3 ギルドのに納品
「それじゃあ案内よろしくね」
「うん、任せて」
私はサクラの後を、周囲を警戒しつつついていく。
森の外周部だったようで、そんなに時間もかからず森から出られた。
森から出て並んで歩いていると、今度はサクラから質問をされる。
「そういえば、ユリアちゃんはどこから来たの?」
ちゃん付けで呼ばれてしまった、同い年か、もしかしたら年下だと思われてる?
まあいいか。
「私は気が付いたら森にいたんだよね。 どうして森にいたのか、どうやって森に来たのかもわからないの」
「え!?」
私の答えにサクラが足を止め、驚きの表情でこちらを見る。
いきなり森にいたとか言われたらそりゃこんな反応になるよね。
「どうやってか私を森につれてきて、森の中に放置されたみたいなんだけど。 正直それはどうでもよくて」
「どうでもいいんだ・・・・・・」
気にしない私の態度に開いた口が塞がらないサクラ。
だって神様とかの話なんてできないし仕方ない。
もしかしたらこっちの世界では神様は身近な存在の可能性もあるけど。
「うん、帰れないなら今後の事を考えないとだし」
「そうだけど・・・・・・寂しくないの?」
「自分でも不思議だけど、特別寂しくはないかな。 もともと1人になりたいと思ってたし」
「わたしは1人だと寂しくて耐えられないかも。 ユリアちゃんは強いね」
自分でも不思議なくらい何も感じていない。
唯一妹に会えないのが心残りくらいだろうか。
私って自分で思っていたよりも薄情?
「街に着いたらどうするの? 街に住むの? それとも旅とかするの?」
とりあえずは住む場所を確保しないとだよね。
でも旅とか面白そうかもしれない。
せっかくのファンタジーな世界なんだし。
戦っても負けなそうだし、この世界に慣れたら旅をするのもありだね。
とりあえず現実という事にして、ゲーム感覚でファンタジーの世界を楽しもうと思う。
「しばらくは街でのんびりかな。 この国のことも知らないからまずは慣れないとね」
「よかった。 せっかく仲良くなれたのに、すぐにお別れは寂しいもんね。 わたしの知ってることでよければ何でも聞いてね」
そういって笑顔になるサクラ、子供特有の純粋な笑顔は可愛いね。
「うん、多分質問しまくると思うけどよろしくね」
「任せて!」
「で、さっそくいいかな」
「うん、何?」
私達は話をしながら街の方を目指し、再び歩いていた。
街は平野の中にポツンとあり、大きな壁に囲まれているようで、入れるのは門がある場所だけのようだ。
そしてある程度近くまで来ると、門は空いてるけど門番みたいな人がいる。
これ大丈夫? 私入れる?
「入口に武器を持った人がいるんだけど、よそ者の私は入れるのかな?」
「身分証があればどこの国の人でも入れるよ。 なくても通行税の銀貨を渡せば入れるし」
「あ、お金があれば入れるんだ、よかった。 身分証なんて持ってないし」
お金があってよかった。
銀貨がいくらなのかわからないけど。
身分証は学生証だからあってもこの世界じゃ使えないだろうし。
まあ手持ちには学生証もないけどね。
「そういえば知らないうちに連れてこられたんだっけ・・・・・・」
サクラが私の境遇を考えてるのか、悲しそうな顔をする。
身分証は持ってないけどお金は持ってるって事には、何の疑問もないのね。
それと、急に連れてこられたから悲劇と言えば悲劇かもしれないけど、意外と私は気にしていない。
そんなサクラと一緒に門に近づくと、門の所にいた人が近づいてくる。
「おう、おかえり。 薬草は取れたか?」
門にいた兵士のような人はサクラの事を知っているようで、気さくな雰囲気で話しかけていた。
「はい!」
「それは良かった」
サクラは門の人に薬草の入ったカゴと身分証?を見せた。
門の兵士らしき人はそれをチラっと確認すると、次に私の方を見る。
「君は?」
「私は森で迷ってるところをこの子に街まで連れてきてもらったんです。 身分証を持ってないけど、お金払えば入れるんですよね?」
「え、何も持ってないのか?」
「えっと、ユリアちゃんは身分証を忘れてきてしまったみたいです」
訝しんでいる兵士にどう説明しようかと思っていたら、サクラが咄嗟に誤魔化してくれた。
「おっちょこちょいな子だなぁ。 まあ通行税払えば入れるよ。 あと一応あそこの小屋で犯罪履歴を調べさせてくれ」
「犯罪履歴? どうやって?」
「身分証持ってたのに使ったことないのか? まあ説明するより見た方が早いだろ。 ついてきてくれ」
独り言のように呟いた私の言葉に、眉を顰めながらこちらを見る兵士。
私はとりあえず兵士の人に言われて門のすぐ内側にある小屋に入る。
すると、机に水晶のような物が置いてあった。
占いでもするのかな?
「これが『参照の水晶』と言って、身分証所有者が犯罪者かどうかを確認する物だ。 主に忘れたと言って誤魔化そうとする犯罪者対策に使うものだ。 とりあえずこれに触れてくれ」
私は言われるがままに触るが、当然何も起きない。
勝手に連れてこられただけで何もしてないのに犯罪者と言われても困る。
ただ、身分証を持ってる人って事は、持ってない私はどう表示されるんだろうか?
