51 リーアの依頼、帰宅
リーアと一緒に外出時用の小さい方の家で一泊した翌朝。
目を覚まし、動こうとすると体が重い。
自分の体を見てみるとリーアが私に抱きついて寝ていた。
抱き着いてと言うかのしかかってかな?
腕枕では不満だったのだろうか。
このままでは朝食の準備もできないのでリーアを起こす。
「リーア、朝だよ」
背中を軽くポンポンしながらリーアを起こす。
「・・・・・・ん・・・・・・ユリアさん?」
「おはよう、朝食の準備するから放してほしいんだけど」
「え? ああぁぁぁぁぁ!!!」
リーアが驚いて飛び起きると、正座姿勢のまま泣き出してしまった。
何か怖い夢でも見てたのかな?
状況がよくわからないのでとりあえず頭を撫でてあげる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・」
寝起きで混乱してるのか一向に落ち着かないので、抱きしめて背中を撫でてあげる。
「大丈夫だよ、怖くないよ」
落ち着くまでしばらくそのまま撫で続けてると、落ち着いたのかリーアが離れる。
「ごめんなさい・・・・・・」
「怖い夢でも見たの? それとも慣れない環境で寝てたからびっくりしちゃったのかな?」
「いえ、それは大丈夫だったのですが・・・・・・私、ユリアさんにのしかかったまま寝ていて、大変ご迷惑をかけてしまったので。 嫌われてしまったらどうしようかと・・・・・・」
私にのしかかって寝ていたのを気にしてたのか。
確かにのしかかられてたら苦しくて途中で目を覚ましてしまうかもしれない。
リーアは私より小さいとはいえそこまで大きな差は無いし。
今の私には重くて苦しいとかないけど。
でもその程度で嫌いになるだろうか?
「もう、寝相悪いなぁ」で済むことだと思うけど。
それとも過去にそれで何か言われたことがあるのかな?
「リーアが何で嫌われると思ったのかはわからないけど、私はそのくらいで嫌いにはならないよ。 ディアだっていつもしがみついてるし。 だから気にしないで」
「・・・・・・はい、ありがとうございます」
落ち着いたリーアに洗浄魔法をかけてあげ、ベッドを1つしまい、昨日のアップルティーを出してあげる。
その間に簡単にいつものパンとサラダを用意して、枝豆を茹でる。
朝食をテーブルに並べた後、私は馬の所へ行き、馬用のお皿を作る。
煮豆と煮汁と大豆の葉をそれぞれのお皿に乗せて馬にあげる。
馬が食べ始めたのを確認したあと家に戻り、リーアと朝食をすます。
朝食後、一休みしたら外へ出る。
「それじゃあ家をしまうよ。 馬小屋もしまうから馬を出してあげて」
リーアが馬を外に出してる間に家をしまい、馬用食器をしまった後、馬小屋もしまう。
「よし、行こうか。 早歩き程度の速度でお願いね」
「そんなにゆっくりでいいんですか?」
「馬だって疲れるから急いだってばてちゃうでしょ。 少し早い程度で長時間移動してもらった方が結果的には早く着くと思うよ。 それに昨日だけで結構移動できたから明日には街に着くと思うし」
「すみません、そこまで馬の事を考えてませんでした・・・・・・」
リーアが「ごめんね」と馬を撫でている。
優しい子だね。
撫でていたリーアが手綱を握るとゆっくり走り出し、私はそれに合わせてジョギング感覚でついていく。
ジョギングなんてしたことないけど、あくまで気分の話だ。
そのまま走り続け、お昼までに2回ほど馬を休ませた。
お昼には、パンに野菜やお肉などを挟んだサンドイッチをつくり、馬には朝と同じものを出してあげる。
「これは前に孤児院で食べたパンに野菜などを挟んだものですね」
「そうだよ。 サンドイッチって名前で、好きな具材を挟んで食べるの」
「ユリアさんの発想はいつも楽しいですよね」
私が考えたわけじゃないんだけど。
サンドイッチだと他にツナとかポテサラ作りたいな。
ポテサラはマヨネーズがないんだよね・・・・・・作ろうにも卵も酢もない。
酢はリンゴでできるだろうか?
「ねえリーア、この辺りで卵が手に入る場所って知ってる? あと海が近くにあれば行きたいんだけど」
「卵と海、ですか? 卵は何の卵でしょうか? 海に関しては、近くにはありませんね。 この国は森に囲まれていて西の国に行くにはその森を抜けないといけません。 南側は海に面していますがものすごく高い断崖絶壁になっているので海には出られません。 唯一森を越えずに行けるのが南東にあるミノコウ王国で、その国は逆に海に囲まれている国です」
「卵は鶏ってわかるかな? 鳥の卵なんだけど」
「ニワトリはわかりませんね・・・・・・鳥の卵で食べられていたのだと、コカトリス系の卵でしょうか?」
「コカトリスって名前は聞いたことあるかも。 石化する毒があるんだっけ?」
「基本のコカトリスは尻尾が蛇になっていて、その牙とそれから羽にも毒があって、毒霧を吐いてきますね。 ですがセーフコカトリスという種が小型で毒もなく、飼育できる魔物だと聞いたことがあります」
「それってどこかで飼育してたりする? できればうちでも飼育してみたいんだけど。 というか魔物って本当に飼育できるの?」
鶏の飼育はそんなに難しくなかった気がするし、飼育できれば卵が使い放題になる。
あくまでも鶏みたいな生物なら、だけど。
でもコカトリスって鶏みたいな魔物だよね?
