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4 宿屋へ.

 銀貨を受け取った私はそのままサクラに渡す。



「え、どうしたの?」



 お金をサクラに渡そうとした私に対し、サクラが首をかしげる。



「どうって、これはサクラが持ってくるって言ったんでしょ? 私は売れるなんて知らなくて捨ててくるつもりだったし。 だからこれはサクラのお金だよ。 私は荷物持ちをしただけ」

「で、でも・・・・・・」



 さすがに自分で倒してもない物を売ったお金は、受け取るのに抵抗はあるようだ。



「もし後ろめたさがあるとかなら、今後サクラには暇なときいろいろ教えてもらうつもりだから、そのお礼や依頼料とでも思ってくれればそれでいいよ」

「・・・・・・わかった、ありがとうユリアちゃん」



 少し悩んだ後、笑顔でお礼を言うサクラ。

 こういういい子を見ると何かしてあげたくなる。

 けど、まずは自分のことを何とかしないと。


 あ、そういえば街に来たのはいいけど、どこに住めばいいんだろうか?

 お金はあるから土地を買う?

 いや、家が建つまで結局住む場所が無いか。

 それとも空き家を買うのかな?


 という事で、さっそくサクラに聞いてみる。



「ねえ、どこか泊まれる場所ってあるかな」

「宿屋ならいくつかあるけど」

「人気な宿屋があれば教えてほしいんだけど」

「いいよ。 わたしも商店通りで買い物をするし、途中まで一緒に行こう」



 買い取りのおじさんに手を振って別れ、建物を出て私は再びサクラに手を引かれながら宿屋を目指す。


 狼を売った建物からしばらく歩き、商店を横目に進んだところでサクラが止まる。

 そこは他の店の数倍くらいの広さがある建物だった。

 入り口にある小さな看板にはベッドの絵が彫ってあり、それを見れば宿屋だとわかる。



「ここだよ。 ここは珍しくお風呂があって、一部の女性に人気な宿屋なの」

「お風呂か、いいね」



 いやちょっとまって、お風呂があって人気って事は、普通はお風呂が無いってこと?

 銭湯みたいな場所がある?

 それともお風呂に入る習慣がない?



「それじゃあわたしは買い物して帰るね」

「あ、うん。 ありがとう、気を付けてね」



 お風呂について考えていた私に、サクラは手を振って去っていく。

 私もサクラに手を振り、見送った後、宿屋に入る。

 

 受付には10代後半くらいの女の人が立っていた。



「いらっしゃいませ、お泊りですか?」

「はい。 今日街に来たばかりなんですけど、この街の子にここがおすすめって言われて来ました」

「それは嬉しいですね。 普通の宿だとお風呂が無い場所ばかりなので、うちは男性より女性に人気なんですよ」



 サクラに聞いた通りのようだ。



「それじゃあとりあえず3日ほど泊まってみます。 しばらくこの街にいるつもりなので、気に入ったら延長するかもしれません」

「ありがとうございます、一泊銀貨3枚で、夕食と翌朝の朝食が付きます。 3日分だと銀貨9枚ですね。 食事は一声かけて頂ければお部屋にお持ちします。 食べ終わった食器類はドアの前に置いてもらえればこちらで回収します。

 あと、お風呂はこの奥にありますが、軽く汗を流す程度ならいつでも使えますけど、湯船の方は夕方から夜の間しか使えませんので注意してくださいね」

「わかりました」



 銀貨一枚がいくらかわからないままだけど、食事もあるみたい。

 でも、私は銀貨一千万枚分のお金を持っている。

 不老不死みたいだからいずれ足りなくなるだろうけど、しばらく働かなくても生きていけるね。

 そして、どうやらお風呂は個室ではなく大部屋で、みんなで入るタイプのようだ。

 もちろん男女別にあるみたいだけど、男湯の方はあまり使われないそうだ。


 私は銀貨9枚を渡し、代わりに部屋の鍵を受け取る。

 しかし、その鍵を見て少し固まってしまった。

 何せ鍵は木製だったのだ。

 さらに言うなら、鍵とは名ばかりの取っ手に木の棒がついただけの代物だ。

 受付のお姉さんが首を傾げながら見ていたので、お礼を言ってその場を離れた。


 部屋は二階の手前の部屋だった。

 ここは1人部屋で狭かったけど、荷物もないし寝るだけなら十分だ。


 部屋に入り、ベッドで横になる。

 そしてそのまま天井をボーっと眺めていた。



「本当に異世界に来ちゃったんだな・・・・・・これからどうしよう」



 森でサクラに会った時は、まだ異世界という事をどこか疑っていたというか、実感がなかった。

 しかし、大きな壁に囲まれた街、門や兵士、宿屋もまるでRPGゲームの世界のようだ。

 そう言えばあの自称神様からのメッセージにも「ゲームのような~」とか書いてあったね。



「あ、そういえば魔法ってどうやって使うんだろう」



 ゲームの世界だと思ったところで、さっき見たステータスに魔法の項目があったことを思い出す。



「本や巻物みたいに覚えるアイテムがある? それとも誰かに教えてもらう?」



 私はステータスを開いてみる。

 すると、スキルか増えていた。

 が、魔法は増えていない。



※習得条件「宿屋に泊まる」達成。


〇衣装変更

登録してある服に一瞬で着替える。 着たまま同じ服を選択すると脱ぐことができ、脱いだ服は自動で収納される。

登録1:ユリアの制服(神衣)



