119 ジャスミンの初依頼、受注
人間に案内されたお店で白い靴下と黒の靴を買った後、ギルドに向う。
そしてこの人間もやっぱりギルドについてきた。
ギルドに入った時、一瞬視線が集まったけどすぐ元に戻る。
ちょっと怖かったけど問題はなさそう。
「そういえばジャスミンちゃんはギルドに何しに来たの?」
「昨日ランクCになったからランクC以上の依頼を見に来たのよ。 Fとか雑用みたいなのしかなかったし」
「あーFは戦ったこともない新人用のランクだからね。 危ない依頼が無いのは仕方ないかな。 じゃあCの掲示板に行こうか」
またも私を案内するように歩いていく。
ギルドの人間にいろいろ聞こうと思っていたけど、案内してくれるならおとなしくついて行こう。
並んでる掲示板の左から3番目、そこはそれなりに人間が並んでいて私の身長では依頼が見えない。
仕方ないので私は「浮遊」を使って見える高さまで浮かび上がる。
「え、ジャスミンちゃん飛べるの!?」
一緒に来ていた人間の驚きでギルド内が静まり返り、視線が私に集中する。
この一斉に見られるの怖いからやめて欲しい。
「魔族全員が飛べるわけじゃないけど、私は飛べるわね」
と言っても、翼も無いし「浮遊」しかできないけど。
「へー便利そうだね。 私も飛んでみたいな」
「風魔法で飛べばいいじゃない」
「え、風魔法で飛べるの!?」
「飛ぶのは簡単でしょ、着地に失敗したら死ぬかもしれないけど」
「それは私の望む飛ぶじゃないよ~」
私はそんな文句を言っている人間を無視して掲示板の方を見る。
気が付くと他の人間たちももう私の事を見ていなかった。
で、掲示板にある依頼は・・・・・・あ、見えても私読めないじゃない・・・・・・
「難しい顔してどうしたの?」
「見えても私は人間の字が読めないから結局わからないわ」
「あーなるほど、ちょっと待ってね」
一緒に来た人間は近くにあった椅子を持ってくるとその上に乗り、掲示板を見ていた。
飛ばなくても見えるなら「浮遊」なくてもいいんじゃない?
そしてそのまま見えた依頼の内容を口頭で教えてくれる。
ユリアは家族だって言ってくれたけど、この人間は何で私に親切にしてくれるんだろうか?
・オーク5体の討伐 ※他にもいる可能性あり
・王都までの護衛 ※長期契約の場合報酬増加
・東2の村までの往復の護衛依頼
・リトルタイガーの爪と牙と毛皮の納品 ※肉などは不要
・ビッグボアの毛皮の納品 ※肉も納品で増額
・クロウズベアの爪の納品
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うーん、護衛と納品系が多いわね。
護衛は論外として、ユリアが収納の魔石をくれたから納品系は問題ない。
けど、私としては戦って少しでも強くなりたい。
私が依頼について悩んでいると、一緒に来た人間が話しかけてくる。
「どう? 何かやりたい依頼はあった?」
「ほとんど納品系ばかりね。 討伐系が少ないわ」
「納品系はどこかで入手してから納品でもいいし、その対象を討伐してから納品でもいいから戦うこともできるよ? その対象を見つけられればだけど。 じゃあBの方も見てみる?」
「そうね、何か良い物があるかもしれないし」
そう言って隣の掲示板の方を見ると誰もいなかった。
難しすぎてFとは逆の意味で人がいないのかな?
ランクBの掲示板を見てみると、そもそも依頼が少ない。
一緒に来た人間が再度口頭で内容を教えてくれる。
・竜の卵納品 ※種類は問わない
・オークロードの肉納品
・キングスパイダーの毒袋納品 ※薬としての効果が弱くなるため、出来る限り空気に触れないように持ってくること
・キラービーの巣納品 ※サイズが大きいほど報酬追加
・ブラッディーベアの爪と毛皮の納品 ※どちらかだけでも可
・ユニコーンタイガーの角納品 ※毛皮追加で増額、肉は不要
・コカトリスの卵と肉の納品 ※どちらかだけでも可
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こっちは納品しかないじゃないの。
そもそも竜の卵持ってこいとか正気?
