43 植物油の抽出
「さて、今度は油を作ろうかな」
先程使っていた物やゴミを片付けて菜の花の種を取り出し、観察眼で油の作り方を調べる。
本当に便利なスキルだ。
完成品を知っていて、その材料を入手できれば作ることができる。
これがあれば醤油を作れるかもしれないね。
「油の作り方はまず菜種をとろ火で30~40分攪拌しながら焙煎、ってこれも長いな・・・・・・」
ステータス画面を表示したまま焙煎していく。
フライパンに菜種を入れて火魔法で円形の薄い火を下に設置する。
そのままステータス画面を見ながら30分木べらで攪拌する。
「・・・・・・5、4、3、2、1、よし、一旦火魔法は止めてっと。 次の工程は・・・・・・菜種を細かくするのね。 よし来た」
砂糖の時に使ったミキサーを出して、焙煎した菜種を入れる。
ミキサーの口径がフライパンより小さくて入れにくかったので、フライパンから手掴みで移す。
熱さ耐性のおかげで全く熱くない。
が、入れ終わった後に気が付く。
「あ、広めの漏斗作ればよかったじゃん・・・・・・まあ次作ればいいか。 さてさっそく粉砕して・・・・・・よし。 次の工程は・・・・・・これを蒸すのね」
土魔法で大き目の鍋を用意する。
それより口径が小さく、底に砕いた菜種が通らない程度の穴をあけて蒸気が通るようにしたハンドジューサーを作る。
ちゃんと大きい鍋に引っ掛けて置けるようにフックもある。
蒸してる間、手で持ってるの面倒だしね。
大きな鍋に水を入れて火魔法で加熱し沸騰させる。
穴あきハンドジューサーに菜種の砕いたものを入れ、蓋を開けた状態で鍋にセットしてしばらく放置。
「これで数分待って菜種から湯気が出てくれば完成、と」
今か今かと眺めていると、少しずつ湯気が上がってくる。
「あ、出てきた。 今までの工程で一番楽かも。 まあ待ってるだけだし。 そしてこれを搾ってろ過すればいいのね」
ボウルと、ろ過用に目を細かくしたザルを用意して、ハンドジューサーをザルに移す。
そして身体強化を使って全力で搾る。
最初は「ドロッ」っと一気に油が出てくるが、しばらくすると出てこなくなる。
「うーん、思ってたよりも少ない。 これだとフライパンでも揚げ物は無理かな・・・・・・もっと大きい物で作らないと揚げ物するのに何回も油作らないといけないね。 細かくするのと蒸すのはそんなに手間じゃないから、やっぱり焙煎する回数を減らしたい」
今度はさっきよりも横に広いフライパンを用意して、残りの菜種を全部焙煎する。
縦に深い鍋よりも横に広いフライパンにした方が攪拌もしやすく均一に焙煎できる。
火もフライパンも大きさを自由に作れるからできる事だ。
更に、重くても今の私なら持てるし。
再び30分後、焙煎した物を数回に分けて細かくして蒸して搾ってを繰り返す。
畑に撒いた物を除いた菜種全部でボウル6分目ほどの油が搾れた。
これだけあればフライパンでの揚げ物ができるかな。
「よし、コロッケを作ろう! 材料はジャガイモと小麦粉・・・・・・は買ってこないとだね。 あとはパン粉とバターと卵。 あ! 卵ないじゃん! 売ってるのも見たことない・・・・・・うわー、一気にテンション下がったわ」
油ができて意気揚々とコロッケを作ろうとした途端奈落に突き落とされる。
「いや、卵無しでもできたはず。 どうせ最初に食べるのは私だし、ダメだったら卵を探せばいい」
という事で小麦粉を買いに行く。
ディアに商店通りまで買い物に行くことを伝えて商店通りへ。
そしてそのまま食材屋へ直行する
「すみません、小麦粉ってありますか?」
「小麦粉ですか? 小麦粉の販売はパン屋の方ですね。 ここでは扱っていません」
「そうなんですね、ありがとうございます」
食材屋に小麦粉は売ってないみたいだ。
お店の人に聞くと、パンを自分で作る人もいないし、小麦粉はパン以外で使わないから食材屋に置いてないそうだ。
私も小麦粉使うのなんてパンや、クッキーなどの焼き菓子。
あとは麺類程度しかパッと思いつかない。
教えてもらった通り、よく行くパン屋へ向かう。
「こんにちは」
「いらっしゃいませ。 あ、ユリアさん。 今日もパンを買いに来たんですか?」
このお店は他に比べて比較的美味しいパン屋だ。
それでも酵母を使わず小麦と水と塩だけで作るパンはそこまでふっくらしないし、バターなんかもないから香りも元の世界とは比べ物にならないけど。
自然発酵だとやっぱり限界がるのかな?
