19 怪我人の治療
「あなたは冒険者の方ですか?」
「え? そうですけど」
倒したオークを回収していると、お爺さんが近づいてきた。
まあ魔物と戦ってたら冒険者だとわかるか。
「こんなに早く来て頂けるは、ありがとうございます」
お爺さんはいきなり頭を下げてお礼を言う。
どうやらオークを倒したことについて怒られることはなさそうだ。
ただ、お爺さんは私が誰かに呼ばれて来た冒険者だと思ってる?
「すみません、誰かと勘違いされてるみたいですが、私は誰かに頼まれてきたわけではないですよ?」
「え、依頼を受けてきてくださった冒険者ではないのですか?」
「違いますよ。 私はたまたま来ただけです」
「それではなぜオークを?」
「襲ってきたから? いっぱいいたので飼育でもしてるのかとも思いましたけど、囲いもしてないし襲ってきたので倒しちゃいました」
「そ、そうでしたか」
こともなげに私がそう言うと、お爺さんは戸惑う様に答える。
確か前に買った魔物の本によると、オークは中級クラスの魔物で、安全に倒すならランクCのパーティーが向かうような相手だったはず。
それも1~2体相手の場合だ。
それを大量に倒し、大きなオークも倒したのが女の子1人となればこの反応も仕方ないかもしれない。
少しして、混乱していたお爺さんが再び口を開いた。
「このオーク達は数日前から畑に居座り始めたので、すぐに依頼を出しに行ったんです。 畑以外にも、最初来た数頭のオークを止めようとした村の男数名が大けがを負い、重傷です」
オークは草食なのかな?
人間は食べないんだね。
まあオークの事は置いておいて、私の目的はジャガイモを買って帰る事。
オークのせいで村人が隠れていたなら、オークがいなくなったからお店も開くかな?
「そうだったんですね。 それでお爺さん。 この村でジャガイモって買えます? 私、ジャガイモを買いに来たんですよ」
「ジャガイモを何に使うおつもりですか?」
安堵していたお爺さんの表情が険しくなる。
何に使う?
食べる以外に使われるのを嫌がってる?
ジャガイモの使い道なんて食べるか植えるくらいしか思いつかない。
そういえばバイオ燃料っていうのもジャガイモを使えるんだっけ?
確かに、食べるために丹精込めて育てたジャガイモを、燃料にされるのは嫌がるのもわかるかも。
燃料にしてもそれで動かす物が無い気がするけど。
「何ってジャガイモは食材ですよね? バイオ燃料にはしませんよ」
「ばいお? なんだかよくわかりませんが食べる気ですか?」
え、まさかの食べるほうがNG?
「食べますけど、できれば栽培もしたいんですよね。 私の住んでる街には売ってないので」
「物珍しさで食べようとしてるのならやめておくことをお勧めします。 たまに毒で死ぬ者もおりますから」
「私はジャガイモの食べ方を知ってるので大丈夫ですよ」
毒の心配をしてるだけだったみたいなので、リーアにした説明をお爺さんにもしてあげる。
「それは本当ですか?」
「私が知ってるジャガイモと違う種類だったら絶対とは言えませんけどね。 この畑にあるものを見た感じ同じものだと思いますよ」
前回食材屋に行った時にも思ったけど、この世界にある食材は元居た世界と変わらない。
見た目も名称も。
なのでこのジャガイモもたぶん同じものだと思う。
「それが本当であれば、この村の食糧事情が一気に改善されます」
お爺さんは笑顔で喜んでいる。
「ジャガイモを買いにこの村まで来られたのですよね? それでしたら倉庫にあるものを好きなだけ持って行ってください。 オークを倒して頂いた事と、ジャガイモの毒の情報のお礼です」
お爺さんはそのまま「ついて来てください」と言って歩き出したので、私はお爺さんについていく。
好意でくれるというなら貰っておこう。
その方がお爺さんとしても「ちゃんとお礼をした」と安心できるだろうし。
お爺さんに連れられて村の中を歩いていると、すすり泣く声が聞こえてきた。
その方向を見ると、入り口が開いたままの少し大きな建物がある。
「あそこは何ですか?」
「あれは倉庫だった場所を片付けてベッドを運んだ簡易治療所です。 先程話した怪我をした者たちが運ばれている場所です」
お爺さんはそういって下を向く。
「そんなに酷い状態なんですか?」
確かさっき重症って言ってたっけ。
「オーク討伐依頼と一緒に治癒魔法使いも手配したのですが、いつ来るかわかりません。 緊急事態としてすぐに来てくれたとしても、距離的に普通ならあと1~2日はかかるでしょうし、それまで持つかどうか・・・・・・」
回復と治療は使えるけど、重症の相手を治すことはできるんだろうか?
