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ユリアの世界  作者: 花園 満


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122/169

122 ジャスミンの初依頼、村へ戻る

 オークを討伐後、帰りは隠れながら行く必要がないから、私はなるべく高い岩に飛び乗り、オークが他にいないか周囲を見渡しつつ村へ向かう。

 アンズはさすがにそんな扱いができないから、なるべく段差がない場所を歩かせている。


 ゆっくり移動してるせいで村に戻るころには結構な時間になっていた。

 これ今日中に帰れるの?

 アンズがいなければ一気に帰るんだけど、帰りもゆっくり帰るとなると今日中には帰れない。


 村に入った私は近くの人間を捕まえて、討伐完了した事を伝え、報告するのに村長がいる場所を聞いた。

 どうやら村長は家にいるようだ。

 私はさっさと報告をしたかったので、従魔に早歩きをさせて村長の家に向かう。


 そういえば従魔をだれも恐れないわね。

 驚いている人間はいるけど、騒ぐ人間はいない

 ちゃんと皆に説明してくれたのかな?


 村長の家に着いた私は、従魔を家の前に伏せさせ、アンズと共に村長の家に入る。

 アンズの震えはもう収まったようだけど、まだ表情は暗い。



「おお、無事に戻られましたか。 どうぞこちらへ」



 村長が笑顔で迎えてくれ、そのままテーブルまで誘導してくれる。

 私たちが座ると村長が話し始めた。



「それで、オークは見つかりましたか?」



 さっきの笑顔から一転、少し不安そうな表情で質問してくる。



「住処のような場所を見つけたわ。 丸太の屋根みたいな物で日よけを作っていたわね」

「ふむ、オークはそういう感じで住処を作るのですか。 それでオークはどれくらいいましたか?」

「寝てるのが5体、住処の見回りが2体、住処の外にいたのが2体ね」

「9体、ですか。 それで、討伐はできそうですか?」



 数を聞いて眉を顰める村長。

 数を確認しただけだと思われてる?



「もう討伐はしたわよ? だから戻ってきたわけだし。 一応住処にあったものは片付けたし、高いところから周りも見たから近くにはもういないはずよ。 どこか遠くに出かけてたりしたらわからないけど」

「おお! もう討伐して頂いたのですか、しかも住処の処理まで。 それはありがとうございます。 最初の想定よりも多い9体も討伐して頂きましたし、また現れるようなら再度討伐依頼を出そうと思います。 それで、討伐証明になるものは何かお持ちでしょうか? 討伐数の確認をしないといけないのですが・・・・・・」



 村長は申し訳なさそうに聞いてくる。

 言われてみればそうよね。

 確認もしないで報告通りに報酬を出してたら嘘つくやつも出てきそうだし。



「討伐したオークと、住処にあった食料は収納で運んできたから見たいなら外で出すわよ。 あ、食料はここで出したほうがいいわね」



 私は収納からオークの住処にあった食料をテーブルいっぱいに出した。

 回収した時はそんなに多く見えなかったけど、テーブルに実際出してみると結構な量だったみたい。



「こ、これは昨日持っていかれたウルフ肉とジャガイモ! 食料まで取り返して頂きありがとうございます」



 食料を見た村長は笑顔でお礼を言い、深く頭を下げる。

 確かに結構な量だけど、村で食べる分としては少ないんじゃない?

 まあ喜んでるならいいけど。



「残しておいても他の魔物が住み着くからって言われて持って来ただけだから気にしないでいいわ。 それよりもオークを見せるから外に行くわよ」

「あ、はい!」



 アンズはそのまま残し、村長と一緒に外に出る。

 するとなぜか近くにいた人間たちが寄って来たんだけど・・・・・・

 みんな気になるのかな?


 私は皆が見ている前でオーク9体を出す。

 それを見て驚いている村長を正気に戻し、確認してもらう。



「ユリア様もオーク50体以上を収納してましたが、ジャスミン様もこれだけの収納ができるのですか。 素晴らしいです」



 取り出したオークを確認しながらそんなことを言っていた。

 というか、なんか変な呼び方してない?



