が少ないから情報が少ないのは仕方ないが。 いや、それよりもどこまで規格外な冒険者なんだ・・・・・・」
あれ? 精霊使いだとみんなできるわけじゃない?
あ、地脈移動だから土の精霊だけという可能性もあるか。
習得条件が確か「土の上位精霊と契約」とかだったはずだし。
「設置した私しか使えないとか、設置できる場所に制限があったりと万能ではないですけどね」
「いや十分すぎるだろう。 つまりゲートでいつでも家に帰れるから家具はいらないし部屋である必要もない、という事か」
「そういう事ですね。 こちらとしては便利ですがそちらとしては使えないのでただの装飾です」
「ゲートを通じて呼びかけたりはできないのか?」
「できませんね。 閉じると繋がりが消えるみたいなので。 それに開いたままにもできませんし」
開いたままにしておくと他のゲートから開いてるゲートを通れない。
ゲートを複数同じところに置けば通れるだろうけど、開いたままにして他の人が使えるようになるといろいろ面倒そうだから教えるつもりはないし。
「そうか、いざというときに連絡が取れるといいと思ったんだが・・・・・・」
「依頼とかはしないんじゃないんですか?」
「普段はしないが何があるかわからないからな。 カーミトの街のようなことが無いともいえないだろう。 そういう緊急時に連絡を取る手段があると後手に回らずに済む」
「本当に緊急時であれば、うちにいる精霊に伝言してもらえれば私にすぐ連絡が来ますよ」
「そうなのか? だとすればとりあえずはモウイの街へ行くだけで連絡が取れるというわけか」
「私も精霊もいなかったらどうしようもないですけど、うちの子は畑にいるのが好きなので、私が無理やり連れ出さなければ基本的に家にいるので大丈夫だと思います」
「わかった、緊急時はそうさせてもらおう。 そうならないのが一番だがな」
話をしながらお城の門を通り、馬車から降りた私はまたお城の中に入って行く。
どこの部屋がいいか王様と話しながらお城の中をゆっくり進む。
結局部屋はマリーやデイジーの部屋の近くになった。
理由としては私が会いに行くのが主にその2人という事と、私の部屋の掃除などをマリーやデイジーの部屋を掃除してるメイドに一緒に頼むためだそうだ。
家具などはあっても掃除の邪魔になるので撤去してもらい、ゲートだけを設置した。
ゲートはその場に設置することもできるけど、壁に設置することもできる。
壁に設置すれば隣の部屋への扉のように見える。
部屋にドンとゲートを置くよりも邪魔にならないし、見栄えも良くなる。
家具がないので部屋としての見栄えはかなり寂しいけど。
「これがゲートか・・・・・・これを開けると他のゲートの先に行けるんだよな? 見せてもらってもいいか?」
「それくらいはいいですけど」
設置したゲートを開けて私の家へ繋ぐ。
「ほんとに違う場所へ繋がっているな・・・・・・一見通れそうだがユリアしか通れないんだよな?」
「開けられないだけで開いてれば通れますよ。 モウイの街に行きます?」
「通っても問題ないなら行ってみたい」
「それならせっかくなのでマリーたちも連れて行きます?」
「いいのか?」
「マリーは前回も来てますけど、デイジーは来てませんからね。 せっかくなのでデイジーも連れて行ってあげましょう」
「なら呼んで来るからちょっと待っててくれ」
王様自ら呼びに行ってしまった。
そういえば護衛とか連れてかなくていいのかな?
そんな事を考えていたら、すぐ3人で戻ってくる。
まあすぐ近くの部屋だしね。
「ユリアの街に行くって本当なの?」
「ゆりあのいえにおでかけ!」
「本当だよ。 この開いてるゲートを通って行くからね。 護衛とか呼ばなくて大丈夫ですか?」
「すぐ戻るから問題ない」
王様が大丈夫だと言うので、そのまま行くことにする。
一応ディアに念話で王様たちを案内することを伝えておく。
王様とデイジーとマリーを連れてゲートを通る。
ゲートを通って最初に目についたのが鶏だった。
そういえば置きっぱなしだったね。
「これは何だ?」
王様が鶏の閉じ込めてある箱を見て聞いてくる。
「これはカーミトの街の北の森で捕まえてきた、セーフコカトリスとか言う鳥です。 この鳥を捕まえに行ったついでに街に行ったら襲われたんですよ」
「なるほど、これが目的だったのか」
「ここは何もないただの屋根裏なので外に行きましょうか」
「ああ、そうだな」
階段を下りるときに気づいたけど、ゲートから入ってきた場合靴の履き替えができないね。
玄関には普通にスリッパのような履物が用意してあるけど、ゲートの方には用意してなかった。
この家の床自体は汚れないけど埃などは積もっていく。
だから掃除しなくていいということはないんだよね。
洗浄魔法で奇麗になるから、自分にかけるついでに範囲を広げて家ごと奇麗にできるけど。
この世界での一般家庭がどうだか知らないけど、孤児院やお城は靴のままだった。
前にマリーが来たときは特に何も言われることもなく履き替えてたから、この世界でも履き替える人はいると思うけど。
まあ簡単に奇麗にできるし、細かくこっちに合わせてもらうこともないか。
3人を連れて階段を下りて外に出る。
1階で精霊たちがサトウキビ食べてるかと思ったけど、家の中にはいなかった。
畑のお手伝いでもしてるのかな?
「どうです? と言っても見てもすぐにはわからないと思いますけど、王都ではないのはわかりますよね」
「そうだな。 周りを見た感じ王都の街でないのはわかるが・・・・・・本当にモウイの街へ来てしまったのか」
王様は口を開いたまま周りを見ている。
「何なら領主の所にでも行きます?」
「いや、急に俺が現れても困るだろう。 それに護衛も連れず娘と3人で来たのがバレてもまずいしな」
なら護衛連れてくればよかったのに。
「モウイの街には来ましたけどどうします?」
「ユリアの畑が見たいわ。 前来たときはちゃんと見てなかったし」
私の質問に答えたのはマリーだった。
王様もそれに賛成して畑へ行くことになった。
行くと言ってもすぐ隣だけど。
「ディア、ただいま」
畑仕事しているディアに声をかけると、こちらにフヨフヨ飛んで来る。
「マリーは知ってるよね。 私の娘のデアソリットだよ」
「この娘が土の精霊なのか? 文献に載っていたよりも大きい気がするが?」
「お久しぶりね」
「かわいー」
三者三様の反応を見せる。
そういえばディアは普通の精霊より大きいんだよね。
ディアを抱っこしたまましゃがみ、デイジーの視線の高さに合わせると、デイジーがディアの手を取ってぶんぶん振っている。
すごくいい笑顔だ。
対するディアは無表情だけど。
手をぶんぶんされながらディアは私の方に話しかけてくる。
「ママ、ビワとイチゴが育ったの。 収穫してあるからあとで回収してほしいの」
「あ、とうとう収穫できたんだ、あとでみんなで食べようね」
「本当にいろいろと育てているんだな。 個人の畑とは思えない広さだ」
「これが全部美味しい食材なのよね・・・・・・やっぱりここに住みたいわ」
「これぜんぶおいしいの!?」
「この子が頑張って育ててくれてるからね。 世界で一番おいしい食材だよ」
私の言葉にデイジーの目が輝く。




