21 討伐したオークを納品
ジャガイモの村を出た後。
道中適当な木陰で軽くお昼を食べてから街に帰ってきた私は、さっそくギルドに向かう。
「こんにちは」
「こんにちはユリアさん」
いつもの受付嬢、スズランさんがいたのでそこに向かう。
「これをお願いします」
「これは?」
私は村長から預かっていた紙をスズランさんに渡した。
スズランさんが受けとり、内容を確認する。
読み終わると「少々お待ちください!」と言って二階に駆けあがっていく。
ギルマスさんの部屋に行ったのかな。
しばらくすると案の定ギルマスさんと一緒に下りてくる。
「内容は確認させてもらった。 大量のオークと大きなオークの討伐。 そして重症の村人を6人治療と書かれているが間違いないか?」
「はい。 なので討伐も治療も依頼は取り下げてもらって大丈夫です」
「本当に取り下げるのか? 君が討伐と治療をしたと村長自ら書いてるんだ、達成扱いでもいいんだぞ?」
「取り下げた場合依頼料は戻りますよね?」
依頼料ってキャンセルしたら戻ると思ってたけど、もしかして一度依頼すると依頼料は帰ってこなかったりする?
「依頼をした段階でギルドが仲介料としてもらった分は戻らんが、ほとんどが戻るな」
「なら村に返してあげてください。 そんなに裕福な村ではないみたいですし」
よかった、減ったとしても戻って来るんだね。
食料問題がとか言ってた村からお金をもらうのもちょっと気が引ける。
お金も現状は困ってないし。
「それだと任務の達成にならないどころか報酬もなくなるんだぞ?」
「依頼として行ったわけではないですし、金銭は貰ってませんが報酬として目的の野菜は無料で譲ってもらってます。 なので私としては問題ありません」
「そこまで言うならこれ以上はいわないが・・・・・・それで、いくつかオークを回収してきたんだろ? 収納持ちだっていうのは聞いている。 買い取るから裏の倉庫に来てくれ」
「裏?」
「オークのような大きな物は隣に出されても運べないからな。 君のように解体せず丸々もって来た物で、量が多かったり大きな物は直接解体場所に運ぶんだ」
「ついて来い」というギルマスさんについて外に出る。
そして建物の横にある少し広い通路を通って裏手に回る。
大きい物を裏に運ぶって言ってたし、荷馬車とかが通れるように広くなってるのかな?
「ここだ」
大きな扉を開けてギルマスさんが入って行く。
私も入って中を見ると台がいくつか置いてある。
「ここが解体場所で、そっちが保管する冷蔵倉庫だ」
ギルマスさんは部屋の説明をした後、壁にある大き目の扉の方へ視線を移す。
この世界は電気が無いけど冷蔵庫みたいなものはあるんだ。
あ、氷の魔法があるんだから冷やすことはできるか。
あれ、でも魔法としては氷魔法って一般的じゃないんだよね?
「オークは何体あるんだ? 3体までならここに出してくれ、すぐに解体をさせる。 4体以上いるなら冷蔵倉庫に出してほしい」
冷蔵倉庫の方を見ていたらオークの事を聞かれたので、考えを中断してギルマスさんの方を見る。
オークは全部で53体いるし、大きなオークもいるね。
「全部出すのはちょっと厳しいですね」
「なんだ、他に持っていくのか?」
「いえ、量が多いのと、大きいのはそのままだと運ぶの大変だと思いますよ」
「運べないほど大きいオーク? もしかしてロードクラスがいたのか?」
「あー、確かそんな名前でしたね」
収納してある物は一覧を出して選択すると、ちゃんと名前が表示される。
そこにはオークロードと書かれていた。
「大きいオークとは書かれていたが、ロードを単騎討伐だと!? 確認したい、一度出してくれないか?」
私は台の置いてない少し広い所にオークロードを出す。
「な、なんだこれは! どういう状況だ!?」
出した瞬間ギルマスさんが驚き後ずさる。
そういえば氷漬けにしたままだった。
「面白く凍ったのでそのまま持ってきました」
「何をしたらこんな状況になるんだ・・・・・・」
「解除しますか?」
「できるならしてほしいな、でないと解体もできない」
どの属性もそうだけど、魔法は解除すれば魔力が霧散してある程度は元に戻る。
たとえば火の魔法で物を燃やした場合、解除すると火は消える。
燃やした物も燃焼は止まるけど、燃えて灰になった物は当然戻らない。
私は氷魔法を解除すると、固まっていた関節が動くようになってオークロードは倒れた。
「ドシン!」とすごい音を立てて少し地面が揺れた。
「あ、倒れちゃいましたね」
「今何をした? 魔法か? こんな魔法は聞いたことないが」
「氷属性の魔法を解除しただけですよ?」
「氷属性? 魔石以外でそんな属性は知らないな・・・・・・君は何者だ? なぜそんな魔法が使える?」
「なぜと言われても、最初からできたのでわかりません、としか言いようがないですね」
氷と雷は魔法の本には載ってなかったし、スズランさんは「5種類全部」で賢者だと言っていた。
もしかしたらこの世界には無い(または使えない)魔法なのかもしれない。
つまり氷と雷は人前で使うと騒がれる可能性があるわけだ。
隠し続けるのも面倒だし気にせず使うけど。
毎回説明を求められると面倒だな・・・・・・
「その魔法が他のやつにも使えて、魔力消費量しだいでは輸送や食材保管の常識が覆るな・・・・・・」
「ここにも冷蔵倉庫はあるんですよね?」
氷の魔法が無くても魔石があるならいいんじゃない?
