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104 サクラと街の相談

 王様からの説明を聞き終えて借りてる部屋に入ると、3人でおしゃべりしていた。



「ただいま」

「あ、ユリアお帰り」

「ユリアさんお帰りなさい」

「ユリアちゃんお帰り」



 マリーに続いてリーアとサクラもお帰り、とこちらを向く。



「サクラ、ちょっと話があるんだけどいい?」

「うん、大丈夫だよ」

「わたしたちはいない方がいい?」



 サクラを名指ししたので、マリーが気を利かせて部屋を出ようかと言って立ち上がる。

 咄嗟に気を使えるのは小さくてもさすが王女だね。



「聞かれてまずい話じゃないから大丈夫。 カーミトの街の建物や道をどうするかの話をしたいだけだから」

「楽しそうね、わたしたちも参加していい?」

「それなら気が付いたところを意見してくれると嬉しいかな」



 私はテーブルに大き目の木の板を出し、建物代わりに木で作ったコマを複数用意した。


 この世界だと筆記用具はインクと木の棒で、動物や魔物の皮に書いている。

 紙もあるけどかなり高い上に質も悪い。

 初めて買った本があれだし。


 質が悪くて安い紙はとても何か書くのに向いてるとは言えない。

 なので今回は木で広い板と駒を用意して話し合いを始めたのだ。



「最初に私の考え、というか要望を話してもいいかな?」

「うん、何か意見があるなら聞きたいかな」



 私の意見にサクラがOKを出す。



「1つ目。 サクラは聞いてたと思うけど、私はカーミトの街に孤児を集めようと思ってるの。 だからカーミトの街には大きな孤児院と、子供たちを教育するための学校を作りたい。 最終的には孤児院が自分たちで運営できるようにしたいけど、すぐには無理だろうから、しばらくは私が食料や資金的な支援をするつもり。 2つ目。 私の住む場所なんだけど、森に近い北端の辺りの土地を買取りたいと思ってるの」

「北端に住むの? 門も遠いし森に近い壁近くは壁を壊せるような魔物が来た時に被害にあいやすいよ? ユリアちゃんは平気でも、建物とか畑は壊されちゃうかもしれないし」

「出入り口に関しては壁を少しいじって自分用の小さな扉を付けるつもり。 私が作った特別な扉なら他の人は開けられないし。 それに、大きな門が無くて私の家しかなければ人も来なくて静かそうじゃない? あと、森が近い方が何か素材とか取りに行きやすいかなと思ってね。 魔物とか来てもうちにいるのはみんな強いし、精霊もいっぱいいるし」

「なるほど。 他の施設次第だけど、門や商店通りから遠い場所は人気がないから、好んで住む人は少ないと思う。 金銭的な問題で選ぶ人はいるかもしれないけど」



 私が北端に住むのは問題なさそうだ。

 端の方なら人も来ないだろうし静かに過ごせるだろう。

 精霊が大量にいる場所で静かに過ごせるかはわからないけど。


 賑やかな場所が嫌いなわけではないけど、賑やかな時と静かな時のメリハリが欲しい。

 人が多い施設の近くだと夜でも人通りがある程度あるのだ。

 まあその辺は宿屋や冒険者ギルドの近くにしなければいいんだけど。

 それに、静かすぎて人恋しくなったら商店通りなり行けばいいし。


 うちにはディアとシアがいるし、引きこもってるけどジャスミンもいる。

 更に静かではあるけど見た目が賑やかな精霊たちが12人もいる。

 だから静かすぎることがあるのかはちょっとわからないけど。



「住む場所はいいとして、わたしは孤児を集めるっていうのが気になるわね。 孤児を教育してどうするの?」



 私とサクラが話していたらマリーが気になったことを聞いてくる。



「教育の結果、将来やりたい事やできる事の選択肢が増えるでしょ? それに集めたほうが先生たちの負担を減らすことができる。 例えば、5人の子供を1人で見るのと10人の子供を2人で見るのでは、後者の方が負担が少なくなるの。 1人の子供に何かあった時、9人をもう1人の先生に預け、分担して面倒を見ることができるからね。 5人を1人で見てると他4人は放置になっちゃうでしょ? 戻るまで部屋でおとなしくするように言っても、何をするかわからないのが子供だからね。 他にも孤児院のために使っていた資金を他に回せるから、孤児院のある街としても助かるでしょ」



 私の話をマリーだけでなく、サクラとリーアも真剣に聞いてくれている。

 しかしマリーは眉を寄せて難しい表情をする。



「ユリアが孤児を集める理由はわかったわ。 でもユリアの利点がわからないわね。 孤児や先生や街にとってはいい事だと思う。 けど負担が全部ユリアにのしかかってるわよね?」

