113 ジャスミンと報告
ギルドにはついたけど、従魔を全部入れるわけにはいかない。
なので兵士の人を従魔の見張りに残し、リーアやアンズさんと共にギルドに入って行く。
ギルドに入るとすぐに声をかけられた。
「あれ、何でアンズがユリアちゃんと一緒に居るんだ?」
そう言って近づいてきたのはアンズさんのいるパーティーのリーダーだ。
名前なんだっけ?
さっき聞いたはずなんだけど・・・・・・
「あ、リーダー。 ユリアちゃんが森に行くって言うから同行させてもらったの。 結局何の役にも立たなかったけどね」
「そうなのか? 俺は断られたのに・・・・・・」
「いやいや、よく見てよ。 女の子だけのパーティーに、よく知らないおじさんを入れるわけないじゃん」
いや、アンズさんも断ろうとしてたんだけど?
「まて、誰がおじさんだ! 俺はまだ24だぞ」
「ユリアちゃんくらいの年齢からしたら20代はおじさんでしょ。 だってユリアちゃんの倍近くの年齢でしょ?」
「だからって20代でおじさんはないだろ!」
「年齢は関係ないの。 子供から見ておじさんに見えるかが重要なの」
何やらもめ始めたんだけど・・・・・・というか保護者の私も子供扱いされてる?
あ、でも今13歳だから子供か。
元の世界でも17歳で成人してないから、大人からすれば子供かもしれないけど。
しかしどうしよう。
依頼受けてるわけでもないし、このまま放っておいて先に行っちゃってもいいかな?
「取り込み中みたいだし、私たちは報告に行こうか。 外で兵士の人も待たせちゃってるし」
「そうね」
「良いんですか?」
「依頼を受けてたわけじゃないからね。 アンズさんも今言ってたけど、ただ一緒に森に行っただけだし」
「そうだったんですか。 そういう事なら問題はなさそうですね」
という事で痴話喧嘩をしている2人を置いて、スズランさんの所へ行く。
「こんにちはユリアさん、とフリージア様も? どうしました?」
ギルド内でもめているので、当然受付嬢も見ている。
なのでスズランさんはそのもめてる2人の近くにいた私たちに気付いていたのだ。
ただリーアも一緒に来たのが意外だったのか首を傾げている。
「わたしはたまたまユリアさんを見かけてついてきただけですので、気にしないでください」
「私たちは森で倒してきた魔物の納品をしたいんですが、報告もあったのでこっちにも来ました」
「報告ですか? 何でしょう」
本来納品だけなら隣の納品場所に行けばいい。
そこで出せないような量や大きさだった場合は、裏の倉庫に持っていく。
しかし今回は森の奥とは言えサーベルタイガーが発見されたのだ。
アンズさんの話を聞く限りだと危険そうな魔物なので、注意もかねて報告しに来たのだ。
前に蜂を倒して納品した時は報告しろって文句言われたし。
「じゃあ報告と納品はジャスミンにお願いしようかな。 これも練習と思って、ね?」
ジャスミンの方を見ると頷いたので、足場を出してあげて場所を交代する。
「さっきギルド登録したあと掲示板を見たけど、FもEも大した依頼が無かったのよ。 それでユリアの勧めで常設依頼の納品をすることになって、森に行ってきたの。 で、ウルフ12体、スモールボア9体を討伐しつつ奥へ行ったわ。 そして奥の暗くなっている森にあった洞穴に、サーベルタイガーがいたから討伐してきたわ」
「サ、サーベルタイガーですか!? そんな大きな魔物が森にいたんですか!?」
スズランさんの声でギルド内が静まり返る。
前にもこんなことあったね。
「いたわね。 ユリアの話では、前回ユリアも見つけた洞穴らしくて、その時は何もいなかったから最近住み始めたんじゃないか、って言ってたわ」
「キラービーにフォレストタイガーにサーベルタイガー・・・・・・どこからそんな強い魔物が来てるんでしょうか・・・・・・」
