22 マイホーム設置
「わかりました、それでお願いします」
私の返答を聞いたギルマスさんは大きく頷いた。
「ならその指示も出しておくからギルドカードを受け付けに渡しておいてくれ」
ギルマスさんは慌てて奥の扉へ行くと作業指示を出しているようだった。
私は解体場所を出て表に回り、受付にいるスズランさんの所へ行く。
「あ! ユリアさん!」
受け付けに行くと、手元を見ていたスズランさんが私に気づき大声を上げる。
周りの冒険者が何事かと静まり返り、こちらを見ている。
「聞きましたよ! 前回のキラービー討伐に続いて、今回はオーク53体とオークロードまで1人で倒しちゃうなんて凄すぎです! そしてランクBへの昇格おめでとうございます!!!」
スズランさんが大声で全部喋ってくれた。
もう後戻りはできないし、こっそりランクBになることもできなくなった。
周りの冒険者が話を聞いても静かだなと思ってたのも束の間、しばらくすると話を理解したのかざわつき始める。
「今度はロードかよ、しかもオーク53体って1人で倒せるのか?」
「俺は前に普通のオークと1対1で戦ったがぎりぎりだった」
「もう人間じゃねえな。 あいつって最近冒険者になった新人だよな? もうランクBとかここに来るまで何してたんだよ」
「俺たちが全力で行ったとしても53体は絶対無理だな。 武器も体力も魔力も持たない。 そのうえロードとか最初から全力で逃げるわ」
冒険者たちがその数を想像したり、自分たちだったら、と話し合っている。
私は無視してカードをスズランさんに渡す。
スズランさんがカードの登録をしていると、別の人が大きな皮袋を持ってくる。
これは魔石?
もう剥ぎ取ったのかな?
それにしても大きい、これがロードの魔石か。
小さい魔石は指先でつまむ程度のサイズしかないのに、これはバレーボールくらいあるんじゃない?
こんなのが体にあるの、魔物って?
そんなことを考えていたらスズランさんが笑顔でカードを渡してくる。
「本当におめでとうございます、ファンとしてユリアさんの活躍は自分の事のようにうれしいです」
「え、ファンて何ですか?」
なにそれ、知らないところでそんなもの出来てるの?
怖いんだけど・・・・・・
「ユリアさん可愛いのにすごく強くて、個人的に応援してるんです。 これからも頑張ってくださいね!」
「えっと、どうも?」
変なファンクラブみたいなものじゃなくてよかった。
頑張ってと言われても、積極的に依頼を受けたりするつもりはないんだけどね。
「あ、これが買い取りのお金です」
そう言ってさっき持ってきた皮袋をこちらに押してくる。
魔石じゃなかった。
え、これ全部お金なの? 多すぎない?
「なんか、多くないですか」
「ロードみたいな危険個体は買い取りとは別に討伐報酬が用意されるので、単体でかなりの値段になるんですよ。 それだけでも1人なら宿屋で何十年も寝泊まりできる金額です。 それにオークも1体丸々だとお肉がかなり取れるので結構高くなるんです。 それが今回の買い取りは10体分もありますからね。 残りは次回の納品時にその都度お渡ししますので」
「そうなんですね、ありがとうございます。 またしばらくしたら納品しますのでその時はお願いしますね」
私で一抱えある金貨の入った袋とカードを収納してギルドを出る。
まだ日が暮れるには少し早い時間。
今日は宿屋に行くか孤児院の方に家を設置してそっちで寝るか悩む・・・・・・けど、リーアがわざわざ交渉して土地を頼んでくれたし、家もできたのでそっちに住もうかな。
すでに今日の分のお金は払っちゃったけど、それくらいいいか。
あとで鍵を返しに行かないと。
そうなると今まで宿にあるからと買っていなかった物を買わないとね。
毛布は持ってるので、あとは布団に枕、シーツかな。
それから追加でタオルなど。
食器や調理器具はあるからこんなものかな?
