105 お城でバーベキュー
待ってる間にバーベキューがダメだった場合に食べたい物を、サクラとリーアに聞きながらマリーを待つ。
しばらく待っているとマリーが戻って来た。
「戻ったわ。 中庭でバーベキューをする許可を貰えたわよ。 でもお父様の参加と、大きい火を使わないことを条件として出されたわ」
「火の大きさは料理するときよりちょっと大きい程度だから多分大丈夫だと思う。 それをいくつか並べて使うけど、火事になるようなことはないと思うよ。 あと、王様の参加は別にいいけど、自分で焼くのは伝えた? まあアンドレさんとかに焼いてもらうのもありだけど」
「ちゃんと伝えたし、今日は新しい食べ方を経験するためだって言ってたから、自分で焼くと思うわ」
「じゃあ私は一度家に戻った後準備をするから、みんなはのんびりしてて」
私は一度ジャスミンとディアの所に顔を出し、明日帰ることを伝えてお城に戻る。
戻った私は調理台を出し、野菜を切って下茹でしていく。
デイジーが離れてくれないので椅子に座って作業している。
前に孤児院でやった時と同じように、パンとお肉と野菜のお皿とお代わり用の大皿を用意して全部収納する。
準備が終わったので、マリーに王様たちを中庭に呼ぶようメイドさんに言伝してもらい、私たちはマリーの案内で中庭に移動した。
お城にある王族の居住区は、王女の部屋がある区画と王子や王様の部屋がある区画の間に中庭がるようで、私たちはそこに向かう。
中庭に着くと、すでに王様とアンドレさんと王子が待っていた。
メイドさんに頼んだ後すぐに部屋を出てきたのに、なぜか王様たちの方が先に中庭にいた。
しかも王子はともかくアンドレさんも一緒なのに驚いた。
自分で焼くって言ってたからアンドレさんは来ないと思っていた。
いや、新しい食事方法だから体験目的なのかな。
「王様たち早いですね。 部屋を出る前にメイドさんに呼ぶよう頼んだはずですけど」
「あー、さっきマリーに許可を出した後すぐにアンドレを呼んでそのままここに向かったからな。 それよりも・・・・・・」
私が準備してる間に向かっていたんだ、メイドさんは無駄足になっちゃったね。
というか、準備してる間に向かってたなら結構待ってたんじゃない?
王様は先に来た説明をした後、デイジーを見て眉を顰める。
「デイジーはまだそのままなのか?」
「そうですね、放してくれません」
「デイジーは母親を知らないから母親が恋しいのかもしれないな・・・・・・」
王様がボソッと小声でそんなこを言った。
今まで見ないと思ってたけど、もう亡くなってたんだね。
そう考えると母親に甘えたい気持ちがあったのかもしれない。
でも、私よりも大きいのにマリーじゃダメだったんだろうか?
デイジーの年齢で母親を知らないという事は、デイジーが生まれてすぐ亡くなったのだろう。
だとすると、私が母親に似ているとかそういう事でもないんだよね?
