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38 森の調査

 ディアを抱っこして孤児院から戻ってきたあと、一応一緒に森に行くかディアにも聞いてみる。



「私はこれから菜の花集めて森に行くけどディアはどうする?」

「畑にいるの」

「またお留守番でいいの?」

「昨日言われてやりたいことを考えてたの。 今わたしがしたいことは、この畑でできた美味しいリンゴにビワ、イチゴが食べたいの。 だから早く育てたいの」

「そんなに食べたいならまだあるから置いていこうか?」

「普通のはいらないの、ママの魔力で育てたものが食べたいの」



 そう言いながら目を輝かせるディア。

 さっきのトウモロコシを食べて気に入ったのだろうか?

 そんなに違うのかな?


 確かに収穫した物は全部品質Bだった。

 でも私はまだトウモロコシしか食べてない。

 美味しかったけど、普通に売ってる物と比べてないから違いが判らない。

 私の記憶にあるトウモロコシと同じような味だったし。

 でも、このディアの表情を見るかぎりかなり美味しくなってるみたいだ。



「それならお願いしようかな」

「あんなに甘くておいしい唐黍は初めて食べたの。 果物も絶対美味しくなるの」



 大きくなってから話し方もハッキリしてきたし、表情も少し豊かになった気がする。

 少なくとも今までこんな表情はしなかった。

 リンゴジャム食べた時も口元で少し笑った程度だったし。


 やる気のあるディアに畑を任せ、街の外に出て南東に向かって走る。

 南東と言っても広いし、丘になってたりして遠くまで見えない。

 なのでまずは丘の上を目指す。

 そして丘の上に行き、周りを見渡す。

 菜の花が無ければ次の丘へ。


 何回か繰り返していると黄色い花が見える。



「あ、何かの花かあった」



 その黄色い花の元へ走っていき、その花を見る。



「やった、菜の花だ! 植えて育てるためだけど、実験用に油を作ってみたいしここにあるのはいくつか残していっぱい持って行っちゃおうかな」



 1時間ほど採集したあと、すぐ森に向かう。

 早く森に行きたいので、製法などを調べるのは後回し。


 地図を表示して真っ直ぐ森に向かって走ったので、1時間弱で森に着いた。


 今回は地図があるので、周囲の花などの確認をせずにどんどん森の奥へ入って行く。

 すると、30分ほどで前回木を切った場所まで到着する。



「真っ直ぐそのまま来るとこんなに早く着くんだ・・・・・・思ったより奥じゃなかったのかな?」



 今日はそのままさらに奥に進む。

 さらに30分ほど進むと森の雰囲気が変わる。

 日の光がまったく届かず、真っ暗で薄気味悪い。

 私がこの世界に来た時は不思議と明るかったはずなのに、今はかなり暗い。


 照明魔法で明るくしながらさらに進むと、魔物の反応があった。

 しかしただのスモールボアだったのでサクッと倒して収納する。 



「ここまで来てもスモールボア1体だけ? ずいぶん少ないね。 たまたま会わなかっただけかな?」



 と言っても地図のスキルには魔物が映っていない。

 範囲外なのかそもそもいないのかはわからないけど。

 森が薄暗くなってからは照明魔法で照らしながらなので走って進めず、早歩きで進んでいく。


 その時、地図に魔物の反応があった。

 と思ったらもう目の前にいて、咄嗟に左腕でガードすると左腕に噛みつかれる。



「うわっ! なに!?」



 驚いて照明を消してしまったので再度照らすと、私の身長より1.5倍ほど高く、緑色の虎みたいなのが腕に噛みついてた。



「これがフォレストタイガーかな?」



 のんきに考えながら右手でメイスを構えて噛みついてる頭に叩きつける。

 しかし、素早く避けられてしまった。



「めっちゃ速いじゃないの。 これ攻撃当たるの?」



 私が目で追えないなか、フォレストタイガーは木を使って飛び回り、時折引っ掻いたり体当たりしてくる。

 痛くはないけどこっちは攻撃が当てられない。


 目で追えないので音を頼りに方向を確認しようとしても、そっちを向いたときには攻撃されていて、こっちが武器を構える間もなく移動している。



「あーもう、めんどくさい! ウィンドカッター!」



