第36話:【定番中の定番】「枕投げ」を流星群が飛び交う超高威力弾幕バトルにバグらせてみた件
「――はぁ、はぁ……地獄のハリウッド級ホラー肝試し撮影からなんとか生還して、ようやく布団に潜り込めたと思ったら……なんで僕が君たちと同じ大部屋で寝なきゃいけないんだよ……」
へビメタ肖像画に揉みくちゃにされてボサボサになった自慢の派手な髪の毛をどうにか整え、不憫な神様(※一応彼は表現と芸能の神様です)ことリデーレ(りーくん)は、神魔統合学園の合宿所に敷かれた巨大な布団の上で、パジャマ姿のままげっそりと呟いていた。
リデーレのパジャマは見た目と変わらずシルバーを基調にしつつも、所々にピンク、ネオンブルー、パープルがこれでもかと散りばめられ、まるで光り輝くゲーミングPCのLEDグラデーションのようだった。
時刻は深夜2時。
肝試しの興奮冷めやらぬ旧校舎から引き揚げてきたろいでたちは、学園の畳敷きの大広間に身を寄せていた。
前回のホラー配信の反響は凄まじく、魔王様の赤スパ降臨も手伝ってチャンネル登録者数は驚異の4,800万人を突破。
深夜2時にもかかわらず、スマホの画面の向こうには数千万人の不眠症リスナーたちが常駐していた。
▶:『深夜2時の寝起き(?)配信助かる』
▶:『りーくんのパジャマ姿相変わらずうるさくて草』
▶:『ろいでちゃんの萌え袖パジャマかわよ』
▶:『セレスティアちゃんとゼノスくん、正座したまま微動だにしないの怖すぎる』
部屋の隅では、モデレーターのふたり(セレスティア&ゼノス)が、完璧な正座の姿勢でろいでの布団の脇をガードしている。完全に要人警護のSPである。
当のろいではというと、ダボダボの萌え袖パジャマの袖をさらにモコモコさせながら、198円のビニールスリッパを「キュッ……キュッ……」と鳴らして畳の上を歩き回り、自分の枕をぽんぽんと叩いていた。
「んー、せっかくみんなでお泊まりなんだから、修学旅行とか合宿の定番、あれやらなきゃダメだよね」
「定番……? ちょっと待て、嫌な予感がする。まさか『恋バナ』とか言わないよね?」
「ううん。『枕投げ』」
ろいでが可愛らしく首をかしげながら宣言した瞬間、リデーレの背筋に冷たい電流が走った。
「やめろ!! ろいでちゃんの言う『枕投げ』が普通の綿の入った枕をポイポイ投げ合う平和な遊びになるわけないでしょ!! 僕の命が何個あっても足りない!!」
「大丈夫。UI調整して、みんなで楽しく弾幕ごっこできるようにしておいたから」
「何が『弾幕ごっこ』だぁぁぁーーッ!! 物理的に死ぬ未来しか見えない!!」
リデーレの必死の抗議を軽やかにスルーし、ろいではスマホの画面をスワイプ。空中に浮かぶ【神権バグUI】を小気味よくタップした。
瞬間――。
畳敷きの大広間全体が、眩いネオンピンクとサイバー感溢れるグリッチノイズに包まれ、部屋の空間そのものが「縦横無尽に広がる超巨大バトルアリーナ」へと拡張された。
【神権:神回】を発動。
私の視界が激しいデータグリッチとともに、静かな合宿所の大広間を「超高威力流星群が飛び交う、フルカスタム枕弾幕バトル会場」へとリライトしていく。
【オブジェクト:合宿所の大広間&羽毛枕】
【実行アクション:生徒たちが夜に枕を投げ合って遊ぶ】
【変更後実行アクション:「枕が着弾時に戦術核レベルの爆破を起こす流星弾頭に変化し、スパチャで弾数と威力が無限増加するデス枕投げ」に強制ブラウザ変換】
ズズズズ……と部屋の四方がどこまでも広がり、生徒たちが手に持っていたフワフワの羽毛枕が、青白くプラズマを放つ「高エネルギー流星弾頭(枕)」へと変形した。
さらに上空にはホログラム画面が浮上し、『現在の被弾ダメージ:即死/スパチャで特殊弾頭(抱き枕レーザー)解禁』と表示されている。
▶:『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』
▶:『枕投げ(概念破壊)草』
▶:『スパチャで流星群降らせられる神ゲーじゃん』
▶:『りーくん、頭に枕直撃したら爆破四散するぞwww』
チャット欄のリスナーたちが一斉に大歓喜! 画面を埋め尽くす大量の投げ銭が投下され始めた。
チャリーン! チャリーン! チャリーン!
