24 リーアと買い物
今日は朝食後に畑に水をあげている。
そして水をあげながら今日やる事を考える。
「今日はまず服屋に行ってみようかな。 全部とはいかなくとも、ある程度はできてるかもしれないし」
という事で、水やりを終えた私はさっそく服屋に向かう。
「すみません。 この前服を頼んだんですけど、どこまでできてますか?」
「あ、はい、できてますよ」
そう言って、お店の奥から大き目の箱を出してきた。
もしかして20着全部完成したの?
「こちらがシャツで、こちらがハーフパンツです」
長い2つの箱には、それぞれシャツと膝まであるハーフパンツが男女まとめて入れてあった。
私はそれぞれ触って確かめてみる。
厚さはいい感じだけどちょっと固いかな?
使ってるうちに馴染むだろうか。
「ありがとうございます、希望通りです。 本当にこんなに早くできるんですね、驚きですよ」
「珍しい大量注文でしたから、みんなも張り切ってくれました。 それに装飾などはありませんでしたし、サイズと色違いと言っても型は少なく済みましたから。 思っていたよりは余裕をもって作る事が出来ました」
なるほど、一部の色が違うだけなら型は同じ物を使えるんだね。
私は残りのお金を払い、お礼を言って箱を収納し、お店を出る。
「今日の目的が終わってしまった」
しばらく当てもなく歩き、やりたい事や欲しい物を考える。
「やりたい事ねぇ。 孤児院でBBQはできたし・・・・・・遊具の拡張? 縄があればブランコも作れるし、大きな公園にあるようなアスレチックみたいなものも作れる、かな。 よし、欲しい物候補1は縄に決定!」
「何が決定なんですか?」
急に後ろから声をかけられてビクッとしてしまう。
振り返ってみるとリーアがいた。
何でこんな所にいるんだ領主の娘。
「リーアか。 考え事してる時急に声かけられてビックリしちゃったよ」
「それはすみません。 道の真ん中で何やら呟きながら歩いていたので、何かあったのかと思いまして」
そんなに異様な人物に見えたのだろうか。
ちゃんと前は見て歩いてたしフラフラもしてないと思うんだけど。
「ちょっと縄が欲しいなと思って、どこに売ってるかなと考えてたところ」
「縄ですか? 道具屋で売っていますよ」
あっさり場所がわかった。
しかし道具屋なんて見たことがない。
商店通りは全部見てるはずなんだけど・・・・・・雑貨屋ではないんだよね?
「道具屋ってどこにあるの? 商店通りで見たことないと思うんだけど」
「ユリアさん・・・・・・冒険者でしたよね? 道具屋に行ったことないんですか?」
リーアは、何言ってんだこいつ、と言う目で私を見ている。
私はまだ冒険者になったばかりなんだけど、冒険者は知ってないといけない常識?
場所も一般人には分かり難い特殊な場所にあるのかな?
冒険者用の・・・・・・
そこまで考えて思い出す、この通りと別の商店通りがあったことを。
最初に行って以来行ってないや。
「もしかして冒険者通り?」
「そうです。 そこに冒険者が戦闘や野営で必要なものなど、いろいろ売っているんです。 そこにしか売っていない物もあるので、冒険者でない一般の人も買いに行ったりするんですよ」
それは初めて聞いた。
それなら早速行ってみようかな。
「ありがとう、さっそく見に行ってみるよ」
「もしよろしければ、ご一緒してもよろしいですか?」
「いいけど、時間は大丈夫なの?」
「はい、街を見て回るのも勉強の一環なので」
なるほど、領主だと街の事も知ってないといけないから、将来に向けて見て回ってるってことかな。
「じゃあ行こうか」
私とリーアで冒険者通りに向かう。
冒険者通りにつくと、さっそくリーアに道具屋へ案内してもらう。
中に入ってみると、アウトドア商品を扱ってるお店みたいな感じだ。
簡易テントや寝袋、大き目のリュックのような物に靴なども置いてある。
私はお目当ての縄を買う。
置いてあった分全部。
いや、少しは残しておいた方がいいかな?