それならマリーの方が私よりは似てるはずだし。
「何で私なんですかね?」
「わからんな。 美味しい食べ物をくれて、自分に優しくしてくれるユリアに母性を感じているのかもしれん」
「私で安心させてあげることができるなら、抱っこしたり添い寝するくらい構わないんですが、ずっとお城にいるわけにはいきませんからね・・・・・・」
王様と話していた私はデイジーの背中を撫でる。
「お父様、そろそろ始めない?」
後ろにいたマリーが早く始めようと催促してくる。
「そうだな、いつまでも話していたら遅くなってしまう。 ユリア頼む」
王様に言われて、私は空いてるスペースに孤児院で使ったバーベキュー用のテーブルを2つ出す。
今回は8人(シアは食べない)なのでテーブル1つに王様たち3人分、もう1つのテーブルには私たち5人分を用意する。
食器や食材を置いた後、火を設置して網状の蓋する。
そして最後にお代わり用の食材を置いたテーブルを用意して完成だ。
「じゃあ食べ方の説明をしますね。 といっても難しい事はありません。 目の前にあるお皿から好きな物を好きな順番に網で焼いて食べるだけです。 野菜は下茹でしてあるのでそのまま食べてもいいですが、お肉だけはしっかり焼いてくださいね、赤身のまま食べるとお腹壊すかもしれませんので。 それと、網に乗せる時に使う挟む道具は、お肉に使ったもので他の食材に触れないよう注意です。 これも腹痛の原因になりますので。 最後に、目の前のお皿の物を食べ終わっても足りないようなら、あちらの大皿から好きな物をお代わりしてください」
説明が終わると真っ先に焼き始めたのはマリーだった。
毎回マリーが一番最初に行動開始してる気がする。
そういえば王様も真っ先に食べ物に手を伸ばしたことがあったね。
親子だ。
でも楽しみにしてくれるのは嬉しい限りだね。
「デイジーもやってみる?」
ずっと私にしがみついているデイジーに聞いてみる。
「・・・・・・うん」
デイジーはしばらく考えた後頷く。
ただ食べるだけじゃないので興味はあるみたいだ。
私はデイジー用の足場を用意し、そこに立たせる。
焼くのに集中しすぎて落ちないように、一応片手で支えている。
「これで食べたい物を掴んで、網に乗せるの。 で、しばらく置いたらひっくり返してもう片面も焼くの。 網の真ん中の方が熱いから、慣れないうちは端の方でゆっくり焼くといいかな」
今回のトングは私が土魔法で作った物だ。
よくあるよなU字型の簡易的な物だけど、私の土魔法で作った物は壊れないのでこれで十分なのだ。
あと、私が土魔法で作った物は汚れないので、生肉に使ったもので野菜とかを掴んでも問題ない。
でも今後自分たちでやる時に、店売りの挟む道具を使った場合に知らないとお腹壊す可能性があるので、ちゃんと別々に用意してある。
そしてデイジー用のトングは他の人たちよりも二回りほど細くて小さい物にしてある。
普通のトングだと重いしある程度の力も必要だからね。
デイジーは身を乗り出すように、真剣な表情で野菜やお肉を焼いて食べている。
慣れてきたデイジーは、ちゃんと自分で焼き加減を見ながら食べ始めた。
焼きすぎないように真剣な表情のデイジーがすごく可愛い。
私も横の網で焼きながらデイジーの様子を見つつ食べる。
周りを見てみると、サクラとリーアとマリーの3人は、友達同士仲良く話しながら食べていて、王様も楽しそうに焼いて食べている。
でも王様の食べるスピードが早い。
手を素早く動かしているわけではなく、一度に大量に焼いて、焼けた物からどんどん食べていく。
隣の王子はそれを見て呆れた表情をし、正面に座っているアンドレさんは、驚いた表情でそれを見ている。
そして真っ先にお代わりに動いたのはもちろん王様だった。
アンドレさんが「私が取りに行きます」と言っていたが、王様は「自分で行くからお前は自分の分を食べていろ」と言って、そそくさとお代わりしに行った。
お皿を持って移動する王様がなんともシュールだった。
しばらくすると他のみんなもお代わりをしだし、デイジーもお代わりしたいと言ったので、私はデイジーを抱っこしたまま大皿の所まで行き、デイジーの食べたい物を取り皿に乗せていく。
デイジーは2皿目でお腹いっぱいになったようで、私に寄りかかって満足そうな表情をしている。
サクラとリーアは3皿目でやめたみたいだけど、マリーはまだ食べている。
ちなみに私は最初の1皿しか食べてない。
というか、デイジーの様子を見ながらゆっくり食べていたので、1皿でお腹いっぱいになってしまった。
やっぱり食べないと大きくなれないのかな?
