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45 リーアの依頼

「何があっても私はディアの味方だよ。 やり直せることならこれからどうするか一緒に考えてあげるから、安心して話して」



 しゃがんだままディアを膝にのせてあげる。



「うん・・・・・・ちょっとついて来てほしいの」



 ディアは力なく頷きながら抱きついた。

 そして少し考えた後、膝の上から離れ、畑の奥の方に浮いたまま移動していった。


 うちの家は南東向きに建っていて、畑は家の南西側辺りに作ってある。

 前回の畑拡張で北西と南西にそれぞれ2倍に拡張して、そのさらに北西には果樹が植えてある。

 私は普段果樹の所まで行かないけど、大きなリンゴの木が育っていて、もう少しで実がなりそうだ。

 ディアはその果樹のさらに奥へ私を連れて行った。


 そこには玉ねぎとキャベツが植えてあった。

 え、いつの間に育ててたの?



「これは? いつ育ててたの?」

「ママがくれた肥料用の野菜くずから玉ねぎのへたとキャベツの芯を回収して植えてたの。 育った物からさらにへたと芯を取って増やしてたの。 そしてそこの箱に入ってるのが収穫してへたや芯を取った物なの」

「なにそれ、そんなことできるの・・・・・・」



 ディアが指さした先には屋根のような物の下に木箱が置いてあった。

 種とか関係なく芯やへたを植えてれば増えるって事?

 ジャガイモみたいに増やせるんだ・・・・・・



「すごいじゃない、さすが土の精霊!」



 感動のあまりディアをギュッと抱き締める。

 玉ねぎやキャベツも育てようと思っていたけど、すでにディアが始めていた。

 しかも思いもしない方法で。



「育てたらママ喜ぶかなって思って。 でも勝手に畑の魔力を使っちゃったし、怒られるかもって・・・・・・」

「私の魔力は野菜を育てるために撒いてるんだよ? 野菜を育てることに使ったんだから何も問題ないよ。 それよりも私のために育ててくれたのがすごく嬉しい」



 抱きしめたまま頭を撫でる。

 嬉しすぎて感情が爆発しそうだ。

 リーアの気持ちがちょっとわかった気がする。


 しばらくそのまま玉ねぎとキャベツを眺めていると、私を呼ぶ声が聞こえる。



「ユリアさーん! いますかー!」



 リーアが大声で私を呼んでいる。

 サクラの時にもあったけど、お嬢様としてはちょっとはしたないのでは?


 呼ばれたので木箱を回収し、ディアを抱っこしたまま家まで戻る。



「どうしたの?」

「あ、ユリアさんこんにちは。 今日は依頼に来ました」

「依頼? 冒険者としてって事?」

「そうです。 東にある村に行く予定がありまして。 その護衛をお願いしたいんです」

「護衛はいいけど、リーアの家なら兵士が護衛に付くんじゃないの?」



 貴族の令嬢なら、街から移動する時は兵士たちが一緒に行くと思う。

 もしかしてそれに追加で護衛を雇うって事?



「護衛云々は口実です。 暇な移動中、ユリアさんの冒険者のお話を聞きたいと思いまして」

「移動中の暇潰しって事ね」

「いえ、旅好きなユリアさんを村まで連れて行ってあげようと思ったのが一番です。 街に来てから自主的に旅をしてないみたいですし」



 別に旅が特別好きなわけじゃないけど、なぜそんなことがわかるんだろう?

 私の行動を知ってそうなのは・・・・・・サクラ?

 あ、でも領主なら門番やギルドから情報が来たりするのかも。

 詳細まで知らなくても門を通ったかどうかくらいならわかるだろうし、娘なら親に聞けばそのくらいの事は教えてもらえそうだし。


 でも、確かに王都に拉致されたのと食材のために村に行った以外は、菜の花採集と西の迷いの森か。

 いや、結構街から出てる気がするけど?

 この世界の人からすると旅してない判定になるのかな?


 まあすぐ帰ってきてたしね。

 そもそも私からしたらこの周辺だって旅のような物だけど。



「私的には他の村にも行ったし森にも行ったから、知らない土地だし旅みたいな気分だったけどね」

「・・・・・・すみません、余計なお世話でしたか?」



 リーアが申し訳なさそうな寂しそうな顔をする。

 いや、引きこもってたわけじゃないって言いたかったんだけど・・・・・・



「そんなことないよ。 旅に行く回数に制限なんてないんだから、何回だって何処にだって行ったっていいでしょ。 それに気を使ってくれたのも嬉しいし」

「そう言って頂けると嬉しいです。 あ、予定はいつがいですか? ユリアさんの予定に合わせて行こうと思いますので」

「いいの? そっちの都合もあるんじゃないの?」



 何をしに行くのかわからないけど、どこかに行くなら向こうの都合とかもあるよね?

 時計とかないから細かい時間指定とかは無いのかもしれないけど。



「依頼していた物を引き取りに行くだけなので、特に期限はないんです。 早ければ明日でもいいですし、来週でも大丈夫です。 なのでユリアさんの都合のいい日にしましょう」

「私は行くなら早い方がいいかな。 いつ依頼だの呼び出しだの来るかわからないから、何もない今のうちに行った方がいいと思う。 問題は畑だけど・・・・・・何日くらいかかりそう?」

「徒歩だと片道6日ほどでしょうか、馬車の予定なので片道3日くらいですね」



 チーズの村と同じくらいの距離かな。

 それなら走って3時間くらいでいける。



「ねえリーア、ちょっと持ってもいい?」

「へっ!? 持つって、私をですか!? えっと、ど、どうぞ・・・・・・」



 恥ずかしそうにもじもじしている。

 体重を気にしてる?


 許可をもらったのでディアをいったん降ろし、リーアをお姫様抱っこしてみる。

 サクラよりちょっと重いかも?

