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異世界SLEEPER〜睡眠学習で人生に幸あれ〜  作者: kataki
プロローグ 現実とユメと

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5/10

第5話 そこは夢か現実か

 

部屋に入ると2人の個体からは糞尿が垂れ、冬ということもあってかあまり匂いはしない。

 俺はそれを間近で見てしまった。俺は口を大きく開き尻もちをつく。


「かっ…あっ…が…」


声にならない声が部屋に響き渡る。その影響かどうなのかはわからないが1つの個体の紐が切れ、俺のすぐ目の前に横たわり、見開いた目が不覚にもあってしまう。


「あああああああああああッッッッ!!!」


俺は何度も家で躓き転びながら壁にぶつかり、そして、家を靴下のまま飛び出す。

 そして家の外に出たところで倒れる。そしてすぐに絶え間ない吐き気が襲った。


「うっ…おえええええええええ」


食べ物など一切入ってはおらず胃酸だけが外にばら撒かれる。

 地面は氷のように冷たかったが俺の身体は燃えるように熱かった。

 するとその奇行をみていた通行人が声をかける。


「君、大丈夫かい?」


知らないサラリーマンの男だった。俺はその人を涙目になりながら睨む。

 サラリーマンは少しゾッとしたが只事ではないと察し更に声をかける。


「ここの家の人?何かあったのかい?」


まずい、今中には2つの死体がある。しかも暫く時間が経っている。それを知らずに何日も俺が住んでいたことがバレたら、もしかして…俺…


もはやその時の俺は空腹のせいなのか、ストレスのせいなのか、あの包帯女のせいなのか、普通の思考判断は持ち合わせていなかった…


「い…や…大丈夫…す」


俺は倒れながら必死に声を絞り出す。どう見ても大丈夫じゃないことは見れば明らかだった。


「とりあえず、救急車呼ぶね!」


男がスマホを取り出すと俺がそれを全力で制止させるため叫んだ。


「いいつってんだろうがッッ!!余計なお世話なんだよッッ!!」


そういって俺はサラリーマンを殺意の目で睨んだ。


「ひっ」


男は慌てて逃げ出す。まずい…逃げなきゃ…捕まる。


俺はそのままチャリに跨り逃走する。


ギコギコ


「ハアハア」


親父が…お袋が死んだ…なんで…


ギコギコ


「…ハアハア…ぜぇ…」


そんなの決まっている。俺のせいだ。俺が関節にとはいえ2人を死に追い込んだんだ。

 俺は自転車を漕ぎながら必死に謝り続けた


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいーー」



 近所を抜け、大通りを渡り普段では絶対にやってこないくらいの距離をひたすら走り続ける。


もうどれくらい漕いだのかわからない。それくらいに途方のない距離、時間を一人彷徨っていた。

 もう家に警察は行ってるんだろうか?そして俺を容疑者として探して…

 俺の中に罪悪感と後悔が巡る。結局俺は生まれてからこの方、両親に何もできずに別れを迎えた。

 すると突然角から人が飛び出して来て衝突する。


「…いって!おい!!なにしとんじゃ!お前!!ってお前…」


「すみません…って…加藤…さん?」


衝突したのは今日、解雇通知を直々に言い渡された加藤だった。

 加藤は俺だとわかると邪悪な笑みを浮かべ後ろの部下と一緒にこっちに歩いてくる。


「おい!!どした!こんなとこで、奇遇じゃんか。お前も俺と飲みたいの?」


どうやら部下を引っ張り回して飲み歩いていたらしい。確かに全身から酒飲においがする。


「いや、俺はもう会社の人間じゃないんで失礼します」


俺は慌てて自転車に乗り込もうとするが加藤がいきなりチャリごとドロップキックをかました。

 

「ぶへっ」


俺はチャリと一緒に吹き飛んだ。それを見て加藤はゲラゲラ笑っている。 

 俺は必死に命乞いをする

  

「ほん…と…まじで、勘弁…して…下さ…い」


倒された拍子に骨にヒビが入ったのか激痛でうまく喋れない…


「なに?ちゃんとしゃべろうぜ。センパァイ」


俺はそのまま部下に運ばれ路地裏に連れて行かれる。



俺は路地裏で複数人に腕を固定され加藤のサンドバッグにされる。


「本当さぁお前みたいなの見てるだけでイライラしちゃうんだよねぇ」


ドン!!


