112 ジャスミンと森へ3
さて、やる事は決まったので、地図の変化を見逃さないように凝視する。
まだジャスミンも動いてないし、サーベルタイガーも反応していない。
私たちも息をのみ、動くのを待っていると、妙なことが起きた。
地図からサーベルタイガーの反応が消えたのだ。
「え?」
「な、なに? 何か起きたの?」
私の反応にアンズさんが怯えながら確認してくる。
何が起きたのか私が聞きたい。
「さっきまであったサーベルタイガーの反応が消えました。 付近にもいないので移動したわけではなさそうです」
「倒したってこと?」
「どうでしょう・・・・・・あ、ジャスミンが戻ってきますね」
サーベルタイガーの反応が無くなり、ジャスミンが戻ってきているという事は倒したって事でいいのかな?
とりあえず戻ってきてるのなら話を聞いてみよう。
逃げ戻ってる感じでもなさそうなので、光魔法を強くして周りを明るくする。
「戻ったわ。 何とか倒してきたわよ」
「お帰り。 急に反応が消えたけど、どうやって倒したの?」
「こんなに離れてたのにユリアも魔物の反応がわかるのね・・・・・・まあ魔物の種類までわかるならそれくらいわかるわよね。 簡単なことよ、私のスキルで眠っているサーベルタイガーの魔力を吸い取っただけよ」
スキルで魔力を吸い取る?
いつも魔力をあげてたけど、あんな感じで吸い取ったって事?
寝てる相手だとスキルで離れていても吸い取れるのかな?
ちょっとよくわからないので、ジャスミンのステータスを見てみることにした。
個人情報保護って程じゃないけど、よほどのこと以外で見るのは良くないかな?と思って基本的には見ていないんだよね。
知らないうちに見られてるとか嫌じゃない?
とか言いつつもどうしても気になる時は見てしまう。
良心は好奇心に勝てないようだ。
〇ステータス
名前:ジャスミン
年齢:115
・スキル
「吸魔」「従魔召喚」「物理攻撃無効」「浮遊」
・魔法
「光属性」
ジャスミンは4つもスキル持ってるんだ。
というか魔族なのに魔法は光属性なの?
まあいいや、スキルの詳細は、っと・・・・・・
〇吸魔
触れている相手の魔力を吸い取ることができる。
〇従魔召喚
魔力を消費して、魔物を模した物を召喚できる。
召喚できる魔物は使用者の魔力量や、魔法力に依存する。
〇物理攻撃無効
魔力を帯びていない物理的な攻撃で受けたダメージが0になる。
〇浮遊
ある程度の高さまで重力を無視して浮かぶことができる。
移動速度は遅め。
うーん、これを見ただけだとどうやって倒したのかがわからない。
私の知らない魔法があるのかな?
「まあスキルでも何でも無事に倒せたみたいでよかったよ」
「スキル持ってる人なんて初めて見たかも。 詳しく聞きたいんだけど・・・・・・あーでもパーティ組んでるわけでもない冒険者の能力を詮索するわけにはいかないし・・・・・・」
スキルについて知りたそうなアンズさんが何かと葛藤している。
私も、私以外だと隊長さんしか見たことなかったし、まさか家族に持ってる人がいたとは・・・・・・
「ユリアだってスキル持ってるでしょ? それに精霊様も属性ごとにスキル持ってると思うし、この中で私だけが特別というわけでもないわよ」
「え?」
ジャスミンの言葉でアンズさんが私やディアたちを順にみている。
バラされてしまったけど、どうしようか。
まあ内容さえ教えなければ持ってること自体は知られてもいいかな?
あれ、そういえば初めてディアにあった時、ステータス見たけどスキルとかなかった気がする。
もしかして成長してから使えるようになったのかな?
「スキルについては秘密という事で。 サーベルタイガーを回収して帰ろうか」
「うー、すごく気になる・・・・・・」
私の一言でスキルの話が終わり、サーベルタイガーを回収しに皆で洞穴の方まで移動する。
ジャスミンは今までと同じように従魔を作ってサーベルタイガーを運ぼうとしたけど、大きすぎて3体の従魔で運んでいた。
これ、運びながら森通れるのかな?
