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ユリアの世界  作者: 花園 満


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114 ジャスミンの今後

「急に大声出してすみません」

「私は大丈夫だよ。 この子たちも気にしてないし」



 ジャスミン含めて皆がリーアを見ていたが、ディアとシアは全く気にせず私に寄りかかって寝ている。



「人間じゃないのは見ればわかりますが、年上だとは思いませんでした。 長寿と言うのは聞いたことがありますが、大きくなるまでにも時間がかかるんですね」

「実際魔族的には子供みたいだしね」

「そうなのですか?」

「そうらしいよ? 私も本人から聞いただけなんだけどね」

「ユリアさんが、その、彼女を引き取った経緯などは聞いても大丈夫ですか?」



 どこまでなら話してもいいんだろうか・・・・・・王都を襲おうとしたなんて言ったら警戒しちゃうよね?

 どう誤魔化したものか。



「うーん、詳しくは言えないけど・・・・・・ジャスミンとは王都の近くで会って、家族がいなくて1人だったの。 で、そのまま放置しても種族的に冒険者と揉めるかもしれないから、って事で私が預かったんだよね」

「なるほど、ユリアさんはやっぱり優しいですね。 見ず知らずの人を保護するなんて。 それで強いから冒険者にしたって事ですか?」

「ここに来たのはただシアを含めた紹介と、忠告のためかな。 ジャスミンに何かしたら私が相手になるよ?って。 でも本人が冒険者をやってみたいというから森まで行ってきたの」

「本人の意思だったんですね」

「さすがに無理やり危険なことはさせないよ。 長寿みたいだから、ゆっくりやりたいことを見つければいいと思ってたし」



 私の言葉にリーアは私を見て微笑む。

 なに?


 その事について尋ねようと思っていたらジャスミンが戻って来た。



「終わったわよ」

「あ、おかえり」



 ジャスミンが戻ってきたのでリーアとの話も終わりだ。

 本人の前でする話でもないし。

 って言うと悪口言ってるみたいだけど。



「よくわからないけどランクCっていうのになったわ」

「Cなんだ。 さっきのギルマスさんの話を聞いて、サーベルタイガー倒せるしBにはなれると思ってたけど」

「あの人間の話を聞いたらユリアがBなんでしょ? 私はユリアより弱いしユリアより下の方がいいわ。 私もユリアと同じくらい強いと思われても嫌だし」

「ユリアさんは特別なんですって説明しても納得してもらえなかったので、Cという事になってしまいました」



 私たちの話を聞いていたスズランさんが話に加わってくる。

 そういえばちょっと気になったことがあるので聞いてみよう。



「そうなんですね。 それで、ちょっと気になったことを聞いてもいいですか?」

「私にわかる事でしたらなんでもお答えしますよ。 あ、スリーサイズは教えませんからね!」



 リーアもそんなこと言ってた気がする。

 リーアの時は教えてくれるって言ってた気がするけど。

 そもそもまったく育ってない私からしたら、一般的に貧乳と呼ばれてる人ですら私より大きいんだから、聞いても仕方ない。

 やばいくらいの巨乳とかなら好奇心に負けて聞くかもしれないけど。



「今回サーベルタイガーを持ってきましたけど、ジャスミンが何もしてないのにジャスミンが倒したと言って持ってきた場合も、ランクは上がっちゃうんですか?」

「スルーですか・・・・・・えっとですね、そこは冒険者次第ですね。 実際そう言われてもこちらではわかりませんし。 なので普段の素行がよほど悪くなければランクは上がります、それがたとえ自分の倒した魔物でなくても、です」

「それなのにランク上げちゃうんですか・・・・・・」



 それはランクの意味があるんだろうか?

 お金で魔物を買って来て討伐したと言って持ってきてもランクが上がることになる。

 そう思っているとスズランさんは私に手招きするので、私は更に近付く。

 シアを抱っこしたままでいいのかな?