「さっきも言ったけど負担するのは運営が軌道に乗るまでで、それ以降は自分たちで運営してもらうつもりだよ」

「だとしても最初の負担が大きすぎるわ。 軌道に乗せるために何をさせるのかわからないけど、それなりの期間がかかるわよね? その間ずっとユリアが負担するつもりなの? 孤児が全員で何人いるかまでは把握してないけど、全員の食費を賄うだけでもそれなりの費用が掛かると思うわよ?」



 当面の費用に関しては何とかなると思っている。

 建物は土魔法で作れるし、布団や服などの木や石で作れない物だけ買えばいい。

 街の北には森もあるから木材なら集められるし。


 なので土地と布団を買うだけで住む場所は問題ない。

 着る物も最初に数着買っておけば、それ以降は寒い時期があれば上着を買うだけでいい。

 前に運動着買った値段で考えれば、千人いようがこっちに来てから稼いだお金だけでも余裕で買える。


 なので実際に気にしないといけないのは食費だけ。

 その食費も精霊たちに質より収穫速度重視にしてもらえば、普通の店売り程度の品質でそれこそ街全体の食糧を補えるほど収穫ができる。 

 買わないといけないのはパンとお肉と塩くらいだし、北の森で狩ってくればお肉も入手できる。

 何なら小麦も栽培してパンを自作したっていい。

 


「衣食住で孤児のために買わないといけないのは、建物を建てるための土地、布団や服などの縫製品、畑で採れないお肉や塩など。 土地は一度買うだけでいいし、縫製品も頻繁に買い替える物じゃないでしょ。 食べ物は畑があるし、お肉は私が狩ってくればいいでしょ」

「建物や畑の土地も着る物も一度買えばいいとはいえ、最初にかかる費用は一冒険者で簡単に払える金額じゃないでしょ。 大会優勝で魔銀貨貰ったのは見てたけど、広い土地と人数によっては着る物買うだけでほとんどなくなると思うわ」

「私はこの国に来てから大会でもらった報酬の何倍も稼いでるし、もともと持ってたお金もあるから、孤児が1000人いても数十年援助したって余裕があるくらいにお金はあるよ」

「え、ユリアってそんなにお金持ってたの!?」

「少なくとも私が今の生活を続けてたら数十万年は働かなくてもいいくらいには持ってるよ。 だから資金面は気にしなくて大丈夫だと思う。 というより私がお金を抱えすぎちゃうと経済が回らなくなっちゃうから、むしろ使ういい機会かな」



 この世界に来た時に貰った金貨99999枚は別としても、すでに魔銀貨を数十枚稼いでいる。

 主にフェンリルの売却額だけど。

 子供たちが成人になるまでの数年なら1000人以上を数十年面倒見たって問題ないし、それだけ期間があれば畑なども軌道にのってるでしょう。



「なんかユリアの料理や強さが規格外だと思ってたけど、資金面でも規格外だったのね。 もしかして国よりもお金持ってるんじゃないの? ほんとに平民なの?」



 マリーが冗談交じりにそんな事を言ってくる。

 さすがに国の予算が魔銀貨数十枚なんてありえないでしょ。

 前に金庫?で見ただけでもかなりの量があったし、カードにはさらに入ってるはずだ。


 あ、最初の金貨を入れると一応私も4桁魔銀貨持ってることになるのか。

 収納画面に数字が表示されてるだけで、普段使ってる硬貨として収納内に入ってるわけじゃないから、大量の金貨を持ってる認識はなかった。

 忘れてるわけじゃないんだけど、別枠に感じるんだよね。



「私自身お金を使うような事をほとんどしないから、稼いだ金額がそのまま貯まっていくんだよね。 それにこの国に来てから短期間で結構強めの魔物に遭遇して、その討伐報酬や素材売却が結構高いし」

