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37 孤児院に畑を作る

「あ、そうだ。 王都で新し食材手に入れてきたんだけど、育てられそうなのあるかな?」

「何を買ってきたの?」



 興味がこっちに向いてくれたみたいで、表情が少し明るくなる。



「野菜はトマトとピーマン。 果物はビワとイチゴだね」



 買ってきたものを何個かディアに渡す。



「・・・・・・大丈夫なの。 全部育てられるの」

「全部できるの?」

「そのままだと無理だけど休眠させたり乾燥させたりすれば育てられるの。 それは土の精霊の力で簡単にできるから、ママは水撒きだけしてくれればあとはわたしがやるの」

「なんか面倒なこと全部任せちゃってごめんね」

「一番大変なのは魔力集めなの。 高品質を育てるには土の中にある魔力だけだと足りないから、空気中や日光による魔素からも魔力を土に混ぜないといけないの。 でも風や火のの精霊がいないとそれは難しいの。 水の精霊がいればママの代わりに水と一緒に魔素を土に撒けるけど、わたしと同じくらい大きい精霊じゃないと効果が弱いの。 でもママは大きな水の精霊と同じことを1人で簡単にできちゃうの。 精霊から見ても規格外の魔力なの」

「精霊は魔素で私は魔力なの? 魔素と魔力って何が違うの?」



 そう言えば私の服も魔素で出来てるんだっけ?

 前に衣装変更を見た時にそんなことが書いてあった気がする。



「魔素は自然にある魔力の元の事なの。 その魔素を魔力に変換して体に溜めて、それを使って魔法を撃つのが精霊以外の生き物で、精霊は魔力に変換しないで魔素のまま魔法を撃てるの。 魔素を魔力に変換すると弱体化するから、普通は魔力で魔法を撃つと弱くなるの。 だから精霊の方が魔法が強いし、精霊契約すると精霊に魔力を渡すことで魔素を乗せて魔法を撃ってもらえるから、精霊を連れてる魔法使いはすごく強いの。 でもママは精霊と同じようにほぼ魔素と同じような魔力なの。 しかも精霊のわたしよりも魔力が持つ力が強いの。 そこがすごく不思議なの」



 説明にあった私の魔力が不思議だという話よりも、ディアがこれだけ喋ってくれたことの方が気になってしまった。

 まだそんなに話したことはないけど、今までの雰囲気的に一言二言答えるだけであまり喋らない子なんだと思ってたし。

 それに、強かったり変わってたりするのは神様が作ったというこの体のせいだと思うし、いまさら驚かない。


 そんなことを考えていたらディアがしがみついてくる。


「どうしたの?」

「わたしは戦闘でママの役に立てないの。 だからママの望む畑を作らないといらない子になっちゃうの・・・・・・」



 だからいままで畑に執着してたのか。

 少しでも役に立とうと・・・・・・でもそれは私の望む親子関係ではないし、自分のやりたいことをやってほしいと思う。

 私のためではなく。



「ディアがたとえ家に引きこもってぐーたらするだけの暮しをしてたって、いらない子にはならないし、私たちは親子なんだから何があってもずっと親子なんだよ。 畑はディアに任せちゃってることが多いけど、暇なときに手伝う程度でいいんだからね?」



 しゃがんで膝の上にディアを乗せて抱きしめ、頭を撫でる。



「いいの? ずっとここにいてもいいの?」

「いいんだよ。 だってここがディアの家でもあるんだから。 ゆっくり自分のやりたいことを見つけていこうね」

「うん・・・・・・」



 抱きしめていたディアが笑顔を向けてくれる。

 もう大丈夫かな?