 するとスズランさんは特に気にすることなく内緒話をするように、手で隠しながら小声で話してくれた。



「そのために受付嬢が普段から冒険者たちを見てるんですよ。 喧嘩しやすい人や面倒見のいい人、どんな魔物を狩ってきたのかも覚えておくんです。 その情報をもとにランクを上げるか決めます。 ただ分かり難いのが固定パーティーを組んでる冒険者ですね。 見ただけだと誰がどうやって倒したのかがわかりません。 1人が倒して他の人は荷物持ちの可能性もありますし、4人で攻撃して倒した可能性もあります。 なので長い間一緒に行動しているパーティーはまとめてランクが上がるんです。 ただそういうあげ方をすると、弱くても高ランクになってしまう人が出てしまいます。 前にユリアさんに言い寄っていたBランクのダーテさんはそういうタイプでしたね。 強いパーティーに居たのでランクは上がってましたけど、彼はすごく弱かった上に女性にだらしない方だったようで、パーティーを追放されてしまったみたいです。 当然ソロで活動なんてできないので、ランクを笠に他のパーティーに入っては女性関係でもめて追い出されての繰り返しだったようです。 この情報が入ったのは、ユリアさんともめてDまで降格したあとだったんですけどね。 知ってたら会わせませんでしたし」

「そうだったんですね。 まああの時の冒険者は正直どうでもいいんですけど、そんな話を冒険者にしちゃっていいんですか?」



 ギルドの裏事情のようなものを一冒険者に教えて、それが広まったら大変だと思うんだけど。

 今の話を知ったら、今までギルドで問題起こしてた人たちはギルドでは大人しくなるだろうけど、見えないところで問題を起こす可能性が高くなる。

 それに買ってきた魔物でもランクを上げられることがわかれば、それを悪用しようとする人が居るかもしれない。



「ユリアさんならいいかなって思いまして。 それにユリアさんが保護者という事でジャスミンさんも信用を得ている状態ですし」

「どういうことですか?」

「さっきも言いましたよね? 冒険者の方たちを見ていると。 ユリアさんは実力も人柄もギルドでは高評価という事です。 そのユリアさんが言うのであればギルドが納得しちゃうくらいには、です」



 知らない間に私は高評価だったみたいだ。

 私の中では未だに蜂を倒した時に報告しないで怒られたイメージが強いんだけど。

 それ以外はほぼ納品しかしてないし。



「なのでユリアさんが、サーベルタイガーを倒したのはジャスミンさんだと言えば、ギルドはそれで納得します。 本人がユリアさんの下がいいと言うのでCですが、いつでもBにできる状態ですし」