アスレチック作るならどれくらい必要かわからないから仕方ないね。
「そ、そんなに何に使うんですか?」
リーアが目を丸くして聞いてくる。
「孤児院に作ってる遊具を拡張しようと思ってね。 そのために大量の縄が必要なの。 どれくらいの規模になるかわからないから、これで足りるかはわからないけどね」
「そういえば孤児院に遊具を作ったと言ってましたね。 まだ見てませんが、今度作る物が完成したら教えてもらえませんか? 見に行きたいので」
「いいよ。 来てくれればサクラも喜ぶと思うし、歓迎するよ」
縄を買うために店員を呼ぼうとしたとき、近くにあった板が目についた。
板は表札のような長方形で、何かをはめる窪みが2つ空いている。
なんだろうこれ。
「ねえリーア、これなに?」
「これですか? 魔石板ですね、知らないんですか?」
「初めて見た」
「魔石板を見たことない人がいるんですね」
どうやらこの表札のような板は一般常識な物らしい。
私がその板を眺めているとリーアが解説してくれる。
「これは魔法を登録した魔石と、それを発動させるための魔石をはめ込んで使う道具です。 こっちの穴に魔法を登録した魔石を入れて、こっちの穴に魔法を使うための魔力を供給する魔石を入れるんです。
そしてこの隣に置いてある魔石が魔法の登録されている魔石ですね。 そこまで嵩張らずに魔法を使える道具なので、魔法が使えない人にも人気なんですよ。 魔法が使える人も予備の魔法として、非常時用に携帯する人も多いと聞きます」
説明を聞き、魔石を見てみる。
「火魔法」などの属性魔法や「洗浄」「照明」などと書かれた箱に入っている。
基本4属性魔法はそこまで高くなさそうだけど、ちょっと応用的な物や光属性の魔法は値段が跳ね上がる。
ただ私はここにある魔法は全部使えるので、正直使い道がない。
予備が必要なほど消費したことはないし、魔力がなくなっても殴ればいい。
「うーん、私には必要ないかな」
「魔力の温存という意味でも持ってると便利ですよ? 遠出するときなどに魔法使いが何らかの原因で魔法が使えなくなる、という状況はあり得ることですし。 いざという時のために自分用に買っておくのもいいと思います」
なるほど、魔法使いに何かあった時用の保険としても買うのか。
魔法が使えない人にも人気ってそういう意味だったのね。
攻撃だけが魔法じゃないもんね。
あ、孤児院のために買うのもありかな?
お風呂用にお湯も出せる水の魔石、お手洗いのために洗浄の魔石をいくつか買ってもいいかも。
私が泊まっていた宿屋のお風呂では、埋めて固定されてたのか魔石しかなかった。
あの宿屋のお風呂もこの板が埋めてあったのかな?
とりあえず試しに買ってみようか。
「えっと、お湯のための魔石と洗浄の魔石をいくつかと・・・・・・あとその分の板、と。 あ、照明の魔石も買って行こうかな」
照明の魔法は使えるけど、家に設置するための魔石があったほうがいいね。
いや、自分だけなら居る時だけ照明の魔法を使えばいいのか。
あとは精霊たちは明かりがあったほうがいいのか、暗くてもいいのか、かな?
「結構買いますね」
「まあね、孤児院にも置いてあげたいし」
「ユリアさんは優しいですね。 魔石板は高いので私が買ってあげることもできません。 さすがに街の税金で贅沢品を買ってあげることもできませんし。 一般家庭にもないような物を税金で買ってあげたら、領民からの反感を買ってしまいます」
それはそうだよね。
頑張って働いている人が買えないような物を、街の税金で買ってあげてたら怒る人もいそうだ。
「そういえばユリアさんは冒険者ですよね? 魔石は持っていますか?」
「討伐記念の魔石は持ってるけど、通常の魔石は買い取ってもらっちゃうから持ってないね」
「ここで小さな魔石も売っていますが買っていきますか? それとも御自分で取りにいきますか?」
冒険者だと自分で取ってくる選択肢もあるね。
今後は素材をある程度残そうかな・・・・・・
特に取りに行く予定もないしそこまで高くもないので、今回は魔石も複数一緒に買ってしまう。
これで大量の縄が手に入った。
ついでにお風呂用や照明用の魔石も。
「この後ユリアさんは帰りますか?」
「帰る前にせっかく来たから武器屋に寄って行こうかなって思ってたところ。 前回買った武器が壊れちゃったからね」
壊れたというか切られたんだけど。
いや、切られてなくてもあの歪んだ武器は使い物にならないか。
「おお、武器屋ですか。 めったに行く機会もありませんし私もご一緒します」
楽しそうにリーアがついてくる。
危ない場所に連れて行って大丈夫かな?