「ありがとうございます。 確認しましたのでもう収納して頂いて構いませんよ」



 言われたとおりオークを収納し、家に戻っていく村長の後について私も家に戻る。

 私が再度椅子に座ると村長が話を始めた。



「依頼のオーク5体と、追加で発見された4体のオークの討伐を確認しました。 私は追加報酬の事を書いてきますので、それを依頼達成書と一緒にギルドへ提出してください」

「わかったわ」

「では少し席を外しますのでゆっくりしていてください」



 そういって村長は別の部屋に行ってしまい、部屋には私とアンズだけになった。


 私の初依頼は無事に終わった。

 まあまだ報告に戻らないといけないけど。

 それよりも帰りはどうしようかな・・・・・・今のアンズはまだ体調が良くなさそうだから、急いで帰るのは難しいかもしれない。

 いっそ乗り物酔いを耐えてもらって急いで帰るのもあり?

 街に着いてしまえば気分が悪くなってても休めばいいだけだし。

 暗くなり始めたら気分悪くて休んでるのもアンズにとっては危険そうだし、むしろそっちの方がいい?


 私が帰りの事を考えていたらアンズが弱々しく話しかけてきた。

 まだまだ元気はないみたいだ。



「ごめんね・・・・・・わがまま言って付いてきたのに、来る時も戦いの時も邪魔ばかりして・・・・・・」



 アンズは下を向き静かに涙を流していた。

 まあその通りなんだけど。



「確かにそうね。 来るときはアンズの体調不良で時間がかかったし、戦いには必要なかったどころか怪我しただけだし」

「うっ、ごめん、なさい・・・・・・」



 あ、更に泣いてしまった。

 ちょっと意地悪しすぎたかな?

 とはいえ私の邪魔をしてたのは本当なのよね。



「でもアンズの助言のおかげで村は助かったんじゃない? アンズがいなかったらオークの持ってた食料も屋根もそのままにしてたわよ? 食料が戻って来て村長は喜んでたし、住処を処分したことですぐに新しい魔物が住み着くこともないんでしょ? だからアンズは村にとっては貢献してると思うわよ?」

「そう、かな?」



 アンズが鼻をすすりながら私の方を見る。

 ひどい顔だ。



「実際はどうだかわからないけど、私はそう思うわよ。 魔物の住処については新しく住むかなんてわからないけど、少なくとも『すぐ住む』という可能性は潰せたわけだし」

「うん・・・・・・ありがとう」



 少し落ち着いたアンズに洗浄魔法をかける。

 村長戻ってきた時に泣いてたら説明がめんどくさいし。



「あ、ありがとう」

「いいわよ別に。 その代わり帰りは頑張ってもらうつもりだから」

「え?」



 私は今、とてもいい笑顔ををしていると思う。

 そんな私を見てアンズがビクッとする。



「な、なにをさせる気なのかな?」

「何もしなくていいわよ? 早く帰りたいから従魔の走る速度をあげるだけ。 アンズは乗ってるだけでいいわ」

「え、それって・・・・・・」

「私は今日中に帰れればいいと思ってたから、今日中に街に着いてギルドに報告できれば今日足引っ張った分は無かったことにしてあげるわ」

「うぅ、それは・・・・・・」



 アンズはさっきまでの泣き顔から一転、絶望の表情で頭を抱えている。

 私にはわからないけど、そんなに苦しいの?



「・・・・・・うん、わかった。 さんざん迷惑かけたんだし、最後くらい頑張らないとだよね」



 アンズは小さく握り拳を作り答えた。

 自分に言い聞かせているようにも見える。


 アンズが元気になった?ところで村長を再び待っていると、しばらくしてやっと戻って来た。

 追加報酬の事を伝えるのってそんなに時間かかるの?

