40 マリー襲来
翌日は畑の事をしたり孤児院に行ったり、孤児院に来たリーアも入れてサクラとおしゃべりをしていたら、油の事をすっかり忘れていた。
さらに翌日。
暗くなる前にパンを買いに行こうとした時に油の事を思い出したので、帰ってきてからさっそく作ることにする。
商店通りまで行き、ササっとパンを買って帰ろうとしたところで後ろから体当たりされた。
何だろうと振り返ると女の子が尻餅をついていた。
大丈夫?と聞こうとする前に女の子が怒りだす。
「ちょっとあなた! どこ見て歩いてるのよ!」
うわーなんかめんどくさい子だ。
私は普通に歩いてただけで、この子がぶつかって来たのに・・・・・・
「私は前を向いて歩いてたでしょ。 ぶつかってきたのはあなた」
「あなたが避けないのが悪いんでしょ!」
うーん、言葉が通じないタイプの人か・・・・・・どうしようかこの子。
「・・・・・・」
「正論過ぎて返す言葉もないようね」
よし、無視しよう、そうしよう、帰るとしよう。
私は女の子をそのままにして帰ることにした。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! 逃げる気!? 責任取りなさいよ!」
責任?そんなの知らない。
背後で叫ぶ女の子を無視して歩き続ける。
すると・・・・・・
「わたし家出して帰る場所ないの! だからあなたの家に泊めなさいよ!」
そう言って女の子は私を追いかけてきて、後ろからしがみつく。
何を言ってるんだろうか、もうだめだ、私の頭がパンクしそうだ。
「家出ってどこの子よ。 名前は?」
「家は・・・・・・言えないわ。 名前は・・・・・・マリーよ」
しがみつく腕を引きはがし、振り向いて質問するがちゃんと答えてくれない。
仕方ないので観察眼を使ってみる。
〇ステータス
名前:アマリリス
年齢:11
アマリリス11歳か、マリーは偽名か愛称ってことかな。
11歳にしては大きくない?
私よりも大きい。
身長の事だよ?
まあ10歳のサクラが近い身長だし、一年たてばサクラもこれくらい成長するのかな。
「だから住む場所求めていちゃもん付けてきたわけか」
「・・・・・・」
図星らしく黙り込んでしまった。
「うちの近くに孤児院があるからそこに頼んでみようか?」
「・・・・・・あなたの所がいいわ」
ふむ、という事は最初から私狙いで突っ込んできたわけか。
それなら少しずつ情報を引き出していこうか。
泊めるのは別に構わない。
見られてまずい物もないし、盗られるような物も無い。
インテリアとして置いてある小物以外全部収納だしね。
強いて言うならディアくらい?
物じゃないけど。
「うちに泊めるのは別に構わないけど条件があるよ。 うちにはもう1人住んでるけど仲良くする事。 いい?」
「わかったわ」
小さくガッツポーズする女の子。
予定通り事が進んだようだ。
私は家に向かい、歩きながら少しでも情報を得ようと女の子と話をする。
「私は他の国から来たんだけど、落ち着いたら旅に行こうと思ってるの。 よかったらあなたの住んでる場所の名産とか教えてくれない?」
「いいわよ」
気が緩んだのか住んでる場所の事を話してくれる。
名前は出さないけど、特別な名産は無く、他の街や村から運んでくること。
人口が多く、大通りはいつも賑わっていること。
騎士が街を見回ってるから治安がいいことなど。
この子の話をまとめると、この子は王都から来たようだ。
一番の理由は騎士は王都にしかいないから。
他に派遣されることはあっても常駐してるのは王都だけだ。
貴族に仕えるのは兵士、国に仕えるのが騎士で、その中でも王族に仕えるのが近衛騎士だとリーアに教わった。
この子の見た目は長い金髪ストレートに赤い目。
服装は庶民の物だけど、よくよく見ると変装してますと言わんばかりに全身新品だ。
しゃべり方がリーアのような丁寧なものではないけど、多分貴族の子供だと思う。
そうなると目的はなんだろう?
わざわざこんなところまで娘を送り込むなんて、よほどの理由だよね?
王都で貴族と言うと真っ先に浮かぶのがあの騒いでいた貴族だ。
もしかして弱みでも握ろうとしてる?
子供なら油断するだろうって事?
話しながら考えていたら家に着いていた。
さっそく畑に行ってディアを紹介しないと。
「ただいまディア」
「おかえりなの」
私に挨拶した後、近寄ってこないままずっとマリーを見つめている。
見つめているというか、睨んでる?
「マリーよ、お世話になるわ」
「少しの間うちに泊まることになったから仲良くしてね」
「ふーん・・・・・・」
ディアは歓迎してないようだ。
仲良くしてくれるだろうか・・・・・・
ディアを抱っこし、話題をそらそうと今日の成果を聞いてみる。
「今日の畑はどうだった?」
「リンゴの木が大きくなったの。 あ、今日は多めに水を撒いてほしいの」
「リンゴ楽しみだね。 それじゃあ水撒いたら家に入ろうか」
「うん」
畑に少し多めに水を撒いたら3人で家に入る。
「じゃあまずはお風呂にしようか、マリー先に入っていいよ」
「それなら遠慮なく入らせてもらうわね」
さすが貴族、お風呂に入るのに違和感とかないんだね。
お風呂の場所を教え、お風呂場に向かったマリーを見送った後、ディアと話をする。
「マリー苦手?」
「んー・・・・・・あんまり」
ディアは全然歓迎できないようだ。
これは早めに目的を達成してもらって帰すしかないか。
「そんなに長くないと思うから、少しの間だけ一緒でもだめ? その間は私も外に行かないで街にいるから」
「・・・・・・ママがいるなら、それでもいいの」
うーん、渋々という感じか。
仲良くするのは難しそうかな。
私はディアを宥めるように、膝の上に乗せたまま抱きしめ背中を撫でる。
しばらくそのまま撫でていたらマリーがお風呂から出てきた。
ディアを抱き締めてたら幸せな気持ちになっていて、マリーのことすっかり忘れてた。
「お風呂どうだった?」
「1人で入るのはやっぱり退屈ね。 お風呂は悪くなかったわ」
普段はメイドとかに洗ってもらうんだろうか?
というかそんなこと言ったら平民じゃないと言ってるようなものだ。
私の家に来る目的を達成して気が緩みまくってない?
貴族と言えば、リーアも着替えは月に1回くらいしか自分でしないって言ってたね。
「それじゃあ私たちもお風呂に入ろうか。 マリーは適当に座ってゆっくりしててね」
「わかったわ」
ディアを抱っこしたまま2人でしばしお風呂タイム。
お風呂から戻るとマリーがテーブルに突っ伏していた。