「じゃあ今日はもう家に入ろうか」

「わかったの。 でも明日は収穫をしたいの」

「育ってるとは思ってたけどもう収穫できるんだ。 早いね」

「わたしも頑張ったけどやっぱりママの魔力があるとよく育つの。 加護を下げてたのにここまで早く育つとは思わなかったの」

「明日は収穫したもので何か作りたいね」

「楽しみなの」



 そのまま今日は家に入る。




 翌朝、畑でディアと一緒に収穫をする。

 ジャガイモ、トウモロコシ、サトウキビ。

 リンゴはまだ小さな木が生えてるだけだったけど、10本も木が育ってる。

 こんなに植えてたのか、ディアの気合がすごい。

 収穫したものを一部植えなおし、再度栽培を始めるという。

 しかしディアは収穫した場所ではなく、その隣に新しく植える場所を作っていた。



「こっちに植えるの? 広くない?」

「新しい野菜たちも植えるの」

「え、もう準備できたの?」

「できてるの。 あとは植えてママに毎日水撒きしてもらうだけなの。 土を休ませるから、回復のために収穫した土の方も撒いてほしいの」



 そう言って範囲を指定するディア。

 いやいや、広すぎじゃない?

 広げた場所が最初の畑の3倍近くあるよ?

 まあ水撒きが私の仕事なので言われた通り最初の畑含めて4倍になった範囲に水を撒く。



「ねえ、収穫したもので孤児院の畑も作りたいんだけどいいかな?」 

「ママがいいならいいの」

「それでディアには孤児院の子供たちに畑のやり方を教えて欲しいんだけど、お願いできる?」

「わかったの」



 孤児院に自給自足とまでは言わないけど、食料を自分たちで育てられるようにと思っての畑だ。

 だから自分たちでできないと意味がない。



「必要な道具は私が作るからディアは指示だけお願いしていい?」

「それだけでいいの?」

「自分たちで育てられるようになってほしいからね。 私が旅に出たりしたら手伝えないし」

「わかったの」



 収穫したものを持って孤児院へいく。



「おはようございます」



 外には院長先生がいた。

 ちょうどいい。



「あら、おはようございます。 王都に行ったのにずいぶんとお早いお帰りですね」

「王族用の速い馬車というのを用意してくれたので、そのおかげだと思います」



 本当は走って帰ってきたからだけど。



「王族用馬車を用意してもらうなんてすごい待遇ですね・・・・・・」

「待遇というより早く情報が欲しかっただけだと思いますけどね、話した感じだと。 それでですね、今日は孤児院に畑を作ろうと思って来たんですよ」

「畑・・・・・・ですか」

「孤児院で食料を栽培して食べ物を増やそうという考えです。 今回は比較的簡単に育つものを持ってきましたのでそれを植えようと思います」

「そこまで考えていただきありがとうございます。 それで私たちは何をすれば・・・・・・」



 お礼を言う院長先生が首を傾げて不安そうな顔をする。

 畑の知識は全くないようだ。



「目的は孤児院のみんなで育てられるようにすることなので、道具は用意しますが畑は子供たちにやってもらおうと思ってます」

「わかりました。 では子供たちを呼んできますね」



 院長先生が孤児院に入って少しすると子供たちがみんな出てくる。



「ユリアちゃん、この前言ってた畑を作るの?」

「そうだよ。 うちでうまくいったから孤児院でもやろうかなって」

「うまくできるかわからないけど、頑張るね!」



 やる気に満ちたサクラに木の鍬を作ってあげる。

 1人でやるのは無理なので、サクラを含めた年長の子たち4人に鍬を渡して、ディアの指示通りに耕してもらう。


 びっくりしたことに孤児院の子供たちの体力がすごい。

 4人とも疲れたと文句も言わずに耕していく。

 疲れたと言うと思ってたから休憩を挟むつもりだったけど、必要なさそうなのでこのまま進めてしまおう。


 耕すのが終わったので、耕してた子供たちは休ませて、小さい子たちにジャガイモとトウモロコシを植えてもらう。

 土遊び感覚みたいで楽しそうだ。


 最後に土をかけたら水を撒く。

