50 リーアの依頼、添い寝
少しすると柵の留め具を外してリーアの馬を柵の外へ連れてくる。
「お待たせいたしました。 それとこれもお持ちください」
そういって馬の手綱をリーアに、餌が入ってる袋を私に持たせてくれた。
2人でお礼を言ってリーアが馬を引き、私は渡された餌を収納した。
そして早足で村の入り口まで移動する。
村の外に出たらリーアが馬に乗る。
暗くなるまでまだ数時間はあるだろうか。
でもそんなに長くないし馬には頑張ってもらおう。
馬には少し早足で走ってもらい、私はその後を追う。
もちろん地図は常時見ている。
途中1回休憩を挟み、真っ暗になった所で今日の移動は終了にする。
「リーア、道から少し離れるよ」
道から少し離れた場所に移動し、外出用の家を出す。
「な、なんですかこれは!」
「何って家だよ。 事前に家を用意して収納してたの。 便利でしょ?」
「便利すぎです、これは野営とは言いません! さっきのスワンプヴァイパーもそうですが、何でこんな大きなものが収納できるんですか!」
収納に関しては他に使ってる人を知らないから普通の容量がいまいちわからない。
「野営の方がいいなら毛布でも出してその辺りに寝る?」
「それは家の方がいいですけど、冒険者が言う野営と聞いて少し身構えていたので」
「リーアをその辺で寝かせたりしないよ。 そうするくらいなら帰りが遅くなっても村に行くし」
「そう、ですか」
なぜかうれしそうなリーア。
そんなに野営は嫌だったのか。
馬を放置するわけにはいかないので、前に王都に行った時に作った馬小屋を出してあげる。
馬を小屋に入れた後、私たちは家に入る。
「出先で自分1人が使う用の家だから寝室とかもないけど、野宿よりはいいでしょ。 魔法で作った物だから頑丈さは保証するよ。 昼にあの蛇を倒した魔法でも壊せない家だからね」
あれ、氷魔法って試したっけ?
まあ多分効かないでしょ、たぶん。
「そんなに丈夫なんですか・・・・・・魔法でこんなこともできるんですね、不思議です」
リーアが物珍しそうに家の中を見て回る。
他の魔法使いは作ったりしないのかな?
前に建材を作るとか言ってたけど、小さい物なら持ち運ばなくても、土や石ならその場で作れるし便利だと思うけど。
見て回るリーアを眺めていると、ロフトを覗いていたリーアが急に止まった。
なんだろう?
「どうしたの?」
「あ、あの。 ベッドが1つしかありませんがここで寝るんですか?」
1つしか置いてないから一緒に寝ると思ってるのか、恥ずかしそうにリーアが聞いてくる。
何をそんなに恥ずかしがることがあるのか。
置いてあるベッドはディアと一緒に寝ることも想定して、1人で使うには大きくしてある。
まあそのディアは街の外に出ることがないから一緒に使うことはなさそうだけど。
しかし体が大きくないとはいえ、さすがに2人だとちょっと狭いと思う。
くっついて寝れば大丈夫かもしれないけど、寝返りをしたら落ちる可能性があるのはさすがに危ないからね。
柵があるから大丈夫だと思うけど、万が一リーアがロフトから落ちたら大怪我するかもだし。
「寝る時はちゃんともう1つベッド出すよ。 1つだと狭いでしょ」
「いえ、大丈夫です! その、友達、と一緒に寝る機会なんてないですし楽しそうです!」
大きな声で大丈夫と言うリーア。
貴族だと友達と一緒にお泊りとかないのかな?
そもそもサクラ以外の友達って街にいるんだろうか?
