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ユリアの世界  作者: 花園 満


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106 愛の告白!?

 お城でのお泊り最終日を終えて目が覚めると、相変わらず私にのしかかるデイジーと枕にするシア。

 みんなが起きた後はベッドをしまい、サンドイッチで軽く朝食を済ます。

 マリーは結構食べてたけど。


 みんながのんびりしてる間に私は着替えて、ベッドを元の場所に返してくる。



「それじゃあ着替えたら帰ろうか」

「はい」

「うん」



 戻って来た私の言葉にサクラとリーアが元気に返事をする。



「また機会があったらお泊り会しましょうね」



 着替えながらまたお泊り会がしたいというマリー。

 デイジーは私が着替えさせてるけど、悲しそうな表情でうつむいている。



「デイジー、また遊びに来るし美味しい物も持ってくるから、ね?」



 うつむきながら頷くデイジー。

 私は帰るぎりぎりまでデイジーを抱っこして、頭や背中を撫でてあげた。



「それじゃあ帰ろうか」



 私はデイジーをおろし、シアを抱っこするとゲートの方に向かう。



「忘れ物はないかな? というか何も持ってきてないか」

「大丈夫です。 お土産を買うつもりでしたが、特別王都で買い物しないといけない、というものもありませんでしたし」



 それを王女の前で言行ってもいいのかな・・・・・・

 マリーは気にしてないみたいだけど。



「わたしは鳥のお世話をした後、お勉強のためにまたお昼頃戻ってくるし」

「そういえばそうだったね。 あ、リーアは直接部屋のゲートに繋いじゃったほうがいい? それとも私の家から歩いて帰って、門を通ったほうがいい?」

「帰ってきたことを皆に伝えるためにも、家の門を通ったほうがいいので、ユリアさんのお家から帰ります」

「わかった。 それじゃあうちに繋ぐよ」



 3人でマリーとデイジーに挨拶をした後、ゲートを通って私の家に移動する。

 一階に降りて外に出ると、そのまま孤児院まで行く。

 シアはついてこないようで、水田の方に行ってしまった。


 院長先生にサクラが帰ってきたことだけ伝えた後、サクラは鶏小屋へ行く。

 私とリーアは一緒に領主邸に向かった。

 リーアは一人でも大丈夫だと言っていたけど、預かった以上ちゃんと送り届けないとね


 領主邸まで行くと、1人の門番が門を開けてくれ、もう1人が小走りで領主邸の中に入って行った。

 多分リーアが帰ってきたことを伝えに行ったんだろう。


 そのまま私たちも領主邸に入ると、メイドさんがいたのでリーアを任せて帰ろうとしたら、ロイドさんに会ってほしいとのことで、リーアと一緒に応接室に通された。


 リーアと一緒にソファに座ってしばらく待っていると、ロイドさんが入ってくる。



「無事に帰って来たようだな」

「はい、ただいま戻りました。 それにユリアさんの扉で王都を往復したので、王都の外には出ていません。 なので、特に襲われるようなこともありませんでしたし」

「だとしても、王都でだって何があるかわからないからな。 特に貴族となると他の貴族などから狙われる可能性だってある」



 確かに王都の方が人は多いけど、モウイの街で1人歩かせるのは良いんだろうか?

 王都より人が少ないとはいえ、1人は危険だと思うけど。



「王都と言ってもほとんどお城にいましたし、マリー様と一緒に王族の居住区に居ることが多かったので、他の貴族の方には会っていません。 訓練場で騎士の方たちに会ったくらいでしょうか?」

「ん? ちょっとまて、城にいた? マリー様? それに王族の居住区にいたとはどういう意味だ?」



 なぜかロイドさんが慌てているいうか焦っているので、王都での行動を大まかに説明してあげた。



「城に行っただけならまだわかる。 城から招待状が来たわけだしな。 だがまさか王女殿下と仲良くなって一緒に食事、一緒に入浴と、さらには一緒に寝るとか信じられんな。 本当だったらとんでもない事だぞ?」

「そうなの?」



 私の説明に心底信じられないようなロイドさん。

 なので私はリーアに聞いてみた。



「そうですね。 本来であれば、王族というのは貴族からしても、貴族に対する平民のように絶対的な壁があるんです。 たとえ貴族で一番偉い人だったとしても、王族の前では貴族の中の1人にすぎないんです」

「あの王様はそんな感じしないけど、やっぱり偉い人なんだね」

「ユリアさんは気に入られてるみたいなので、砕けた態度をしてましたね。 でも他の人がユリアさんと同じことをしたら、その場で首をはねられても文句が言えないんですよ?」

「え、そうなの?」

「国王様が指示しなくても、周りの騎士たちや貴族が黙ってないと思います」



 偉い人というのはわかっていたつもりだけど、そこまでなんだ。

 確かに初めて会った時は貴族の1人が騒いでいた。

 もしかしたらあの貴族の態度が普通なのかもしれないね。


 物語として読んだことはあったけど、実際もそうなのか。



「まあリーアが何かやらかしてなければ問題ない、か・・・・・・」

「それは大丈夫だと思いますよ。 王様は私たちの食事に乱入してきたくらいで、それ以外は大会観戦の時くらいかな?一緒に居たのは。 マリーはむしろ楽しんでて、またみんなでお泊り会したいと言ってましたし」

