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ユリアの世界  作者: 花園 満


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118 ジャスミンの買い物

「じゃあ外に出ようか。 ジャスミンは外に出たらそのまま収納してみてね」



 ユリアに言われてみんなで外に出た。

 その後私は入り口のドアを閉め、胸元の魔石に魔力を送りながら「家を収納」と念じる。

 すると目の前にあった家が収納された。

 本当にこんな大きな物が収納されてしまった。


 それよりも発動時に自分の魔力をほとんど使わなかった。

 魔石発動のために少し使っただけで、収納の魔法を使ったのはすべて魔石の魔力のようだ。

 さっき何回でも使えるようなことを言ってたけど、これだけの収納魔法使ってたらすぐ魔力無くなるんじゃない?



「この魔石本当に何回も使えるの? こんな大きな物収納するのはすごく魔力使うと思うんだけど」

「その魔石には収納のほかに瞑想の効果が付いてるの。 瞑想の効果で魔石の魔力が常時回復するから、大きな物を連続で出し入れしなければ大丈夫だと思うよ」



 瞑想ってあの魔力を回復するスキル?

 え、スキルまで魔石に付与できるの?

 それってかなり凄いんじゃないの?



「ユリアがすごい存在で次元が違うという事はわかったわ」

「なにそれ。 あ、そうだ、あとこれも渡しておくね」



 そういってユリアは金貨を十数枚渡して来た。

 なんだろう?



「これは?」

「この後冒険者ギルドに行く前に服屋さんに行っておいで。 昨日は自分の注文だけして服屋を出ちゃったけど、新しい服を買った方がいいと思って」



 私の服は植物の繊維や魔物の毛皮で作ってある。

 長い間着ていたので、あちこち補修跡ばかりだ。



「お金は昨日貰ったから持ってるわよ?」

「そうなんだけど、最低限の衣食住を提供するのは保護者の役目だからね。 私のわがままだと思って受け取ってほしいかな」



 よくわからないけど、それでユリアが喜ぶなら受け取っておく。



「じゃあ冒険者ギルドに行く前に服屋に行ってくるわね」

「うん、高い服屋さんに行くのがおすすめだよ。 肌触りもいいと思うし」

「ふーん、わかったわ」



 それだけ言って、私は冒険者ギルドのある商店通りに向かう。

 思うって言ってたけど、おすすめしたのにユリアは知らないのかな?


 昨日通った道を歩いていると、民家がぽつぽつと見えてくる。

 そのまま進んでいくと、ユリアが商店通りと呼んでいた場所が見えてきた。

 緊張しながら商店通りに入るが、誰も私の方を見ていない。

 いや、チラっとは見るけどそれだけだ。

 私が1人でいても騒ぐ人間はいない。


 少し緊張が解けたのでそのまま商店通りを歩いていく、しかし・・・・・・



「高い服屋ってどこにあるの?」



 1人で人間のいる場所に行くことで頭がいっぱいだったけど、よくよく考えると服屋の場所がわからない。

 わざわざ高い服屋って言ってたって事は、昨日行った店じゃないのよね?

 どうしようかとキョロキョロしていると、声をかけられた。



「あれ、ジャスミンちゃん?」



 急に名前を呼ばれてビクッとしてしまった。

 私はユリア以外に挨拶するような相手はいないはずだ。

 恐る恐る声のする方を向くと、昨日一緒に森に行った人間だった。



「あー昨日の」

「そうそう、アンズだよ。 こんな所でどうしたの? もしかしてギルドに行くところ? と言うかユリアちゃんはいないの? 1人?」



 昨日もそうだったけど騒がしい人間だ。

 そんな一気に質問しないで欲しい。



「ギルドに行く前に服屋に行くように言われたんだけど、場所がわからなくて困ってたのよ。 あとユリアは一緒じゃないわ」

「ほうほう、なら私が案内してあげよう。 どこか希望はある?」



 私はまだユリア以外の人間を信用していない。

 表面上は友好的に接してきてるけど何を考えてるかわかったものじゃない。



「もう、そんなに警戒しないでよ。 昨日一緒に森に行った仲でしょ~」



 私の表情から察したのかそんなことを言ってくる。

 一緒に行ったって昨日のはこの人間が無理やりついてきただけだし、文字通りついてきただけで何もしてない。



「私はユリア以外の人間は信用してないの。 何かしたら暴れるわよ」

「何かって何!? 何もしないよ。 そもそもサーベルタイガー倒せる子に私が勝てるわけないじゃん」



 そうはいってもこの人間の戦闘能力は知らない。

 ユリアほどではないにしても強い可能性だってある。


 どうしようか・・・・・・でも昨日ユリアも特に警戒してなかったし、大丈夫なのかな?



