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103 ダンジョンの説明を受ける

 大会の後、馬車でお城に到着した私はそのまま執務室に向かう。

 マリーとサクラとリーアは私の借りている部屋に向かい、デイジーは未だに私が抱っこしていた。

 シアは当然私と一緒に付いて来ている。


 私は執務室に着きノックをすると、許可がもらえたので中に入る。



「おう来たか。 好きに座ってくれ」



 王様と宰相さんがソファの所に移動したので、私もいつもの場所に座る。

 デイジーは降りてくれなかったので膝の上に乗せている。

 シアはそんな私に寄りかかるようにして寝ている。



「早速ダンジョンの話をしたいんだが・・・・・・まだデイジーは離れないのか?」

「そうみたいですね。 一時的には離れてくれますけど、今日はべったりです」



 会うたびに懐き度が上がっている気はしていたけど、今日は特に離れてくれない。



「本来なら行儀が悪いと注意したいところだが、今までこんなことなかったから心配の方が大きくてな・・・・・・」

「健康面では問題なさそうですけどね。 食欲はありましたし熱もないですし」

「もうしばらくは様子を見てみるか。 それで、ダンジョンの話をしたいんだが、その前に1つ良いか?」

「なんですか?」

「さっき襲撃があったのは見ていたと思うが、あの襲撃者たちを倒したのはユリアだったりするか? 最悪俺も応戦する覚悟をしていたが、急に襲撃者たちが全員倒れたからな。 誰かが魔法を使ったようにも見えなかったし、不思議なことができるのはユリアしかいないと思ってな」



 え、何その考え。

 そうなると、今後不思議なことが起こる度にそれが全部私のせいにならない?



「特に不思議でも何でもないですよ、普通に魔法を使っただけですし」



 ちゃんと不思議でないことを言っておかないと、今後知らないところで恨まれたりするかもしれない。



「魔法なのか? 馬車の中で見ていたが魔法が当たったようには見えなかったが」

「使ったのは雷の魔法ですからね。 あの時の攻撃はちょっと光ったりするくらいなので、日が出ていて明るいと見えにくいかもしれませんね」



 大会中は光りを強くしてたから見えたと思うけど、普通に使うと見えにくい。



「雷の魔法なんて聞いたことないな。 お前は知ってるか?」



 私の言葉を聞いて宰相さんにも聞いていたが、宰相さんも知らないみたいだ。

 まあ5属性で全部って言われてるみたいだしね、氷と雷は知らないでしょう。

 氷は魔石があるはずなんだけどね



「雷自体は知ってますよね? 雨の日にゴロゴロ言って空が光るやつです」

「実際に見たことはないが、そう言う現象は知っているな」



 今までも雨ってなかったけど、この辺りって雨が降りにくいのかな?

 まあ雨が降っても外に出れなくなるから降らなくていいけど。


 元の世界だったら本を読むなりゲームするなり、できることがあるから雨は嫌いじゃない。

 むしろ落ち着くから好きな方だ。

 除湿必須だけど。


 でもこの世界で雨が降ったら何もできなくなる。

 服は濡れなくても私自身は濡れるから、外で作業なんてしたくないし。



「その雷を魔法で再現しただけですよ。 氷の魔法もそうですけど、他に使ってる人はいないみたいですね」

「・・・・・・もしかして決勝戦で使っていた魔法は演出ではなく、本当にその属性の魔法を使っていたのか?」

「そうですよ? わかりやすく属性の魔石経由で魔法使ってましたよね?」

「あの光っていたのはやはり魔石だったのか」

「大会前に譲ってもらった魔石に属性付与した物ですよ。 魔石のおかげで結構派手な演出ができたので助かりました」



 お礼を言う私とは対照的に、王様は額に手を当て、宰相さんは口を開いたまま目を見開いて固まっている。


 え、なに? どういう事?



「わかっていないようなので説明してやろう」



 私がキョトンとしていると、王様がため息とともにこちらを見る。

 特になにかしちゃったつもりはないけど、これは怒られるパターン?

 ここは異世界なんだし、私とは常識も違う。



「まず魔石だがな。 魔石は基本的に魔道具として使う事で魔法を使うことができるようになるんだ。 属性の魔石をそのまま持っていたとしても、魔法は使えん。 簡易版として売っている、あの一見ただの板にしか見えない魔石板も、中に魔導回路と一緒に起動の魔法陣が組み込んである。 それが無いとただ魔石を通して魔法を撃ってるだけで、魔石の恩恵はない。 つまり、大会中使っていたのはユリアの普通の魔法だったという事だ。 まあ演出としては見栄えも良く、決勝戦の魔法は好評だったようだが」



 あれ、それって私が7属性使えるのがバレたって事?