「まあ始めたけど予想以上にお金がかかっちゃって、とか途中で投げ出すようなことにならなければ問題ないわ」

「さすがにそんなことになるようならこんな提案はしないよ。 衣食住の確保は必須条件、そのうえで学校を開きたい思ってるからね」

「そういえばさっきから言っているガッコウってなに?」



 資金面の心配事が無くなって次の質問をしてくる。

 マリーは子供だけど王族としていろいろ気になるみたいだ。



「学校っていうのは子供たちを集めてまとめて教育するところだよ。 教育の内容によっていくつかの学校に分けるつもり」

「さっき言ってた教育ってそこでするのね。 でも、なんかすごく大掛かりなものに聞こえるけど、大丈夫なの?」

「私の国にあった物を真似て作るから大丈夫だと思うよ。 もしこの国に合わなくて失敗しても、建物撤去して畑にしちゃえばいいし」

「わかったわ。 もしうまく行ったら詳細を教えて欲しいんだけど、いい?」

「いいよ。 私が作ろうとしてるのは基本的な事を学ぶための場所だから、この国に必要な事や貴族などを対象にした事を教育する場所は別で必要になると思うし」



 私は学校がうまく行ったらマリーや王様に詳細を説明する約束をして、私の土地と孤児院辺りの話は終わった。



 その後の話し合いで

・街の中心から東西南北に広い道を作り、東西の門から中央にかけての道沿いに宿屋を多めに。

・街の中心にアスレチックを設置した広い公園を作り、公園の周りに屋台の出店許可を出して、そこを中心に東西と南の通りを商店通りに。

・領主邸(サクラの家)は北の私の家までの道をふさぐように建てることに。

・孤児院は領主邸と中央公園の間辺りに建てて、そこから西の広い土地を畑にする。

・孤児院の南側が学校予定地(最初は小学校的な物を作って、それ以上は結果次第)。

・学校予定地の正面辺りから中央公園の間に両ギルドの建物を。

・空いている西から中央公園を南にぐるっと迂回するように東までを住宅街に。



 途中昼食をはさんで夕方まで話し合った結果、思っていた以上に形になった。

 建物はサクラの教育が一段落してからでもいいけど、私の家は先に作っちゃおうかな。

 というか街を作る前に、すでに精霊たちが作った畑を北側に移動しないといけない。



「さて、話はだいたいまとまったけど、どうする? もう帰る?」

「わたしはユリアさんに合わせますよ。 急いで帰る必要はありませんし」

「わたしは孤児院に帰るのであれば、みんなが寝るまでには帰りたいかな。 お風呂の時間もあるし。 皆が寝てから帰ると起こしちゃうと思うから」



 リーアはいつでも良くて、サクラは遅くなければ大丈夫そうだ。

 リーアの場合、王女のマリーとの交流のために帰りが遅れたという事なら、怒られるどころか歓迎されるかもしれないね。

 というかこの世界で王女2人と一緒に食事をして、更に同じ部屋で寝てたと知ったらどういう反応されるのかはちょっと気になる。



「今日中に急いで帰る必要が無いなら今日も泊って行かない? せっかくリーアとも仲良くなったんだし、もう少しお泊り会を楽しみたいわ。 デイジーもユリアと一緒に居たいだろうし」



 マリーはそういって、今日ほとんど私から離れないデイジーの方に視線を送る。

 結局デイジーは、私が大会中に戦っている時以外ずっと抱っこされていた。

 傍から見ると体調悪くて寝ているようにも見える。



「そうだね。 私は一度家に戻らないといけないけど、今日急いで帰る必要はないしもう1日お泊りしようか」



 私がもう一泊すると言ったらガッツポーズをするマリー。

 そんなに私が作った料理が食べたいんだろうか。

 アンドレさんもそのうち作れるようになると思うんだけど。



「明日の朝食はサンドイッチにするとして。 今日の夕食はお泊り最終日だし、みんなの食べたい物を作ろうか」

「あ、それなら前に言っていたバーベキューというのをしてみたいです」

「バーベキュー? なにそれ」



 目を輝かせて手を上げ発言するリーアに、首を傾げるマリー。

 そういえばマリーがいても自分の意見を言うようになってるね、それだけこの短期間で仲良くなったって事かな。

 マリーが友好的だっていうのもあると思うけど。



「バーベキューは屋外で自分の好きな物を好きなように焼いて食べる食べ方だよ」

「自分で焼くの? それって楽しいの?」

「人によるかな? みんなでワイワイ食べるのが好きな人は楽しめると思うけど、静かに食べたい人からすれば喧しくて楽しめないと思う。 それに自分で焼くのが嫌いな人や面倒な人も楽しめないかな」

「それはユリアの国の食事形式なの?」

「毎回ってわけじゃないけどそうだね。 川沿いや自然に囲まれた屋外で、広々とした気持ちで食事をする物、かな。 どちらかというと庶民的な食べ方だとは思うけどね」

「王族や貴族には向かないって事?」

「それはこの国次第じゃないかな? 自分で調理しながら食べるのがダメとか、外で食べるのがダメとかならやめたほうがいいと思う」



 バーベキューというと家族でするイメージが強い。

 他には大学生とかがビール飲みながら騒いでるイメージかな。



「今まで聞いたことがないから、それはお父様に聞かないとわからないわね。 ちょっと聞いてくるわ。 もし大丈夫ならそのバーベキューで、ダメだったらそれぞれ食べたい物をユリアに頼むって事でいい?」



 その言葉に2人が頷くのを見た後、出て行こうとしたマリーを私は呼び止める。



「あ、マリー。 もし許可が出たら、バーベキューするためにお城の敷地で火を使っていい場所も聞いてもらえる?」

「わかったわ」



 そういって再び振り返り出ていく。

 今まで散々お城の中で火を使っていた気がするけど、一応ね。


 そう言えば前に中庭を使ってもいいとか聞いた気もする。



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