報復で街滅ぼされるんじゃない?
「こっちも納品ばかりだね。 場所がわかってる魔物を討伐して納品すれば戦えるけど、納品となると現物も持ってこないといけないんだよね・・・・・・大きいのだと持って帰るのが大変そう」
この人間は知らないけどユリアに貰った収納の魔石にしまえば持ってくることはできる。
ただ問題は容量がわからないこと。
収納の魔法の容量は基本的に使用者の魔法力に依存する。
でも魔石だとどうなるかがわからない。
あの家が入ったとはいえ、それでもう限界の可能性があるし。
と言うか普通はあの家も入らないと思うけど。
だから納品系は収納の容量を試さないと受けようがない。
今日は今ある討伐系から選ぶか、いったん帰って容量を試してから明日また来たほうがいいか・・・・・・
「どうする? Cの方にあった討伐受ける? 受けるなら持ってくるけど」
「討伐で一番近いのってどこかわかる?」
「ちょっと待っててね」
私の質問に依頼を確認しに行ってくれた。
今の人間はこんなに親切なのが多いんろうか?
依頼を眺めていた人間(名前はアンズだったかな?)は1つの依頼を持ってくる。
「これがこの街から徒歩で4日程の場所で一番近いかな? 他の討伐系はもっと遠いし、それ以外は納品だし」
徒歩で4日ってどれくらい遠いんだろう?
ユリアのスライムほど速くはないけど、私も従魔に乗って移動することができる。
だから4日はかからないと思う。
「じゃあそれでいいわ。 ありがとう」
私はアンズから依頼を受け取ると、受付に向かう。
するとなぜかアンズもついてくる。
もう受けるだけだし1人でいいんだけど?
「これをお願い」
「浮遊」で高さを合わせて、受付で下を向きながら何かをしていた、確かスズランだっけ?に話しかける。
「あ、ジャスミンさんですね、確認します・・・・・・モウイ東2の村でのオーク討伐ですね。 では依頼登録をしますのでギルドカードをよろしいでしょうか」
「はい」
私は言われてそのままカードを渡す。
するとスズランは登録の水晶板にカードを乗せて操作していた。
何回か依頼の紙を見ながら操作していた手が止まり、カードを返してくる。
登録が終わったのかな?
「はい、登録は完了です。 大丈夫だと思いますが気を付けて行ってきてくださいね」
「わかったわ」
「ねえねえ、私も行っていい?」
「え、なんで?」
「うーん、ジャスミンちゃんと仲良くなりたいから?」
意味が分からない、何が目的なんだろう?
私の力を利用しようとしている?
それならさっきまで親切にしてくれてたのも納得だ。
「討伐するだけなら必要ないわ。 それに私の移動速度についてこれるの?」
「え、そんなに足速いの? それとも飛んでいく感じ?」
「昨日の従魔に乗っていくのよ。 ユリアのスライムほどじゃないけど、人間が走った程度じゃ追いつけないわ」
「えー、歩きか馬車だと思ってたよ・・・・・・さすがに走って行くのは無理かな。 今回は諦めるね。 今度近場で依頼受ける事があったら一緒に行こうね」
あれ、もっとしつこく来るかと思ったけどあっさり諦めたわね。
もしかしてユリアのように本当に仲良くなろうとしてる?
うーん、わからない・・・・・・
あ、この人間で人間との話し方というか対応の仕方を試すのはありかもしれない。
アンズが私を利用するような人間なら、今後近づいてきた人間は拒絶していけばいいし。
逆に本当に仲良くなるつもりなら、人間と接する練習台になってもらおう。
いい案じゃないかな?
