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57 コウスラと王都へ

「ふぅ、これで一段落かな」



 最初は焦ったけど、無事倒せたので、振り返ってコウスラたちのいる囲いの方を見る。

 すると、コウスラが囲いから出てきていた。

 スライムはあの空気穴程度の隙間で出てきちゃうのか・・・・・・


 私はコウスラの近くに行き、話しかける。



「どうしたの?」



 しかしコウスラは私に反応せず、フェンリルの方に近づいていく。

 倒したからもう大丈夫だと思うけど、ちょっと心配になる。

 地図で周りを警戒しながらコウスラの後についていく。


 そのまま見ているとコウスラがフェンリルの前足にくっついた。

 もしかして食べようとしてる?

 お肉を食べたら人間襲っちゃったりしないかな・・・・・・



「コウスラ、お腹空いたの? リンゴあるよ?」



 話しかけるが反応がない。

 しばらく眺めていると、どんどん不安になっていく。


 私はコウスラをフェンリルから離そうと手を伸ばしかけたところで、コウスラがフェンリルから離れて近づいてくる。

 私の方に近づいてきたのでそのまま両手に乗せてあげる。

 コウスラがくっついていたフェンリルの前足を見るが、特に何も変わっていなかった。

 食べてたわけではない?



「何してたの?」



 コウスラに聞いてみると、コウスラがいつもの波打つようなうねうねではなく、グニャグニャとうごめき始めた。



「え、ちょっと大丈夫!?」



 そのまま少しの間グニャグニャした後、形が変わっていく。

 次第に4本の足が生えてきて尻尾も出てくる。

 頭ができてくると耳や牙などどんどんリアルな形になって行った。



「もしかしてフェンリルの姿をまねしたの? すごい! そっくりじゃない!」



 私の両手の上には小さいフェンリルが乗っていた。

 毛の感じも見た目も瓜二つだ。

 触った感触も肉や骨の感触があり、毛は柔らかくフサフサしていた。

 姿の変わったコウスラをあちこち触っていると、コウスラが私の手に頭をこすりつけてきた。

 やばい、可愛すぎる。



「もしかしてその姿だと早く走れたりする?」



 私の質問にコウスラが頷くと、手から飛び降りてすごい速度で走り始めた。

 身体能力までフェンリルと同じようになってる?

 これならいっしょに連れて歩けるかも。



「他にも何かできることある?」



 コウスラが私の言葉に反応して炎を吐いたり蒼白くなったりしていた。

 フェンリルの技なんかも真似できるみたいだ。

 極めつけは・・・・・・



「わぁ・・・・・・」



 コウスラが巨大化してフェンリルと同じサイズになった。

 大きさは自由自在なのね。

 元のフェンリルより優秀なんじゃない?



「元のスライムには戻れるの?」



 そう言うと、今度はどんどん縮んでいき、小さなフェンリルになった後、元のスライムの姿に戻った。

 と思ったらまたフェンリルになって、その後すぐにスライムの姿に戻った。

 一度変身したものにはすぐなれるみたいだ。



「もしかして私に変身とかできる?」



 コウスラはフェンリルの姿になって首を振った。

 できないみたいだ、条件があるのかな?

 そしてフェンリルの状態だとスライムより感情がわかりやすい。

 いいね。



「ねえ、コウスラってフェンリルの状態で私を乗せて移動できたりする?」



 あの速度で移動できるならゲートを使わない移動がかなり速くなる。

 コウスラは馬位のサイズになりお座りをする。

 乗っていいのかな?

 恐る恐る乗るとコウスラが立ち上がり歩き始めた。



「おお! すごい、眺めもいい!」



 私が喜んでいるとコウスラが速度を上げて瓦礫の上を走り回る。

 瓦礫の上を走り回って気付いたのが、風をあまり感じない。

 これだけの速度で移動してるのに、正面からの風もほぼないし、振り回されたりもしない。

 自分で全力疾走する時は、周囲に風魔法で障壁のようなものを作って風を緩和しないと、風がやばいことになる。

 これってもしかしてものすごく快適な移動ができるのでは?

 試しに王都まで行ってみる?



「この後王都まで走る事ってできる?」



 コウスラが首を縦に振る。

 行けるようだ。

 カーミトの街にゲートは作ったし、鶏だけ家に置いて王都に行ってみようかな。

 あ、元の方のフェンリル回収しないと。


 コウスラから降りてフェンリルを回収したあとゲートを開き、大き目の箱を用意して鶏を入れておく。

 これで準備はOK。



「じゃあこのまま門を出て王都まで行ってみて。 もし辛かったら言ってね、休憩なり交代なりするから」



 再び頷いたコウスラが門を出た後、大きくなる。

 しかしそのまま動かず、私の方を見ている。



「どうしたの?」



 私が首をかしげていると、コウスラは周囲を見回すような動きをする。

 あ、もしかして方角がわからないのかな?



「もしかして方向がわからない? あっちだよ」



 コウスラは王都に行ったことないんだから知らないのも当然だよね。

 でも行けるって頷いたって事は、体力にはかなり自信があるってことかな?


 私が方向を示すと、ものすごい速度で走り出す。

 私が走るのと比べ物にならないくらい速い。



 前回王都からチーズ村まで5時間程かかった道のりを、チーズの村から西南西にあるカーミトの街から3時間弱ほどで王都まで来てしまった。


 このまま近づくと騒ぎになるので、コウスラには元に戻ってもらい、頭の上に乗せる。

 そこから門までは私が走っていく。

 時間はとっくにお昼は過ぎちゃってるね。

 


「身分証を」



 門番に言われてギルドカードを光らせて見せる。

 カードを見て驚いているが、すぐに元の表情に戻る。



「その頭に乗せているのは何だ? 帽子か?」



 頭の上に乗る銀色で丸みを帯びたものが気になったらしい。

 そりゃそうか。



「これは私の家族のスライムですよ」

「スライム? これが? アイアンスライム・・・・・・とは違うようだが、見たことないな。 家族って事は従魔登録はしてあるんだな?」

「なんですかそれ?」

「なんだ、してないのか? 街で魔物ペットなどを連れまわすには、冒険者ギルドでむやみに人を襲わない安全な魔物だと説明して登録しないといけないんだ。 まあスライムならなくても問題ないだろうが、一応登録はするようにな。 登録してないと他の冒険者に攻撃されても文句は言えない」

「わかりました、ギルドに行ったら登録しておきます」



 今日は時間があるかわからないから、モウイの街に帰ってからだけど。



「おう、じゃあ入っていいぞ」



 あっさり入れてくれた。

 スライムなら大丈夫ってザル警備過ぎない?

 この子街を壊滅させたフェンリルと同じこと出来るよ?

 威力まで同じかはわからないけど。


 まあわざわざ説明して面倒ごとにすることもない。



 今日もあまり時間がないので、商店通りは無視して、さっさとお城へ行く。

 せっかく王都に来たんだから、マリーやデイジーに会いに行こうと思う。

 そのあとゲートを作る場所を決めないといけないので、そこまで長居できないけど。

 早足で大きな商店通りを通ってお城の門まで行く。



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