 ジョウロを作って大きい子たちにやってもらう。 

 近くにある井戸から持ってくるようだ。

 魔石の水も使えるだろうけど、そっちは魔石の魔力を消費するからね。


 ちなみに普通の水の魔法や魔石の水は、そのまま出しただけだと時間経過で自然消滅して魔素に戻ってしまうらしい。

 自然消滅するのは知ってたけど、魔素に戻るのはディアに聞いて初めて知った。


 なので、飲み水用として出した水でないと、魔法で水を撒いても意味が無いのだ。

 魔法としても普通の水魔法より難易度が高いのもあって、水の魔石でも飲み水用は高い。



「よし、完成だね。 あとは毎日水をあげる事。 細かいところはディアに説明してもらうからちゃんと聞いてね」



 ディアは子供たちと院長先生に収穫後の種の用意や、野菜や種の保管方法などを説明していた。

 私はその間にうちで収穫したトウモロコシを切って茹でていく。

 この時間ならまだ孤児院は朝食は済んでないはずなので、トウモロコシを食べてもらう。


 説明や指導が終わったタイミングでトウモロコシをみんなに配る。



「熱いから気を付けて食べてね」



 食べていいよと言ったけど、子供たちは食べ方がわからないようでいろんな角度から見ている。



「これはこの粒を取って食べるんだよ。 それで一列取った後はその隣の粒を倒すように指で押せばまとめてとれるよ」



 私が教えようかと思っていたけど、サクラが周りの子たちに教えていた。

 サクラは食べ方を知ってるようだ。

 さすがは元貴族、なのかな。


 サクラの説明を聞き、みんな不思議そうにトウモロコシを食べ始める。

 でも食べた後皆笑顔になる。



「ユリアちゃん、これすごく甘いね。 粒も瑞々しくて昔食べた物よりもすごく美味しい」

「美味しいでしょ、これただお湯で茹でただけなんだよ。 調味料も他の食材も何も使ってないの」

「それだけこの唐黍自体が美味しいって事だね。 普通に貴族や王族の方々にも歓迎されると思う」

「これもいろんな料理にも使えるよ。 サラダにしたりお肉やジャガイモと一緒に炒めたり、油があればコロッケもいいね」

「アブラ?」

「アブラって動物の脂しか売ってないんだよね。 固形の脂じゃなくて液体状の油が欲しいの。 菜の花があればたぶん作れると思うんだけど・・・・・・」

「菜の花は南東に行った草原に咲いてたと思う。 黄色い花だよね? でも菜の花でアブラを作るの?」

「種を絞って作れたはずだけど、詳しくは知らないんだよね。 今度それも試してみるよ、うまくできたらまた試食用に持ってくるから」

「うん、楽しみにしてるね」



 実はトウモロコシの収穫をした後、コーン油が作れないか観察眼で見たんだよね。

 そしたら工程が多い上に何か知らない材料も出てくるしで諦めた。

 でも観察眼で見れば作り方がわかるという事はわかったので、これで菜の花の種を観察眼で見れば菜種油の製造方法がわかるかもしれない。



「それじゃあ今日は森に行く前に南東に行って菜の花を取ってこようかな」

「森に行くの?」

「昨日帰ってきた時スズランさんに会って頼まれたんだよね。 森に危ない魔物がいるから倒してほしいって」

「さすがユリアちゃん。 強いとギルドからお願いされたりするんだね」

「そうなのかな? 一応討伐ついでに他にも危ないのがいないか見るつもりだけど、何で最近になってこんなに危ない魔物が出るようになったんだろうね」

「森は広いから奥にいたのがたまたま出てきただけとも言えるけど、何かが原因で追い出されたとなるともっと強い魔物がいる可能性が・・・・・・」



 サクラが不安そうにしている、これはさっさと解決&調査して安心させてあげないとだね。

 森に行かなくなったとはいえ、街の近くにそんなのがいたら怖いもんね。



「それなら早めに行っていつもより奥まで行ってみたほうがいいのかな」

「大丈夫?」

「大丈夫だよ、変なのが街に来ても困るからね」



 畑も完成し、子供たちもトウモロコシを食べ終わったので私はディアと一緒に家に戻る。



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