「じゃあ今回だけ連れて行ってあげるわ。 今日はいろいろ教えてもらったしね」
「え、いいの? あれ、でもどうやって?」
「さっき言ったように従魔で運ぶわよ。 ただ速いからちゃんと掴まってないと落ちるわね。 それでも良ければ連れて行ってあげる」
「が、頑張るよ!」
「それではアンズさんもギルドカードをよろしいですか?」
私たちの話を聞いていたスズランがアンズにギルドカードを出すように言う。
それに嬉々としてギルドカードを出して登録してもらうアンズ。
「はい、登録完了です。 今回は2人だけの臨時パーティーでよろしいですか?」
「はい、大丈夫です。 うちのパーティーはしばらく休養と言う自由行動なので。 もしうちのメンバーが来たら、ジャスミンちゃんと一緒に依頼に行ったって言っておいてください。 リーダーのマクシムならジャスミンちゃんの事もわかるでしょうし」
「わかりました、そのように伝えておきますね」
依頼を受けた私とアンズはギルドを出た。
外に出たところでアンズが話しかけてくる。
「そういえばジャスミンちゃんはこのまま向かうの? 準備とかは大丈夫?」
「大丈夫よ、来る前に準備してきたから」
「おお、新人なのに用意周到だね。 これは将来有望だ。 と言ってももうランクCだから新人と言っていいのかわからないけど」
「アンズはどうなの? いきなり依頼に行くことになったでしょ」
「私はいつでも依頼に行けるように戻ってきたらすぐに次の準備するからね。 逆に言えば帰って来てすぐでなければいつでも大丈夫だよ」
見た目は軽そうというか抜けてそうな感じだけど、結構しっかりしてるみたいね。
まあ冒険者なんてダメな奴は淘汰されていくだろうから、生き残ってるだけで有能だと言えなくもない。
ただ仲間が優秀だったという可能性もあるけど。
とりあえず準備は大丈夫という事で、そのまま門へ向かうことになった。
門には昨日ギルドについてきた人間がいた。
「うん? 今日は昨日とは違う組み合わせだな。 あの嬢ちゃんは一緒じゃないのか?」
嬢ちゃんと言うのはユリアの事かな?
「今日は1人で依頼を受けようと思ってたけど、アンズがついてきたのよ」
「えへへ、ついて行っちゃいます!」
「そうか。 でも女の子2人なんて本当に大丈夫か?」
「大丈夫よ、見てわかるように私は魔族だもの、普通の人間なんかには負けないわ」
「魔族? いや、そういう事じゃなくてな、女の子だけっていうのは大人からすると心配になるんだよ」
「年齢ならあなたより年上だから心配無用よ」
「え、ジャスミンちゃん年上なの!?」
私が門にいた人間と年齢の話をしていたら、アンズの方が反応した。
魔族はあまり見なくてもエルフやドワーフは人間と一緒に生活してるんじゃないの?
長寿の種族は珍しくないでしょ。
と言うか私たちが長寿なんじゃなくて人間が短命なだけだと思うけど。
「私は115歳よ、魔族としては子供だけど人間なんかよりは長生きしてるわ」
「そうだったんだ・・・・・・ユリアちゃんの妹くらいに思ってたから一桁だと思ってた あ、それだとランクCになれないね」
「え、君はランクCなのか!? それと魔族っていうのは魔物付きとは違うって事か?」
私とアンズが話していたら、今度は門にいる人間が反応する。
もう、めんどくさいな・・・・・・早く行きたいんだけど。
「私は115歳だけど、今はユリアに引き取られて妹分として一緒に居るわ。 ランクは昨日のサーベルタイガーを討伐して上がったわ。 魔物憑きっていうのは人間が呼んでるだけで私たちは魔族よ。 もういい? 依頼に行きたいんだけど」
「あ、すまない。 いや、すみません。 どうぞお気を付けて」
私の年齢を聞いたからか、言葉遣いが変わった。
別に畏まらなくていいんだけど。
「普通に接してくれればいいわよ。 さっきも言ったように、人間から見たら年上だとしても魔族としては子供だし」
「あ、ああ、わかった」
「じゃあ行ってくるわね」