 特別隠すつもりはないけど、魔石を使えばいろんな属性使っても大丈夫ろうと思っていた。



「つまり私がいろんな魔法を使えるのが皆にバレちゃったって事ですか?」

「まあそうなるだろうな。 遠かったとはいえ、見る者が見れば魔石だとわかる。 魔石なんて子供でも使える物だし、気付いた者は少なくとも5属性の魔法が使えると思っているだろう。 雷や氷はそもそも使える魔法として存在してなかったから、気づいた者はいないかもしれん。 だが、何だろうと疑問に思う者は確実にいただろう。 特に魔法使いには目を付けられた可能性があるぞ。 今後絡まれたり弟子入りを申し込む者がいるかもな」



 うわー、めんどくさいことになりそうだ。


 あ、家に来たら精霊たちに追い返してもらおうかな?

 誰かしら家にいるだろうし、精霊に追い返されたら強くは言ってこないでしょ。



「とりあえず魔石についてはいいか?」

「あ、はい。 今後あの演出を使うかわかりませんが気を付けます」

「普通に魔石を使っても魔法は使えない、と覚えていればいい。 それを見せるとどうなるか知ったうえで使わないと、余計な注目を浴びることになるからな。 目立ちたいというなら止めはしないぞ?」

「・・・・・・変に目立ちたくないので、あの魔法は改良するか破棄します」



 大会用に作ったわけだし、普通に魔法を使うときは必要ない。

 だから今後使うことはないと思うけどね。



「それはまあどっちでもいい。 問題はもう1つの方だ」



 まだ何かあるのか・・・・・・



「さっき魔石に属性を付与したと言っていたな。 ユリアは魔石に魔法を付与できるスキルを持っている、という事か?」

「あーまあ・・・・・・そう、ですね」



 やばい、スキルの事普通にしゃべっていた。

 精霊の力で覚えた物もそうかもしれないけど、私が覚えた物を広めると貴族たちがうるさいかもしれない。

 たしかサクラがそんなことを言ってたような気がする。



「心配するな、スキルを持っているからと言ってどうこうするつもりはない。 ただ、他の者たちにはあまり広めない方がいいだろう。 取り込もうとする貴族連中も多いだろうし、職人なんかも目を付けるかもしれん。 逆に能力と一緒に力も誇示して、手を出す気になれないようにするのもありだと思うがな。 そこはユリアの好きにすればいい」



 そうか、便利な能力持ってたって手を出したら痛い目を見ると思えば、ちょっかいかけてくる人はいなくなるかも?

 あー、でもそうすると私に気にいられようと寄ってくる人は増えるかもしれないか・・・・・・それも面倒だ。



「しばらくはおとなしくします。 それに今は街の方をやらないといけませんし。 もし街のために必要なら力や能力の誇示も辞さないつもりですけど」



 サクラを領主にしたことでサクラの身に危険が及ぶようなら、力の行使も辞さないつもりだ。

 まあ街中にいる間は精霊もいるし、危険はないだろうけど。

 


「あまり暴れてくれるなよ? 俺には止められないんだ」

「関係ない人まで巻き込んだりはしませんよ。 ちょっかいかけてきて、しつこい相手だけです」



 笑顔で言う私に王様はため息をつく。



「・・・・・・さて、そろそろダンジョンの話をしてもいいか?」

「ダンジョンですか?」

「さっきダンジョンの話をすると言っただろう」

「そういえば言ってましたね。 魔石や能力の事を考えていたので忘れてました」



 再びため息をついた王様が話始める。



「一応さっきの3人に、3回戦に参加してた中で優秀そうなのを2人追加し、5人で行ってもらうつもりだ。 だが正直そこまで奥に行けるとは思っていない。 だからユリアにも時間の合うときだけで構わないから参加してもらえないかと思ってな」



 王様が少し遠慮がちに頼む。



「ダンジョンに行くのはいいですけど、最近忙しかったので街の話が進むまではしばらくはのんびりしたいんですよね」



 ここ最近はほとんど整地してただけで他の事が出来てなかった。

 王都に来てまったりしてた気もするけど、これは大会のために来てたのでノーカンだ。

 楽しかったとしてもノーカンなのだ。


 特に大豆は収穫しただけでそのまま収納して放置している。

 そろそろ醤油や味噌が作れないか調べてみたい。



「もちろんそれで構わない。 大まかにでも予定を聞いてもいいか?」

「急いでるんですか?」



 何となく焦っているというか、すぐにダンジョン探索をしたいようだ。



「急いではいない、んだが、ユリアのいる今のうちにできるかぎり攻略しておきたいと思っている。 この前のフェンリルの討伐だが、正直ユリアが1人で倒したというのは半信半疑だった。 誰か仲間がいたか、従魔や精霊が強いだけでユリア自身はランクBは無いと思っていたし。 疑っていたのは悪いが、今日の戦いを見るまでは報告を受けていただけだからな。 この前の西の森の時も従魔の方が殲滅したみたいだし。 しかし今日の戦いで、今この国にいる最高峰のAランク冒険者をユリアの力だけで圧倒していたのを見て、未だに攻略がまったく進んでないダンジョンの攻略を進めてほしかったんだ。 高ランクで良い物が出ればダンジョンに行く者も増え、冒険者ギルドも賑わうだろう」



 コウスラやシアを連れて行っちゃダメって言ったのはそういう意味もあったのか。

 前にお城の壁を壊したけど、あれくらいじゃ強さはわからないってことかな?