「とりあえず信用はしないけどついて行くことにするわ。 どうせ誰かに聞かないと場所がわからないし」

「うん、今はそれでもいいよ。 で、どんなお店に行くの?」

「ユリアは高い服屋に行くように言ってたわ」

「おー、さすが高ランク冒険者。 着ている服も高級そうだし普通の服なんて買わないか。 わかった、自分で買ったことはないけど人気なお店があるから、そこに行こうか」



 そう言うと私に手招きをした後、歩き出した。

 このままここに居ても仕方ないので、少し離れた後ろをついて行く。


 ついて行く間に私はどこに何があるのかを眺めながら歩く。

 昨日も通った時に見たけど、ちゃんと記憶には残ってないし。


 いくつかお店を眺めていると、食材を売っているお店がある。

 でも全部ユリアの家で見たものばかりだ。

 ユリアがあまり冒険者活動をしてないのなら、私が冒険者としてあとこち回ってユリアの知らない食材を探してくるのもありかも?


 この前お店でレタスを買ってきて新しく植えていた。

 私は食べないけどユリアの家の食材は美味しいみたいだし、家にない食材なら喜んでくれるかもしれない。

 なんだか私でもユリアに役に立てることがありそうでちょっと嬉しくなる。



「なんだかご機嫌だね、服を買うのが楽しみ?」



 言われて私は自分が笑っていることに気が付き、ほっぺをムニムニしていつもの表情に戻す。



「別のこと考えてただけよ」

「そうなの? で、ここがそのお店だよ」



 そこには確かに他のお店より装飾が派手なお店がある。

 言われてみれば高そうなお店に見えなくもない、程度だけど。 


 案内してくれた人間がお店に入って行くので、私もそれについてお店に入る。


 お店の中にはどこを見ても服、服、服と、服があちこちに飾られていた。 

 棚に奇麗にたたまれた状態で重ねられている服や、並んで吊るしてある服。

 実際に着たらこんな感じになるとわかりやすくするためか、木の人形に服を着せたようなのも置いてある。



「うわー、やっぱりすごい高級感のある服ばかりだねここ」



 私がお店の中を見回していると、先に中に入った人間が服を眺めながらそんなことを言っている。

 私は服の良し悪しなんてわからないけど、どうやら良い物のようだ。



「いらっしゃいませ、今日はどのような服をお探しですか?」



 1人でフラフラと見ていた人間の元に、お店の奥にいた人間が話しかけながら近づいて行く。

 このお店の人間かな?



「あ、私じゃなくてこの子の服を買いに来たんです」

「左様でございますか。 ・・・・・・何かご希望はありますか?」



 お店の人らしい人間は私の方を見ると一瞬表情を変えたが、すぐに笑顔に戻る。

 きっと魔族が珍しいのだろう。

 敵意も感じないし特に気にしないでおく。



「よくわからないから、かっこいい感じにしたいわね」

「かっこいい感じ、ですか・・・・・・」



 私を上から下までじろじろと見ている。

 今度は何?



「ちなみに予算はどのくらいでしょうか?」

「貰って来たのはこれね」



 私はユリアに貰った金貨を収納から取り出し見せる。

 おー、やっぱり収納は便利だ。



「あ、えっと、予算の方はかなりお持ちのようですね。 ではお客様に合いそうな服を見繕ってまいりますので少々お待ちください」



 そういってお店の人間は頭を下げると、お店の中を歩きながらいくつも服を腕に重ねていく。

 あんなに買うの?

 ここに連れてきてくれた人間は自由にお店の中を見て回っていて「カワイイ!」とか「イイナー」とか「タカッ!」とか奇声を上げている。

 見ていてちょっと面白い。


 私の方はそれを見ながらお店の人間が服を集めていくのも眺めている。

 この2人を見ているだけでも面白くてここに来た甲斐があったかもしれない。



 そのまま2人を眺めていると、お店の人間がこちらに戻ってくる。



「お待たせいたしました。 お客様の綺麗な白髪が映えるように黒系の物をご用意しました。 こちらがズボンタイプの物で、こちらがスカートタイプの物になります。 これらと合わせる場合はこの白のシャツか黒地に白が使われているシャツが合わせやすいですね。 そしてこちらはワンピースタイプの物になります。 お気に召すものがございましたらあちらで試着もできますので、お気軽にお申し付けください」



 お店の人間は腕にかけていた服の中からいくつかを、全体が見えるように腕にかけ直して見せてくれる。

 なんかこういう翼をもった鳥に見える。

 この人間はさっき私の髪に合う様にと言っていたけど、これはかっこいいのかな? 

 どれならユリアは喜んでくれるだろうか?

 私は別にどれでもいいからユリアに気に入ってもらえる物の方がいい。



「私にはどれがいいかわからないわね。 どれなら喜んでもらえる?」

「・・・・・・なるほど。 そういう事でしたらこちらのワンピースタイプはいかがでしょうか? こちらの上下別れている物は、自分で好きな組み合わせにできるのが強みですので、組み合わせるのが難しいというのであればワンピースタイプがよろしいかと。 それにワンピースタイプはかわいらしく見えますので、お相手にも喜んでいただけるかと思います」



 私の言葉で何かに気付いたように説明してくれる。

 専門家と言うのはすごいわね、ちょっと感心する。

 服の説明の後、ズボンとスカート等は近くの棚に置き、今度はワンピースタイプの服をいくつか腕にかけて見せてくれる。

 持ってきてたって事はこうなることも想定してたって事よね?