そしてこのパン屋の看板娘がナノハちゃん。
短い金髪に金色の目で元気な7歳の女の子だ。
「今日はパンじゃなくて材料の小麦粉を買いに来たの。 食材屋でパン屋に売ってるって聞いたから」
「はい、売ってます。 いくつ買いますか?」
小麦はボウル単位で売ってるみたいだったので、木箱を作ってとりあえずそこに入れてもらった。
「こんなに何に使うんですか?」
「今回はコロッケ作るだけだからそんなに量は使わないんだけどね。 他にも何かできないか試してみようかと思って」
「ころっけ? それはうちでも作れますか?」
「コロッケをお店に出すって事? 作るのは難しいかな、他の材料的に。 この街にない物ばかりだから」
「仕入れればできますか? 美味しい物ならぜひうちでも売りたいです」
小さいのに商魂逞しい。
でも揚げ物は油の入手が現状無理だと思う。
「コロッケには植物からとれる油が必要になるんだよね。 それを安価で安定して買うことができるかどうかと、新鮮なジャガイモが入荷できるかだね。 うちでは両方自家栽培してるからあるだけだし」
動物の脂でもできるだろうけどね。
「それならユリアさんの所から仕入れることはできませんか?」
「ナノハちゃんたちが食べる分くらいだったらいいけど、お店で出すほどの量は用意できないかな。 ここ来る前に油搾りやってみたけど、結構な量の材料が必要だし、搾るのにも身体強化の魔法使ってやっとだからね。 完成したらナノハちゃんにも持ってきてあげるから、食べてみてどうしても作りたいならその時また相談に乗るよ」
「わかりました! お父さんとお母さんにも話してみますね」
小麦粉を買えたので家に帰る。
それにしても食べてもないのになんであんなにお店で出したがったんだろう。
パンだけだと厳しいのかな?
家に着いた私はディアに帰ってきたことを伝えて家に入る。
「さて、気を取り直してコロッケ作り再開! まだ開始もしてなかったけど」
まずはジャガイモを洗って鍋に入れて串が通るくらいまで蒸す。
で、その間にひき肉の準備。
肉をスライスしてそれをさらに細く切り、それを重ねてみじん切りの様に切っていく。
そのお肉をフライパンで炒めて火が通ったら止める。
ジャガイモが茹であがったら芽を取って皮をむき、ボウルに入れておく。
土魔法でマッシャーを作り、潰しながらさっき炒めた肉と塩を混ぜていく。
ソースとかないので塩は気持ち多めに。
混ぜた物を小判型に整形してタネを作っていく。
次に、パンをちぎってミキサーに入れてパン粉を作り、広めのお皿にパン粉を広げる。
そして、フライパンに油を入れて加熱し、菜箸を作って温度を確認する。
最後に水に水よりちょっと多めの小麦粉を溶かしてバッター液を作り、タネをそこに浸けたあと、パン粉をつける。
菜箸から小さな泡が出るようになったところで、パン粉をまぶしたタネを油に入れる。
フライパンの横に広めのバットを用意し、油を切る網を乗せておく。
投入後2分ほどでひっくり返してもう少し待つ。
奇麗なきつね色で見てるだけでよだれが出そうだ。
ただの料理ではなく、この世界には無いであろう料理を試行錯誤して完成させるのは、すごい高揚感がある。
両面揚がったところで網に乗せ、次のタネを投入していく。
油が少ないのもあって、まとめて入れると温度が下がるので2個ずつ入れていく。
全部揚げ終わったところで火を止め、最初に油を切っていた物を食べてみる。
「普通に美味しいじゃない。 卵なくても問題ないね」
最初に揚げたもう1つを小さなお皿に乗せてディアに持っていく。
甘い物じゃないから反応はどうだろうか?
あ、ディアにあげるならお肉無しのノーマルコロッケを作ればよかった・・・・・・
まあ作ってしまったものは仕方ない、反応が微妙なら次はお肉の代わりにコーンとか入れて作ってあげよう。
「ディア、コロッケができたよ。 結構おいしくできたけど食べる?」
「ママが作った物なら何でも食べるの」
嬉しいこと言ってくれる。
菜箸で一口サイズに切ってディアの口に運んであげる。
しかし食べずに私の手を見ている。
「どうしたの?」
「棒2本で食べ物を掴むなんて器用なの」
「ああこれ? これは箸って言って、私のいた国で使われてた料理を作ったり食べる時に使う道具ね。 難しそうに見えるけどなれれば食べやすくて便利な道具だよ」
「へー・・・・・・」
私の手やコロッケを挟んでる箸を見ながらコロッケを口に入れたディアが驚きの表情をする。
「これ、ザクザクいい音がするの。 ママの作る料理はいつも美味しいけど、これは美味しくて楽しいの」
いつも甘い物以外無反応で食べてたけど、美味しいと思ってくれてたのか。
ちょっと安心した。
今度からトースト系はもうちょっと焼いてカリカリにしてあげようかな。
乗せた具材が焦げないようにあまり加熱してないんだよね。
具材乗せる前にパンを焼いておくか。
なんてパンの焼き加減を考えていたらコロッケを食べさせ終わっていた。
「これはここで採れたジャガイモで作った物で、表面がカリっとしてるのはパンを砕いたものをまぶして、菜の花からとった油で揚げたんだよ」
「他にもいろいろと作れるの?」
「作れるよ。 今あるのだと・・・・・・きな粉がないけど砂糖はあるから揚げパンがディアも好きかもね。 今のコロッケはお肉入れちゃったけど、唐黍とか他の野菜入れてもいいし」
「・・・・・・」
ディアが考え込んでしまった。
食べたいのかな?