 風魔法を使って近くの木を切り倒していく。

 すると日を遮っていた木がなくなり、日の光が射す。

 足場が悪くなってしまったので、警戒しながらも木を収納していく。


 近くの木がなくなったけど、フォレストタイガーは隠れたりはせず、そのまま普通に突っ込んできた。

 さっきより遅い上に、明るくなったことで動きが見やすくなった。


 左腕でガードしようとすると噛みついて来るので、噛みつく瞬間にメイスを振り下ろす。

 さっきより早いタイミングでメイスを振り下ろしたおかげで、頭には当たらなかったけど左前足に当たった。

 これで機動力も落ちるはず。


 殴られた足はもう立てないようで、3本の足でふらつきながら私に向かって唸る。

 突っ込んできたところをまた反撃しようと思って待っていると、フォレストタイガーは後ずさり始めた。

 逃げようとしてる?



「逃がさないよ、ストーンウォール!」



 機動力が落ちたとはいえ、木を使ったあの速度で逃げられると面倒なので、私とフォレストタイガーを囲むように土魔法で石の壁を作り、退路を塞ぐ。

 その足なら壁を上ることもできないでしょ。


 もう素早く動くことも逃げ道もないので、こっちから走り寄っていく。

 それに合わせてフォレストタイガーもゆっくり走ってくる。

 私は噛みつこうとして来た頭にメイスを叩きつけると、フォレストタイガーはそのまま地面に叩きつけられた。



「ふう、これで依頼は終わりかな」



 叩きつけたフォレストタイガーをつついてみても動く気配がない。

 そのまま収納して周りの壁を元に戻す。



「ちょっと時間はかかったけどまだまだいけそうかな」



 今回一番の目的はフォレストタイガーだけど、他にも何かいないかの調査もしようと思っている。

 なので街まで帰る時間を気にしつつ、もうちょっと奥まで行ってみることにした。



 そのまま1時間ほど歩いても木だけで何もない。

 魔物どころか薬草すらない。

 普通に考えれば、こんな日の当たらない場所に普通の花は咲かないか。

 薬草系が普通の花なのかはわからないけど。


 そろそろ帰ろうかと思った時、開けた場所に出た。

 そこには洞穴があり、見覚えがある場所だ。


 やっぱりおかしい。

 私がこの世界に来た時はこんなに暗くなかった。

 木で覆われて暗いんだから時間で暗いわけじゃないと思う。

 ただ似たような場所?


 私はこの世界に来た時の事を思い出そうとするけど、洞穴があったことしか覚えておらず、頭上の木の事なんて覚えていない。



「まあ同じでも違くてもどっちでもいいや、調査しちゃおうか。 結構大きな洞穴だけど何か住んでたりする?」



 その洞穴に近づき、地図で魔物の探知をしながら中の音を聞いてみる。

 でも地図で見える範囲には何もいないし音も聞こえない。

 生き物の反応がないので、照明の魔法を使って中に入ってみる。

 しかしそんなに奥行きはなく、何かのねぐらのような感じだった。



「この石は何だろう?」



 洞穴の奥には茶色で丸い手のひらサイズの石と、白っぽいバレーボールサイズの石が並んで置いてあった。

 何の鉱石か調べようと思い、観察眼で見てみる。



〇五常石(儀)

選ばれし者のみ使用することができ、強い土の力を得られる。


〇神聖石

女神の創りし物。 魔力を与えることで完成する。



 五常の儀って仁、義、礼、智、信のことかな?

 じゃああと4つもこの石がある?

 そもそも選ばれし者って誰に選ばれればいいのよ。


 神聖石も意味わからない。

 何が完成するんだか。

 鉱石っぽいし武器ができる?


 とりあえず貴重な物のようなので持っていく。

 誰かの物とも思えないし。


 外に出て周りを見てみる。

 他には特に変わったところもないし、相変わらず魔物の反応もない。



「そろそろ帰らないと暗くなっちゃいそうだし、今日はここまででいいか。 フォレストタイガー以外危険そうなのは見つからなかったけど」



 帰り道も特になにかに襲われることもなく森を出られた。


 森を出た私はそのまま街に戻り、ギルドへ向かう。



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