第2話 泣き虫主人公
…俺はずっと…夢の中ではずっとこの子と一緒に暮らしてきたんだ。
この世界では俺は上流貴族として生まれた。物心つく頃メイド見習いとしてこの娘が家に来たのが出逢い。
この世界ではスポーツも学業も優秀だった俺はそこから程なくして魔術学校を首席で卒業したが、両親と価値観での食い違いの末、勘当しこの娘と駆け落ち同然で家を飛び出し、今はこの山奥の小さな家でひっそりと暮らしている。
もちろん裕福な暮らしはできないが、この世界の俺はとても満たされていた。
「はいはい、また怖い夢でもみたんですか?大丈夫ですよ。私はどこにも行きませんから…」
彼女はいつも地獄から、この現実へと戻ってきた時、子供のように泣きじゃくる俺を抱き寄せ撫でてくれていた。
「なぁ、ユメ?」
俺は彼女の胸に顔を埋めて質問する。
「はい、なんでしょうか?」
「結婚しよう」
「ふぇっ!?」
泣きじゃくりながらメイドに抱きついて云うセリフではないが今はそれでもこの気持ちを伝えたかった。
「ちょっとまだ早いですよ!!やっと商売も軌道に乗ってきてこれからなんですからッッ!!そうゆうのはもうちょっと…その…落ち着いてから…ね?」
耳まで真っ赤にしながら目線を逸らし、そう答える彼女は可愛いとかもうそういう次元ではなく、チートだった。
「いや…やるんだよ!今ここでッッ!!」
俺は理由のわからないことをいって彼女を困らせる。
「い…一体何をやるんですかぁ!?」
彼女は顔に手を当てて答える。可愛い。
暫くそんなやりとりが続いた後、ユメをやっと解放する。
俺はぐしゃぐしゃの顔を洗い鏡をみる。
そこには十代後半くらいの好青年が映る。
俺が初めてここに来たのは現実で高校1年の半ばくらいで、そこから俺の人生はスタートされた。
そして顔を引き締めると自分を奮い立たせるため頬を両の手で叩いた。
「よし!」
顔を洗いユメの手伝いに向かうと既に2人用のテーブルにはサラダとパン、ベーコンに卵が乗せられそれをユメが配置し終わった直後だった。
「ごめんな、ユメ一人でやらせちゃって…」
俺は少し申し訳なさそうに尋ねると彼女は優しく微笑む。
「いいえ、それよりも冷めないうちに早く頂きましょう。トーヤさん」
そう云うと俺達は食卓を囲む。
今思えば向こうではもう一緒に食べてくれる人はいないけれど、ここでは毎日ユメが作ったごはんを一緒に食べるのが当たり前だった。
他愛ない話しをし時々彼女をからかってぷくっとなったユメを見ながら取る食事は格別な味がした。
朝食が終わり、一緒に洗い物をしながら今日の予定を確認する。
ちなみに俺が皿洗いをしそれをユメに渡して拭いてもらっている。
「今日は市場もあるし、俺達も露店を出そうか?」
俺がそうユメに確認すると、頭の中で在庫の確認をする。
「えーっと、回復ポーションと魔力ポーション、あと毒消し草に強化キノコもあったはず…」
ユメがフンフンと鼻を鳴らしながら思い浮かべていくよこで俺はピンとくる。
「それと、昨日ユメが焼いたクッキーも出そう!絶対売れるぜ?」
「もぉーそれ絶対トーヤさんが食べたいだけですよね?」
ジト目で見つめながら俺に不満をぶつけるユメに
「バレたか」と返す。
俺達は身支度を済ませると大きめのリュックを背負い、家を出る。
ここから露店がある街へは少し距離があり、ついでにここに自生している山菜や、薬草なんかも露店で売る。
「おっ、ニガリ草発見〜」
俺はそれをちぎりひょいっと空きポケットに入れる。
「…それ、本当にこの世のものとは思えないほどの苦味ですよね」
ユメは昔、他の薬草と間違い口に含んだことがありそれ以来トラウマになっていた。
「食べる?」