怒られたりしなければいいけど・・・・・・
私は前回武器を買ったお店にやってきた。
お店に入ると、前もいたおじさんが前と同じく不機嫌そうな表情でこちらを見る。
話すと普通だったし、これがこの人の通常なんだろうね。
「いらっしゃい。 この前の嬢ちゃんか。 今日はどうした?」
「前回買ったメイスが壊れちゃったので、新しいのを買おうかなと。 できればもっと丈夫なのがいいんですけど」
できれば切られないのがいいんだけど。
そもそも銅ってあんなに切れるものなの?
あのロードの剣が実は業物だったとか?
「メイスが壊れただと? どんな使い方をしたらこんな短期間で壊れるんだよ」
ロードの県のことを考えていたら、おじさんが何言ってんこいつみたいな目で見てくるので、考えを中断して切られたメイスを取り出す。
「おい、本当かよ。 何だこれ、切ったのか? 何の魔物が切ったらこんなに奇麗に切れるんだ・・・・・・まさか人と戦ったわけじゃないよな?」
それって人なら簡単に切れるって事?
何それ怖い。
「人じゃなくて魔物との戦いですね。 オークロードって魔物の剣に両断されちゃったんです」
「は!? ロードと戦ったのか!? メイスで!? 近接でロードと戦うとかどこのバカだよ! というか何でメイス両断される距離まで近づかれて生きてんだよ!」
メチャクチャ言われてしまった。
私ダメージ受けませんとも言えないので返事に困る。
「近づかれたけど魔法で倒したので大丈夫です」
適当にごまかす。
氷魔法で倒したし嘘はついてない。
「魔法が使えるなら近づかれる前に撃たないと命がいくつあっても足りないぞ?」
何か言っても余計に言われそうなので、あいまいに笑うだけでこれ以上何も言わないでおく。
「そういう事なのでまた武器が欲しいんですよ」
「それはいいがこのメイスだって店売りとしては良い物だったんだぞ? これより良い物となるとうちの店にはないな・・・・・・」
「それなら前と同じ武器でもいいです。 メイス使いやすかったので」
「いや、今使ってる物が壊されるような相手と戦うのならより良い物を買わないと命に関わる・・・・・・んだが、しかし・・・・・・うーん、いい物となるとかなり値は張るが鉄が欲しい所だな。 金属としてはミスリルという最上級の金属や、アダマンチウムなんて伝説の物もあるが、そうそう入手できるような物じゃないしな。 そもそも入手出来ても加工できるやつがいるかがわからん」
アダマンチウム?と言う金属は聞いたことないけど、ミスリルは聞いたことがある。
ゲームとかではよく見かけるけど、実際に見たことは無いんだよね。
実在するのかな?
「いくらくらいですか?」
「材料が出回ってなくて売ってないんだ。 そもそもアダマンチウムは伝説の剣で、話を聞いたことがある程度だ。 それを鋳つぶして別の武器にできる職人がいるかもわからん。 鉄やミスリルなら買えるかもしれんが・・・・・・ミスリルは特に希少な物で、値段もその時によって違うから吹っ掛けられる可能性もある」
多少高くても壊れない武器は欲しかったけど売ってないなら仕方ない。
今回は前回のと似たような形状のメイスを買う。
ロードみたいな強い魔物でなければこの武器でいいし、強いのが来たら魔法や素手で戦えばいい。
強い敵に対して武器より素手を選ぶっていうのもおかしな話だけど・・・・・・