 読み書きできない私が言うのも変だけど。



「すみません、お待たせしました」

「大丈夫よ、時間がかかった分はアンズに負担がかかるようになってるから」

「えー!?」

「えっと?」



 首を傾げている村長に「なんでもないわ」と言って紙を受け取り、依頼書の達成欄にもサインしてもらう。

 よし、これであとはアンズを犠牲にして急いで帰るだけだ。



「じゃあ帰るわね」

「はい、村に大きな被害が出る前に解決して頂き、本当にありがとうございました」



 頭を下げる村長とは家の前で別れ、従魔に乗って入り口まで小走りで移動してもらう。

 村長は入り口まで送ると言ってたけど、早く帰りたかったから断った。

 村の入り口に着いたところで一旦止まり、アンズの方を見る。



「さて、帰るけど心の準備はいい?」

「よくないけど頑張る・・・・・・」



 そういってアンズは両手両足で従魔にしがみ付いている。

 まあ落ちても多少の怪我なら治せるから頑張ってもらうことにする。


 私は最初から最大速度で従魔を走らせる。

 並走しているアンズの方を見ると、とりあえずは大丈夫?そうだからこのまま街に向かって走ってもらう。


 これから暗くなる時間だからか、来た時とは違い誰にも会わないまま街の近くまで来ていた。

 行きは他の人間たちを見かけたら避けならが進んだけど、帰りはその必要はなかった。



 完全に日が落ち、真っ暗になってからしばらくすると、遠くにかすかな明かりが見える。

 街の門にある明かりだ。

 門が近くなったところで従魔の速度を落とし、アンズの方を見てみる。


 とりあえず落ちることはなかったけど、従魔の背中がすごいことになっている。

 最初はそうでもなかったけど、途中で酔い止めの効果がなくなったのか気持ち悪そうにしていた。

 まあ従魔は消せばいいだけだし、どんなに汚れても問題ない。

 門に向かってゆっくり歩きながらアンズに話しかけてみる。



「無事についたわよ」

「うっぷ。 あ、あのジャスミンちゃん。 1回止まってもらってもいいかな」

「ん?」



 急いで帰ってきたから、真っ暗にはなってしまったけど無事帰ってくることができた。

 暗くなってからの時間を考えると、そこまで遅い時間ではないと思う。

 だから多少ゆっくりでも問題ないので、アンズの要望通り止まる。



「どうしたの? もう街よ?」

「その、さすがに、うっぷ、この格好は恥ずかしいから、う、洗浄魔法をかけてもらえないかなって、う・・・・・・」



 アンズは手で口を押さえながらお願いしてくる。



「いいけど。 もう街なんだし、あとでお風呂にでも入ればいいんじゃない?」

「さすがに女の子として、うっぷ、この格好で人前に出るわけには・・・・・・」

「ふーん?」



 よくわからないけど、人間特有の何かがあるのかもしれない。

 まあアンズもここまで頑張ったしそれくらいいいかな。

 私はアンズに洗浄魔法をかけてあげると、濡れていたスカートなどと一緒に従魔も綺麗になった。



「これでいい?」

「うん、ありがとう。 これで女の子としての尊厳を失わずに済むよ」



 やっぱりよくわからないけど解決したならいいかな。

 アンズが大丈夫だと言うのでそのまま門まで行く。


 閉まってる門に近づいていくと、小さな扉から出てきた人間がこちらに武器を向けて警戒している。

 だけど私だと気が付くと武器をしまった。

 暗いと上に乗ってる私たちは見えないだろうし、魔物っぽい物が近づいて来たら警戒するのは仕方ない。


 私は門にいた人間にカードを確認してもらった後、従魔を消そうとしたけどアンズがとても歩ける状態じゃなかった。

 しかし、暗いとはいえこのまま従魔に乗せて運ぶと、人が居た場合昨日のように騒ぎになる可能性が高い。

 こんな時間に外に人がいるかわからないけど、暗くてよく見えないうえに昨日より大きな従魔だし。


 門の所で少し悩んだ結果、私が運ぶことにした。

 身体強化を使えばこのくらいの人間なら運べるし。



「だ、大丈夫か?」



 従魔を消して私がアンズを背負ったのを見て、門にいた人間が心配するように話しかけてくる。



「身体強化も使ってるし大きな人間じゃないなら運べるわ」

「そ、そうか。 気を付けてな」



 門にいた人間に見送られながら、私は冒険者ギルドがある商店通りへ向かう。



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