斜めに並べば行ける・・・・・・のか?
「あ、そういえば。 洞穴には何かあった?」
「えーっと・・・・・・特にないわね。 食料になった魔物もいないし、子供とかもいないみたい」
「前回来た時は何もいなかったし、まだここに住み着いたばかりだったのかもね」
「え、ユリアちゃんもこんなところまで来たの?」
「来ましたよ。 前回フォレストタイガーを倒した時に調査もかねてこの洞穴の場所までは来ましたね」
「ユリアちゃん含めて、ユリアちゃんの周りは他と次元が違うね・・・・・・」
力が抜けたというか放心したようなアンズさんを連れて、私たちは元来た道を戻っていく。
魔物を乗せた大量の従魔を連れて・・・・・・
他の冒険者が見たら絶対驚くよね、これ。
行きでかなり倒したからか、帰りは魔物にも会わずそのまま森を出られた。
時間的にはまだ16時過ぎだから、暗くなる前に街には行けるね。
特に問題もなく街に来たところで問題が発生した。
ジャスミンが引き連れている従魔たちに驚き、門番の人たちが何人も出てきている。
もちろん武器を構えて臨戦態勢だ。
このまま行くのはまずそうなので、皆にはここで待っててもらい、私が1人で話しをしに行くことになった。
「ただいま戻りました」
「あ、ああ、おかえり。 あの魔物の群れはなんだ?」
「あれは先頭にいる子の・・・・・・魔法なので安全ですよ」
さすがにスキルって教えていいのかわからなかったので、とりあえず魔法という事にしておく。
「そうなのか? しかしあのまま街に入れると街中パニックになるな。 あの魔法は解除できないのか?」
「あの魔法は倒した魔物を乗せて運んでいるだけなので、別の運ぶ手段があれば解除できると思います」
「運ぶ手段なら、前に嬢ちゃんが土魔法で盗賊を運んでなかったか?」
あの時にいた門番の1人なのかな?
まあ縛ったり連行したりで何人も集まってたから、知っていてもおかしくないか。
「今回私はただの付き添いで行っただけなので、私無しでも運べるか試すためにああいう形になってるんです。 こういう場合ってどうやってギルドまで運べばいいですか?」
「そうだな・・・・・・兵士が監視として同行しながら連れて行くか、一度ギルドまで行って職員を呼んだり荷馬車のような物を手配する・・・・・・あたりか?」
『ねえ、ジャスミンに聞いてほしいんだけど。 兵士に同行してもらってギルドまで従魔を連れて行くのと、一度ギルドまで行って職員や荷馬車を手配するのどっちがいい?って。 よろしくね』
『わかったの』
私が離れた場所にいるジャスミンたちの方を見ると、ディアに説明されて悩んでいるジャスミンの姿が見えた。
待ってる間、門番の人に「どっちがおすすめですか?」など話をして時間稼ぎをしておく。
『何度も行くのは面倒なので、人間に一緒に来てもらった方が楽です。 って言ってるの』
『ありがとう、じゃあその方向で話を進めてみるね』
それにしても普段話してないけどディアに対しては敬語なんだね。
そういえば初めて会った時は跪いてたし、そういう話し方でもおかしくはないか。
「それじゃあ、兵士の方に付いて来てもらうって事でもいいですか?」
最初は兵士の人の迷惑になりそうだしな・・・・・・と思ったけど、ギルドから人呼んだら結局ギルドの迷惑になるんだよね。
だったら移動も少なくてすむ兵士同行の方がよさそうではある。
一番いいのはジャスミンが収納覚える事だけど。
「わかった。 ちなみにあの従魔を連れてる子は嬢ちゃんの仲間なのか?」
「えっと、いろいろあって私が引き取ったんですよ。 なので今は私の家族として一緒に暮らしてます」
「そうか、なら同行は俺1人いればいいだろう。 あの子たちをこっちに呼んでくれ」
街に入れることになったので、みんなに手招きをする。
と言っても遠くて見難いから念話で呼んだんだけどね。