「冷蔵倉庫は貴重な氷の魔石を使っているんだ。 これは雪山の魔物しか落とさず、小さいと効果が弱いからそれなりに大きな魔物を倒す必要がある。 だから大きな冷蔵倉庫があるのは城、各ギルド、それと大商人や上級貴族の一部くらいだろう。 小さくて涼しくなる程度の物なら出回ってると思うが、それでも数は少ないはずだ」
「そうだったんですね。 それでこのオークはどうします?」
「あーそうだったな、これがロードだという事は確認した、買い取りはどうする? 全部買い取るか?」
話をそらしてオークの話をしたら、氷の魔法からオークの話に移すことに成功した。
色々聞かれたって私にもわからないし。
「何か珍しい物とか取れたりするんですか? ロードの魔石みたいなのがあれば討伐記念に欲しいですね」
「素材として取れるのは骨と肉と魔石だ、肉は高級品だからかなりの値段になるし魔石も普通のオークよりも大きい。 といっても魔石はサイズごとの違いくらいで、ロードの魔石だから貴重ということはないな。 最初から属性付きの魔石もあるが、後から付与した魔石と値段は変わらんな」
「そうなんですね。 とりあえず記念としてロードの魔石と、食べ比べてみたいので両方のお肉が欲しいですね」
この辺りで売っているお肉だと、掲示板にあったような兎、猪、狼のお肉で、オーク(豚?)のお肉が売ってるのはまだ見たことない。
生姜焼きとか食べてみたいけど、生姜も砂糖も味醂も醤油もない。
全滅である。
「わかった、オークはいくつ持ってきた?」
「53体います」
「は!? それ全部村にいたのか!?」
私の言った数字にギルマスさんは目を見開いて私を見る。
「みたいですね。 数えてから戦ったわけではないので、その場所に全部いたのか集まってきたのかはわかりませんけど。 ロード含めて全部村で倒してきたものです」
「オーク53体とロードを単騎で討伐だと? BランクどころかAランクでも無理じゃないかそんなこと・・・・・・」
それって村を助けられる冒険者はこの街にいなかったって事?
あ、単騎が無理なだけでパーティー組んで狩れば行けるのかな。
「すまんが一気に買い取るのは無理そうだ。 一週間以上間を開けて1回10体ずつの買い取りでどうだ? 一気に買い取ると相場が崩れちまうしな。 もし腐ってしまいそうならさっきの氷魔法で凍らせてれば大丈夫だろう」
この国?世界?の日付の呼び方は、元居た世界と少し違っている。
ステータス画面には時間と一緒に日付も表示されていて、日付を選ぶとこの世界のカレンダーが出てくる。
そのカレンダーだけど、元の世界とは結構違うようで、1週間が6日で、1か月が30日で5週間らしい。
それくらいならまだわかりやすいんだけど、一番違うのが13月がある。
簡単に言えば1年が365日なのは一緒で、1月~12月は30日で13月が5日あるようだ。
ステータス画面のカレンダーがそうなっているだけなので、理由などはわからない。
「いいですよ、次回は思い出した時にでも来ます」
「悪いな。 ロードはこのままでいいから普通のオークは冷蔵倉庫にとりあえず10体出してくれ。 次回以降の買い取り量は在庫次第で減らすかもしれんが、それは了承してくれ」
売れ行きや他の人の持ち込みなどで在庫が多ければ、買い取っても保管場所がないもんね。
それくらいはわかるので、了承して頷く。
「それじゃあ俺はこのまま職員に解体の手配をして、買い取り金額を受け付けに用意するから、表に回って受け取ってくれ。 それとランクも上げないとか」
「依頼も受けてないのに上がるんですか?」
ランクを上げるには同じランクか1つ上のランクで功績?だかを溜めてあげるって言ってた気がする。
「依頼を受けて達成すれば確実に功績を稼げるというだけで、それ以外にも稼ぐ方法はある。 今回のように依頼ではなくたまたま遭遇して倒した場合に、依頼を受けてないからって功績なしだったら見捨てる輩も現れるだろう。 だから不意遭遇だとしても倒した証があれば功績は稼げるようになってる」
たしかに。
普通の人で収納持ってる人はいないみたいだし、たまたま村で出会って倒しても持って帰れないから金銭的に稼げない。
そのうえ功績も稼げないなら戦わない方を選んでも仕方ないのかもしれない。
冒険者だって命がかかっているんだから。
「問題はどこまで上げるかだ。 戦力だけで言ったらAでも通用するだろう。 さらに特殊な氷魔法に重傷を治せるほどの光魔法も扱える」
「ランクは気にしてないのでこのままでもいいんですけど。 それにあげたとしてもBより上になる気はありませんよ。 自由でいたいので」
国の指示に従わないといけないなんて私は嫌だ。
不老不死だから国が続く限り何百年何千年と国の下で働くことになっちゃうもんね。
「いや、この戦力で低ランクにしておくことはできない。 前回のキラービーのようにC以上を対象に依頼を出すこともある。 その時に戦う力があるのに対象外になると、他の冒険者にも被害が出ることになる。 それに、君より弱くてランクが上のやつらは、ランク詐欺だとか言われることになる」
私としてはランクなんてどうでもいいので、ギルドに任せてしまおう。
Bまでならなっても今と環境は変わらないでしょ。
緊急依頼の時に呼ばれるかもしれないけど、街の危機なら逆に何とかしないと私の住む場所にも被害が出るし。
「じゃあギルドにお任せします。 私としては自由に活動できて身分証として使えるならランクは何でもいいので」
「こういう時は普通上位のランクを選ぶもんだが・・・・・・それならBでもいいか? 前回のキラービー討伐でランクを上げようという話は出てたんだ。 そこに来て今回のロード率いるオーク部隊の討伐だ。 誰も文句は言わないだろう」
まあ実力を周知させるって決めてたし、ランクを上げるのもちょうどいいのかな。