俺はニガリ草をユメに差し出す。
「食べませんッッ!!」
そうこうしているうちに俺達は街へたどり着く。
街といっても小さな街で上下関係もあまりなく俺はそんな街が気に入っていた。
「おや、トーヤ君!ユメちゃん!」
街を歩いているとこの街でよく露店使用の場所を借りている地主のおじさんに遭った。
「おはようございます!今日も宜しくお願いします!」
「あっ!地主さん!おはようございます!宜しくお願い致します!!」
俺達は並んで深々と一礼をした。
2人の若者をみたおっちゃんは満足そうにウンウンと頷きながら見つめていた。
それから俺達は露店一式を借り商品を並べていく。
ここはこう、ここはこうと2人で相談しながら陳列する姿を街の住民も温かい目で見守ってくれていた。
「よし!開店だ!!」
すると程なくして店の前に行列ができる。どうやらウチの店の商品は品質がいいらしい。ちなみに薬の調合はユメがやってくれている。
夜な夜な部屋を覗くと怪しげな薬をニヤニヤして混ぜているので俺は近寄らない。
「嬢ちゃん!回復ポーション5つくれ!」
「はぁい!ただいまっ!!」
「こっちは、魔力ポーション15個だ!!」
「すみません。ご家族様10個までなんですよぉ」
ユメは誰に対しても分け隔てなく笑顔を振り向きすっかりこの街の看板娘になっていた。
「ユメちゃん。今晩飲み行かない?」
「お客様〜出禁で〜」
俺はユメに寄ってくる悪い虫を排除しなくてはならない。
「あらぁ、お嬢ちゃん若いのに精が出るわね!旦那さんもかっこよくて羨ましいわ!」
「だ、旦那さんッッ!?いや、その私達は夫婦ではなくて…」
突然のマダムに翻弄されるユメに俺がビシッと云ってやった。
「そうなんです!お母さん!まだ!夫婦じゃないんです!!」
「ちょ、ちょっと何言ってるんですかぁ!」
半泣きで照れながら俺にプンプンと怒るユメ かわいい
すると突然街の向こうから叫び声が聞こえる。
「ド、ドロボー!!」
声のした方を見ると柄の悪そうな男2人が店の商品を奪って過ぎ去っていく。
「ユメッッ!!」
「はいっ!!」
俺達は店を飛び出し2人を追いかける。
先に過ぎ去っていった2人組と、俺達の距離はそれなりにある。
「逃がしませんっ!」
ユメは地面に手を置くと唱える。
「氷固結地 アースフリーズ」
すると地面が冷え固まり、前方を走っていた男達が横転する。魔法の効力はすぐに消えその隙に俺は男達の前方に立った。
「いててっ…ふざけやがって!」
「ぶっ潰してやる」
俺は腕を組み答える。
「それ、典型的な負けフラグだから」
俺は2人の攻撃を軽くいなすと1人に回し蹴りして吹き飛ばす。
「グへっ!」
もう1人の男の溝にアッパーを食らわす
「ごふっッッ!!」
男達はピクピクと震えながら痙攣し、俺は溝うちした方が持っていた、商品を取り返す。
商品を持ち主のおじさんに返すと何度もお礼を云われ俺とユメは街のみんなから称賛された。
「さ、仕事に戻ろうか」
「はいっ!」
ユメは元気に答えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
人物紹介
ユメ・フリーティング メインヒロイン
十代後半くらい
成績中の上 運動能力も優れている
赤髪でツインテール基本的に正装がメイド服
表裏がなく誰に対しても敬語で振る舞う絵に描いたような美少女
幼い頃からトーヤに仕え、トーヤが家を飛び出した時もトーヤと一緒にいく覚悟を決め黙って抜け出した。
実は幼い頃にトーヤにメイド服を称賛されそれがきっかけでメイド服を常備するようになった。
優しく頼りがいがあって甘えん坊なトーヤのことが好き