「ゲホッッ!!」


ドン!!


「本当に、勘弁して下さい、ほ、骨が折れてる…かも」


それを聞くと加藤は辞めるどころかいっそうにこやかに笑った。


「そっか〜折れちゃったか〜でもさ、もう無職になったんだから折れてても関係ないよなぁ!!良かったじゃん!俺に解雇にされて」


ドン!!ドン!!


そして暫くの間俺は加藤になぶりものにされた。


 

飽きた加藤が俺をそのまま捨て、部下と一緒に消えた。

 

「…ゲホッ!ゴホッ…ゲホッ!」


俺はアザだらけの顔と激痛が走る横腹を抱えて立ち上がり歩き出す。


「もういい…もう…全て終わらせたい」

 

俺は近くにあったどこかもわからない螺旋階段を登る。ただひたすらに一段一段を噛み締めながら…

 外側は落ちないように高い鉄の柵が張り巡らされている。足取りは重いが確実に前に歩みは進む。

 そして、登り切ると、どこかの建物の屋上のようだった。俺は暫く外の景色をみつめていた。


 真冬の極寒の風が肌を突き刺すが、今の自分にはちょうどいい温度に感じた。

 無言で手すりに両手をつけ、この世の別れを告げる。


「ほんっと…くだらない人生だったなぁ」


そして跨いで手すりをくぐり抜けると心の中でカウントダウンを開始する。


3



なんでだろうな。



2



前にもこんなことがあった気がする。



1



まぁ…もうどうでもいいか



0


そして後ろで掴んでいた手を離す。



パシッ


誰かに手を掴まれる。


「駄目だよ…こっちでも死んじゃ…」


俺は驚いて後ろを振り向く。そこにはあの時公園にいた包帯人間が立っていた。


 相変わらず機械のような声で何かを呟いた後、針金のような細い腕で俺を掴んでいた。

 どこにそんな力があるのか身を乗り出した俺を片手で支えている。


「お前は一体なんなんだよ…」


 相変わらず包帯の奥でグリグリと目玉が動きこちらをずっとみつめている。

 俺は再び恐怖を覚えたが今はそれに本心ではないが命を繋ぎ止めて貰っている状況だった。 


 包帯人間は俺の問いには答えるつもりはなさそうで掴んだ手をギュッと引き寄せ俺が飛び降りるのを必死に阻止しようとしている。


「離せよッッ!!」


俺が無理やり引き剥がそうと手を振ると包帯人間は口を開ける


「落ちたら…本当に死ぬよ」


 その言葉に俺は恐怖を忘れキレ散らかす


「だから…死にてぇつってんだろうがよ!!もうこの世界には何処にも俺の居場所なんてねえんだよ!!だからほっといてくれよ!!」


するとぱっと包帯人間の手が離れる。


へ?


あまりにものあっけなさに俺は心の準備が出来ないでいた。

 身体は無重力になり一気に重力に惹きつけられる。


「ああああああああ!!」


俺は情けない声をあげながら、急直下で落ちる。


怖い…怖い…死ぬのはやっぱり怖い…


体中の体液を吹き出しながら俺は最後の時を感じ目を閉じ、歯を食いしばる。

 



すると口に何かが触れそのまま俺の意識は消える。



ーーーーーーーーーーーーーーーー


 深い暗闇のなかで俺は目覚める。ここはあの世?


