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ユリアの世界  作者: 花園 満


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110 ジャスミンと森へ

「この子たちの紹介もしましたし、引っ越しの話もしたのでそろそろ帰りますね。 ジャスミンはどうする? このまま帰る? それとも依頼を受けてみる?」



 2人に帰ることを伝えた後、ジャスミンにこの後どうするか聞いてみる。

 ランクFだと1つ上のEの依頼を受けたとしても大した依頼はないので、森に行って適当に狩って常設の納品した方が依頼を受けるよりいい。

 だから、戦えるジャスミンは依頼を受けるよりそのまま森に行った方が依頼を受けるより冒険者としての活動ができると思う。

 ジャスミンが雑用みたいな仕事をしたいと言うなら別だけど。



「せっかく来たんだし、何かしらやってみたいわね。 どんな依頼があるのかも見てみたいし」

「じゃあ掲示板見に行こうか」



 ジャスミンは依頼に興味があるようなので、部屋を出て一階に降りた後、一緒に掲示板を見に行く。


 しかし、私が読み上げたFとEの依頼内容を聞いたジャスミンの表情は曇っている。



「何よそれ、ただの雑用じゃない。 冒険者ってこんなことするの? 魔物退治とかじゃないの?」

「私も最初そう思ったね。 ジャスミンと同じこと言った気がする」



 ジャスミンが初見の私と同じ反応をしたので、少し笑ってしまった。

 やっぱりある程度戦えると同じ反応するんだね。



「君たちのように最初から資金も戦闘力もある人ばかりじゃないからね。 こういう依頼を受けて、次へ行く準備をするためのランクだよ」



 私とジャスミンが掲示板を見ながら話していると、急に後ろから声が聞こえた。

 FやEの掲示板は相変わらず人が少ないので、私たちに話しているんだろうと思って振り返る。

 すると、見たことある男性が立っていた。

 見たことあるだけで誰だかはわからないけど。



「なるほど、初心者用の依頼ですからね。 簡単な依頼で装備なり道具なり揃えつつ、依頼に慣れてもらうって事ですか」

「そういう事。 久しぶり、ユリアちゃん・・・・・・だったよね? あの時は治療してくれてありがとう。 奇麗に治療してくれたおかげで、あの後も特に問題なく冒険者活動が続けられてるよ」



 そういって男性は両腕をあげて「元気」をアピールするようなポーズをする。


 私の方は「治療」という言葉でやっと誰だか思い出した。

 フォレストタイガーの情報を持ってきた冒険者だ。

 ただ思い出したのはその事と、男女4人のパーティーだったという事だけで、名前などは憶えていない。



「ちゃんと治ったみたいでよかったですね。 今日は1人なんですか?」



 今いるのは男性1人だけで、他の人が一緒に居ない。



「昨日依頼から帰って来た所で、今日から数日はそれぞれ休みにしてるんだ。 俺は新しく依頼が出てないか確認しに来たのと、残ってる冒険者から何か情報でも聞けないかなって思ってギルドに来たんだ」



 特に何もなかったけどね、と大げさに肩を落とす。



「それじゃあ私もこの雑用からしないといけないってこと?」



 私と男性の話を聞いていたジャスミンがすごく嫌そうな顔で私を見る。

 薬草採集はサクラと一緒に行ったからよかったけど、1人で雑用系の依頼を受けなきゃいけなかったら、私もジャスミンと同じ表情をしてたと思う。



「大丈夫だよ。 常設依頼っていうのがあって、お肉が食べられたり毛皮が使える魔物は依頼を受けなくても買取ってくれるから、依頼を受けずに森に行って適当に狩ってくれば買取ってくれるよ」

