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第38話:【番外編・後半】絶望の魔神ルシファー、徹夜編集の末に『神回Vlog』を完成させてチャンネル登録者数5,000万人を達成してしまう件




「ハァ……ハァ……! で、できた……! 奇跡のレンダリング(書き出し)完了……ッ!!」



午前5点30分。


窓の外がうっすらと白み始める頃、地下編集室にルシファーの勝利の(?)叫びが響き渡った。


モニターには『書き出しが完了しました:【神回】夏休み特別編! 宇宙規模の爆破枕投げで学園崩壊してみた【ろいでch】』の文字が誇らしげに表示されている。


徹夜でマウスを握り続けたルシファーの目は血走り、漆黒だった髪はストレスと極限状態の集中力によって真っ白に燃え尽きかけていた。



「フ……フハハハ……見たか! これぞ絶望の魔神が誇る『超神速動画編集術』……! 音ズレなし、テロップのフォントセンス完璧、リスナーのツッコミどころを完璧に予測したカット割り……! 完璧だ……完璧すぎる作品が完成してしまった……ッ!」



ルシファーは達成感のあまり、涙を流しながらゲーミングチェアの上で震えていた。


もはや自分が何のために戦っていたのか、自分は何者なのかすら分からなくなっている。


ただ一つ言えるのは「最高の動画が撮れて、最高の編集ができた」というクリエイターとしての悦びだけであった。


ガチャ。



「あ、ルシファーさん、おはようー」



ダボダボの萌え袖パジャマを着たろいでが、目をこすりながら編集室に入ってきた。



その手には、湯気が立つマグカップと、出来立てのほかほかポテトチップス(揚げたて)が乗ったお盆が握られている。



「ろ、ろいで様……ッ! ご指定の『夏休み特別編・枕投げ大戦』の編集動画、ただいま書き出しが完了いたしました……!」



ルシファーは椅子から転げ落ち、ひれ伏しながらモニターを指し示した。



ろいでは「ふぁぁ……」と欠伸をしながら、小さな萌え袖の手でマウスを操作し、ルシファーが徹夜で仕上げた動画のプレビュー再生ボタンを押した。


画面の中で縦横無尽に跳ね回るピンクの光束レーザー。


爆風に吹き飛ばされながら「高反発すぎるぅぅぅーーッ!」と叫ぶリデーレ。


絶妙なタイミングで差し込まれる、ルシファー特製のド派手な集中線と煽りテロップ。


そして最後に、星空の下で「おつろいでー」と呟くろいでちゃんの可愛いカットイン。


じーっと画面を見つめていたろいでは、やがて――。



「……ん! すごい! ルシファーさん、編集めちゃくちゃ上手! りーくんの悲鳴の切り取り方、天才的だね!」



パぁぁぁ……と、ろいでちゃんの顔が満開の笑顔になった。



「――っ!?」



その瞬間、ルシファーの胸に、かつて世界を征服した時すら味わったことのない「未知の激震」が走り抜けた。



(な……なんだこの感情は……!? 認めてもらった……? この我の……我の丹精込めた動画編集が、あの小娘に絶賛されたというのか……!?)



「はい、これ徹夜のお礼。揚げたてのポテトチップスと、あったかいココアね」



ろいでがちょこんと差し出したお盆を受け取り、ルシファーは震える手で揚げたてのポテチを一口食べた。


サクッ……。


「……う、う美味い……ッ!! なんという香ばしさ……なんという温もり……ッ! 我が求めていた破壊と絶望の記憶など、この一枚のポテトチップスの前には塵同然……ッ!!」



ルシファーの目から、ボロボロと大粒の嬉し涙が溢れ出した。魔神、完全陥落の瞬間である。



「よし、じゃあこの動画、そのまま各種SNSに『プレミア公開』でアップロードしちゃおう」



ろいでがスマホの【神権バグUI】をぽちっとタップした。


瞬間――!