まあ孤児院に住んでるサクラをお屋敷に呼んでも、リーアが孤児院に泊まってもお互い気を使いそうだから、サクラとはお泊り会はしないのだろう。
そしてリーアからはサクラ以外の名前を聞いた事がない。
私が知らない相手だから名前があがらない可能性もあるけど。
「じゃあベッドを2つくっつけて広くしようか、それなら落ちることもないだろうし」
「はい、それでもいいです!」
納得してくれたところでお風呂と夕食の準備をする。
夕食を食べた後にリンゴも切ってあげる。
今回は作りたい物があるから多めに芯と一緒に皮もむく。
そして切った皮と芯を、暖めた風魔法で少し乾燥させ、鍋に入れて弱火で煮る。
特にすることもなく、リーアがお風呂に入ってる間、鍋をボーっと眺めていた。
鍋のお湯が薄くピンク色になってきたころにリーアが戻って来たので、鍋からコップに移し氷魔法で冷やして渡す。
「これは何ですか? 甘酸っぱい匂いがします」
「これは簡易アップルティーだよ。 さっきリンゴを食べる時に切った皮と芯を鍋で煮出した物なんだけど、リンゴの果肉は入れてないから甘さは控えめかな。 甘い方が良ければ砂糖も出すよ」
「へー、リンゴの皮でこんなにいい香りの飲み物が・・・・・・これでもそれなりに甘い気がしますけど?」
リーアは少しずつ口に含み味と香りを楽しみながら飲んで感想を言う。
砂糖をふんだんに使ったお菓子とかもないみたいだから、このくらいでも甘い物なのかな?
「気に入ってもらえたなら嬉しいかな。 ここの鍋にまだあるから飲みたかったら好きなだけ飲んでいいよ。 お風呂上がりだったから冷たいの出したけど、お腹冷やすとまずいからお代わり分は冷やさずにおいておくからね」
リーアにお代わりの説明をした後、私もお風呂に入る。
のんびり浸かってから戻ると、リーアはまだアップルティーを飲んでいた。
鍋を見ると結構減っている。
どれだけ飲んだんだ・・・・・・
「結構飲んだみたいだけどそんなに美味しかった?」
「すごくおいしいです! 冷たいのも良かったですが温かい方も香りがすごく良くて普段もこれを飲みたいほどです!」
「リンゴを食べる事があればその時に一緒に作ってもらえばいいんじゃないかな? 作るのは簡単だけど、リンゴ1個だと量は作れないかな。 皮と芯だけだととくに」
「帰ったらお父様に聞いてみようと思います!」
余ったアップルティーの鍋を収納し、ベッドの用意をする。
用意と言っても今あるのと同じ物をもう1つ並べるだけだ。
「よし、ベッドはこれでいいかな。 リーア、寝る準備はできたけどトイレは大丈夫?」
「はい、さっき行きましたので大丈夫です」
万が一落ちても困るので、リーアを壁のある方のベッドに寝てもらう。
よほど転がらなければ落ちないとは思うけどリーアの寝相が悪い可能性もあるので念には念を。
マリーの寝相がすごかったしね・・・・・・
「それじゃあ明かり消すよ」
リーアがベッドに入ったのを確認してから明かりを消し、私もベッドに入る。
明日はなるべく早く出発したかったので、さっさと寝ようと思っていたらリーアに話しかけられた。
「あの、ユリアさん。 その、隣で寝てもいいですか?」
リーアがよくわからないことを言っている。
「今隣で寝てると思うけど?」
「いえ、その、もっと近くで、と言いますか。 あの・・・・・・」
あーなるほど、もっと近くでって事か。
そういえば私の妹はかなりの怖がりで、小さい頃は夜1人で寝れないとよく一緒に寝ていたのを思い出す。
数少ない妹の弱点だったので、寝る時は姉として妹を守ってる気分になっていた。
腕枕をしてあげたこともあるけど、あれは長時間すると腕の感覚がなくなってしまうので大きくなってからはしなくなった。
今なら平気かな?
「いいよ、おいで。 ついでに腕枕をしてあげよう」
「うでまくらって何ですか?」
「私の腕をリーアの枕代わりにしてあげるって事」
リーアにぶつからないように腕を伸ばして二の腕を軽くたたいて「おいで」と合図をすると、恐る恐る近づいてきて腕に頭を乗せる。
慣れないことに緊張してるのか胸の前で握った拳に力が入り、目も硬く閉じられている。
このまま緊張状態が続くと寝るのが遅くなるので、子供を寝かしつけるように胸の辺りを布団の上から軽くポンポン叩いてあげる。
「明日も朝から移動するからもう寝ようね」
「・・・・・・はい」
リーアが力を抜いて少しすると寝息が聞こえてくる。
やっぱり疲れてたみたいで結構すんなり寝てくれた。
寝たのを確認した後、私も早々に眠る。




