46 リーアの依頼、村へ
翌日朝。
畑と予備用に畑の周りに水を多めに撒いた後、畑をディアにお願いしてギルドへ向かった。
ギルドに着いた私は受付に向かって歩いていると、横から声を掛けられた。
「ユリアさん、おはようございます」
リーアが食事スペースで座って待っていた。
「おはよう、ずいぶんと早いんだね」
「わたしは寝るのが早いので起きるのも早いんです」
健康的な生活習慣だ。
そういえば私もこの世界に来てから夜更かしとかしなくなったね。
しなくなったというか、夜にすることが無いともいう。
何か簡単にできそうな娯楽を作ってみようかな?
木材なら自由に作れるし結構作れそうな気がするけど。
「それじゃあ依頼受けたら早速行こうか」
「はい!」
依頼を受けるだけなので、リーアはそのまま待ってもらい、受付に向かう。
私が受付に行くと、いつもどおりスズランさんがいる。
「おはようございますユリアさん」
「おはようございます。 リーアの護衛依頼を受けに来ました」
「リーア? あ、フリージア様ですね。 少々お待ちください・・・・・・はい、こちらが護衛依頼です」
依頼にはモウイ東3の村に往復の護衛、と書かれていた。
それぞれの村には名前がないみたいで、こういう表記になるみたい。
モウイの街から東3つ目の村って事ね。
「これでお願いします」
依頼を確認したのでギルドカードを渡して受注し、ギルドカードを返してもらう。
「それじゃあ行ってきますね。 リーア、行くよー」
食事スペースにいたリーアを呼び、ギルドを出てそのまま街も出る。
しばらく歩いていると、ふと違和感に気付く。
「あれ、そういえば今更だけどリーアの護衛って私だけなの?」
私がリーアを運んでいくことだけ考えてたけど、普通に考えたらただの冒険者1人に貴族の令嬢を任せないよね?
早馬とか使って付いて来る人がいるかも?と思っていた。
「お父様はユリアさんの実力を理解したうえで許可を出していました。 なので今回はユリアさんだけです」
「会った事もないのにそんなに信用してもいいの? 街中ならまだしも、大事な娘が街の外に行くのに」
リーアがどんなに説得したとしても、普通なら信用しないよね?
「会ったことが無くても街で起きた事の情報はお父様の所に来ますから、お父様はわたし以上にユリアさんの事を知ってると思いますよ」
何それ怖いんだけど。
「それに、無償でサクラの猛毒を治したり、孤児院の子供たちのために着る物や食べる物を用意し、更に遊具まで作ってあげる優しさ。 オークの集団を1人で討伐する強さ。 ユリアさんが信頼できる優しい人だと知るには十分だと思います」
なるほど、ギルドだけじゃなくてリーアからも結構情報が行ってるんだね。
だからって娘を預けるのはちょっと不用心すぎない?
「信頼してくれるのは嬉しいけど、簡単に人を信じちゃうのは将来がちょっと不安になってくるんだけど」
「これでも貴族の娘です。 いろんな人を見てきてますので、人を見る目はあるつもりですよ」
そう言って私に笑顔を向ける。
貴族なら社交パーティーみたいなのでいろんな人たちに会うのかな?
リーアと話しながら東へ歩き、街が遠くなったところでリーアをお姫様抱っこする。
「見られてなくてもやはり恥ずかしいです・・・・・・」
「走ってる間は喋らないでね、舌噛むから。 何かあったら肩をたたいて知らせてね」
恥ずかしそうにもじもじしてるリーアに注意する。
リーアが頷いたのを確認すると、私は走り出す。
最初はゆっくり走り、だんだんと速くしていく。
遅い間はまだ恥ずかしそうにしてたリーアだけど、速くなってくると我慢するように固く目を瞑り手も握りしめている。
しばらく走っているとリーアの呼吸が荒くなってくる。
「息が荒いけど大丈夫?」
リーアは頷くと私の首に手を回してしがみついてくる。
結構強い力でしがみついてるけど本当に大丈夫だろうか・・・・・・まあ自分でしがみついてくれた方がより落とす心配が減るからいいか。
リーアの負担を減らすために最大速度で走らなかったため、街を出てから4時間程で村が見える辺りまで来た。
速度を落としていき、道を少し外れて止まる。
道の真ん中で止まってると誰か通った時に邪魔だからね。
「リーア、村が見えたよ」
「はぁ、はぁ、もう・・・・・・ついたんですか」
「ね、早いでしょ?」
しがみついてたリーアが村の方を見る。
顔が真っ赤で呆けた表情をしてる。
村に行く前に少し休ませた方がいいかも。
「椅子とテーブル出すから少し休もうか、立てる?」
私の問いかけにリーアがこっちを向くが、呆けた表情のまま私の顔をジーっと見ている。
リーアはそのまま顔を近づけ、甘えるように頬擦りして来る。
「リーア?」
「ハッ、えっと、もう少しこのままがいいです・・・・・・」
私が何度か呼びかけていると、我に返ったのか意識が少し戻った。
今の行動が恥ずかしくて顔が合わせられないのか、私の肩に額を押し付けるようにしがみついてくる。
仕方ないのでしばらくそのまま背中をポンポンしながら落ち着くのを待つ。
結構な時間そのままだったけど、リーアが落ち着いたようなので、リーアを降ろして椅子とテーブルを出して座らせる。
「その、すみません・・・・・・」
「いや、私は大丈夫だけどリーアの方は大丈夫?」
「まだ、その、ちょっと、頭がぼーっとしてます。 ドキドキもまだ治まっていません・・・・・・」
怖い思いをして吊り橋効果的なものを感じてしまったのかな?
