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56 鶏を捕獲しに

 今日は畑に水を撒いた後、鶏もどきのセーフコカトリスという鳥を捕獲しに行こうと思っている。

 コカトリスのいる森はモウイの街から比較的近いとはいえ、チーズの村に行く2倍ほどの時間がかかるらしい。

 この世界だと隣の領地なわけだから近い判定なのかもしれないけど、私からしたらかなり遠く感じる。

 私は数時間かかるだけでかなり遠く感じるけど、この世界の人だと「時間」ではなく「日」単位なので、数日かかるのが当たり前なんだよね。


 まあ片道ならそれでもいいんだけど、往復となると私でも1日が終わってしまう。

 普通なら往復で2週間ほどかかるけど。


 とまあ、そんなわけなので、カーミトの街に行ってゲートを作ろうと思う。

 そうすれば帰りは一瞬だ。


 さっき空き部屋にゲートを作っていろいろ試してみた。

 簡易ゲートだとディアは通れたけど、他の精霊は通れなかった。

 そして、なぜかコウスラも簡易ゲートを通れた。 

 条件がいまいちわからない。


 とりあえず帰還用のゲートは屋根裏に設置しておいて、今日はコウスラと2人でお散歩だ。

 私は走るしコウスラは頭の上にいるだけだから、お散歩と呼べるか怪しいけど。

 ディアは畑をやりたいようなので、今回も来ない。

 というか基本的に街の外に出たがらない。

 前に能力の効果範囲がどうの言ってたしね。


 私は街を出るとチーズの村に向けてまっすぐ走っていく。

 通り道なのでついでにチーズやバターを買おうと思っている。

 通り道とはいっても、村は森からだと結構離れた南側にあるけど。


 でも西に向かうなら多少南に移動したって私には誤差だ。

 場所はわかっているので道なりに行く必要もない。



 前通った場所をそのまま通っただけなので、前回来た時よりも少し早く村に着くことができた。


 村に入って行くと、馬車が結構多い。

 チーズを買いに来た商人たちかな? 

 せっかく来たので買い物前に村長の家に挨拶しに行くことにした。



「こんにちは、いますか?」



 少しして扉が開く。



「どちら様で・・・・・・これはユリア様、ようこそいらっしゃいました」



 様? 今までそんな呼び方されてたっけ?



「こんにちは。 近くを通る用があったので挨拶とチーズやバターを買いに来ました」

「それはそれは、わざわざありがとうございます。 ユリア様のおかげでチーズが徐々に売れ始めているところです。 本当にありがとうございます」



 村長はすごく嬉しそうな表情でお礼を言いながら頭を下げてくる。

 売れてるのは喜ばしい事だけど、売れてるならあまり買えない?



「もしかしてあまり在庫がありませんか?」

「いえいえ、まだ生産が追い付いてますので大丈夫ですよ。 生産、保存する部屋も拡張し、家畜の数も徐々に増やしていきますので、今後販売数が増えても大丈夫だと思います」

「それなら他の商人に迷惑にならない程度に売ってほしいですね」

「わかりました、それぞれの在庫の報告書を確認してまいりますので少々お待ちください」



 数を確認するために家の中に戻っていく。

 しばらくして数を確認してきた村長から買っても平気な分を聞き、保管庫まで行ってその分を買う。

 ついでにカーミトの街の北にある森でコカトリスが出る場所を聞いておく。

 大体の場所というか方角は聞いてきたからわかってるけど、詳しい場所がわかったほうが迷わない。

 危ないから近づかない方がいいと心配されたけど、私なら平気だ。

 そもそもこの村もカーミトの街から近いと思うけど、安全なんだろうか?

 避難してないって事は安全なんだろうけど。


 私は村長にお礼を言って、村から北西に向かって走っていく。


 そのまま2時間程走っていると森が見えてくる。

 森が見えたと言っても、この国の北側は全部森だけど。


 地図スキルを確認し、情報と照らし合わせる。 

 あの辺りかな?


 大体この辺りだろうと言う場所まで行き、地図スキルで何がいるか確認しながら森へ入って行くと、結構魔物がいる。

 ウルフにアーマーラビットにスモールボアなど、弱い物からクロウズベアやユニコーンタイガーなど名前的に強そうな魔物までいる。


 ただ、意外なことに、気付いてないのか近くには来ない。

 来ても倒すだけなのでどっちでもいいんだけど、コウスラの安全も考えると来ないに越したことはない。



 しばらく森の中を歩いているけど、コカトリスと名の付く魔物がいない。

 この辺りじゃないのかな?

 それとも好戦的じゃないみたいだし隠れてるとか?

 いや、隠れていても地図に表示されるか。



 そのまま1時間程見つからないまま彷徨っていると、やっとセーフコカトリスの名前を見つけた。

 名前の表示された場所まで行ってみると、地面にいくつも穴が開いていた。

 穴は斜めに掘ってあり、坂のようになっていた。

 穴の大きさは20cmほどだろうか。

 当然中には入れないし、穴は長いみたいで手の届く範囲に鶏もどきも見えない。



「なにこれ、この鶏もどきは地面に潜って生活するの? どうやって引きずり出せばいいんだろうか・・・・・・土魔法で奥の方から押し出せるかな?」



 そんなことを考えていたら、コウスラが頭から落ちて転がるように穴に入ってしまった。

 おむすびころりんみたいだ。


 なんて言ってる場合じゃない!



「ちょっ、コウスラ大丈夫!?」



 穴に向かって呼びかけていると、中から鳥の鳴き声と羽ばたく音が聞こえる。

 え、食べられたりしてないよね?