いや、今から食べてももう手遅れか・・・・・・
まだ食べているマリーを見ながらそんなことを考えていると、最後の食材を王様が持って行ったようで、大皿が空になっていた。
ジャムは出してないけど、それ以外は前回孤児院でバーベキューをした時と同じ量を用意してたのに、全部食べ切ったようだ。
主に王様とマリーが食べてた気がするけど。
「今回も多めに用意したつもりだったけど、全部なくなっちゃったね」
私はお代わり用の大皿をテーブルごと洗浄した後、収納しながら呟く。
「自分で焼くというのも楽しいな。 最初はただ焼くだけだろ?と思っていたが、それがなかなか楽しい。 家族で食べると尚いい。 今度は家族4人でやってみたいな」
「それもありますが、純粋に食材が美味しいですね。 焼かずに野菜を食べてみましたが、ユリアさんのサラダ以外でこれほどおいしい生野菜は初めてですね」
「軽く茹でてあるので完全な生ではないですよ。 でも、うちの野菜は精霊たちのおかげで美味しくなってるので、そのまま食べても美味しいんです」
王様とアンドレさんの会話を少し訂正しておく。
食べやすくするために下茹ではしてあるけど、濃い味付けにしなくても普通に素材の味だけでも美味しい。
野菜嫌いの人には不評かもしれないけど、この世界に来て野菜を嫌いって人は見たことない。
まあ野菜を食べないってなると、パンとお肉しか食べるん物がないんだけど。
「前に王女殿下が木箱で持ってきた食材ですか? あれは王都で売ってる物とは比べ物にならない程美味しい食材でしたね。 生野菜も美味しかったですし、仕入れられるなら仕入れたいところです」
「大々的に販売する気はありませんが、多少なら検討しますよ。 うちの野菜と言っても育ててるのは精霊たちですし、私が食べるために育ててくれてるので、食べずに勝手に売っちゃうわけにはいきませんからね。 とはいえ収穫量が多いので、うちだけで食べきれるかというと、絶対無理なんですけど」
うちの農場は収穫速度よりも品質重視に育ててもらってるけど、それでも食べるのが私とディアだけなので消費がまったく追いつかない。
なのになぜかディアは畑を広げたがるんだよね・・・・・・
そもそもジャスミンは私の魔力だけだし、お手伝いの精霊たちはサトウキビなどの搾りかすや果物しか食べない。
シアも今の所特に食べたりはしないし。
ディアは私の真似がしたいのか一緒に食べてくれるけど、量は多くないんだよね。
「今度カーミトの街に引っ越しますので、そこで自分の畑を作ってその収穫量次第で相談、という事でもいいですか?」
「販売してくれるのであればそれくらいは待つぞ。 そういえばサクラの教育はどこまでする? 今は街の復興を優先するため、貴族としてのふるまいなどは横に置き、領主として必要最低限の知識だけ教育している。 その教育だけならもうすぐ終わるようだが、領主として1人でやって行けるよう全部教育すると、貴族としての作法や立ち居振る舞いの教育なども徹底的にやる事になる。 そうなると早くて数か月、一日の教育時間によっては年単位でかかってしまうだろう」
「最低限の教育だけで復興させていいんですか?」
もうすぐ終わる教育で、領主として1人でやっていけないのなら意味ないと思うけど?
「サクラがカーミトの街で領主になる時、城から人材を派遣する約束をしていたな? その中に領主の補佐ができる者を追加で入れるつもりだ。 心配しなくてもこの国の宰相、ルドルフの娘だから身分は保証するぞ」
宰相という立場の人の娘なら、まだ信用できるのかな?
私にはよくわからない。
「大丈夫そうならその方向でお願いします。 それからサクラの教育が終わるまでに、この国にいる孤児と先生の数を確認してもらう事ってできます? その人数が余裕で生活できるような広さの建物が必要になりますし」
「わかった、それは早めに確認しておこう。 ついでにカーミトの街へ移動してもらうことも伝えておく。 あと、子供のサクラが領主となると、周りの貴族連中が何かしらしてくるだろうから、国王である俺の指示で領主になったことにしておくぞ。 俺の指示だと言えば余計なことをする者もそうそういないだろう」
どうだろう、逆に王様とのコネ作りにすり寄ってくるのが増えそうだけど・・・・・・
「もしサクラに何かしようとしたら私が動きますけどね。 何ならコウスラをけしかけてもいいですし。 あ、住民を巻き込むようなことはしませんよ」
「・・・・・・まあほどほどにな。 もしユリアが暴れたら本当に俺たちには止められないからな?」
王様の顔が引きつっていたが、サクラに何かするやつらは冗談抜きで殲滅するつもりだ。
コウスラと精霊たち連れて乗り込んだっていい。
知らない貴族なんかより、サクラやリーアの方が大事なのは当たり前だ。
私と王様が話していたら、私に寄りかかっていたデイジーが寝てしまったので、そのままお開きとなった。
デイジーには洗浄魔法をかけてベッドに寝かせ、私たちはお風呂に入った後皆で寝た。