意外と買う物なかったわ。
買い物をさっと済ませた後は宿屋に行き、今日から自分の家で住む事と、今までお世話になったお礼を伝えて鍵を返し、宿屋を出る。
そして商店通りを出たら孤児院まで走る。
孤児院が見える辺りについた後、どの辺りに家を出すかを考える。
「孤児院の近くは子供の遊び場でもあるし、いずれ農場も作りたいからスペース確保のために少し離れた場所がいいかな」
離れた場所と言っても見える場所だけど。
孤児院から少し商店通りの方に離れた場所に2階建て(屋根裏あり)の方の家を出す。
もう自分は登録してあるのでそのまま家に入り、照明の魔法を使って明かりをつける。
まずは二階に行ってベッド用の台に布団などの寝具を置いていく。
次はお風呂に行き、脱衣所にタオルや籠などを置き、浴室に桶などのお風呂用品を置いていく。
お風呂用品としては売ってなかったので、代用にそれっぽい物を買ってある。
そして最後に居間へ。
居間と台所はカウンター越しに繋がっているので、カウンターのすぐ横に土魔法でテーブルを作って設置し、椅子も置く。
当然両方とも木製だ。
というか最初からこの辺りも作っておけばよかった。
食器や調理器具は・・・・・・使うときに出せばいいかな。
「あ、それなら全部使うときに出せばよかったんじゃないかな?」
ほとんど設置し終わってからそのことに気が付く。
脱衣所の籠なんて服を収納してるんだから、そもそも使わないじゃん。
でも置いてあったほうが家っぽいので、そのままにすることにした。
なのでやっぱり調理器具や食器もいくつか置いておいた。
もはやただのインテリアだね。
すべて設置し終わったので孤児院に挨拶をしに行く。
「こんにちはー」
夕方だけどまだ暗くなってはいないから「こんにちは」でいいはず。
「ユリアちゃんいらっしゃい。 こんな時間にどうしたの?」
私が入り口で挨拶をするとサクラが出てきた。
「今度近くに住むことになったからその挨拶にね。 あと明日やりたいことがあるから院長先生にその相談をしようかと思って」
私はそう言ってここからでも見える家を指さす。
近くに家が急にできていた事に驚いていたけど、それ以上に近くに住むのが嬉しいみたいで喜んでくれた。
歓迎されてる感じが嬉しい。
「これからはご近所さんだね。 あ、院長先生にお話があるんだよね、すぐ呼んでくる」
そういってパタパタと孤児院へ入って行く。
そんなに慌てなくてもいいんだけど。
サクラが中に入ってすぐに院長先生が出てくる。
「こんにちはユリアさん。 私にお話があると聞きましたが?」
院長先生は首を傾げて何だろうと頭に?マークを浮かべている。
「まずは近くに引っ越したのでその挨拶です。 それと明日の夕食をご一緒しませんかというお誘いです」
私は院長先生にも家の場所を教える。
「近くに引っ越してこられたのですね、これからもよろしくお願いします。 明日の夕食ですが、大したものは出せませんがそれでもよろしければ歓迎しますよ」
「あ、夕食はこちらで全部準備しますよ。 私の国の風習で、引っ越しをしたときにご近所さんにある食べ物を送るんです。 ただこの街にその食べ物はないので、代わりに一緒に食事をしませんか?というお誘いです」
当然蕎麦なんて売ってない。
少なくともこの街にはない。
そもそも何で蕎麦を送るのかも、実際本当に送ってる人が居るのかも知らない。
私自身引っ越したことはないし、物語か何かで読んだだけの知識しかないからね。
「子供たち全員ですか? 12人もいますけどよろしいんですか?」
「院長先生も入れて13人へのお誘いですよ、ご近所さんへの挨拶ですからね」
「そういう事でしたらお断りするほうが失礼ですね。 明日はよろしくお願いします」
「食事の時間は少し長くなりそうなので、いつもの孤児院の時間よりも早めに始めようと思います」
「わかりました。 こちらで何かすることはありますか?」
「食器も含めて用意しておきます。 なので子供たちに一緒に食事することを伝えておいてもらえれば、開始直前まで遊んでても大丈夫ですよ」
「わかりました、明日はお待ちしています」
頭を下げる院長先生と別れて家に帰る。
今日やる事は済んだので、お風呂に入って夕食後少しのんびりしてその日は寝ることにする。
宿屋と物や場所が変わっても特に問題なく済ますことができた。
お風呂のお湯も意外と水魔法で何とでもなる。
お湯をそのまま出せばいいのだ。
温度も結構自由に調整できるし。
最後は魔法を解除すればお湯も消せる。
慣れない家のはずなのに、自分の家だと思うと安心して寝ることができた。