「もちろんこちらとしても王族とのコネは歓迎だ。 金や利害の一致ではなく、純粋な友好関係なら特にな。 そういえばユリア、大会の方はどうだった? 予選突破してくれるだけでも街としては拍が付くんだが」

「大会ですか? 優勝しましたよ。 魔銀貨5枚と力を失った五常石、属性石でしたね、を貰いました」



 そういって私は魔銀貨と五常石を見せる。



「優勝!? あの大会にはAランクの冒険者や騎士の隊長格もいたんじゃないか?」

「いましたね。 模擬戦をした隊長さんには当たりませんでしたけど、決勝で当たったのがAランクの冒険者だったみたいです」

「Bランクでその相手に勝ったのか・・・・・・正直予選なら行けるんじゃないか? くらいに思ってたから、理解が追い付かん」

「あ、私、予選は出てないんですよ。 王様の推薦?だとかで最初から本戦の1人として数えられてたみたいです。 予選があったことも、当日王様に言われて知りましたし」

「本当に気に入られているんだな・・・・・・大会で優勝するくらいなら当然か」

「食べ物を気に入られてるんじゃないですか? マリーたちとの夕食時、新しい料理があったら食べに来ましたし」

「そもそも前提がおかしい。 まず王族が城の料理人以外の作った食事は口にしない。 しかもユリアの身分は平民の冒険者だしな」



 そういえば初めて王様に会った時は、毒見として隊長さんが食べてたね。

 あれ、でもその後は普通に王様も食べてた気がするけど・・・・・・デイジーも食べてたし。

 よくわからない。



「まあいいや、王様の考えることはよくわからないという事で、私は帰りますね。 まだうちの子たちに帰って来た挨拶もしてませんし」

「そうなのか?」

「帰ってきてすぐサクラとリーアを送って来ましたから」

「それは悪かったな、今回はリーアに貴重な体験をさせてくれて感謝する」



 お礼を言うロイドさんとリーアに挨拶をして私は領主邸を出て、帰り道の途中で簡易ゲートを使って家に戻った。



「ジャスミンただいま」

「お帰りなさい」



 家に着いた私は、先に二階にいるジャスミンの所に来た。

 ベッドで寝転がっていたジャスミンが、ベッドから降りてこちらに来る。

 食事の時のいつもの行動だ。

 私の元まで来たジャスミンの手を握り、魔力を吸い取る。

 数秒後、手を放してジャスミンはベッドに戻って行った。



「ジャスミンはまだ外に行かないの?」

「まだって、この家に来て1年も経ってないじゃない、50年以上安全な場所で生活できなかったんだから、10年や20年安全な家に居たっていいでしょ」



 もしかして長寿だから時間の感覚が違う?

 人間の感覚だとかなり引きこもってる気がするけど、ジャスミン的には引きこもりではなく、ただ休んでる程度の感覚なのかな?



「結構家にいた気がするから心配してたけど、ジャスミン的にはそんなことなかったんだね」

「そうね。 魔物を狩りに行かないなら外に出る必要もないし、用もなく外に出たって人間に狙われる可能性があるもの。 基本的には住処に隠れてたわ」

「外に出たくない?」



 考えてみれば、ジャスミンは混血種とか言われてるけど吸血鬼なんだよね。

 もしかして日の光が苦手だったりする?



「そんなことはないわ。 出る理由が無いから出る気になれないだけ」



 外に出るのが嫌いなわでも苦手なわけでもみたいだ。

 それならギルドに行く途中一緒に商店通りに行ってみてもいいかも



「じゃあこの後ギルドに行くから、散歩がてら街を見に行かない?」

「討伐対象の私をギルドに連れて行くとか、正気?」

「王様が今は討伐対象じゃないって言ってなかったっけ? それにもしジャスミンを狙う奴がいたら私が護るよ」

「言ってたけど、数十年という短期間で意識が変わるとも思えないわ」

「そっか・・・・・・無理してまで連れて行きたくはないし、もうちょっと落ち着いてからの方がいいかな」



 大丈夫だと言われても、今までの事を考えるとすぐには納得できないよね。


 私が1人で行こうかと考えていたら、ジャスミンがうつむきながら口を開く。



「・・・・・・本当に護ってくれる?」

「それはもちろん。 この街の冒険者全員を敵に回してもジャスミンを護るよ」

「なんで? あなたは人間じゃないの? 何で人間が人間を敵に回してまで魔族を護るの?」

「ジャスミンはうちで預かってるんだから、ここから出ていくまでは私が保護者だよ? 家族を護るのは当たり前でしょ。 相手が人間だろうが貴族だろうが王族だろうが関係ないよ」