 この人間やっぱりすごい。



「一応お客様の好みもございますのでいくつか持ってまいりましたが、お客様の望むかっこいい系且つお客様に合うのですと、クール系がよろしいかと思いますので。 この長袖のワンピースタイプはいかがでしょうか? 腕を出さないことによっておとなしくクールな女性に見えるかと」



 そういって渡されたのは袖と襟が白地で他は全部黒の服。

 うん、見ても良さの違いは分からない。

 おすすめされたしこれでいいかな?



「じゃあこれを頂戴」

「ありがとうございます。 一度試着しますか? それともそのままお持ち帰りになりますか?」



 うーん、どうしようかな。

 私自身服装はどうでもいいけど、この服で本当にユリアが喜んでくれるかという疑問はある。

 家に帰って着てみたけど微妙な反応だったら嫌だし、一度着てみる?

 周りの反応が微妙だったら違うの買わないとだし。



「試着してみるわ。 これは・・・・・・頭から着るだけ?」

「はい、今着ている物を一度脱いでいただいて、そのまま裾から頭を通して頂ければ着ることができます。 明かりは壁の魔石をご利用ください」

「わかったわ」



 さっき試着と言った時に案内してくれた扉を開けると狭い部屋になっていた。

 ただ着替えるだけの部屋だから狭いのかな?


 私は言われた通りに明かりをつけた後、着ている服を脱ぐ。

 そしてワンピースを頭からかぶり、そのまま頭と腕を通す。

 最後に胸元の紐を結んで完成。


 これ着るの楽ね、その点は気に入ったかも。

 ちょっと角に注意しないといけないけど。


 簡単に着ることができたので今まで着ていた服を収納して扉を開ける。



「どう?」

「大変お似合いですよお客様! やはり素材がいいと良さが際立ちますね! お連れ様はいかがですか?」



 離れた場所で未だにいろいろな服を見ていた人間に声をかけると、こっちにやってくる。



「おお、ジャスミンちゃんすごく可愛いじゃない」

「かっこいい?」

「クールな感じでジャスミンちゃんの雰囲気に合ってると思うよ。 でも・・・・・・」



 褒めてくれた人間は顎に手を当てて私を眺めたり、少し引いた位置で見たりと何やら悩んでいる。

 やっぱり似合わない?



「店員さん、黒マントとかありませんか? 裾などに少し装飾がある感じだと尚いいかもです」

「なるほど!、少々お待ちください」



 話を聞いたお店の人間は閃いたとばかりに小走りに去っていく。

 でもマントか、私に似合うかな?

 両親のマント姿はかっこよかった記憶があるけど、私はどうだろう?

 そんなことを考えていたらすぐにお店の人間は戻って来た。



「こちらなどどうでしょう?」

「あ、いいですね。 ジャスミンちゃん、ちょっと失礼・・・・・・」



 そういって私に近づくとマントを着せる。

 あ、これいいかも。

 なんかカッコイイ。


 でも重要なのはユリアに気に入ってもらえるかだ。

 この2人の反応はどうだろうか?



「ジャスミンちゃんすごくいいよ! 可愛いしカッコイイ!」

「とてもいいですね。 マントを開いたときに見える魔石のネックレスがすごく奇麗に映えます」



 とりあえずこの2人には好評のようだ。

 ならこのマントもいいかな。



「じゃあこれ全部頂戴。 このまま着て行ってもいい?」

「ありがとうございます、もちろん大丈夫です」



 私は言われた通りの金貨を渡しお店を出ていく。



「ねえジャスミンちゃん、その服に合う靴や靴下も買わない?」

「靴?」

「せっかくいい服を買ったんだし、それに合わせてかっこいい靴も買った方がいいんじゃないかなって。 そのままだと靴だけ微妙に浮いちゃうし」

「このままだと変?」

「変って事はないけど、服がキレイな新品なのに靴だけ使い込まれてる感じだから、全身をよく見ると違和感があるかなって感じ?」



 それはつまりこのままだとユリアも同じ感想を抱くというわけだ。

 なら買うしかない。

 ユリアのお金で足りなくても自分でも持ってるし。

 あ、でもそのためには1回ギルドで引き出さないとか。



「それなら買いたいわね。 でもユリアに貰ったお金で足りるの? 自分のお金はギルドカードの中だからギルドで引き出さないといけないし」

「大丈夫大丈夫。 さっき最初に見せていた金貨から服を買った分を引いても余裕で足りるから。 と言うかユリアちゃんは服買うのにお金渡しすぎじゃない?」

「そうなの?」

「そうだよ。 高いお店と言っても平民が行くようなお店だからね。 貴族様の着る物を買いに行くんじゃなければそんなにかからないよ」



 そうなんだ。

 それだけ渡したって事はいくつか買って来いって事だったのかな?

 まあ複数買って来いって事なら次来た時でもいいでしょ。



「ギルド行く途中にあるなら靴も買って行きたいわね」

「ここからだと・・・・・・あ、近くにあるね。 じゃあそこで靴を買ったらギルドに行こうか」



 そういって再度私をお店に案内してくれる。

 ん? 「ギルドに行こうか」ってこの人間ギルドにもついてくる気?



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