「そういえばあの人間が説明してた時に、常設依頼があるとか言ってたわね。 雑用するくらいならそっちの方がいいわ」

「じゃあ森だね。 珍しく皆いるし、全員で森に行ってみる? 奥に行くと暗いけど、手前の方は明るいからピクニック感覚で行けると思うよ」

「そうね。 普段は一緒に行けないでしょうし、ユリアが一緒に行ってくれるならその方がいいわ」

「ディアとシアはどう?」

「近場ならたまには外に出るのもいいの」

「このまま運んでくれるなら行ってもいいわよ」



 満場一致だったのでみんなで行くことにした。

 シアは自分で移動する気はないようだけど。

 何よりディアが街から出るとか言うレアイベントだ。

 絶対逃せない。



「ちょっと待ってくれ。 子供をこれだけ連れて森へ行くのか? いくらユリアちゃんが強いと言っても危険じゃないか?」

「この子たちも強いので大丈夫ですよ。 じゃあ森に行ってきますね」



 私は男性と別れてギルドを出て行こうとしたが、呼び止められる。



「なら俺が同行しよう。 周囲の警戒は人が多い方がいいだろう。 もちろん邪魔になるようなことはしない」



 さすがにあなたが邪魔とは言えないし、どうしようかな・・・・・・

 ジャスミンに決定権を投げるか。



「ジャスミン的にはどう? 人が多い方がいい?」

「ん? ユリアがいればほかの人間はいらないわ。 森にユリアみたいなのがうろうろしてるなら人手が欲しい・・・・・・というか、それなら森なんて行かないわね」

「という事らしいので、今回は遠慮しておきますね」

「しかし・・・・・・」



 そのまま私たちはギルドを出る。

 後ろで何か言ってたけど、小さくて聞こえなかったからそのまま無視だ。

 ギルドを出て門へ向かおうとした時、後ろから今度は女性に話しかけられた。



「あ、この前の! 確かユリアちゃん、だよね?」



 私が振り返ると、そこには私より少し年上の女の子がいた。

 この子も見たことがある、さっきの男性と一緒に居た魔法使いの子だ。

 前は皮装備だった気がするけど、今日はローブを着ている。

 下に皮装備を着てるのかもしれないけど。


 さっき男性の治療の事を思い出した時に、他の3人の事もかすかに思い出していた。



「はい、ユリアです。 お久しぶりですね」

「うん、久しぶり。 ユリアちゃんのおかげでリーダーのマクシムも元気になったし、感謝だよ」



 あの男性はマクシムというのか。

 名前を言われてもピンとこないので、もしかしたら初めて聞くのかもしれない。



「さっきギルド内で会って、本人からも直接お礼を言われましたよ」

「そういえばギルドに行くって言ってたね。 それで、ユリアちゃんは妹さん?を連れて買い物?」

「いえ、この子が冒険者登録したので『森にでも行ってみようか』ということになって向かうところです」

「え、ユリアちゃんが強いのは聞いたけど、3人も子供を連れて行くのは危険だよ? あ、そうだ。 うちのリーダーを助けれくれたし、今度は私が手を貸してあげるよ。 土の魔法が得意だから守るのには自信あるんだ」



 そう言って背負っていた杖を掲げる。

 さっきの人もこの人も悪い人じゃないのはわかるんだけど・・・・・・

 隣で見ていたジャスミンも「またか・・・・・・」という表情をしている。



「さっきそのマクシムさんにも言われましたけど、この子たちも強いので平気ですよ。 心配してくれてありがとうございます」



 そう言ってさっさと去ろうとしたが、後ろから肩を掴まれてしまった。



「そう言わずに一緒に行こうよー。 あ、なら、お散歩やピクニック行く感じで、どうかな?」



 何が「どう」なのかわからないんだけど・・・・・・さっきの人よりしつこそうだなこの人。


 そして何よりまずいのが、ディアとシアが攻撃しないか。

 それがすごく心配だ。

 見た感じ我関せず、といった感じでディアは他の所を見ているし、シアは寝ている。

 でもこのまましつこかったら何するかわからない。



「ジャスミン、この人が一緒でもいい?」

「・・・・・・私たちの邪魔をしないならいいわ」



 すごく嫌そうなジャスミンだが、それに気づかないのか気にしないのか、その女の子は喜んでいた。



「あ、そういえばまだ自己紹介がまだったね。 私はアンズだよ」

「私はさっきも言いましたがユリアです。 こっちの茶髪の子がデアソリット、寝てるのがシャウリット、そしてこの子がジャスミンです」

「よろしくねー」



 自己紹介をしている間も、まったく見ていないディアと寝ているシア。

 ジャスミンは不機嫌そうにそっぽ向いている。

 この状況でも明るく接してくるアンズさんはメンタル強いな。


 という事で当初の予定人数+1人で街の外へ行き、森へ向かう。

 その間もずっとしゃべり続けているアンズさん。


 正直話がすぐ飛ぶので何の話をしていたのか記憶に残っていない。

 適当に相槌を打ってただけだし。


 しかし、森に着くとアンズさんはお喋りをやめてまじめな表情で杖を構える。

 一気に雰囲気が変わったので、私もジャスミンも驚いてしまった。

 ディアたちはもちろん気にしてない。



「今回はジャスミンが主役だから、ジャスミンが先頭でいいかな?」

「いいわ。 前に誰もいない方が戦いやすいし」

「それなら私が真ん中で壁役をするよ。 ユリアちゃんは2人を守ってあげてね」



 精霊だから守らないといけない程この子たちは弱くないんだけど。

 まあ気を使ってくれてるんだし、今更何か言ってもしょうがないのでおとなしくついていく。

 並び順としては先頭にジャスミン、その少し後ろにアンズさん。

 そしてその後ろに私とディアとシアとコウスラの4人。


 私は一応地図を表示しながらついていくことにした。

 今までにも毛虫や蜂、虎がいたので警戒だけはしておく。


 しばらく歩いていると、正面にウルフの反応が出た。

 まだ赤くはなってないのでこちらには気づいてないみたいだ。



「何かいるわね」



 私が地図で確認した後、そのまま少し進んでいるとジャスミンが魔物に気が付いたようだ。

 その声を聞いてアンズさんが杖に魔力を込め始める。


 ジャスミンがゆっくり進んでいくと、向こうも気づいたようでこちらに向かって移動している。

 目視できる距離まで来た時、ウルフが急に止まった。

 威嚇するように唸っているだけで、こちらには来ない。


 ジャスミンはウルフに近づいていき、アンズさんが杖を構えたままそれに続く。

 私はその場で眺めていた。



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