 私の言葉を聞いて、ジャスミンは両手で顔を覆い泣き出してしまった。

 私は慌てて抱きしめて、落ち着くまで背中をさすってあげる。


 しばらくすると、ジャスミンは私から離れる。

 涙をぬぐいながら口を開く。



「もう大丈夫よ、年上なのに恥ずかしいところを見せちゃったわね」

「つらい時は貯めこまないで発散したほうがいいんだよ。 年齢なんか気にしないで相談してくれていいからね。 もし他の人に聞かれたくないなら、今回みたいに2人だけで話を聞いてあげるから。 と言ってもこの家には元々精霊とスライムしかいないけど」



 さっきまで泣いてたからか、顔を真っ赤にしながらこちらをまっすぐ見る。



「ユリア! 私ももっと強くなるわ。 だから私と番になってくれない?」

「へ? ツガイ? ツガイって何?」

「私と・・・・・・一生一緒に居てほしいって事よ」



 ジャスミンは両手を胸の前で重ねて下を向いてしまった。



「あはは、なんか愛の告白みたいだね。 ジャスミンの好きなだけここにいていいんだよ?」



 目を固く瞑っていたジャスミンが、私の言葉を聞いて目を見開き大きな声を出す。



「もう! 愛の告白よ! 番は夫婦の事!」



 顔を真っ赤にしながら叫ぶジャスミン。

 同性に愛の告白をされてしまった。



「いやいや、私は女だよ? 胸はないけど男じゃないからね?」

「そんなの知ってるわよ! 話をそらさないで!」



 なんか話がかみ合ってない気がする。

 女なのがわかってるのに、どうやって夫婦になるつもりなんだろうか。



「ごめん、言ってる意味がちょっと分からない。 女同士で夫婦になるのは無理じゃない?」

「人間同士ならそうでしょうけど、私の種族は相手の性別は関係ないわ。 男なら私が子供を産むし、女なら相手に子供を産ませることもできる・・・・・・はずよ」



 勢いよく説明していたジャスミンが、徐々にクールダウンしていく。

 はずって、確証はないのか。



「曖昧なんだね」

「仕方ないじゃない、聞いただけで試したこともないし、そもそもまだ子供を産める年齢じゃないし・・・・・・」



 あれ、100歳越えてるのに?



「そうなの?」

「私は混血種だから正確な年齢はわからないけど、遅くても200歳くらいになれば大丈夫なはずよ」



 200歳にならないと子供が作れないって、種として存続できるんだろうか・・・・・・



「てことは、寿命も相当長いのかな?」

「寿命についてはわからないわ。 寿命まで生きてた同族がいないから」



 討伐対象として倒されて寿命まで生きられなかったのか。

 そうなると寿命がわかるのはこれからになるのかな。



「寿命とかはどうでもいいのよ。 返事を聞かせて頂戴」



 再び私をまっすぐ見つめるジャスミン。


 と言われてもね・・・・・・



「うーん。 結婚、番か。 には、なれないかな。 ジャスミンが嫌とかじゃなくて、私自身が結婚したいとは思ってないんだよね」

「・・・・・・可能性は全くない? 今すぐじゃなくてもいい、私が大人になってからでもいい。 ユリアの理想があるなら教えて、私頑張るから」

「ジャスミンには不老不死の話はしたよね?」



 私の問いにジャスミンは頷く。



「私の体はね、子供が作れるようになる前に不老不死になっちゃったの。 だから私はこの先ずっと子供は授かれない。 それもあって結婚するつもりはないの。 子供は欲しかったけど、旦那さんが欲しかったわけじゃないし。 それに私にはディアとシアっていう可愛い子供が2人もいるから、尚更結婚する気にはなれないの」

「そう、なんだ・・・・・・」

「だから、姉妹とかじゃダメかな? ずっと一緒に居るという意味なら姉妹だって同じだよ?」



 夫婦と姉妹だと大きな違いはあるけど、家族として一緒に居たいだけなら同じようなものだ。



「私を捨てない?」

「捨てるわけないでしょ。 悪い事したら注意はするけど、それで捨てたりはしないよ」

「ありがとう・・・・・・番、結婚?は一旦諦めるから、1つお願いしてもいい?」

「私にできる事ならいいよ」

「たまにでいいから、私が寂しくなった時に抱っこしてほしい」



 それくらいならいいかな。

 デイジーもそうだったけど、母親がいなくて甘える相手が欲しかったのかもしれない。

 ジャスミンはそれを恋愛感情と勘違いしてる可能性もある。

 100歳越えてても、まだまだ子供なのかもしれないね。


 私はジャスミンに歩み寄り、抱っこしてあげる。

 デイジーや精霊たちに比べると大きいので、ちょっとバランスが悪い。

 私の身長が低いのもあって、ジャスミンを抱っこすると私の視線がジャスミンの胸辺りになる。



「どうかな、落ち着きそう?」

「うん・・・・・・」



 ジャスミンは頷くと私の頭を抱えるように抱きしめる。

 前が見えなくて移動できない。


 しばらくすると、ジャスミンが放しくれたので、そのまま降ろす。



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