私に呼ばれてみんなが門まで来ると、兵士の人たちは魔物の量と、何よりサーベルタイガーを討伐したことに驚いていた。
「相変わらず嬢ちゃんはすごいもの討伐してくるな。 これも森にいたのか?」
「森の奥の方にいましたね。 それと今回は本当に同行しただけなので、討伐したのもこの子ですよ」
そういってジャスミンの方を見る。
「と言う事は二代目嬢ちゃんって事か?」
なんだ二代目嬢ちゃんて・・・・・・
「二代目の意味が分かりませんが、私よりは冒険者活動すると思いますよ」
「街にとってはいい事だな。 おっと、ここで長話もなんだし、ギルドに行こうか」
「はい」
そのまま先頭を歩いていく兵士の人にみんなでついていく。
入口は特に問題なかったけど、商店通りに入るとやっぱり少し騒ぎになる。
門番の人が必死に大丈夫だから落ち着くようにと言いながら進むけど、進んだ先で見かけた人は同じように騒ぎ出すので、全然収まらない。
「何の騒ぎですか?」
そんな中、聞きなれた声が人波から聞こえてくる。
「これはフリージア様。 私は只今わけあって冒険者ギルドまで同行している最中です。 この魔物たちも魔法によるものらしく、危険は無いとのことですが、見た目の精巧さから騒ぎ出す者も多く、なかなか収まらない状況です」
「本当に危険は無いんですか? ん?」
兵士の話を聞いていたリーアが先頭にいるジャスミンに話しかけたところで、私に気づく。
「あ、ユリアさん。 という事はこちらの方はユリアさんのお知り合いですか?」
「うん、そうだよ。 ちょっと前からうちで一緒に暮らしてるんだけど、冒険者になったからお試しで森に行ってきたの。 で、私がいなくても魔物を運べるか試すために、この従魔たちで運んでたってわけ。 やっぱり騒がしくなっちゃったね、ごめんねリーア」
「わたしはユリアさんを信じてますので、ユリアさんが安全だと言うのならわたしも街の皆さんを説得しましょう。 ですが、街の方たち皆がユリアさんの事を知ってるわけではないですからね。 時間はかかると思います」
私と話していたリーアはジャスミンの方を向く。
「それにあなたの行動1つですべてを台無しにするだけでなく、ユリアさんの顔に泥をるることになります。 気を付けてくださいね」
「わかってるわよ。 助けてくれたユリアの不利になるようなことはしないわ。 今回だって騒ぎになるかもしれないからって、街から離れた場所で待ってたのよ? そしたらそこの人間が同行すれば問題ないと言うから入ってきたわけだし」
「そうなのですか?」
ジャスミンの話を聞いて、今度は兵士の方を向く。
「は、はい。 ユリア殿の家族という事でしたので、私が同行すれば問題ないかと思い・・・・・・私の独断です、申し訳ございません」
リーアに説明した後、震えながら頭を下げる兵士の人。
私たちのせいで兵士の人が怒られるのもかわいそうだし、何とかしないと。
「兵士の人の提案の中から最終的にその選択をしたのは私だから、その兵士の人は許してあげて。 怒られるなら私が怒られるから」
「別に怒りはしません。 確認した竹です。 それに今まで街に貢献してくださったユリアさんとその家族の方ですし」
「ありがとう、リーア」
「ですが、わたしはあなたを信用したわけではありません。 あくまでもユリアさんを信用しての事です。 あなた自身の信用を得たければ、今後の行動で示してください」
「わかってるわ。 少なくともユリアに迷惑が掛からないようにするつもりよ」
「ではこれも何かの縁ですし、私もギルドまで同行しましょうか」
「いいの?」
「街を見て回っていただけなので問題ありません。 それに新しいユリアさんの家族の事も知りたいですし」
そういって私の近くに来たリーアと共にギルドへ向かう。
と言ってももうすぐ近くなんだけど。




