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58 マリーに会うためお城へ

「何の用だ?」



 お城の門に近づいたら門番に声を掛けられる。



「私は冒険者のユリアです。 マリーから話は聞いてますか?」

「冒険者ユリア? あー、アマリリス様から話のあった・・・・・・一応身分証を」



 ここでもギルドカードを見せる。



「・・・・・・本物のようだ。 失礼いたしました。 案内の者を呼びますので少々お待ちください」



 門番の1人が中に入って行く。


 ボーっと待っていると後ろから馬車の音がした。

 振り返ってみると豪華な馬車が走っている。

 貴族でも来たのかな?

 あまり見ててからまれても嫌なので、門の方に視線を戻したまた待つ。


 再度ボーっとしていると後ろから体当たりされる。

 あ、なんか既視感が・・・・・・



「ユリア!」



 振り返るとマリーが抱きついていた。

 さっきの馬車はマリーが乗ってたのか。



「マリー数日ぶり、遊びに来たよ」



 軽く手を上げて挨拶する。



「ずいぶん早く来てくれたのね。 それにしてもこんな所で何してるの? 中に入りなさいよ」

「今案内の人を呼びに行ってくれてるみたいで、待ってたの」

「通すように言ってあったのに、私の客人を待たせるなんて許せないわね。 いいわ、私がこのまま連れて行ってあげる」

「いや、たとえそのまま中に入れてくれたとしても、どこに何があるかわからないから迷子になると思うよ?」

「それもそうね。 なら今日で覚えて頂戴、私とデイジーの部屋の場所を教えてあげるから」

「うん、ありがとう」



 マリーは門番を無視して私の手を引き、門の中に入って行く。

 私は門番に軽く会釈をして、マリーに引っ張られていく。

 そしてそのまま真っ直ぐお城の入り口まで行くと、中に入る。



「私とデイジーの部屋は奥の方だから、入り口から遠いけどなれればすぐわかるわ」



 そういって手を引いたまま階段を上ったり廊下を進んだりして行く。

 まあ普通に考えて王族の部屋を入り口の近くにしないよね。


 案内された部屋はかなり奥の方だった。

 だいぶ複雑だったけどこの道だけ覚えるなら問題ないと思う。

 最悪地図を見ればいいし。



「ここが私の部屋で3つ隣がデイジーの部屋よ」

「隣じゃないんだね」

「間は私の勉強部屋と着替えが置いてある部屋よ。 デイジーが生まれる前に用意してあったものだからこういう部屋割りになってるみたい」



 あ、なるほど、そういうことか。

 着替えが置いてあるだけの部屋ならまだしも勉強用に本棚とか置いてあったら移動が大変だよね。

 マリーは部屋の説明をした後、そのままデイジーの部屋の前まで行く。



「デイジー、私よ、開けて頂戴」



 扉をノックしてマリーが声をかける。

 少しすると扉が開き、デイジーが顔を見せる。



「おねーさまおかえりなさい」

「今日はお客様を連れてきたわよ」

「おきゃくさま?」



 マリーの後から部屋に入る。



「やあデイジー、遊びに来たよ」



 デイジーに手を振りながら挨拶する。



「あ! パンのひと!」



 パンの人・・・・・・まあ最初に会ったのがパンの試食だからその印象も仕方ないんだけど。

 まあ覚えててくれただけいいか。



「私の名前はユリアだよ。 改めてよろしくね」

「ゆりあ! よろくし!」

「今日はデイジーに何か美味しいもの持ってきてくれたの? それとも別の用事?」

「おいしいもの!?」



 デイジーがマリーの美味しい物発言に食いついた。

 お昼はとっくに過ぎてるけど・・・・・・



「もうお昼は過ぎてると思うけど?」

「私はまだ食べてないわね、戻ってきてから用意してもらうことになってたから」

「わたしはたべた」



 食べたのにまだ食べるのか。

 まあおやつ程度なら問題ないかな。



「デイジーは軽いおやつでいいとして、マリーはどうする? 食べるなら厨房に一言言わないといけないんじゃない?」

「ユリアが昼食を用意してくれるなら厨房に連絡してもらうわ」

「私は作ってもいいよ。 ここで作ることになるけど」

「それは構わないわ。 じゃあちょっと厨房に伝言頼んで来るから昼食よろしくね」



 よろしくと言われたけど何を作ろうか。

 食材の品質が良くなっただけでそこまで種類が増えたわけじゃないんだよね。


 新しいものだと・・・・・・コロッケか。

 キャベツの千切りも用意してパンに挟んでコロッケサンドなんかいいかも。

 後は一口サイズに切ったトマトを添えれば色合いも悪くないかな。


 最初にアップルティー用にリンゴの皮と芯を煮ておく。

 次は前回と同じようにコロッケの準備をして、今回はパンに挟むのでタネは少し小さくする。

 パンが小さめだから仕方ない。

 コロッケがはみ出したのもインパクトがあっていいけど、最初だから見た目は普通に。


 コロッケを揚げた後、油を切って、その間にキャベツの千切りとトマトを小さく切っていく。

 最後はいつもどおりスライスしたパンにバターを塗り、千切りしたキャベツを乗せる。