「えっと、私もそうですけど、そんなにポンポンランクを上げちゃっていいんですか? 私だって依頼はほとんどやってないので、冒険者と言うものも詳しく知らないですし」

「冒険者のランクは戦闘能力なんですよ。 なので強くて最低限の人柄があればBまでは行けますね。 依頼の難易度は出てくる相手の討伐ランクで決まりますし」

「でも、GやFの雑用系は別として。 リーアの護衛はしましたが、ちゃんとした護衛依頼もしたことないですし、何なら野営で焚火を囲むような経験も知識もありませんし」

「そうなんですか? ユリアさんは王都やほかの村にも行ってますよね?」

「他の人がいた時の野営時は土魔法で壁や屋根作ってましたし、1人や身内だけならそもそも収納に入ってる家で寝ますし」

「え、家って収納できるんですか?」

「できますね。 と言っても持ち歩いてるのは1階しかない小さめな家ですけど」



 大きい家は持ち歩いてないだけで収納はできるけどね。



「それって野営の経験や知識必要ですか? 他の人がいても壁作って問題ないならそのままでいいと思いますけど」

「そういうものですかね?」

「いざというときのために覚えて損は無いと思いますけど。 その魔法で作った壁や家が使えない状況が無い、というのなら使う事は無いと思いますし」

「なら私は問題なさそうですが、そうなるとジャスミンにも何かしら野営なりの経験させるべき、ですかね?」

「今後の活動方法にもよりますけど、遠出するなら覚えておいた方がいいと思います」

「わかりました、ジャスミンの方は私が考えておきますね」



 いや、ジャスミンはずっと森に居たんだし、その辺の冒険者より野営経験豊富か。


 スズランさんとのヒソヒソ話しが終わったので、ジャスミンとリーアの元へ戻る。



「お話は終わりましたか?」

「うん、終わったよ。 この後はどうする?」

「わたしはそろそろ帰ろうと思います」

「ジャスミンも今日は帰る?」

「そうね、今から何かしようとしても暗くなるし、私も帰るわ」

「よし、じゃあ商店通りを眺めながら帰ろうか」



 そういって私たちはギルドを出ていく。

 シアを抱っこしたまま空いた手はジャスミンと手をつなぎ、ディアは私の服を掴みながらついてくる。

 のんびり商店通りを歩き、商店通りを抜けたところでリーアと別れて私たちは家の方へ向かう。 


 家の近くまで来ると、ディアは畑の方へ行ったので私もついていく。



「シア、水をためておいて欲しいの」

「いいわよ」



 畑の端にあった小さな水の塊が大きくなっていく。

 何度見ても水の塊が浮いてるのは不思議だけど、魔法だって浮いてるんだよね。

 だから気にしても仕方ない。


 水の準備が終わると、みんなで家に入って行く。


 ジャスミンは始めて街を歩いていろんな人にあったし、心身共に疲れてるだろうから、早めに魔力をあげて最初にお風呂に入れてあげる。

 私とディアはその間に夕食を済ませておき、ジャスミンが戻ってくるのを待つ。

 疲れてゆっくりしてるのか今日のジャスミンはなかなか出てこなかった。



「ちょっと長めに浸かってたわ」

「それだけ疲れてたんだね。 今日はどうだった?」

「ユリアがいたからだと思うけど、身構えていたのがばからしくなるくらい何もなかったわね」

「私も周りの反応は気にして見てたけど、王様も言ってた通り、本当にジャスミンにとって安全になってるみたいだね」

「そうみたいね」

「それで、今後はどうする? 1人でも冒険者活動する? それとも一緒の時だけにする?」



 ジャスミンが1人で冒険者活動するなら、この家の扉に登録してあげないと外に出られない。

 今日見た感じ人間を襲いそうもなかったし、自由に行動できるようにしてあげようと思う。



「そうね・・・・・・普段は1人でもよさそうね。 それでたまにユリアと散歩がてら依頼を受けたいわ。 ちなみに冒険者ってどれくらいの頻度で依頼を受けるものなの?」

「それは人それぞれじゃない? 私は今まで依頼自体2回だか3回しか受けてないけど、普通の人は生活費とかも考えて依頼受けてるだろうし。 いろいろな街を見に護衛任務をする人もいるみたいだよ。 自分で行くより護衛対象の馬車に乗って行った方がお金かからないどころか逆に貰えるわけだし」

「なるほど。 ユリアは参考にならないとして、生活費はいらないし、今のところここから離れて他の街に行きたいとも思わないわね」

「私としてはずっと家に引きこもってるのが心配だっただけだから、気が向いたときだけ依頼を受けるんでもいいと思うよ」

「人間はせっかちな生き物ね。 数週間寝てるのもいるんだし、1~2年家に居たっていいじゃない」



 ジャスミンからしたらせっかちに見えるのか。

 そういえば私も不老不死だからそのうちジャスミンみたいな考えになるんだろうか?



「まあいいや、ジャスミンちょっと来て」



 私は扉に登録するためにジャスミンを玄関まで連れて行く。



「何よ、お風呂に入ったのにこれからどこか行くの?」

「違うよ、これから冒険者活動するのに出られないと不便でしょ? 今までは外に出ることがなかったから登録してなかったけど、これからは1人でも行動するだろうし」

「いいの? 出られるようになったらユリアの知らない間に外に行けちゃうのよ?」

「1人で冒険者活動するならそうなるね。 私もずっと家にいるわけじゃないから、ジャスミンが外に行きたい時に開けてあげられないかもしれないし」

「私が何するか本当に不安じゃないの?」

「ジャスミンの事は心配してないよ。 それより心配なのはジャスミンに絡んでくる奴らかな。 ジャスミンのランクにいちゃもんをつけてくるのもいるかもしれないし、居ないとは思うけどナンパしてくるヘンタイもいるかもしれない」



 ジャスミンは、見た目的には角がある幼女だ。

 ディアたちよりは大きいとはいえ私よりは小さい。

 私を伴侶にとか言ってたヘンタイ野郎がいたんだし、ジャスミンが狙われないとは言い切れない。


 ロリコンを否定はしないけど、自分の中や、せめて仲間内だけで留めてほしいよほんと。



「それは絡んで来たら返り討ちにしていいのよね?」

「いいよ。 向こうから来たらボコボコにして外に捨てるか、ギルマスさんやスズランさんに引き渡せばいいから」

「ならそいつらは問題ないわね」

「じゃあ登録しちゃうから扉に触れて」



 ジャスミンが言われた通りに扉に触れたので、ジャスミンも登録する。

 確認のためジャスミンに開けてもらったけど、ちゃんと開けられた。

 これで自由に行動できるだろう。



「ユリアに信用されたのを実感できてすごく嬉しいわ!」



 ジャスミンはそう言うと私に抱き着いてきた。 

 私はそのまましばらくジャスミンを抱き締め、頭を撫でてあげた。



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