何やら身体が重い。



いや、意識がはっきりとある。そして自分の中に失われていた筈の記憶が呼び覚まされるかのように流れ込んでくる。

 この記憶は、そうだった…俺は眠ると異世界の夢をみるんだ…そして何故かこっちでは両方の記憶が共有される。そうだ…あの子は?…あの子に逢い…たい…誰だっけ?…ええと…そうだ


「ユメッッ!!」


俺は彼女の名前を呼ぶと同時に目覚め身体を起こしていた。

  

ここは…ユメと俺の部屋…


辺りを見渡すと木で造られた部屋に本棚や、イスなとが置かれている。

 先程まで感じていた全身の痛みも感じられない。俺は自分の顔を確かめるように触るとその艶ざわりで確信した。 


夢に戻ってこれたと

 

「………」


俺は暫くぼーっと辺りを見ていたがすぐに足りないものに気付く。


「ユメ!?」


いつもなら俺が起きる前に必ず起こしに来てくれていた彼女の姿が何処にもない。

 俺は焦りと共にこの世界で最期にみた光景がフラッシュバックされる。


「くっ…」


キッチン…彼女の自室…風呂場…トイレ


「ユメッ、ユメッッ、ユメッッ!!」


最後にもう一度自分の部屋を再確認してみたがどこにも彼女の姿はなかった。


 そんな…せっかく異世界に帰って来られても、ユメがいないんじゃ意味がない。

 俺はその場に崩れるとうずくまる。まさか、あの日、本当にユメは……もう…


バサッ!!


「!?」


 窓の外から布を力強くはたいたような音が聞こえたその音のせいで外の小鳥が一斉に散る。

 俺は立ち上がり、自分の部屋を出て奥にある玄関を開ける。

 すると強い日差しと気持ちのいい風が肌をなぞった。家の裏から聞こえたその音の方に俺は歩みを進めた。ゆっくり、ゆっくりと…


すると少し進んだところで鼻唄が聞こえる。


俺はいつの間にか涙が止まらなくなっていた。


角を曲がり奥へ進む。するとそこには洗濯物を干す赤い髪をツインテールにしたメイド服の後ろ姿があった。

 心臓が飛び出しそうなくらいうるさい鼓動が鳴り響く。


「あっ…あっ」


俺は声にならない声をあげ両手を伸ばしながら歩く。

 その時、洗濯物を干していた彼女がこちらに振り向く。



「あ、おはようございます!トーヤさん!今日は私が起こさなくても起きられましたね!えらいです!」


天使のようなお日様のような笑顔を向ける彼女の姿があった。


「ゆめぇぇ!!!」


俺はそう叫ぶと洗濯物を干している最中の、彼女に飛び込む。


「ふぇ!?ちょっと!?トーヤさん!?」


ギュッ


俺はまた彼女の胸に飛び込み彼女の服をよごしてしまっている。

 夢の俺は何で生きているのか、現実の俺はどうなったのか…そして、目の前の彼女は果たして本物のユメなのか…いや、間違うはずがない!この笑顔、この匂い、この温もり…この愛情、全部が全て彼女のものだ!何年も一緒にいたんだ…この俺の瞳が、心が、魂が目の前の存在を彼女だと認識している。


「ユメッ!ユメッ!もう…一生…2度と逢えないんじゃないかって…俺…ユメに!!」


そんなどうしようもない泣きじゃくる俺を彼女はいつものように優しく頭を撫でてくれた。


「…あらあら、今日はいつにも増して甘えん坊さんですね…また怖い夢でも見たんですか?大丈夫です…私はどこにも行きませんよ」


ユメの温もりが、この数日間俺を蝕んでいた心を全て洗い流していく気がしたー

 

今はただこのまま時が止まって欲しいとさえ感じたー


 





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

登場人物紹介


包帯人間       年齢不明


現実の世界で突然現れた存在。


目的、行動、全てが謎であるが夢の世界での出来事を知っているような口ぶりで主人公に接触してくる。



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