過去に討伐した魔物と今回の魔物。
それなりに短期間で強力な魔物が現れたので、ギルドとしても不安になるのは仕方ないかもしれない。
「それで、魔物は裏の倉庫に持っていけばいいのよね?」
「え、あ、そうですね。 多い場合は裏の倉庫にお願いします。 魔石や魔物の部位など、大きくない物でしたら隣へ納品してください」
「じゃあ裏に持っていくわね」
「ユリアさんがいたという事は、サーベルタイガーも持ってきてるんですよね?」
「私は運んでませんよ。 でもジャスミンが全部運んできてますので、サーベルタイガーは持ってきてますね」
「わかりました、ギルマスも呼んでおきますので魔物を倉庫の方へお願いします」
「わかったわ」
ジャスミンが答えた後、私たちはギルドを出て行き、裏に回る。
私たちとリーアに加えて、見張りのための兵士。
それと、もめていたアンズさんたちに野次馬冒険者が数人ついてきた。
「おう、来たか。 空いてる場所に適当に出してくれ」
入って早々ギルマスさんにそんなことを言われた。
「今回は私が持って来たわけじゃないですよ」
「そうなのか?」
私はジャスミンに連れてくるように言うと、倉庫の前に待機させていた従魔たちを倉庫にいれていく。
開いてる場所に魔物を置くと、そのまま従魔を消していた。
「今のは魔法なのか?」
「魔力で作った従魔よ」
「そんなことができるのか・・・・・・っと、魔物を確認しないとな」
そう言うとギルマスさんは魔物を確認していく。
「どれもユリアの時同様余計な切り傷や刺し傷がないから毛皮の状態はいいな。 血抜きがされてないから肉がどうなってるかは調べないとわからんが。 そしてこれが森にいたサーベルタイガーか・・・・・・」
ウルフたちを慣れた手つきで確認した後、サーベルタイガーを確認している。
「このサイズのサーベルタイガーをよく傷つけることもなく倒せたな」
「寝てる間に遠距離から私の能力で倒したのよ」
「その能力というのも気になるが・・・・・・寝ていたのは運が良かったな。 森にいるフォレストタイガーより遅いとはいえ、こいつもかなり速いからな。 起きている状態だと、いきなり現れたて噛みつかれたと思ったら、魔力で強化した鋭い牙で抉られるように食いちぎられる。 鉄の防具でも貫通するほどの牙だからな。 タイガー系で一番攻撃力があり、討伐難易度も最低Bランクだ。 あ、Bランクっていうのはパーティーでの話だからな? ユリアもそうだが単騎討伐するような魔物じゃないぞ?」
ギルマスさんはサーベルタイガーの口の周りを触りながら説明してくれた。
アンズさんを除くついてきた冒険者たちは、説明を聞いて驚いている者や身震いしている者もいる。
それよりもサーベルタイガーの牙って、魔力で強化した場合は物理扱いになるのかな?
それとも魔法扱い?
物理ならいいけど、魔法だった場合ジャスミンの「物理攻撃無効」では耐えられなかった可能性もある。
スキルの効果では「魔力を帯びていない攻撃を無効にする」みたいなことが書いてあったはずだし、攻撃されてたら大怪我していた可能性もある。
たしかに寝ててくれてよかった。
「物は確認した、買取りの話をしよう。 素材として何か欲しい物はあるか? 牙や毛皮や肉、あと魔石だな」
ギルマスさんは私に聞いてきたので、私はジャスミンの方を見る。
今回の納品はジャスミンの手柄だしね。
私の視線に気づいたジャスミンが意図に気付き、ギルマスさんの方を見る。
「サーベルタイガーの毛皮と、魔石を全部頂戴。 それ以外はいらないわ」
「魔石と毛皮だな? わかった、ならそれ以外の買取り額をまとめて用意しておくから、スズランの所で受け取ってくれ。 サーベルタイガーの毛皮と魔石全部は、明日以降来た時に渡せるようにしておこう」
そう言われたジャスミンは私の方を見る。
これでいいかわからないって事かな?
