表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パラサイトな僕の十九人の姉さん達  作者: 輪二
第一章 僕は姉さんと関わりたくない
PR
12/67

11.ミャーマは助言する

「そんなわけで、ティオーラ姉さんと一緒に旅をする事になったんです」


 僕の言葉に、《鏡草》の中のミャーマが『良かったわぁ』と手を叩く。


『なにはともあれ、一人目のお姉様と会えて良かったね、ビーちゃん』


 僕の目の前にある《鏡草》は、ミャーマから受け取った包みに入っていたものだ。

 この《鏡草》と言うのは、葉が対になっているのだけれど、今は片方の葉を僕が持ち、もう片方をミャーマが持っている。


 この《鏡草》の葉は、両手のひらを合わせたぐらいのサイズで、内側が少し丸まってお皿のようになっている。

 そこに水を張り自分の姿を映すと、もう一方の《鏡草》に声や姿が伝わり、連絡を取り合う事が出来るのだ。

 葉の上に溜まった水が落ちるまでの間、離れている相手とこうして会話ができる。


 僕の方の《鏡草》にはミャーマの姿が、ミャーマの《鏡草》には僕の姿が映っているはずだ。


(それにしてもミャーマ様、こんな高価なものを僕に渡して大丈夫だったのかな)


《鏡草》に張られた水面の上で、ミャーマが神妙そうに頷く。


『ビーちゃんがあのアキレアの息子だったとはね。それで次はどこへ行くの?』


 僕は自分の出自の事をミャーマに打ち明けていた。


(ティオーラ姉さんの知り合いみたいだし、彼なら信頼できそうだ)


「えっとね、ティオーラ姉さんの話だと、カールリンネ侯爵の家に、別の姉さんがいるらしくて……」

『あら、カールリンネ? 最近お屋敷に呼ばれて行ったわね』

「ミャーマ様が?」


 侯爵家ともなれば、人気の吟遊詩人や楽団を屋敷に招く事も多いはずだ。

 ミャーマ達も、それで呼ばれたのだろう。


『ええ。そこで「呪い鏡の物語」を披露してきたのよ』

「呪いの鏡……ですか?」

『あら、聞きたいかしら?』


 なんとも物騒な言葉に、僕は思わず聞き返す。

 ミャーマは少しかしこまったように声を整えてから、その物語を語ってくれた。



『昔、ある所に美しい女王がおりました。

 女王は鏡に向かってこう言いました。


「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは誰?」


 すると鏡は「それはあなたの娘でございます」と答えました。


「あなたの娘が生きている限り、あなたの美しさは霞むばかりでしょう」


 鏡に唆された女王は、娘を殺そうと刺客をさしむけました。

 けれど、悪巧みは全て失敗。

 追い詰められた女王は鏡に詰め寄りました。


「鏡よ鏡、今まであなたの言う通りにして来たけれど、何も上手く行かないじゃない。どう責を追うつもりなの」


 すると鏡から手が伸びてきて、女王は鏡に引きずり込まれてしまいました。

 慌てて鏡から出ようとしても、鏡面に阻まれて出られません。

 鏡の外の世界では、女王そっくりの偽者が、にっこり笑って言いました。


「あなたの代わりに、これからは私が女王になって差し上げましょう」


 女王は必死に鏡面を叩きました。

 偽物の女王は言いました。


「もうここからは出られませんよ。私が取って代わったのだから」


 そうして偽物は「今まで悪い鏡に操られておりました。これからは心を入れ替えます」と言って、娘に取り入りました。


 それからは家族仲良く暮らしましたとさ。

 けれど鏡の中では今も、本物の女王が誰にも気がついてもらえず、成り代わった偽物をじっと見つめているのでした』



 語り終えたミャーマに、僕は思わず「そんな気味の悪い話、喜んでもらえたんですか?」と聞いてしまった。


『結構喜ばれたけどね。そんなことより、ビーちゃん。気をつけてね』

「何がですか?」

『カールリンネの屋敷の事よ。あそこ、なんだか隠し事が多そう……むいむいだったわ』

「むいむい?」

『うん……なにもないと良いんだけど』


 ミャーマの話を聞いているうちに、葉の上に溜まった水がかなり減ってきている。


「うん、ありがとうございます。ミャーマ様も、お料理頑張って上達してくださいね」

『任せてちょうだい』


 葉の上にわずかな水滴を残して、水は全て下に落ちた。

 足元の水たまりをぼんやりと見つめ、僕はミャーマに言われた事と思い返していた。

次の章からは、別の投稿作品『異世界を渡る吟遊詩人は怪談が専門です。』を下敷きに、大幅に改稿したエピソードとなります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