『【赤スパ連投】スパチャ総額が15,000,000円を突破! 特殊兵器「超巨大そば殻流星枕」が召喚されます!』
「――は?」
リデーレが呆然と上空を見上げると、そこには隕石並みの大きさを誇る、超巨大なそば殻枕が「ゴォォォォォォ―――ッ!!」と大気圏を突破する勢いで降り注いできていた。
「ギャアアアアアアッ!? 枕投げの規模が『地球防衛軍』になっちゃってるじゃんかぁぁぁーーッ!!」
「ろいで様! 我らがお護りいたしますわ!! 『神聖バリア・枕ガード』!!」
「ろいで様に仇なす枕は、このゼノスが粉砕してみせる!!」
セレスティアとゼノスが己の枕を構え、光のレーザーを放ちながら流星枕を空中で撃墜していく。
ドカン! バババババッ! と大広間でド派手な大爆発が巻き起こり、畳が次々と吹き飛んでいく。
「ここ室内だろ!? 室内で戦術兵器ぶっ放すなよ!!」
リデーレが頭を抱えて逃げ惑う中、ろいでは特等席の布団の上で、萌え袖の手でちょこんと小さめの羽毛枕(見た目は可愛いピンク色)を掲げていた。
「えー、それじゃあ私からも、はい、ポイッ」
ろいでが可愛らしく手首をスナップさせて、ポイッと投げたピンクの枕。
それが空中でフワリと浮いた瞬間――。
ドッゴォォォォォォォン!!!!
音速を超えたピンクの極太レーザー弾幕が十数本に分裂し、大広間全体を縦横無尽に跳ね回り始めた!
「弾幕が曲がる!? 意思を持って追いかけてくるんだけど!? 助けてぇぇぇーーッ!!」
リデーレは自慢の派手な髪の毛を逆立てながら、縦横無尽に跳ね回るピンクの光速枕弾幕から逃げるため、必死の全速力ダッシュを繰り広げた。
▶:『りーくんの回避運動がプロのアクション俳優超えてて草』
▶:『ろいでちゃんのポイッ(威力:壊滅的)かわよ』
▶:『部屋の中で核実験やってるみたいな光景で腹痛いww』
チャット欄の熱狂は最高潮に達し、莫大なスパチャの嵐によって大広間にはさらに無数の「追尾式抱き枕」や「低反発クラスタ爆弾」が生成され、全校生徒を巻き込んだ大混乱の弾幕祭りと化した。
「うわあああ! 低反発まくらなのにダメージが高反発すぎるぅぅぅーーッ!!」
ドカーン!!
最後は、スパチャのエネルギーを限界まで吸収した巨大な「冷却ジェルの特大枕」がリデーレの真上に着弾。盛大な爆発音とともに、大広間の天井と床が綺麗に吹き飛んだ。
「……ぶはっ……! だ……だから……室内で……やるなって……言ったのに……」
ボロボロになったリデーレが、瓦礫と化した畳の上で白目を剥いて倒れ込む。
その横で、夜空の星々が丸見えになった大広間(だった場所)で、ろいでは自分の枕をぎゅっと抱きかかえながら、ドローンカメラに向かって眠たそうに目をこすった。
「ふぁ……ん、みんな枕投げありがとー。お部屋壊れちゃったから、今夜は星空見ながら寝まーす。それじゃあ今度こそ――おつろいでー……」
パァン! と、星空にド派手な「【神回認定・快眠】」のピンク文字が打ち上げられ、カオスすぎる夏休み肝試しの夜は、爆発と星空の下で静かに(?)幕を閉じたのだった。
――一方その頃ろいでのチャンネルの専属編集スタッフ(社畜)となった『初代学園長・絶望の魔神ルシファー』は??
(つづく)
本日、【21:00〜】33話〜38話を連続公開します!
【このあとすぐ】37話を【21:45】頃に投稿します!
誰か優しい方!一人でもいいのでこの作品に
評価やブクマをつけてくれたら嬉しいです!
モチベが急降下して常に涙目です……