 結構驚いてた気がするけど。


 王都のギルドはジャスミンの時以外行ったことが無いんだけど、王都のギルドって人が少ないのかな?

 離れてるとはいえ西には森があるわけだし、魔物の討伐依頼なら普通にありそうだけど。



「ちなみに今の攻略で入手出来てる物って何があるんですか?」



 ダンジョンに行く人が少ないという事はいい物は出ないんだろうけど。



「良い物としては回復ポーションや銅の装備くらいだろうか? 他は魔物素材くらいで特別珍しいと言われる物は出ていないな」

「確かに『いい報酬』がその程度の報酬なら、わざわざダンジョンに行こうなんて思わないですね・・・・・・ダンジョンについて詳しく来てもいいですか?」

「ダンジョンは魔法陣で潜る仕組みでな・・・・・・」



 王様の説明をまとめると。

 ダンジョンに行くための魔法陣が並んでいる建物があり、その中から好きな魔法陣に乗って好きな階層に転移するらしい。

 魔法陣にはランクがあり、それぞれ冒険者ランクと同じくF~Aまである。

 というよりこのダンジョンに合わせて冒険者ランクが実装され、子供用にランクGが追加されたらしい。


 魔法陣に乗ると、そのランクの1~5階の中から1階かクリア済みの階層に転移でき、ダンジョンから出る時はクリア時に出現する魔法陣に乗れば出られるらしい。

 各ランクの5階にはボスがいて、そのボスを討伐すると次のランクの魔法陣を使えるようになる。

 そして、現在の攻略状況はランクCの2階らしい。



「ダンジョンにある魔法陣の使い方などはわかりましたけど。 Aランクの冒険者がいるのに、攻略はまだランクCの2階までなんですか?」

「普通に依頼をこなしてもランクはあがるからな。 ダンジョンだけでもランクは上がるし、ダンジョンに行かなくてもランクは上がる」

「なるほど、欲しい物がなければ依頼を受けた方がいいってことですか。 それで、そのダンジョンの建物はどこにあるんですか? やっぱり西の森ですか?」



 この辺りで何かありそうな場所は西の森しかない。

 それ以外は平原だし、南に行った先は崖で、その先は海のはずだ。



「ダンジョンの建物は冒険者ギルドの敷地にある。 というより、ダンジョンのある場所を中心に街を発展させていき、王都になったのだ。 ダンジョンに潜るための者たちを管理するためにできたのが冒険者ギルド。 冒険者ギルドで入手した物を管理、販売するために作られたのが商業ギルド、と言われている」



 まさかそんなに近くにあるとは思わなかった。

 でも・・・・・・



「それだけ近いならわざわざ森まで討伐に行かないで、ダンジョン行った方が楽じゃないんですか?」



 てっきり街から遠い場所にあるのにいいものでないから誰も行かないのかと思っていた。



「ダンジョンは出てくる魔物が強いんだ。 普通の森にいないような魔物も出てくるし、たとえ討伐しても一部の素材や魔石がもらえるだけで、普通に討伐するよりも稼げない。 だから無理をして奥まで攻略しようという冒険者がいない」

「魔物が強くて貰える物が少ないんですか・・・・・・それで物も良くないとなると確かに誰もいかなくなるのは納得ですね。 それで、私はダンジョンの奥で入手できる物を集めて来いって事ですか?」



 ダンジョンの浅い階層で良い物が出ないのはゲームでも一緒だ。

 良い物が欲しいなら深い階層まで行かないといけない。

 


「それもあるが、ダンジョンについての情報が欲しいんだ。 5階にいる魔物を倒した時のみ宝箱が出てきて、それでいい物が出るかどうかと、高ランクで何の魔物の素材が入手できるかを調べてきてほしい。 その結果本当に要らない物であればダンジョンは封鎖しようと思っている。 誰も近寄らない場所があると勝手に居つくのも出るからな」

「わかりました、しばらくは家にいると思いますが、ダンジョンに行くときはまた挨拶に来ますね」



 話し終わった私は、デイジーを抱っこしたままシアの手を引き、執務室から出てみんなのいる自分の部屋に向かう。



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