「大丈夫だな」
青く光った水晶を見て頷く兵士。
「こんなのでわかるんですか?」
「身分証持ってたんだよな? 服装は立派そうだがずいぶん田舎から来たんだな。 身分証作ったんなら見てると思うが、これとは別に『登録の水晶板』というのがあって、身分証を発行するときに魔力を登録してるんだ。
で、その身分証を持った者が犯罪者になると、登録の水晶板にそのことが登録される。 そうすると身分証の色が変わるんだ、だからそれを誤魔化そうとして忘れたフリをする者がいてな。 その対策としてこれで調べてるんだ」
身分証は魔力?を流すと色が変わるようで、通常は青白く、犯罪者は赤く光るらしい。
さっきサクラの身分証光ってたかな? 気付かなかった。
機能的には、元の世界で言う指紋認証とかそんな感じ?
「身分証なんて使ったことなかったから初めて知りました」
「大きな街にでも行かないと村には検問なんてないからな。 知らなくても仕方ない。 ん?なのに身分証作ったのか? ・・・・・・まあ犯罪者じゃないみたいだし深く聞くのはやめておこう。 じゃあ通行税の銀貨5枚もらうぞ」
私が持ってるのが何の硬貨かわからなかったけど、収納から「銀貨5枚」と念じると手に出てきたので、ポケットから出したように見せて渡す。
収納の事を聞かれても面倒だし。
しかし、黄色(金色?)のコインしか持ってなかったのに、なぜか銀色のコイン(銀貨?)が出てきた。
収納を見てみると、コインの所の数字が99998となっていて、収納の中に「銀貨」というアイテムが95枚入っていた。
つまり黄色のコイン1枚で銀貨100枚分という事だ。
この銀貨の価値がわからないけど、銀貨換算にすると約一千万枚の銀貨を持ってることになる。
銀貨が1円だとしても約一千万円?
億万長者とは言えないかもしれないけど、十分すぎる金額だ。
いや、通行税が5円とかありえないし、結構な価値があるのかな?
まだこの世界の物価がぜんぜんわからない。
「おう、じゃあ入っていいぞ」
「ありがとうございます」
所持金の計算をしていた私は、街に入っていいと言う許可が出たので小屋を出る。
そして心配そうに見つめるサクラの元へ戻る。
「ただいま」
「おかえり。 大丈夫だった?」
「うん、無事に入れるよ」
「よかった」
自分の事のように喜んでくれるサクラ。
本当にいい子だ。
そんなサクラに手を引かれて、私達は門を通り、街に入った。
さて、これからどうしようかな。
「街に入ったわけだけど。 サクラはどうする?」
「わたしはギルドに報告しに行かないといけないからギルドに行くよ。 ユリアちゃんもウルフを売りに行った方がいいんじゃない? 持っててもお肉が悪くなっちゃうし」
「そういえば狼持ってたね」
サクラと話をしたり、門でのやり取りですっかり忘れていた。
まあ時間経過しないみたいだから腐ることはないだろうけど、それをいちいち説明するのも面倒だしさっさと売ってしまおう。
「薬草の納品場所と同じ場所で買取もしてもらえるから、一緒にギルドに行かない?」
「じゃあそうしようかな」
サクラは再び私の手を取って、ギルドとやらの方へ向かう。
門から少し歩くと、商店街のような通りに入った。
人がそれなりに多く、屋台みたいなものもある。
そのまま通りを進んでいき、大きな建物の前に来ると、扉を開けて中に入る。
建物は大きいのに、中に入ると小さめの部屋にカウンターがあるだけだった。
「こんにちは、納品に来ました」
「あいよ、依頼確認するからギルドカードを見せてくれ」
サクラが門で出した物と同じカードを渡すと、おじさんはそれを水晶のような板に乗せる。
あれが登録の水晶板ってやつかな?
おじさんが内容を確認して軽く頷くと、今度は薬草を調べ始める。
全部調べ終わると水晶板を操作し、カードと茶色いコインを渡していた。
これで納品完了のようだ。
「次はユリアちゃんも」
「あ、うん。 どこに出せばいいの?」
「あのあたりに出せば大丈夫だよ」
サクラは、受付していた場所から少し離れたカウンターを指さす。
私はそこに狼を出すとおじさんが驚いていた。
門で聞かれるのが面倒だと思って隠していたけど、結局ここで知られることになってしまった。
便利だし、もう隠さず収納使いとして過ごしていった方がいいかな?
「すごいな。 収納自体珍しいのに、その年で収納持ちか。 これだけでいいのか?」
「そうですよ?」
「そうか、収納持ちだからもっと出してくるかとも思ったが、嬢ちゃんみたいな小さい子がそんな魔力持ってるわけないか。 それじゃあ嬢ちゃんもギルドカードを出してくれ」
「あ、私持ってないんです。 門も通行税を払って入ったので」
「ん? どこかの村から来たのか? そうなると実績として残らないが、それでもいいか?」
「はい、大丈夫です」
実績が何のことだかわからないけど、色々説明を聞くのも面倒なので、とりあえず頷いておく。
「それじゃあ買い取り額はこれな、未解体だから解体手数料で少し減ってるぞ」
「ありがとうございます」
私は渡された銀貨数枚を受け取る。




