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60 フェンリルの解体をお願いする

「王様もいるし、ついでに報告もしちゃいましょうか」

「報告? 何の報告だ?」



 さっそくお酒を注いで飲んでいる王様が首を傾げる。

 昼間からそんなに飲んでていいのかな?

 最初に渡したの私だけど。



「この前貰ったカーミトの街の事ですよ。 あそこにいたフェンリルを倒したので、一応報告しておいた方がいいかなと」

「は!? あの街の魔物を倒しただと!」



 王様の大声にお姫様2人がビクッとする。



「たまたま近くに行く用があったので、ついでに街を見に行ったら襲ってきたので倒しちゃいました」

「倒しちゃいましたってそんな簡単に・・・・・・魔物の、その、アレは街にあるのか?」



 食事の席だからか娘がいるからか、死体という言葉を避けたのかな?



「いえ、収納してますので私が持ってますよ。 モウイの街に戻ったらギルドで解体してもらおうかと思ってます」

「それなら王都で解体するか? 報告ではすごく大きい魔物だと聞いている。 街や街のギルドでは解体、販売共に捌ききれないだろ。 それにいくらの値が付くかわからん魔物だ、街で買取れるかもわからないしな」



 確かにフェンリルはすごく大きい。

 立った状態で街の壁より高さがあるのだから。

 そもそも値段と言っても、過去にないだろうから相場なんてないと思う。


 こういう場合はどうしたらいいんだろうか?

 私は信用できる大人が少ないし。

 孤児院の院長先生以外そんなに知らないんだよね。

 モウイのギルマスさんは悪人ではなさそうだし、王様もいい王様っぽい。

 リーアのお父さんはいい人っぽいけど会ったことがない。

 そうなるとこのまま王様に売っちゃってもいいのかな?



「確かに大きいからどうしようかと思ってたんですよね。 街中で出すわけにもいかないから、門の外に出て解体してもらわないといけませんし」

「そんなに大きいのか? 報告で大きいとは聞いていたが、実際の大きさは知らないんだ」

「立った状態で街の壁より高いところに頭が来るくらいですからね大きいですからね」



 この世界の街の壁は大体6~7mくらいだ。

 それから比べると倍近くあるけど、王都は10mくらいあるので倍とまではいかないかな。



「それほどの大きさなのか、よく倒せたな」

「魔法が効かなかったのでぶん殴りました。 蹴りもしましたけど」

「はぁ・・・・・・」



 王様は額を抑えてため息をついている。

 何で呆れられてるんだろうか?



「まあいい、城買い取るなら言ってくれ。 すぐに解体や運搬要員を用意する」

「じゃあせっかくなのでおねが・・・・・・あ、でもここで買取りしてもらうとモウイの街には何の利益もなくなっちゃうんですよね?」

「確かに城で全部買取りと販売をするとモウイの取り分は無くなるな。 なら販売利益からモウイの街の冒険者が活躍したと謝礼金を渡すのはどうだ? 人件費や何やらとこちらも必要だが、モウイの街にも渡すと約束しよう」



 モウイの街というより、サクラやリーアのいる街が少しでも豊かになってくれればと思う。



「それはいいですね、お願いします。 で、どこに出します?」

「聞いた大きさなら城でできなくもないが・・・・・・ギルドに近い方が運搬が楽だし、ユリアの言うとおり王都の外でもいいか?」

「王様の指示通りに出しますので、どこでもいいですよ」

「そうか、なら今すぐ人員を手配するから城の門で待っていてくれ」



 そう言い残すと王様は残っていたお酒を飲み干し、お土産に渡したお酒を持って部屋を出て行った。

 真面目な話をしてたのにお酒持って出て行ったからちょっと笑えてくる。

 私は食後のお茶用に煮ていたアップルティーを2人に出した後、使っていたものを片付けていく。


 2人が飲み終わった後、カップも片付けて、また来ると約束して私も部屋を出ていく。

 部屋を出た後は来た道をそのまま戻り、城を出て門のところまで行く。

 門のところには王様が待っていた。

 もしかして王様も行くの?



