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31 サクラのやりたいこと

 畑で少し話をした後、ディアを抱っこしたまま家に入り、椅子に座らせる。

 今日は昼食にさっき貰って来たチーズを使ってチーズパンを作ろうと思っている。



「まずはパンをいつもより少し厚めにスライスして、チーズをのせてスライスしたジャガイモとお肉を乗せて火魔法で表面を焼く、と。 火力強すぎると焦げちゃいそうだからちゃんと調整しないと・・・・・・」



 チーズが溶けてパンに焦げ目がついた辺りで食べてみる。

 うん、いい感じだ。

 トマトソースが作れればピザパンにもできそうだ。


 チーズパンを食べていて気が付いたけど、私熱い食べ物で火傷しなくなってる。

 これもスキルのおかげか、アツアツのまま食べることができる



「こうなってくるとトマトも欲しくなってくるね。 あとはディアもおいしく食べられる果物とかも欲しいかも」



 そういえばリンゴはあるんだよね、あの種って育つのかな?



「ねえ、リンゴを食べた後の種って育てられる?」

「わたしがやれば育てることはできるの。 でも種から木に育って実をつけるのに、普通なら何年もかかるの」

「それならリンゴの木をそのまま買ってくる方がいいのかな。 売ってくれるかわからないけど」

「種があるなら試しに植えておくの。 ママの魔力を使っていいならそれなりに早く育てることもできるの」

「それならお願いしようかな。 リンゴが実るまで私の魔力は好きなだけ使っていいからね。 あ、でも体調崩すようだったらちょっと加減してね」

「わかったの、ママの様子を見ながら育てるの」



 収納にあったリンゴをいくつかカットして芯を取り、種をディアに渡す。

 カットしたリンゴはそのまま収納しておく。

 まだジャムはいっぱいあるし。


 種を受け取ったディアは外に出て行った。

 たぶん植えに行ったのだろう。

 私は再度チーズパンを作って、畑にいるディアに一言言って孤児院へおすそ分けしに行った。


 孤児院の子供たちはアスレチックで遊んでいた。

 おやつには少し早いので、院長先生と一緒にしばらく遊んでる子供たちを眺める。


 そのまま1時間ほど眺めた後、おやつを出すことにする。

 集まって来た子供たちに洗浄魔法をかけて、テーブルにチーズパンを出す。



「今日は珍しい食材が手に入ったからそれで作って来たよ、さあどうぞ」



 子供たちは知らない物でも特に気にせず食べている。

 表情を見れば好評なのはわかる。



「ユリアちゃん、こののびる食べ物は何?」



 サクラが伸びるチーズを見ながら聞いてくる。



「あ、これはチーズって言って、牛乳とカビで作った食べ物だよ」

「カ、カビ?」



 サクラが「食べちゃった・・・・・・」という表情でこちらを見ている。

 他の子供たちも手が止まっている。



「カビの力を使って作っただけで、そのカビ部分は取り除いてあるからそれはカビじゃないよ。 だから食べても平気」

「そうなの?」

「私の国では人気な食べ物だったけど、この国では食べないみたいね。 そもそも食べちゃダメなものを孤児院に持ってこないよ。 来る前に自分でも食べて確認したし」

「・・・・・・ごめんね、疑っちゃって」

「私の方こそ説明少なくてごめんね、カビって言ったら心配しちゃうよね」



 私のことを疑ったのがそんなにショックなのかすごく落ち込んでしまった。

 どうしよう・・・・・・



「あ、そうだ。 サクラ、ジャガイモの栽培をしてみない?」

「ジャガイモを?」



 今度やろうと思ってる孤児院での栽培に関して話をして話題を変える。



「うちに試しで植えてたジャガイモの芽が出てきたの。 で、育てられるなら孤児院でもどうかなって思って」

「わたしたちにできるかな・・・・・・」

「そこは大丈夫。 土の精霊のディアに監督してもらうから」

「そういえば今日はディアちゃんいないね、どうしたの?」

「うちの畑にいるよ、新しく育てるものをお願いしてるところなの」

「ユリアちゃんは農家を目指してるの?」

「いやまったく。 ただ美味しい物を食べたいだけ。 簡単に育てられそうな物や、あまり買えない物を自分で育てようかなって思ってるだけだし。 自分で、と言ってもディア任せになっちゃってるしね」

「・・・・・・その行動力はうらやましいな。 私には自分で育てるなんて思いつかなかった。 それに最近はユリアちゃんに甘えて遊んでばかりで、その・・・・・・行ってないし」



 みんながいるから依頼の事はぼかしている。

 サクラが依頼に行かなくなっているのなら、今の所うまくいってるって事かな。

 アスレチックを作って遊ぶ場所に、服も用意した。

 たまに食べ物も持ってきてるし、今度栽培を始めれば食べ物も増えるだろう。

 そうすればサクラも依頼に行こうなんて思わなくなると思う。



「それが普通だと思うよ。 行くのが楽しくてしょうがないってわけじゃなかったんでしょ? なら行かなくなっても問題ないでしょ」

「だけど・・・・・・」

「これからはサクラのやりたいことやできる事を探していけばいいんじゃないかな。 私もできる事なら協力するし、リーアだって協力してくれると思うよ」

「自分のやりたい事とできる事・・・・・・」



 今度は悩み始めてしまった。

 まあ将来のことで悩むのはいい事だ。

 偉そうな事言いながら私は何も考えてないけど。

 お金を稼ぐなら適当な魔物倒してればいいし、私にはそれが安全にできる。

 今やりたいことと言っても、食べ物を増やす以外は孤児院の子供たちの成長を見守るくらいだ。


 私も何か新しいこと始めたほうがいいのかな。

 でもそれは畑が無事に機能してからか。

 いっそサクラの言ってたように農家みたいなこと始めちゃう?