 いや、サクラが痩せすぎなのか。

 でも私の力らな問題なく運べそうだ。



「はわわ、お姫様抱っこされちゃいました・・・・・・」



 リーアは両手で顔を覆って恥ずかしそうにしてる。



「そ、その、重くないですか? 前にお父様に重くなったと言われたので・・・・・・」



 親の言う重くなったは太ったって意味じゃないと思うけど。

 ただ年ごろの娘に言うのはデリカシーが無さすぎるんじゃない?



「重くないよ。 それにお父さんが言う重くなったは大きくなったって意味だと思う。 小さい頃に比べて大きくなったって喜んでるんだよ。 女の子に重くなったって言うのちょっとデリカシーないけど」

「そ、そうなんですか?」

「太って重いと思ってるなら痩せろって言うだろうし、その時喜んでたのなら間違いないと思う」

「そうだったんですか・・・・・・安心しました。 私はサクラより小さいのにちょっと重いので少し気にしてたんです」

「それはリーアが重いんじゃなくてサクラが軽いんだよ。 同じ身長で比べたらサクラはかなり軽い方だと思う」



 サクラに限らないけど、孤児院の子たちは皆痩せている。

 普段はゆったりした長袖の服を着てるから気にならないけど、お風呂に入った時には結構気になるレベルだった。

 畑が上手くいったら他の野菜の栽培も考えないとかな。


 もしかして、他の孤児院も同じ感じなんだろうか?

 確か孤児院は街にあるって言ってたから、他の街に行くことがあったら様子を見に行ってみようかな。



「えっと、それで何でお姫様抱っこしたのでしょうか・・・・・・」



 私が孤児院の事を考えていると、リーアが真っ赤な顔に上目遣いで聞いてくる。

 可愛いけど何だこの雰囲気。



「リーアを持った状態で走れるかなと思って」

「え、走るんですか?」



 赤面上目遣いから一転、何言ってんのこの人?とキョトンとした表情になる。



「身体強化して走るとかなり速く移動できるの。 その場合2人だけで行くことになるけど。 だから問題が無いなら私がリーアを運んであげようかと」

「こ、この状態で走るんですか!? 恥ずかしすぎます! お嫁に行けなくなってしまいます!」

「リーアは婿を取るからいいんじゃない?」

「そういう問題ではありません!」

「大丈夫だよ、人前ではしないから。 街から少し離れた場所から村の近くに行くまでだけ」

「ユリアさんは大丈夫なんですか? 私をお姫様抱っこしたまま走り続けるのはかなり大変だと思いますけど・・・・・・」

「私は大丈夫だよ、逆にリーアの方が大変かも」

「え、わたしですか?」

「速く移動するとその分受ける風が強くなるのと、私が落ちないように抱えてるからあまり身動きが取れない状態で運ばれるからね。 まあ辛かったら速度落とせばいいし、休憩してもいいから大丈夫だと思うよ」



 身動き取れない状態で、更に風除けなども無い状態だから結構大変かもしれない。

 私は向かい風受けても全然平気なんだけど、リーアのためになにか魔法で対策した方がいいかな?



「わ、わかりました。 少し恥ずかしですがユリアさんにお願いします」

「という事で1日か2日くらいかな? いなくても大丈夫?」



 1人での移動なら日帰りできるだろうけど、リーアが辛かったりしたら速度を落とすことになる。

 そうなると村に泊まって翌日帰ってくることもあるだろうから、余裕をもって1泊予定にしておく。



「今は他の精霊がいるからいつまででも大丈夫なの。 ママの魔力が無い分少し成長が遅くなるだけなの」



 遅くなるのは、それはそれで収穫を楽しみにしてるディアに申し訳ない気がする。



「出発前に水撒いて、できれば次の日には帰って来たいと思ってるから、その時に水は撒けるかな」

「それなら何の問題もないの。 収穫した物はまた土魔法で入れ物作ってしまっておくの。 加工品も精霊たちに作らせておくの」

「うん、その辺りの判断はディアに任せるね。 それじゃあリーア、明日出発でいい? 集合場所はどこにする?」

「明日で大丈夫です。 場所は冒険者ギルドでもいいですか?」

「ギルド? 何でまた」



 リーアを迎えに家まで行くか、うちに来るか、門で待ち合わせだと思っていた。



「先程も言いましたが、これは依頼なのでユリアさんには依頼を受けてもらわないといけません。 なので明日の朝、ギルドで依頼を出して待っていますので、都合がいい時間に来てください」



 あ、依頼って友人に同行をお願いするんじゃなくて、ちゃんとした依頼なのね。



「わかった、それじゃあ明日の朝ギルドでね」

「はい、また明日です」



 明日の約束をしてリーアを降ろす。 



「あ、そうだ。 リーア、これあげる」



 収納から砂糖の入った枡とトウモロコシを2本出してリーアに渡す。

 前回貰ったものがうまく栽培できたのでお返しに分けてあげる。



「唐黍と、この白いのは・・・・・・塩、ですか?」

「白いのは砂糖だよ。 余計なものを取り除いた純粋な砂糖。 唐黍も含めて前回貰ったものがうまく栽培できたからお返しにね」

「え、早すぎませんか!?」

「そこはディアの力で栽培したおかげかな」

「ママの魔力が一番重要なの、わたしだけだとここまで早くて美味しい物はできないの」



 ディアがすごいんだよとリーアに言うつもりが、ディアに訂正されてしまった。



「白い砂糖は初めて見ましたけどきれいですね。 ありがたくいただきます。 帰ってお父様と一緒に食べようと思います」



 唐黍と砂糖を持ってリーアは帰って行った。

 私は少し遅い昼食の後、残りの時間を水撒きなど畑を手伝った。



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