「おう、来たか。 これに乗ってくれ」



 私は促されるまま馬車に乗る。

 一緒に乗っているのは騎士1人と王様で、王様用なのか大きい馬車だ。

 前回乗った速く移動する馬車も大きいと思ってたけど、それよりも豪華な作りだ。


 移動中暇だったので、さっき作って2人に出してたアップルティーを飲みながら待つことにした。



「それは何だ?」

「これは簡易アップルティー。 リンゴの皮や芯を乾燥させた後、煮て作った物ですよ」

「ほう、それもリンゴで作ったのか」

「飲みます?」

「貰おう」



 新しくカップを出して王様の分も用意してあげる。

 護衛の騎士が驚いているが王様は気にせず飲み始める。



「甘酸っぱいな、それにすごくきれいな色だ。 皮や芯という事は捨てる部分で作ったという事か」

「芯はそうですね。 皮はそのまま食べてもいいのでどっちでもいいと思います。 皮なしだとここまで色は付かないと思いますけど」

「リンゴだけで色々なものを作るな・・・・・・」

「リンゴ酢も飲んでみます?」

「まだなにかあるのか?」

「うーん、これはそのまま飲むのはきついかもしれませんが・・・・・・はい」



 私はお猪口のような物を作り、お酢を少し入れて渡す。



「蓋を開けただけですごい匂いがしないか? まあ飲んでみるか・・・・・・ぶはっ! 何だこれは!?」



 王様の反応に騎士が私を睨み武器に手をかける。



「だからリンゴ酢ですよ。 すごい味ですけど健康食品ですよ? 普通は料理に入れたり薄めて飲みますけどね」

「本当に体にいいのか? というか薄めて飲むものなら薄めて出してくれ・・・・・・」

「だからお試しで少ない量にしましたよね? そのまま飲めるようなら薄めずそのまま飲む人もいるので」

「これをそのまま飲むのか・・・・・・信じられんな」

「私も薄めないと飲めないですね」

「これもリンゴなのか? 酸っぱい匂いしかしないが」

「ちゃんとリンゴで作ってますよ。 穀物酢なんかはもっとキツイので、これは比較的飲みやすい方だと思います」

「健康食品という事は毎日飲むといいのか?」

「そうですね、大体その容器の半分くらいを毎日飲むと肥満や血糖値、血圧などが改善されます」



 って詳細に書いてある。

 体にいいのは知ってたけどちゃんとした効果までは知らなかった。



「その程度でいいなら毎日飲むのも苦ではないな、何かで薄めてもいいなら飲みやすくもなるだろう」

「あ、これは作るの大変ですよ? 材料というより時間的に。 半年近くリンゴを浸けておかないといけないので」

「半年か・・・・・・これもどこかの村で作らせてみるか? いや、いっそリンゴの村を拡張してユリアの作ったものを作らせるか・・・・・・」



 王様は目を閉じてリンゴ酢含めた私が作ったものをどこかで生産できないか考え始めた。

 それって私に作り方を教えに行けって事?

 すごくめんどくさいんだけど・・・・・・


 王様が悩んでる間に外に出たようで、馬車が止まる。

 考えていた王様は考えるのを中断し、騎士に続いて出ていったので私も外に出る。


 門の外、道から少し離れた場所に何十人もの人が待っていた。

 大きいからこのくらい必要になるのか。



「それではユリア、そっちの日陰になっている壁の方に出してくれ」



 日光が当たらないように王都の壁で日陰になっている辺りを指さしたので、そこにフェンリルを出す。 


 あれ、誰も反応しないな

 そう思って王様や作業する人たちを見回すと、みんな目を見開いていて口が開いていた。

 驚いて声が出ないって事か。



「・・・・・・こんな大きな魔物が街にいたのか。 それ以上にこんな大きな物を収納できるなんて凄い魔法だな。 いや、スキル持ちか?」



 スキルは珍しいってサクラが言っていた。

 つまり持ってる事を知られると面倒という事だ。

 スキルより魔法があるなら魔法って事にした方がいいかな?



「私は魔法使いなので、魔法は得意なんですよ」



 魔法が得意とは言ったけど収納魔法とは言ってない。

 うん、うまくごまかせた。



「よほど魔法に適性があるんだな。 ここまで大きい物が収納できる者は賢者にもいないだろう」

「陛下、お話し中申し訳ございません。 腐敗する前に作業を開始しませんと・・・・・・」

「おっと、そうだったな」



 護衛の騎士に言われて、王様が解体する人たちのリーダーらしき人の所に話に行ってしまった。

 私はすることもないので、周りを警戒しつつフェンリルを眺めている。


 しばらくボーっとしていると王様に呼ばれたので私も近くに行く。



「ユリアよ、解体した物で欲しい物はあるか? いらないようであれば買取るが」

「討伐記念の魔石ですかね? 後は美味しいなら食べてみたいのでお肉と・・・・・・何か珍しい物があればそれも」

「毛皮や牙、血液や内臓はどうする?」

「毛皮も記念にあってもいいですね。 牙はいらないので買取ってもらっていいですよ。 血液や内臓って何かに使えるんですか?」

「それはわからん。 薬や魔法研究に使ってみて何かができるかもしれない、という程度だな」

「その辺りは全くわからないので買取ってもらっていいです」

「わかった。 聞いてたな? 毛皮と肉の一部と魔石、それから希少な物があれば販売には回さず保管する事。 以上だ」



 私との会話の後、解体のリーダーに追加の指示を出し、今度はそのリーダーが作業する人たちに指示を出し解体が始まった。



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