 2人で悩んでいると、他の子供たちはどんどんアスレチックに戻って行く。

 いつも椅子で全体を見ている院長先生も私たちに気を使ってか、アスレチックの近くで子供たちを見ている。



「ユリアちゃん・・・・・・実はわたし、やりたいことがあるの」

「そうなの?」



 サクラが周りに誰もいないことを確認すると、そんなことを言い出した。



「ユリアちゃんは知らないと思うけど、このモウイの街の西にはカーミトという街があるの。 わたしはそこで産まれたんだけど、大型の魔物に襲われて街が滅んじゃったの。 リーアの話では魔物もまだいるみたいで、その辺りは今でも立ち入り禁止になっているみたい」

「その街を復興させたいの? それともその魔物に敵討ちをしたいの?」

「街を復興させたいの。 でもまだ魔物がいるみたいだし、わたしには復興するお金も魔物を倒す力もないから・・・・・・リーアが領主を継いだらその魔物を何とかして街を取り戻す、とお勉強を頑張ってるの」



 リーアがサクラのために頑張ってるってこの事だったのか。

 そして、話の内容の大きさとリーアとの関係を考えると、多分サクラも領主の娘だったんじゃないかな。

 言葉遣いも孤児にしては丁寧なことあったし。

 それに、普通の小さな女の子が故郷を魔物から取り返したいなんて思わないでしょ。


 まあそれは置いておいて、私に何ができるだろうか。

 魔物を倒す?資金提供?土魔法で復興支援とか?

 サクラが望むなら協力するのも構わない、でもサクラの性格的にすべてを私に任せたくはないと思う。

 任せるのが嫌とかではなくて、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまうと思う。



「まずは魔物を討伐ないし追い出す。 壊れた街を建て直して街に住む人も集めないと、か・・・・・・サクラの人生をかけた目標だね」

「うん・・・・・・でも無理なことはわかってるの。 リーアが魔物を何とかすると言ってたけど、それができるならもう国がしてると思う。 国の領土内に危険な魔物がいるわけだし、放置なんてしないんじゃないかなって」



 そりゃそうか。

 その街と王都がどこにあるか知らないけど、王都に来る可能性だってあるんだし放置はしないよね。

 それでもそのまま立ち入り禁止という事は討伐できなかったという事だ。

 それなら私が魔物だけ倒しちゃう?

 他は頑張ってもらうとして、魔物さえいなければ復興に一番邪魔な物が無くなる。



「うーん、最初がいきなり難題だね。 私も何かできることないか考えてみるよ」

「ありがとう、でも絶対に無理だけはしないでね?」



 真剣な表情で私の方を見る。

 興味本位で討伐に行くなと言われてるようだ。



「私はいつだって無理なことはしないよ、畑を拡張しながらのんびり解決策を探してみるよ」

「うん。 それにしても、本当に農家にはならないんだよね?」

「そのつもりなんだけど。 ディアの力があると栽培も簡単だし、好きな物育てて食べられるから農家も悪くないんじゃないかな?ってさっき思ってた」

「それは確かに悪くないね」



 最後は畑の話で空気も明るくなったところで、サクラはアスレチックに遊びに行ったので、私は家に帰る。



「ディアただいま」

「おかえりなの」

「畑はどう?」

「ちょっと困ってるの」

「え、何かまずい?」



 サクラにジャガイモの話をしたとたんに何か問題が起きたみたいだ。



「ママの水が全然足りないの。 リンゴの種がすごい勢いで水と魔力を吸ってるの」

「えっと、水を撒けばいい?」

「お願いなの。 わたしは水魔法が使えないから何もできないの。 無理やり他の土から集めることはできるけど、そんなことを続けたら周りが乾燥した枯れた大地になっちゃうの」



 それはまずい。

 言われた通りに雨のように水を撒いてみる。

 すると地面が濡れて、少しするとすぐ乾いてしまう。



「え、なにこれ・・・・・・」

「この辺りの精霊の加護を強めたらリンゴの種だけ極端に吸収するようになっちゃったの」

「これは大丈夫なの? 根腐れだっけ、ダメになったりしない?」

「それは大丈夫なの、ダメにならないようにちゃんと種は確認してるの。 でも様子がおかしいの」

「それなら満足するまで水をあげようじゃないの」



 そのまま暗くなるまで水をあげ続けてその日は寝た。



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