動画が公開されるやいなや、全世界の数千万人の待機勢リスナーを一瞬で飲み込む、怒涛の通知爆風が吹き荒れた!



▶:『プレミア公開キターーー!』


▶:『編集のテンポ良すぎて草』


▶:『りーくんの爆発シーンのSE神がかってて腹痛いwww』


▶:『サムネのフォントセンス高すぎだろ誰が編集してんだよww』


▶:『編集担当:ルシファー(元・絶望の魔神)ってクレジットにあって草』


▶:『編集神すぎて草www』



チャット欄とコメント欄には、ルシファーの編集技術を絶賛するリスナーたちの声が怒涛の勢いで押し寄せた。


さらに、画面を埋め尽くす最高額スパチャの嵐。



チャリーン! チャリーン! チャリーン!



▶:『【赤スパ連投】編集スタッフのルシファーさんにポテチ代として100,000円投げます!』


▶:『ルシファーニキ、編集お疲れ様!!』


▶:『神編集助かる!』



「が……画面が赤スパで染まっていく……!? 我に対する賞賛と、スパチャという名の貢ぎ物が……これほどまでに……ッ!?」



ルシファーは全米が泣いたかのような感動に打ち震えた。


そして次の瞬間、PC画面の「チャンネル登録者数」のカウンターが、凄まじい勢いで回転を始めた!


49,999,998……


49,999,999……


ピコンッ!!



【祝! チャンネル登録者数 5,000,0000人(5,000万人)突破!!】



▶:『うおおおおおおお!! 5,000万人到達キター━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


▶:『歴史的瞬間!!!』


▶:『ろいでちゃんおめでとう!!』


▶:『編集のルシファーニキもおめでとう!!』



「ご……ゴセンマンニン……!? 世界人口の何パーセントかを巻き込んだ超巨大チャンネルになってしまった……ッ! 我が手掛けた動画によって、世界が……世界が『ろいで帝国』へと変貌を遂げていく……ッ!!」


ルシファーは狂気と歓喜が混ざり合った高笑いを上げた。


そこへ、頭に大きなタンコブと包帯を巻いたリデーレが、ボロボロのパジャマ姿で編集室のドアを蹴破って入ってきた。



「ちょっと待てぇぇぇーーッ!! なんで僕の痛烈な被害映像が5,000万人達成の記念動画になってんだよ!! しかもルシファー、君いつの間に動画編集のプロになってんだよ!! 悪の美学はどうしたんだよ!!」



リデーレの真っ当すぎるツッコミに対し、ルシファーはオフィスチェアをくるりと回転させ、黒いメガネをクイッと上げながら不敵に笑ってみせた。



「フ……愚かな不憫の神リデーレよ。我の『悪の美学』は進化したのだ。力で世界を破壊するなど浅はかなこと……今の我は、この『動画編集』によって全世界の人間ドモの脳をバグらせ、ろいで様の信者へと変えてみせる!!」



「完全に社畜のやりがい搾取に毒されてるじゃんかぁぁぁーーッ!! 目を覚ませ元・魔神!!あと僕は表現と芸能の神様だ!!」



「さあろいで様! 次の動画素材(夏休み最終日・課題終わらない生徒たちのバグ空間)の撮影準備は完了しております! 次は目指せ『チャンネル登録者数1億人』ですぞ!!」



「うん、ルシファーさん頼もしいねー。それじゃあ次回も頑張ろうね。……おつろいでー!」



▶:『おつろいでー!』


▶:『ルシファーニキの次回作(編集)にも期待!』


▶:『1億人目指して突き進めー!』



こうして、絶望の魔神ルシファーという最強の「社畜編集者」を手に入れた『ろいでch』は、チャンネル登録者数5,000万人という金字塔を打ち立て、さらなるカオスな夏休み最終盤へと突き進むのだった。



――夏休み編、次回いよいよ最終章へ!



(つづく)

次回は明日の【14:00】頃に投稿する予定です!

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