「わかりました、それでお願いします。 じゃあスズランさんの所に戻ろうか」
ジャスミンの手を引き5人で倉庫を出ていく。
野次馬に来た人たちは残るみたいで、サーベルタイガーの周りに集まっていく。
後ろでギルマスさんの「触るんじゃねぇ!」って声が聞こえてくる。
みんな珍しい魔物が気になるんだね。
私たちが外に出ると、兵士の人がまだ立っていた。
あ、もう戻っていいと言い忘れてた。
無事に終わったとお礼を言うと、頭を下げながら一言挨拶をして戻って行った。
表に回りギルドに入ると、そのままスズランさんの所へ。
「ジャスミンさん、サーベルタイガーの討伐ありがとうございました。 他の冒険者に被害が出る前に討伐できてよかったです。 それで、これが今回の報酬なんですが、ランクの方はどうしましょうか?」
「前にユリアさんもこれくらい大きな皮袋でもらってましたね」
「あー蛇の時ね」
スズランさんがジャスミンの前に持って来た袋を見て、リーアが小さな声で話しかけてきた。
前に沼にいた蛇を納品した時のことを思い出したみたいだ。
私はもう見慣れたけど、討伐対象的に頻繁に見る光景じゃないんだよね。
「これは何?」
目の前に置かれた袋を見てスズランさんに質問するジャスミン。
「これは報酬の金貨ですね。 まだ素材の剥ぎ取りはできてませんので、そちらは次回になります」
「金貨って人間が物と交換するときに使ってる物よね?」
ジャスミンが首を傾げながら聞いているので、簡単に教えてあげる。
「そうだね。 お店とかで欲しい物があったらこの金貨と交換してもらうんだよ。 細かいことは後で教えるけど、人間社会で生きていくには必要な物だね」
どうやらジャスミンはお金を知らないようだ。
前に両親の話はしてたけど、村みたいなところはなかったのかな?
あったとしても人間と関わってないなら、お金自体が無くて物々交換だったのかもしれないね。
「なら私にはいらないわね。 ユリアの家でお世話になってるし、ユリアにあげるわ」
「いやいや、ジャスミンが稼いだお金なんだから自分で持ってなよ」
「だって住む場所はあるし食事の心配もない。 欲しい物もないもの」
「まだ冒険者として活動したばかりだし、今後必要になるかもしれないよ?」
「うーん・・・・・・でも収納もないから私はこんなに持って歩けないし、やっぱりユリアが持っててほしいわ。 必要になったら言うから」
「それならカードに入れてもらえばいいんじゃない? ギルドに預けておけば持ち歩く必要もないし、ギルドにくればいつでも引き出せるし」
「よくわからないけど、ユリアがそういうならそうするわ。 という事でカードに入れて頂戴」
私の提案に納得したジャスミンはスズランさんにお願いしていた。
「入れる金額はどうしますか? 全部入れますか?」
「いつでも引き出せるなら全部でいいわ」
「わかりました。 今回は量が多いので、数えながら数回に分けて登録していきますね」
そう言うと、スズランさんは袋から金貨を取り出し、並べて行く。
ある程度並べたところでカードに登録し、並べていた金貨を離れた場所に移動させていく。
私が前にお城で登録した時は、紙に金額の一覧が書かれていたのでかなりスムーズに終わった。
まあその後金庫みたいな場所で残りを貰うときは、宰相さんが並べて数えてたけど。
そんなことを考えながら眺めていると、リーアがまた小声で話しかけてきた。
「ジャスミンちゃんは小さいのにすごく強いんですね」
「小さいと言ってもリーアの10倍以上生きてるけどね」
「え! そうなんですか!?」
リーアの大声でギルド内が静まり返り、視線がリーアに集まる。
リーアは両手で口を押えている。
金貨を数えていたスズランさんも動きを止め、驚きの表情でこちらを見ていた。
貴族が大声出したんだから何事かと思うのはしかたない。
リーアが「何でもありません」とか「お騒がせしました」とか言ってしばらくするといつものギルドに戻って行った。
スズランさんも、私が「大丈夫ですよ」と言うと、再び金貨を数え始める。