「習得条件って事は、特定の行動をするとスキルが増えるってことかな? すでに制服が登録されてるのはまあいいんだけど、神衣って何?」



〇ユリアの制服(神衣)

ユリアの中学時代の制服を元に女神が魔素で作った服。 汚れ、臭いが付かず破けたり皺にもならないし水もはじく。 

※ブレザー(紺) スカート(紺) ベスト(紺) リボンタイ(赤) ブラウス(白) レギンス(3分丈、黒) ハイソックス(白) 下着上下(水色) 革靴(茶)のセット


 

 これは神装備では?

 いや、神様が作った物だから神の装備ではあるけど。

 この服があれば、とりあえず服には困らない。

 下着もブラウスも汚れないとか最強か?もうこの服だけでいいんじゃない? 

 肌触りもいいし皺にならないならこのまま寝ても問題なさそうだし。 

 スカートで寝るのはちょっとアレだけど・・・・・・いや、セットだけどそれぞれは外せるのか。

 なら寝る時はブレザーやスカートは収納しておけばいいね。



 私は子供達と遊ぶことが多く、可愛い服よりも動きやすい服ばかり着ていた。

 小さい頃(今も小さいけど・・・・・・)からそういう服装で過ごしていたのもあって、お洒落に興味が無かった。

 最初から興味が無かったわけではなく「汚れたら嫌だな」とか「動きにくいな」という気持ちが強くて避けていたら、いつの間にか興味がなくなっていた。

 高校に入ってからは友達と可愛い服を買いに行ったこともあるけど、結局ほとんど着ていなかったし。



 スキルを確認した後、ボーっとしていた私は夕食前にお風呂に入ることにした。

 受付のお姉さんに挨拶してお風呂場へ移動する。

 そして、脱衣所に誰もいなかったので「衣装変更」を使ってみる。

 するとちゃんと脱げた。

 服も全部収納に入ってるね。

 この能力すごく便利だ、お風呂限定だけど。


 お風呂に入ると少し狭い銭湯のような感じだった。

 さっき聞いたときにイメージした通りだね。

 とりあえず体を洗おうと周囲を見回す。

 しかし固定されたシャワー?のような物はあるけどお湯の出し方がわからない。

 あちこちいじってみると、シャワーに透き通った色の石が付いていて、その石に触れればしばらくお湯が出る、という事ががわかった。



「石に触れてお湯が出るなんて感応式なのかな? 建物の割にはハイテクだ」



 しかし体を洗うタオルのような物はあったけど、シャンプーどころか石鹸もない。

 石鹸とかは持ち込まないといけないのかな?

 仕方ないのでシャワーとタオルだけで体を洗い、湯船につかる。



「異世界に来ちゃったけど、初日でちゃんとお風呂にも入れる宿に止まれて食事も出るなんて運が良かった。 サクラには感謝しないと」



 十分に温まったところでお風呂を出る。

 未使用の体拭き用の布置き場から布を持ってきて体をふく。

 が、吸水性は良くない。

 搾りながら何回か体をふいたら、今度は制服を着てみる。



「おお、ちゃんと全部着れた。 本当お風呂には便利だ」



 当然ドライヤーなんてないので、出来るだけ布で髪の水分を取って我慢する。


 お風呂を出てカウンターの前を通ると、夕食がもう出せるというので、そのまま部屋まで運んでもらう。

 夕食には少し早い時間だけど、この世界ではこれくらいが普通なのかな?

 しかし、この宿泊してる感じ、凄くワクワクするかも。


 夕食は一口サイズに切って焼いたお肉と、具の少ない野菜スープ、それから硬いパンだった

 お肉は獣臭くて結構硬い。

 というか焼きすぎだ。

 スープは塩と一緒に煮てある野菜だけで味付けしてあるのか、かなり薄い。 

 パンはなんか・・・・・・うん。

 顎が疲れそうなパンだったけど、意外と普通に食べられた。

 全体的に微妙だったけど、比較対象が無いのでこれが普通なのかいまいちなのかがわからない。


 食事が終わった後は一休みして、やることもないのでそのまま寝てしまう。




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