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第7話:【想定外】初心者ダンジョンの最深部に、なぜかSSS級の隠し扉




「――はい、というわけでね! 向こうから歩いてきた緑色のちっちゃいおじさん……あ、ゴブリンさんたちは、チャンネル登録のお願い(神権による物理BAN)をしたら光のチリになって退場していかれましたー!」



もこもこの猫足スリッパをペタペタと鳴らしながら、私はゴブリンの巣穴の最深部へと突き進んでいた。


現在の同時視聴者数は、驚異の350万人を突破。画面の右上のカウンターが狂ったように回り続けている。



▶:『ゴブリンがただの配信の賑やかしになってて草』


▶:『ろいでちゃん、一歩進むごとにゴブリンが爆散していくんだけどww』


▶:『もはやホラー映画の怪物の歩き方なんだよなぁ』



『うぅ、ろいでちゃん……。ゴブリンを指先一つでデジタル消去するのは百歩譲っていいとして、消すたびに「高評価よろしくね!」って決めポーズを取るの、精神的なプレッシャーが凄すぎて僕の胃がキリキリするよ……』



ヘッドホンから、20%の音量に復活したリデーレ(りーくん)の情けない声が聞こえる。



「何言ってるの、りーくん。ファンサはストリーマーの基本だよ? ほら見て、お目当てのボス部屋に着いたじゃん」



通路の突き当たりに、いかにも「ここがボスの部屋です」と言わんばかりの、トゲトゲした不気味な鉄の扉が現れた。


このダンジョンのボスは、E級の『ゴブリンキング』。


初心者冒険者が3人がかりでようやく倒せる程度の、ちょっと大きなゴブリンだ。



「よし、それじゃあサクッとボスをBANして、今日の配信を綺麗に締めくくろっか!」



私が扉に手をかけ、勢いよく押し開けた、その時だった。



――ビキィ、ビキビキビキッ!!!



空間を引き裂くような、けたたましいガラスの割れる音が洞窟内に鳴り響いた。


私の手元から、ネオンピンクの魔力エフェクトが爆発的に噴き出す。


それは私の意志ではなく、ヘッドホンを通じて私の体に流れ込んでいる「350万人の熱狂(魔力)」が、あまりに巨大すぎて勝手に溢れ出したものだった。



「えっ、何これ? 触っただけなのに、扉が画面割れスマホみたいになってるんだけど」



『ちょっと待って! ろいでちゃん、手を離して! 君の魔力出力がダンジョンの許容量キャパシティを完全に超えてる! システムが……ダンジョンの構造データが、内側から書き換えられていく……っ!?』



りーくんが悲鳴のような声をあげた瞬間。


目の前の鉄の扉が、デジタルノイズのように激しくブレ始めた。


黒、紫、そして禍々しい赤色のエフェクトが渦巻き、普通の鉄の扉だったはずのオブジェクトが、みるみるうちに『巨大な黒大理石とドクロの彫刻で作られた、絶望的な威圧感を放つ巨大な門』へと変貌していく。


その門の真上に、システムUIのホログラムが跳ね上がった。



【エラー:魔力値異常上昇を検知】



【特殊条件クリア:世界最凶『絶望の深淵ダンジョン』の隠しルートが強制結合されました】



【警告:この先に進むには冒険者ランクSSS級が必要です】



▶:『は??????????』


▶:『待って、なんかゲームのバグみたいな演出来た』


▶:『SSS級って何!?!? 一番下のE級ダンジョンだったよね!?』


▶:『運営のサプライズ演出か!? グラフィックの気合いの入り方がさっきまでと違いすぎる!』



「えー……。ちょっと待ってよ、私、ただボスを殴って帰ろうとしただけなのに。何これ、隠しステージ? 完全にバグじゃん」



『バグだよ! 大バグだよ!!』



ヘッドホンの中で、りーくんが髪を振り乱して大パニックになっているのが伝わってくる。



『君の同接350万人っていうのはね、この世界の全人類のトップ魔術師が1万人集まって同時に最大魔法を詠唱してるのと同じエネルギーなんだよ!? そんなものを一気に流し込まれたら、ダンジョンの底に眠ってた「世界最凶の隠しエリア」のデータが引っ張り出されて繋がっちゃうに決まってるじゃないか!!』



「知らんがな。作ったのりーくんでしょ」



『僕だけど! 僕はそんな使い方想定してないよ!! 開けちゃダメだ、ろいでちゃん! その門の奥にいるのは、100年前の英雄たちが命をかけて封印した――』



ギギギギギ……。



りーくんの静止も虚しく、禍々しいドクロの門が、私の規格外の魔力に気圧されるように勝手にゆっくりと開き始めた。


中から溢れ出してきたのは、肌を刺すような、凍りつくような冷気。


そして、暗闇の奥から、カラン、カラン、と重厚な鉄の鎧が擦れ合う音が響いてくる。


現れたのは、3メートルはある巨躯。


ボロボロの漆黒のマントを羽織り、頭部には肉体がなく、ただ青白い地獄の業火が怪しく揺らめいている、伝説の暗黒騎士――レイスナイト。


その圧倒的な絶望感を前にして、ドローンカメラの映像越しでも恐怖が伝わったのか、チャット欄のスクロールがピタッと止まった。



▶:『……これ、マジのやつじゃん……』


▶:『画面越しなのにプレッシャーで息ができないんだが……』


▶:『ろいでちゃん逃げて!! 演出じゃない、これガチのやつだ!!』



暗黒騎士が、手にした巨大な大剣をゆっくりと持ち上げる。


その刃が向けられたのは、ダボダボのパーカーを着て、足元にもこもこのスリッパを履いた、17歳のトップライバー。


しかし、私は逃げ出すどころか、ふっと口元を釣り上げて、カメラに向かってウインクをしてみせた。



「みんな、お待たせ。どうやらこれが、本日の配信の『本当のメインイベント』みたい。――りーくん、神権の準備、よろしくね?」



『もう、どうなっても知らないからねーーー!!』



りーくんの絶叫と共に、350万人のリスナーが見守る中、異世界最強の隠しボスとの前代未聞の戦いが幕を開けようとしていた。



(つづく)

【作者より】

ご視聴ありがとうございました!

E級ダンジョンでのんびり配信してサクッと帰るはずが、同接350万人のパワーが凄すぎてまさかのSSS級ダンジョンの隠しバグを力ずくで引っ張り出してしまったろいでちゃん。


もし「面白い!」「そんなことある!?」と思ってくださったら、ぜひ画面下の【ブックマーク登録】や、評価の【星(★★★★★)】で応援よろしくお願いします!


★次は、本日夜【21:00頃】に配信予定です!

3話一挙公開です!

夜のメイン配信もぜひお楽しみに!

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