完治しなくても延命くらいはできるかな?
「私が診ましょうか? 一応回復も治療もできますので、完治しなくても延命はできるかもしれません」
「本当ですか!?」
お爺さんが目を見開いて私を見る。
あまり期待されても困るんだけど。
「使えるのは本当ですが、どこまでできるかはわかりませんよ?」
「ダメでもかまいません、可能性があるなら何もしないよりはいいでしょう」
お爺さんは早歩きで治療所へ向かう。
見た目の割に元気な人だ。
治療所に入ると6人がベッドで寝ている。
腕が変な方向に曲がってる人、足がパンパンに腫れてる人など一目でひどい怪我だとわかる。
その中でも一番奥にいた人がまずい。
数日前に怪我したって言ってたけど、片腕が無く全身が腫れている。
切られた腕も一緒に置いてあるけどもう色が変だし、腕の包帯の所からまだ血が滲んでポタっと垂れている。
この状態でよく生きてたねこの人。
しかし、ふと違和感を覚える。
私はつい最近まで普通の高校生だった。
当然こんなひどい怪我なんて見たこともないし、ゲームでもグロテスクなものはやったことが無い。
それなのにこの惨状を見ても何も感じない。
元々耐性があった?
それともこの体になって耐性がついた?
いや、私はドラマで刺されるシーンや手術シーンをまともに見れないくらいに耐性は無かったはず。
つまり、この体になってから耐性がついたって事か。
まあ考えてる時間がもったいないので、私は治療するために一番奥の人が寝ているベッドへ向かう。
近くでお世話をしていた人をどけて「リカバー」を少しずつ全身にかけていく。
何事かと混乱してるお世話をしていた人に、お爺さんが事情を説明してくれている。
腫れは少しずつ引いていき、肌の色も元に戻っていく。
とりあえず延命はできそうだ。
置いてある腕にも「リカバー」をかけてみると、肌の色が回復していく。
数日たった後でも、まだこの腕も何とかできそうだね。
しかし回復と同時に血行が良くなったのか、切断面からの出血もひどくなってしまう。
切られたまま治療してしまったからかな?
腕の切断面が塞がったりはしないのかな?
うーん、いまいち回復魔法の効果がわからない。
とりあえず腕がまだ大丈夫なら、くっ付くか試してみようかな。
切断されていた二の腕あたりに巻いてある布をとり、一度洗浄魔法をかけてから腕をくっつけ、再び「リカバー」を少し強めにかけてみる。
見た目がグロテスクだけどそんなこと言ってられない。
しばらくすると見た目は問題なくくっついたので、再度全身に「リカバー」をかけてみる。
「ふぅ・・・・・・」
「この者は無事ですか?」
お爺さんが恐る恐る聞いてくる。
観察眼で状態を見てみると怪我は直っていたが、状態異常で破傷風にかかっていた。
「怪我は治りましたが、破傷風にかかってしまっているみたいですね」
「はしょうふう、とは何でしょう?」
「簡単に言えば傷口から悪い物が体内に入り、最悪発狂した後に死んでしまう病気です」
「そんな・・・・・・」
細菌とかわからないだろうと思い、症状だけ教えた。
と言っても私も詳しく知ってるわけじゃないけど。
私の話を聞いたお爺さんはまた下を向いてしまった。
予防接種とかも無ければ破傷風は怖い病気だからね。
「こっちの治療も試してみましょうか。 パナシーア」
私は猛毒も治せた「パナシーア」をかけてみる。
するとあっさり治ってしまった。
この魔法は名前通りいろいろ治せそうだね。
「・・・・・・治療の魔法が効いたみたいですね、もう大丈夫ですよ」
「ほ、本当ですか?」
治療後、状態を確認をして完治を伝えると、お爺さんが涙目で笑顔になる。
「疲労もしてませんし起こしてみますか」
私は、状態が疲労もない正常になった男の人に声をかけつつ揺すって起こしてみる。