 油を切ったコロッケをキャベツの上に乗せパンで挟む。

 コロッケサンドを大皿に乗せていき、トマトと塩を添えて完成。 


 ずっと見ていたデイジーと、戻ってきて途中から眺めていたマリーをテーブルに座らせ、大皿を真ん中に置く。

 最後にデイジー用のリンゴを準備し、2人に洗浄魔法をかける。

 昨日皮と芯を取ったリンゴがいっぱいあるので、デイジーのリンゴはそれを出した。

 デイジー用のリンゴとフォークをデイジーの前に置き、コップを3つ用意してリンゴの炭酸ジュースを注ぐ。



「はい、お待たせ。 デイジーにはデザートのカットしたリンゴ。 マリーのお昼はコロッケサンドとトマトだよ、塩は好みでつけてね。 私も食べるから少し多めに作ってあるよ。 飲み物はリンゴの炭酸ジュース、シュワシュワするから慣れるまでは一気に飲まないようにね」



 ディアもいるから私は帰ってから食べようかとも思ったけど、念話で聞いてみたら無理に合わせなくていいと言われた。

 それだけ聞くと怒ってるようにも聞こえるけど、ディア的には「私が家にいるなら一緒にいたいし一緒に食べたい」だけで、私の予定や行動を中断してまで一緒にいたいわけでは無いようだ。

 前に枷にはなりたくないとか言ってたもんね。


 でも子供を家に放置して友人との食事会をしてると思うと、ちょっと罪悪感が・・・・・・

 ディアからしたら「長い人生の中の一食程度」なのかもしれないけどね。



「このパンもおいしー?」



 ディアの事を考えていたら、リンゴには目もくれず、コロッケサンドに興味津々なデイジーの声で意識が戻って来る。



「私は美味しいと思ってるよ。 食べられるなら1つ食べてみてもいいからね」

「作ってるときの音がすごかったわよねこれ。 まあいいわ、ユリアが美味しいというなら美味しいんでしょう。 さっそく頂こうじゃない」



 2人ともコロッケサンドに手を伸ばしたので私もコロッケサンドを食べる。


 ザクッ!っといい音が響く。

 揚げたてのこの食感はやっぱりたまらない。

 キャベツもしなってないからシャキシャキしてておいしい。

 あーソースが欲しい・・・・・・


 私が食感を堪能してる間2人とも咀嚼しながらコロッケを凝視している。

 揚げ物の食感はどうかな?



「どう? 美味しい?」

「何この食感、ザクザクしてるのに中はホクホクしててすごくおいしい。 キャベツもこんなにシャキシャキしてるの初めて食べたわ」

「じゃくじゃくたのしー、おいしー」



 2人に満足してもらえたようでよかった。

 オークの肉もあるしとんかつとかも作ってみようかな。

 卵があれば小麦粉じゃなくて普通に衣付けられるし。



「このトマトも塩なしでそのままおいしいわね。 いつも食べるのだと水っぽいというか苦いというかあまり美味しくないのよね」

「わたしもたべるー。 あ、とまとおいしー」



 パンとトマトを美味しそうに食べてたマリーが炭酸ジュースを口に含んでむせていた。



「何これ! 口の中がシュワシュワするんだけど!」

「いや、それさっき説明したでしょ。 シュワシュワするからゆっくり飲んでって」

「まさかこんなにすごいとは思わなかったわ」



 炭酸としてはぜんぜん強くないけど、初めてだときつく感じるのかな?

 マリーがちびちび飲んでる向かいでデイジーが炭酸ジュースをごくごく飲んでいる。

 この子の口の中はどうなってるんだろう・・・・・・

 パンとトマトを食べたデイジーが今度はリンゴに手を伸ばす。



「このリンゴすごくおいしー! おねーさまもたべてみて!」

「え? それはただのリンゴでしょ? 手を加えてないならいつものと同じなんじゃ・・・・・・」



 訝し気にマリーもデイジーのリンゴを食べる。



「え、なにこれ!? ほんとにリンゴなの!? いや、味はリンゴなんだけどいつものと違いすぎてなんかもう.・・・・・・言葉にならないわ」

「リンゴもそのままで美味しいでしょ。 今日の料理の野菜や果物は全部うちで採れたもので作ったんだよ。 飲んでるリンゴジュースもうちで採れたリンゴで作った物だし」

「わたし、ゆりあのいえにすみたい!」

「それなら私もお城よりユリアの家の方がいいわ」



 そんなにお城の料理はいまいちなんだろうか・・・・・・厨房の人たちがかわいそうだ。



「前回王様にレシピ教えたはずだけど作ってもらってないの?」



 確かジャムの作り方を教えたし、チーズのパンも作るようなことは言ってたと思うけど。



「ジャムだっけ? まだうまくできないみたいで研究中だって聞いたわね。 それ以降どうなったか聞いてないわ」

「そうなんだ・・・・・・」



 うまくできないって、そんなに難しい要素ある?



「ねえユリア、このリンゴやパンをお父様にも食べさせてあげたいんだけどいい?」

「それは別にいいけど。 じゃあ新しく作ろうか」

「ありがとう、呼んで来るわね」



 え、今呼ぶの?

 仕事中じゃない?

 まあいいか、仕事中なら誰かに持って行ってもらえばいいし。



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