でもそれって異性に対して感じるものじゃないの?
まあこのままおとなしくしてれば治まるでしょ。
そのまま10分ほどのんびりしてたらリーアの意識もはっきりしてきた。
「ユリアさん、先程は、その、すみませんでした」
「ビックリしたけど私は気にしてないよ」
「あー、恥ずかしくて死にそうです」
意識がはっきりしてきたリーアは、さっきの行動を思い出して恥ずかしくなったようで、両手で顔を隠してしまっている。
「吊り橋効果ってやつだね。 恐怖した時など心拍数が上がってる状態を恋愛のドキドキと勘違いする現象」
「勘違い、なんですか?」
「今は視野が狭くなって混乱してるだけだから、落ち着いて意識もはっきりしたらわかるよ」
「詳しいんですね。 ユリアさんもなったことあるんですか?」
「私はないかな。 そういう事が起きるっていうのを聞いたことあるだけ」
「そう、ですか」
「もう少しこのまままったりしてようか。 遠くの景色を見ると落ち着くと思うよ」
落ち着けるために水をリーアにあげる。
リーアはそれを飲みながら周りの景色を眺めていた。
更に10分ほどたった頃。
もう大丈夫だと言うので、出した物を収納して村に向かって歩いていく。
村に入ると村人が歩いている。
普通の事なのに今まで行った2つの村の入り口が静かだったので新鮮な光景だ。
今日はリーアの護衛で来てるので見て回ったりはせず、リーアの後についていく。
「こちらです」
リーアに案内されて進んだ先には、広い範囲を柵に囲まれ、馬が放し飼いにされていた。
柵には隣接して家と小屋、それと雨避け用だろうか、屋根のあるスペースがあった。
私たちはその隣接している家に入って行く。
「こんにちは、モウイの街のフリージアです」
「これはフリージア様、お待ちしておりました。 どうぞこちらへ」
家にいたおじさんに案内され、入ってきた時とは違う扉から外へ出る。
すると、柵の中に繋がっていた。
そのまま1頭の馬の所まで行く。
「こちらでございます」
「ありがとうございます」
馬には鞍と緩い首輪のようなものがつけられていて、首輪にはリーアの名前が書いてあった。
所有者がわかるようにしてあるみたいだ。
そしてリーアはそのまま馬に乗り始めた。
「リーアは馬に乗れたんだ、凄いね」
「ユリアさんは乗れないんですか? あ、必要ないですね」
私がここまで走って来たのを思い出したようで、苦笑している。
「少しこのまま走らせてもいいですか?」
「はい、問題ありません。 そのままつれて帰りますか?」
「ユリアさんが村を見て回りたいでしょうから帰るのは明日にしようと思います」
「え、いいの?」
「はい、それも込みでここまで来たんですから」
「村を見にですか? 馬の飼育を見に来た、という事でしょうか?」
リーアの村を見に来たと言う発言におじさんが反応した。
ここは馬を育てる場所なのか。
それでリーアの馬を引き取りに来たって事かな?
「私はいろいろな村や街を旅しようかなと思ってたんですよ。 そしたらリーアがこの村に来るから旅も兼ねて護衛しないかって誘われたんです」
「護衛、ですか?」
「私はこう見えて冒険者なので、リーアをここまで護衛してきたんです」
どうせ信じてもらえないので最初からギルドカードも見せる。
案の定驚いてるけど無視してギルドカードをしまう。
そもそも運んできたのは護衛と言えるのか微妙なところだけど。
「それでこの村の特産などがあれば教えて欲しいですね」
「では、その間私は少し回ってきますね」
「行ってらっしゃい」
「お気をつけて」
リーアを見送った後、おじさんから村の事を聞く。