 どうしようと焦っていると、穴からコウスラが出てきた。

 よかった無事そうだ。


 穴から出てきたコウスラは、鶏もどきの足をしっかり固定してるのか暴れていても抜け出せないようだ。

 そんなことができるんだ、凄いねスライム。


 コウスラが捕まえてきてくれたので、大き目な箱を用意してその中に鶏もどきを入れる。

 もどきというかまんま鶏だねこの生き物。



 その後も卵用にメス(観察眼で判別)の鶏を計10羽捕まえたところで今日は終わりにする。

 捕まえたのは全部コウスラだけど。


 箱の中に餌としてトウモロコシと、こぼれないように少し深めのお皿に水を入れておく。

 蓋は盗賊の時のように網状の蓋をする。

 私がギリギリ運べるサイズなのでかなり狭いけど、帰るまで我慢してもらうしかない。


 目的は果たしたので、コウスラにお礼を言って撫でた後、頭の上に乗せて森の外へ向かう。

 外へ向かう間も遠くに魔物の反応はあるけど、近くには相変わらずいない。



 無事に森を出た後は、ここから南にあるはずのカーミトの街へ向かう。

 走ると箱が大きく揺れてしまうので早歩き程度で移動する。


 早歩きで2時間程移動すると街が見えてくる。

 ここから見た感じ、周りの壁は壊れてる様子もなく普通に見えるけど?


 街に近づき、門の方に近づいたところで街の中に大きな反応が見えた。

 今までに見た魔物とは比べるまでもなく大きな反応だ。

 これが街を襲った魔物か。

 しかしゲートを作るためには街に行かないといけないので、門を通り、街に入って行く。


 中を見回すとひどい状態だった。

 見える範囲だけでも建物は倒壊して道が通れず、そこかしこに騎士の物と思われる鎧が転がっている。

 死体は残ってないので食べられてしまったのかもしれない。

 道が通れず、瓦礫を超えないと街の奥には行けないので一旦箱を置き、入ってすぐの所にある何もない広場にゲートを作る。

 1人なら瓦礫を飛び越えてもいいけど、コウスラも鶏もいるので探索は今度でいいかな。


 ゲートを作ったので帰ろうと思っていると、いつのまにか魔物の反応が敵対になって、すぐ近くに来ていた。

 全然気づかなかった。


 瓦礫の上にいる魔物は街の壁より大きな狼?だった。

 観察眼で見てみるとフェンリルというらしい。

 名前からしてやばそうなのが来た。


 フェンリルは私をしばらく見降ろしてると、いきなり襲い掛かってくる。

 前足で踏みつけてきたので左腕でガードする。

 空いてる右手で「ウィンドカッター」を放つが、フェンリルに当たると消えてしまった。



「え、魔法が効かない?」



 あの大きな蛇は硬いと言っていたのに、普通に氷魔法が効いた。

 私の貫通攻撃が本当によくわからない。


 フェンリルが後ろに飛びのいたあと、炎のブレスを吐いてくる。

 かなり広範囲に炎が飛んできたので正面に土魔法で壁を作り防ぐ。



「魔法効かないとかどうしようかな・・・・・・武器と言っても銅のメイスしかないし、こんなのじゃ多分効かないでしょ」



 とりあえず向こうの攻撃もこっちには効いてないから、コウスラと鶏を安全な場所に移していろいろ試すしかないか。


 急いで鶏の元まで走り、コウスラをそこに降ろす。

 そして周囲を土魔法で囲い、空気穴程度の隙間を作る。

 これで、コウスラたちは安全だ。



 さて、どうしようかな。

 他の魔法も試してみる?

 まずは身体強化しておこうか。

 相手の速度についていくためにこっちの速度も上げる。


 相手も使ってくるし効かなそうだけど、火魔法を全力で放つ。

 が、当然効かない。


 私が次の攻撃を考えていると、フェンリルが突進してきたので、かわして水魔法、土魔法、氷魔法、雷魔法と撃ち込んでみるけどほとんど効かない。

 怯んだりしてないから、ダメージがあったとしても大したことはないと思う

 貫通攻撃とは何だったのか。



 魔法が全部効かなくてどうしようかと考えていたら、今度は一気に近づいて噛みついてきた

 私は咄嗟に全力で殴ると牙に命中した。


 すると殴った牙が折れてフェンリルが怯んだ。 

 あれ、意外と物理の方が効く?



「グルルルル・・・・・・」



 牙をむき出しにして怒り出したフェンリルの色が変わっていく。

 白かった体毛が赤になった後黄色くなり、そのまま蒼白くなっていった。

 温度が上がってるって事?

 いやいや、実際色通りの温度だったら周りが溶けてしまう。

 温度じゃなくて怒りで色が変わるとか、魔力で強化した色なのかもしれない。


 色が変わった後一瞬で目の前まで来ていて、そのまま突進される。

 身体強化をしても全く見えなかった。 


 しかし強くなっても向こうの攻撃は効かないみたいで、吹っ飛ばされることもなかった。

 全く動かない私に驚いているフェンリルの顎を、思いっきり蹴り上げた。


 蹴り上げて上を向いたところにジャンプして鼻先にかかと落としを打ち込む。



「ていっ!」



 脳震盪でも起こしたのか、震えて地面に伏したままのフェンリルの頭に飛び乗り、眉間に拳を打ち込む。

 そのままフェンリルは気絶してしまい、色も白く元に戻って行った。


 私ってもしかして物理の方が強い?

 それともフェンリルがたまたま魔法に耐性があっただけ?


 風魔法が効かないので首のあたりを強打して首の骨を折る。

 すると地図からフェンリルの反応が消えた。



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