「魔物というのは悪魔のような悪い生物という意味ではなくて、体内に魔石を持つ生物という意味です。 なので魔物が全部敵対的なわけではありません。 ただ魔物と呼ばれる生物は魔石を持つ分魔力が高く強いので、攻撃的な生き物が多いですね」
魔物ってそういう意味だったのか、魔王の手下みたいな意味だと思ってた。
魔王がいるのか知らないけど。
「安全と分かっているなら飼育してみたいね」
「安全と言っても敵対的でないというだけで、強い生き物なので暴れたりしたら大変ですね。 命の危機を感じるようなことが無ければ暴れないらしいので、大丈夫だと思いますけど。 ちなみに過去には飼育してた街がありましたよ。 今はもう壊滅した街ですけど」
今は壊滅してるってもしかしてカーミトの街の事?
「その街ってもしかしてサクラの?」
「知っていたんですね。 ご想像通りだと思います。 サクラのいた街はコカトリスの飼育に成功して、その卵を使った料理が人気の街でした」
「じゃあ今はそのコカトリスはいないのかな?」
「いえ、もともとカーミトの街の北にある森に生息していたので、今でもいると思います。 ただカーミトの街に近いので、街を縄張りにしている魔物が来る可能性があります。 なので実質取りに行くのは不可能ですね」
どうやらカーミトの街の北に行けば卵が手に入るらしい。
「それじゃあ海の方だけど。 崖を削って海に行けるようにしたりしないの?」
高さがどれほどあるかわからないけど、九十九折りの坂にすれば高さがあっても大丈夫だと思う。
作るのは大変だと思うけど。
「崖がそのままなのは海から攻め込まれないようにするためだそうですよ」
「あーなるほど。 海戦の準備をしなくていいなら陸戦の準備だけでいいしね。 そうなると海の物はミノコウ王国に行かないとダメか」
海は他国で遠そうだからまずは近場から行こうかな。
話が一段落したので、片付けをして再び進みだす。
その間ただ走っていても暇なので地図を確認しつつ今後の事を考える。
まずは帰ってからする事。
ギルドで任務報告をして、あの蛇も買取ってもらえたら買取ってもらおう。
その後は家に帰って豆と稲を栽培できるかディアと相談。
他には・・・・・・リンゴが生ってたら酵母やお酢も作りたいし、さっき聞いた鶏もどきも捕獲しに行きたい。
思ってたほどすぐやれる事は多くないかな。
大豆や稲が栽培できたらまたやること増えそうだけど。
考えがまとまった後は地図を見ながらただ走るだけ。
途中で何回か馬の休憩を挟み、夜になったら昨日と同じように家と馬小屋を出して休む。
翌日も同じように適度に馬を休めながら街を目指していた。
日が傾き始め、街がもうすぐ見えると言うあたりで赤いマークが現れた。
私はリーアの左斜め前に移動し、襲撃に備える。
「ユリアさんどうしたんですか?」
「敵襲みたいだからリーアはそのまま慌てずに移動してて」
「わ、わかりました」
リーアの声から緊張が伝わってくる。
赤マークの横を通過しても襲ってこない。
しかし何があるかわからないので警戒はそのまま続ける。
通過してからしばらくすると後方で火の魔法が撃ちあがった。
信号弾の代わりって事か。
「リーア、来るよ」
少しして地図の前方に、道をふさぐように男たちが並ぶ。
・・・・・・7人、かな。
挟撃や狙撃に警戒しつつリーアの馬を止め、私が前に出る。
「何の用ですか?」
「へっ、わかってんだろ? 持ってる物全部置いてきな」
「持ってる物と言われても手ぶらですけどね」
私はおちょくるように手をひらひらさせる。
「いい度胸だな、おとなしく言う事聞いてれば命までは取らねえぜ」
「捕まって売り飛ばされたら命だけあっても意味ないですけどね」
話してる間に後方から5人ほど近づいてくる。
さっき合図してた人たちかな?
地図があるから静かに近づこうが私にはわかるけどね。
挟撃しようとしてるのか、話していた男は特に行動することなくニヤニヤしているだけだ。
リーアもいるし、挟撃されると面倒だなので先に後ろから倒しちゃうか。
「エレクトリカルショック」
正面を向いたまま小声で魔法を使う。
場所がわかってればわざわざ見なくても魔法は当てられるのだ。
地図から5人の赤マークが中立(行動不能も含む)を示す白に変わったことを確認すると、再度正面のおじさんに話しかける。
「さて、次はあなたたちの番ですかね」
「キ、キサマ! 今何をした!?」
「さあ、何でしょうね? わざわざ手の内をばらすわけないでしょ」
「ぐっ・・・・・・」
私に話しかけてきた男は見えない攻撃を警戒してか、動けずにいる。
他の男たちもどうしていいのかわからないようで、リーダーらしき話しかけてきた男と私を交互に見ている。
「あの、時間ないんでもういいですか?」
「な、何がだ」
「あなたたちをさっさと捕まえて帰りたいんですよ。 任務の報告をしないといけないし家で待ってる子もいるので」
「任務だと? キサマ冒険者か・・・・・・」
「そうですよ。 まあ盗賊に名乗る必要もないでしょ、おやすみなさい」
「おまえら! にげ・・・・・・」
逃げようとした男たちを同じく雷魔法で気絶させる。
人間相手には便利だこれ。




